【前提】自殺物件であっても買い取ってもらうことは可能
前提として、自殺物件の売却は法律で制限されていません。そのため、法的に問題なく物件を買い取ってもらうことが可能ですが、仲介での売却は基本的に難しいのが基本です。
経験上、一般の買主向けに販売を開始しても、ポータルサイトへの掲載段階で反響が極端に少なかったり、自殺の事実を告知した時点で検討が止まってしまったりするケースは珍しくありません。特に、築年数が古い物件や立地条件が弱い物件では、価格を調整しても成約までに長期間を要することが多いのが実情です。
一方で、訳あり不動産専門の買取業者は、自殺物件を再生・活用するための豊富な専門知識やノウハウを有しており、コストを抑えつつ効率的に収益化する仕組みを確立しています。そのため、一般の買い手や不動産会社には断られがちな自殺物件でも、現状のまま積極的に買い取ることが可能です。
実際に、これまで仲介では売却が難航していた自殺物件や、複数の不動産会社に断られていた物件を数多く買い取った経験もあります。
また、自殺物件は通常物件と比べて仲介での売却が難航しやすいですが、買い手がまったく見つからないとは限りません。買い手の中には、自殺物件という心理的瑕疵よりも、価格の安さや部屋の綺麗さ、立地の利便性などを重視する方や、そもそも事故物件に住むことに抵抗を感じない方も一定数存在します。
当社が行った独自のアンケート調査においても、大半の人は事故物件に抵抗を感じるという結果が出た一方で、事故物件に抵抗を感じないという方も一定数見受けられました。
- 事故物件に抵抗を感じない人は男性24%・女性8%
- 自殺物件に抵抗を感じない人は4.2%
- 心理的抵抗を感じない人は「霊を信じていない」「部屋がきれいなら問題ない」「家賃が安い方がいい」と考えている
仲介では、立地や売却価格などをアピールポイントとして、こういった買い手にいかに効率良くアプローチできるかが売却成功のカギとなります。自殺物件の売却を検討する際は、買取と仲介のそれぞれの特性を理解し、物件の状況や自身の要望に応じた最適な売却方法を選択しましょう。
自殺物件を買い取ってもらう前に知っておくべきこと
自殺物件を買い取ってもらう際、売主として知っておくべきポイントとして以下の2つがあります。
- 買い手に対して自殺に関する告知義務が生じる
- 相続した場合は、売却する前に「相続登記」を行わなければならない
これらは、買取であっても例外ではありません。買取業者が相手だからといって説明や手続きを省けるわけではなく、対応を誤ると契約の延期や白紙解除、場合によっては法的責任を問われる可能性もあります。
そのため、売却を検討し始めた段階で、最低限のルールを理解しておくことが、結果的に早期売却につながるといえます。
買い手に対して自殺に関する告知義務が生じる
自殺物件を売却する際は、物件内で自殺があった事実を買い手に告知する義務が生じます。自殺や他殺などによって人が亡くなったという事実は、買い手の契約判断に重大な影響を及ぼすためです。
以前は告知義務の基準が曖昧でしたが、現在は2021年に国土交通省が制定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」で明確に定められています。このガイドラインでは、人の死があった物件の告知義務の判断基準を以下のように定めています。
| 告知義務の有無 |
死因・状況 |
| 原則として告知は不要 |
・自然死(老衰・病死)
・日常生活の中での不慮の事故死
(食事中の誤嚥・階段からの転落など)
|
| 告知が必要 |
・自殺
・他殺
・火災による焼死
・特殊清掃を行った場合(死因にかかわらず)
・買い手から人の死に関わる事件や事故について尋ねられた場合
|
人の死があった物件でも、死因が自然死や日常生活の中の不慮の事故死によるものであれば、原則として告知は必要ありません。一方、自殺は特殊清掃の有無にかかわらず告知が必要と定められています。
もし、この告知義務を怠ったまま売却した場合、後から買主に事実が発覚すると、契約不適合責任を問われる可能性があります。契約不適合責任とは、契約内容に適合しない物件を引き渡した場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。
そのため、自殺物件を売却する際には、必ず自殺があった事実を買い手に告知したうえで手続きを進めなければなりません。
自殺物件を売却する場合は期間による告知義務の解消はない
自殺物件を売却する場合、自殺があった事実を告知する義務は時間の経過によって解消されることはありません。告知義務が生じる期間についても、国土交通省が制定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」で一定の基準が示されています。
| 取引形態 |
告知義務が生じる期間 |
| 賃貸 |
