
雨漏りやシロアリ被害などの不具合があったり、過去に自殺や殺人が起きてしまったなど、居住することに対して不安がある瑕疵物件。
実際に瑕疵物件を所有している人、相続などにより所有することになってしまった人は
・使う予定のない瑕疵物件を、できるだけ早く手放したい
・買い叩かれないために、瑕疵物件の売却価格相場を知っておきたい
・瑕疵物件を高く売るにはどんなノウハウがある?瑕疵を直せば高く売れる?
など、さまざまな悩みや疑問を抱えている方も多いでしょう。
この記事では「瑕疵物件を手放したい人」のために、不動産専門家がプロの観点から解説し、あなたの疑問やお悩みを解決します。
具体的には
・瑕疵物件の売却価格相場
・瑕疵物件をできるだけ高く売却するための6つのポイント
・瑕疵物件を売却するまでの流れ
などの内容を、重要なポイントに絞ってわかりやすく解説していきます。
この記事を読めば、瑕疵物件を素早く手放す方法を理解し、高く売却できるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。
売主の瑕疵担保責任と告知義務
住宅において瑕疵(かし)とは、居住に関するさまざまな問題点をいいます。
不動産取引において、売主はあらかじめ住宅の瑕疵をすべて買主に告知する義務があります。
買主が、その瑕疵を含めた物件の価格が妥当と判断をすれば、成約に至る仕組みです。
ここで購入前に告知された瑕疵については、買主は後で責任を問うことはできません。
しかし知らされていなかった瑕疵が売却後に発見された場合、売主はその責任を負わなければならないとされています。
これが瑕疵担保責任といい、売主が納得のいく対応をしない場合、買主は損害賠償請求などをおこないます。
それではどのような問題であれば瑕疵担保責任を問われるのでしょうか。
瑕疵は雨漏りがあるといった「物理的瑕疵」の他に「法律的瑕疵」「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」の4種類に分類できます。
それぞれの種類ごとに、瑕疵に該当する事象を紹介します。

物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、建物の性能や品質に関する不具合を指します。
主に構造と防水に関する事項が対象になります。
クロスに汚れがあったり、フローリングに傷があったりといった、日常生活に支障がなくかつ経年による劣化については、瑕疵担保責任の範疇には入りません。
具体的に瑕疵に該当するのは、次のようなケースです。
雨漏り
雨漏りは、単に水に濡れるといった不快感だけでなく、小屋組、梁、柱などの構造材まで腐朽している恐れがあります。
壁内の水道管の水漏れ
雨漏りと同様に水道管自体の補修を完了していたとしても、壁内の柱や土台が腐食している恐れもあります。
シロアリ被害
シロアリの被害は目視ではなかなか分かりません。
シロアリが現れる季節は限定されるので、たとえ姿を見かけなくても、過去にシロアリを見た記憶があれば、被害を受けている恐れがあります。
基礎のひび割れ
基礎に深いクラッ(ひび割れ)があった場合は、基礎そのものの脆弱性が原因である他に不同沈下をしている可能性があります。
不同沈下は家の傾きの原因にもなるため、基礎の不具合が重大な瑕疵に繋がるかもしれません。
外壁やバルコニーからの水漏れ
外壁と建具の取り合いやバルコニーから雨水が浸入する状況であれば、日常生活に支障をきたすばかりでなく、柱や梁などの構造材が腐朽している可能性もあります。