事案の発生から原則として3年 |
| 売買 |
期間の定めなし |
賃貸契約においては、自殺が発生した日から原則として3年で告知義務が解消されます。一方、売買契約においては明確な期限が定められていないため、売主は事実上半永久的に告知義務が課されることになります。
自殺からどれだけ時間が経過していても、売買である以上は告知義務が自動的に消えることはありません。「古いから大丈夫だろう」と自己判断せず、必ず自殺があった事実を前提に売却を進めることが、後々のトラブルを防ぐうえで重要です。
告知義務を怠った場合は契約不適合責任を負う
自殺物件を売却する際に告知義務を怠ると、前述したように買主から「契約不適合責任」を問われるリスクが伴います。不動産売買において、売主は物件が通常有しているべき品質を確保したうえで買主に引き渡す義務があります。
自殺があったという事実は、買い手に心理的な嫌悪感を与え、住み心地を損なう要因になるため、物件が通常有しているべき品質が欠けているものとみなされるのです。このような物件を売却する場合には、物件の欠陥や問題を買い手に伝え、それに了承してもらったうえで売買契約を締結しなければなりません。
実務の現場でも、「価格を下げているから告知しなくても問題ないと思った」「かなり昔の出来事なので伝える必要はないと思った」といった理由で告知を省略してしまい、売却後に買主から責任を追及されるケースが起きています。
もし、自殺があった事実を買い手に告知せずに引き渡してしまった場合、売買契約に適合しない物件を引き渡したとして、買い手から以下のような請求を受ける可能性があります。
特に売買では、告知義務の期間に明確な制限がないため、引き渡し後しばらく経ってから問題になるケースもあり得ます。
買取業者との取引であっても、告知義務が免除されるわけではありません。買取業者は基本的に契約不適合責任は免責したうえで買い取りますが、売主が認識していた事実を告げずに売却した場合、その部分についてまで責任が免責されるとは限らないのが実情です。
そのため、自殺物件を売却する際は、「伝えたら不利になるのでは」と考えて隠すのではなく、最初から自殺があった事実を正確に告知したうえで契約を結ぶことが、結果的に売主自身を守ることにつながります。
アパート・マンションの共用部分で自殺があった場合も告知義務の対象になる
自殺物件がアパートやマンションの場合は、共有部分であった自殺にも告知義務が生じる可能性があります。国土交通省が制定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、集合住宅の共用部分の告知義務について以下のように明記されています。
借主が日常生活において通常使用する必要があり、借主の住み心地の良さに影響を与えると考えられる集合住宅の共用部分は賃貸借取引の対象不動産と同様に扱う。
引用元 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
日常生活において通常使用する必要がある共有部分というのは、具体的に以下のような共有部分を指します。
- 共用の玄関
- 階段
- エレベーター
- 廊下
- ベランダ・バルコニー
- 駐車場・駐輪場
これらの共有部分を買い手が日常生活において使用せざるを得ない場合や、住み心地に大きな影響を与えると判断される場合は、自殺があった事実を告知する義務が生じます。
逆に、以下のような通常居住者が使用しない共有部分で発生した自殺については、原則として告知は不要です。
- 屋上(居住者に解放されていない場合)
- 管理事務室・休憩室
- 機械室・電気室・ボイラー室
更地にしても告知義務は消えない
自殺があった建物を解体して更地にしたとしても、原則として告知義務は消滅しません。実務の現場でも、「建物を壊してしまえば事故物件ではなくなると思っていた」という相談は少なくありませんが、建物を解体しても、過去に自殺があったという事実自体は消えないというのが基本的な考え方です。
そのため、自殺物件を更地にしてから売却する場合でも、買主には解体した建物内で自殺があった事実を告知する必要があります。事故物件のイメージを払拭したいという理由だけで解体してしまうと、以下のようなリスクが伴うため、安易な解体は避けましょう。
- 解体費用を売却価格にほとんど上乗せできず、最終的に手元に残る金額が少なくなる
- 「住宅用地の特例」が適用されなくなり、固定資産税が最大6倍まで跳ね上がる可能性がある
- 自殺物件を安く購入したい買い手のニーズを逃してしまう
- 再建築不可物件に該当する場合、解体すると建物が建てられないため、さらに売却が困難になる
相続した場合は売却する前に「相続登記」を行わなければならない
相続した自殺物件を売却する場合は、売却前に法務局で「相続登記」を行い、登記上の名義人を相続人に変更しておく必要があります。
相続登記とは?
相続した不動産の登記上の名義人を被相続人から相続人に変更するための手続きのこと
実務上、相続登記が完了していなくても、査定依頼や内覧対応、条件交渉といった売却活動自体を進めることは可能です。そのため、「買主が決まってから登記すればいい」と考える方も少なくありません。
しかし、決済・引き渡しの段階では、登記上の名義人と実際の売主が一致していなければ取引を完了できません。相続登記が間に合わず、期日に引き渡しが行えない場合、法的には売主の債務不履行にあたるため、違約金や損害賠償を請求される可能性があります。
買取業者との取引では、仲介に比べてスケジュール調整がしやすい傾向はありますが、それでも相続登記が未了のままでは決済に進めないという点は変わりません。トラブルを未然に防ぎ、売却手続きを確実に完了させるためにも、売却を検討し始めた段階で、相続登記の準備を並行して進めておくことが重要です。
令和6年4月1日から相続登記は義務化された
相続登記は、令和6年4月1日に改正不動産登記法が施行されて以降、法律で義務化されました。この義務化は、施行日よりも前に相続が開始していた未登記の不動産も対象となっています。
正当な理由なく申請期限までに相続登記を行わなかった場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。相続登記の申請期限は、相続の開始時期や遺産分割協議の有無によって異なります。
| 状況 |
申請期限 |
| 令和6年4月1日以降に相続が開始した場合 |
相続で不動産の所有権を取得することを知った日から3年以内 |
| 令和6年3月31日以前に相続が開始していた場合 |
施行日(令和6年4月1日)もしくは相続で不動産の所有権を取得することを知った日のいずれか遅い日から3年以内 |
| 遺産分割協議で取得した場合 |
遺産分割が成立した日から3年以内 |
現場では、相続登記が義務化されたことを知らず、何年も未登記のまま放置していたというケースは少なくありません。実際に買取相談に来られた方の中にも、売却を進めるために相続登記を行ったところ、申請期限を過ぎていたとして過料を科されたという事例がありました。
なお、遺産分割協議が難航し、申請期限までに相続登記が行えない場合は、法務局で「相続人申告登記」を申請しましょう。
相続人申告登記とは?
自らが登記簿上の名義人の相続人である旨を申し出る制度のこと
相続人申告登記を行った相続人は、相続登記の申請義務を履行したものとみなされるため、10万円の過料の対象外となります。ただし、これはあくまで一時的な救済措置であるため、遺産分割協議が成立した際には、改めて正式な相続登記を行う必要があります。
被相続人名義のままでは売却できない
相続登記が完了していなければ、相続した不動産の登記上の名義人は被相続人のままです。登記上の名義人が被相続人のままでは、不動産を売却する際に以下の問題が生じるため、実質的に売却は不可能です。
買取業者が相手であっても、この点は変わりません。実際に相談を受ける中でも、「相続人全員が売却に同意しているから問題ないと思っていた」「買取業者なら名義がそのままでも対応してくれると思っていた」というケースは少なくありません。
しかし、不動産取引では登記上の名義人=正式な所有者であることが前提となるため、名義が被相続人のままでは次のような問題が生じます。
- 相続人が正式な所有者であることを第三者に証明できないため、買い手や金融機関が取引に応じてくれない
- 所有権移転登記は所有権が移転した順番通りに行うのがルールであるため、未登記のままだと相続人は所有権移転登記が行えない
仮に仲介で売買契約自体を締結できたとしても、決済・引き渡しが行えず、最終的に契約を解除せざるを得なくなるリスクがあります。場合によっては、売主の準備不足として、違約金や損害賠償を請求される可能性も否定できません。
買取業者との取引では、「現金化が早い」「柔軟に対応してもらえる」というイメージを持たれがちですが、名義の問題だけは例外なくクリアする必要があります。これは法務局での登記手続きが関係するため、当事者間の合意だけでは解決できないからです。
なお、相続登記には戸籍謄本の収集や遺産分割協議書の作成などに一定の時間を要するため、早めに準備を進めることが大切です。