法律的瑕疵
法律的瑕疵とは、都市計画法や建築基準法に適合していることを前提に購入したのにもかかわらず、実際には物件が法に適合していなかったようなケースです。
例えば、検査済証が交付された物件で、その後無断で増築をして建ぺい率違反になっているような場合がこれに該当します。
違反建築物は将来的に増築ができないばかりか、建物の所有者として違反指導の矢面に立って対応する義務が生じます。
これらの事実を隠蔽して売却していたとすれば、重大な告知義務違反です。
あるいは、前面道路が建築基準法第42条第2項道路だった場合、道路沿いのコンクリートブロック塀は道路中心線よりも2mセットバックしている位置にあるとの説明だったのに、実は後退ができていなかったケースも該当します。
この場合、増築や建て替えをした時点で、塀を全面撤去する義務が生じることになるため、法律的瑕疵になります。
心理的瑕疵
心理的瑕疵とは、当該物件において、過去に自殺や他殺事件があったり、孤独死のまま長期間放置されていたりといった、買主に著しい嫌悪感を生じさせるようなケースです。
あるいは区分所有の中古マンションにおいて、過去に部屋内で火災が発生していた物件であったり、反社会勢力のアジトとして使用されていたりした場合も心理的瑕疵に該当します。
環境的瑕疵
環境的瑕疵とは、周辺環境が事前の説明以上に劣悪であったり、内覧時には想定できなかった粗悪な環境が発覚したりする場合を指します。
例えば、近隣の住宅がごみを放置したままの、いわゆる「ゴミ屋敷」であったり、隣人がトラブルメーカーであったりするようなケースです。
この他に、工場の臭気が漂うケースや、家の前に高層マンションの建つ計画が既に明らかにされていたのに知らされていなかったケースなどが、これに該当します。
環境的瑕疵は人によって許容範囲が異なるため、どこまで重要事項として伝えるべきかの判断が難しいです。
民法改正で変わる瑕疵担保責任
ところで瑕疵担保責任の考え方は、改正された民法が2020年4月に施行されることで大きく変わります。
まず瑕疵担保責任という考え方は消滅して、改正民法第562条で「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」という、契約不適合という考え方が導入されます。
これによって契約書に記載されていない不備が発見された際には、買主は、物件の修繕、代金減額請求、契約解除、損害賠償請求をおこなえるようになります。
瑕疵担保責任においては、隠れた瑕疵について責任を負う形が原則でしたが、改正民法施行後は、契約内容と物件の状態が適合しているか否かが争点になってきます。
このため、物件の状態を客観的データによって明らかにすることが従来以上に求められます。
参照:総務省 電子政府の総合窓口(e-Gov)「民法 第562条 他人の権利の売買における善意の売主の解除権」

宅建法改正により建物状況調査の調査結果を告知しなければならない
宅地建物取引業法が改正され2018年4月に施行されました。
これにより、宅建業者は依頼者に対して建物状況調査の意向を確認するだけでなく、必要に応じて建物状況調査技術者(インスペクター)を斡旋する義務が生じることになります。
そのため、今後はインスペクションを実施する物件が増加すると予測されます。
参照:総務省 電子政府の総合窓口(e-Gov)「宅地建物取引業法 第34条の2 媒介契約」
瑕疵物件の売却価格相場
瑕疵物件を売却する場合、売却価格の相場はどのくらいでしょうか。
瑕疵物件の場合、どうしても瑕疵のない物件と比べて割引価格での取引になってしまいます。
その一方で、不動産売買は需要と供給のバランスで決まるため、それを補う魅力があれば、最小限の減額で済みます。
例えば、駅に隣接した物件であったり、近くに商業施設や医療施設が充実していたりする物件だと、むしろ利便性が勝って、瑕疵物件のマイナスを帳消しにできるケースもあります。
このような物件だと市場価格の5~10%程度の値下げで売却できるでしょう。

物理的瑕疵の場合
物理的瑕疵は、とくに構造材に関わる瑕疵があると敬遠されがちです。
たとえ補強工事費相当分を値引きしても、さらなる値引きは避けられません。
むしろ構造に関する瑕疵は補修してから売り出した方が、結果として損失が抑えられる場合もあります。
補修によって物理的瑕疵を解消した物件は、ほぼ市場価格で売却できますが、物理的瑕疵を抱えたままの物件だと市場価格の20~30%でしか売却できません。
法的瑕疵の場合
法的瑕疵物件が重大な違反建築物であれば、事態は深刻です。
明白な違反を抱えている物件は、銀行が住宅ローンの融資をしてくれないからです。
購入層は現金で一括購入できる人か業者に限定されるうえ、購入した途端に是正命令の対象者になるため、買主はなかなか現れません。
市場価格から50%の値下げが一応の目安になりますが、状況によっては、さらに下がる恐れもあります。
心理的瑕疵の場合
自殺が発生した物件は、心理的負担が大きいと感じる人もいるため、たとえ半額以下であっても買いたくない人がいます。
一方で、ある程度割引率が大きいのであれば、反対に買いのチャンスだと捉えて購入を視野に入れる人もいます。
将来転売することを考えれば、その考えはあながち誤ってはいません。物理的瑕疵がなければ建物自体は安心だからです。
こうした背景から、自殺のあった心理的瑕疵物件は、市場価格から20~30%値下げした価格で取引されます。
同じ死亡者が発生した物件でも、殺人事件の現場となった物件は、相当に心理的瑕疵が大きいです。
とくに連日ニュースや新聞で報道された現場や、凄惨な事件であればあるほど、心理的負担は大きくなります。
場合によっては、なかなか買主が見つからないこともありますが、市場価格から30~50%の値下げが妥当な相場でしょう。

環境的瑕疵の場合
環境的瑕疵は、買主本人では根本的に解決できないため、たとえ購入を検討していても、瑕疵を伝えた途端に購入を見送られてしまうことは少なくありません。
このため物理的瑕疵の物件は、市場価格から20~30%値下げした価格で取引されます。
瑕疵物件をできるだけ高く売る6つのポイント
瑕疵物件は通常の物件より値引きされてしまうことが分かりました。
しかしそれでも、少しでも高い価格で売却できないかと誰しもが考えるところです。
瑕疵物件をできるだけ高い価格で売却するには、どのような工夫をすればいいのか、その方法をみていきましょう。
1.物理的瑕疵を解消する
物理的瑕疵を告知すると、売却価格を値引きされる可能性が高いです。
であれば、売却の前に瑕疵部分を解消した方が、スムーズに売却できます。
事前に工務店に瑕疵部分の補修をしてもらい、その後に建物状況調査(インスペクション)を実施することで、重要事項説明の書類として「建物状況調査の結果の概要」を提示できるのです。
すると、買主も安心して購入できるため、市場価格に近い価格で売却できる可能性が高まります。

2.事故物件は家を空にしてから売る
自殺があった物件が敬遠されるのは心理的圧迫があるからです。
そこにまだ生活臭があると、内覧の際に「まだ何か瑕疵があるのでは?」と疑ってしまい、どうしても購入を躊躇ってしまう場合があります。
そうした場合、売却前に仮住まいに引越して、空になった家にハウスクリーニング業者を入れて部屋中を清掃してもらうと効果的です。
買主が納得するまで内覧できるうえ、ハウスクリーニングで家自体の清潔感も高まるので、買主の不安が大幅に軽減されます。

3.事故物件は発生から期間を空けて売却する
自殺が発生したことによる心理的負担は何十年も続くとされています。
それでも、去年発生した場合と5年前に発生した場合では、心理的負担の程度はずいぶんと違うはずです。
事故物件は売り急ぐことなく、心理的負担が弱まり、買主が現れるまでじっくり待つスタンスで売却するのもひとつです。
4.事故物件はいったん賃貸物件として活用してから売却する
事故物件は、事故のあった当時の世帯からワンクッション挟んで別の世帯が入居者になることで、かなり悪印象が軽減されます。
実際に売却する前に、いったん賃貸住宅として活用して、まったく別の家族のイメージが定着した後に売却すれば、事故物件の悪印象は最小限に抑えられます。
5.瑕疵物件は解体して更地として売却する
どんな瑕疵物件でも、対象となる住宅そのものが消失すると、告知義務はありません。
そのため、家を解体して更地にした状態で売り出す方法も、瑕疵物件の売却方法として有効です。
ただし、更地にする方法は税金面などで多少のデメリットを伴います。

6.訳あり物件の専門業者に買い取ってもらう
ここまで解説したどの方法も、瑕疵物件の売却までに時間を要します。
少しでも早く売却したいのであれば、訳あり物件の専門業者に買い取ってもらう方法が有効です。
瑕疵物件はなかなか買主が見つからないのが現実です。
その原因の1つは、買主が瑕疵物件をどのように扱ってよいのか、使い道を把握していないことにあります。
しかし、訳あり物件を専門に取り扱っている業者は、瑕疵物件をリフォームや修繕することによって、価値のある物件としてリセットするノウハウを持ち合わせています。
買取した瑕疵物件の使い道を熟知しているからこそ、高額で買い取ってもらえるケースも少なくありません。
当社は瑕疵物件の買い取りに自信があります
当社クランピーリアルエステートでは、全国800を超える弁護士・司法書士・税理士と連携しております。
「瑕疵物件」で起こりがちな法的トラブル(瑕疵担保責任など)の問題解決もできるため、通常の不動産会社では扱いが難しい物件でも問題なく買取できます。
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瑕疵物件を売却するまでの流れ
瑕疵物件はどのような流れで売却するのか見ていきましょう。
不動産業者に仲介を依頼するケースと訳あり物件専門の業者に買い取ってもらうケースでは、流れが異なります。
不動産会社の仲介による売却の流れ
不動産会社の仲介で売却する場合、一般の不動産と同様に次のような流れになります。
2.不動産会社に仲介を依頼する(媒介契約)
3.不動産の売却活動
4.購入希望者と価格の交渉をする
5.物件情報を開示する(告知義務)
6.売買契約書を結ぶ
7.物件の引き渡し

訳あり物件の専門業者に買い取ってもらう流れ
訳あり物件の専門業者に買い取ってもらう場合、流れは次のとおりです。
2.条件確認
3.物件調査
4.買取価格の提示
5.金額に納得した場合は契約
6.物件の引き渡し
訳あり物件の専門業者に買い取ってもらう場合、会社に仲介してもらう場合と比べて、売却活動をする必要がないため、物件の引き渡しまでの期間を大幅に短縮できます。
瑕疵物件を解体して更地にする際の注意点
瑕疵物件をより高く売却する方法のひとつとして、住宅を解体して更地にして売り出す方法を解説しました。
確かに瑕疵物件の告知義務が消滅するため、とても合理的な方法のようにも思えますが、デメリットを理解してから実行しないと思わぬ損失になる恐れがなります。
瑕疵物件を解体して更地にすると、どのようなデメリットが発生するのかみていきましょう。
更地にすると固定資産税が6倍に増える
建物が存在する土地の場合、固定資産税は「住宅用地の軽減特例」によって、本来の税額の1/6まで軽減しています。
これは200㎡までの敷地に適用されますが、200㎡を超える部分も1/3の軽減があります。
瑕疵物件を解体して更地にすると、これらの特例が適用されなくなり、固定資産税が6倍に増えてしまうため注意しましょう。
再建築不可物件はもう建物が建てられない
敷地が道路に2m以上接していない物件など、再建築不可物件を更地にしてしまうと、もう二度と家を建築できなくなります。
家が建てられない敷地は、住居ではなく駐車場にするなどの使い道しかないため、購入したい人は少ないです。
再建築不可物件に関しては、たとえ瑕疵物件であっても、建物を現状維持している方が、売却できる可能性は高いでしょう。
まとめ
この記事では、瑕疵物件の相場と売却方法について解説しました。
瑕疵物件を一般の物件と同じ方法で売却すると、価格が大幅に下がってしまうばかりか、まったく買主がつかない恐れもあります。
ですので、瑕疵物件を売却する場合、自己解決できる問題はできる限り解消したほうがよいでしょう。
どうしても解消できない瑕疵も包み隠さずに明らかにすれば、買主の信頼を得られるので、告知しない場合よりは売却できる可能性も高まります。
また重要事項説明書で瑕疵を提示すれば、成約後のトラブルも回避できるので、瑕疵は包み隠さず告知したほうがよいでしょう。