相続放棄をするなら「3ヶ月以内」に判断し、売却活動はしないようにする
被相続人が所有していた自殺物件の相続放棄を検討している場合は、「申述の期限を守ること」「売却などの処分行為を行わないこと」を徹底して守りましょう。相続放棄をするためには、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で申述する必要があります。
この申述期限を過ぎてしまうと、単純承認を承認したとみなされるため、原則として相続放棄は選択できなくなります。また、注意が必要なのは期限内であっても、相続財産を処分してしまうと相続放棄ができなくなる点です。具体的には、以下のような行為が「処分行為」と判断される可能性があります。
- 不動産の売却や賃貸
- 建物の解体
- 家財道具の処分・売却
- 相続財産を使って借金を返済する行為
単純承認とみなされると、借金などのマイナスの財産や事故物件を含むすべての財産を引き継ぐことになってしまいます。そのため、殺物件の相続放棄を検討している場合は3ヶ月以内に結論を下し、かつ自殺物件の売却手続きや物件内の遺品整理は避けるべきです。
自殺物件を「買取」か「仲介」か?売却した場合の比較シミュレーション
自殺物件を売却する方法は「買取」と「仲介」の2つありますが、どちらの方法を選択するのかによって売却価格や費用、売却期間などが大きく異なります。
ここからは、自殺物件を買取で売却した場合と仲介で売却した場合では、それぞれ売却価格や手元に残るお金はいくらになるのか、具体的にシミュレーションしていきましょう。今回のシミュレーションでは、以下の自殺物件の売却を想定します。
【前提条件】
| 項目 |
前提条件 |
| 建物の価格 |
3,000万円 |
| 売却価格 |
買取:仲介相場の70%で計算
仲介:通常相場の70%で計算
|
| 仲介手数料 |
売却価格×3%+6万円+消費税(売買における仲介手数料の上限) |
では、この自殺物件を買取・仲介で売却した場合の、売却価格や費用、手元に残るお金のシミュレーション結果を見てみましょう。
【売却価格の比較】
| 項目 |
買取で売却した場合 |
仲介で売却した場合 |
| 売却価格 |
1,470万円 |
2,100万円 |
| 仲介手数料 |
0円 |
約75万9,000円 |
| 特殊清掃費用 |
0円(業者負担) |
約5~50万円(売主負担) |
| リフォーム費用 |
0円(現状買取) |
約10~30万円(床を交換する場合) |
| 手元に残るお金 |
1,470万円 |
約1,944万円~2,009万円 |
金銭面を見れば、買取よりも仲介の方が圧倒的に優位であることが分かります。仲介では仲介手数料や特殊清掃費用、リフォーム費用を負担しなければなりませんが、それらを売却価格から差し引いた手取り金額を見ても、買取より500万円以上多く手元に残る計算になります。
ただし、これはあくまで想定通りに仲介で成約した場合の話であり、実務では必ずしもこの通りに進むとは限りません。
特に注意したいのが、リフォームや原状回復にかかる費用です。自殺物件を仲介で売却する場合、室内の状態や事故内容によっては、簡易的な清掃だけでは済まず、床や壁の張り替え、臭い対策など、数十万円、場合によっては100万円以上の費用がかかるケースもあります。
次に、売却期間や契約不適合責任などその他の項目を比較した表を見てみましょう。
【その他の項目の比較】
| 項目 |
買取で売却した場合 |
仲介で売却した場合 |
| 売却期間 |
数日〜1ヶ月程度 |
半年~数年(売れ残りのリスクもある) |
| 契約不適合責任 |
免責になるケースが多い |
売主が負う |
| 周囲への知られやすさ |
基本的に知られない |
広告活動や内覧対応を通じて知られる可能性がある |
買取なら、現状のまま引き渡しが可能なため、特殊清掃やリフォームを売主側で行う必要はありません。室内の残置物がある状態でも、そのまま引き渡せるため、売却に向けた準備の手間や追加費用を最小限に抑えられます。
実際に、「仲介で売れると思ってリフォームを進めたが、想定以上に費用がかかり、結果的に手元に残る金額は買取より少なくなるため買取に切り替えた」という例もありました。
また、仲介の場合は「いつ売れるか分からない」「周囲に売却が知られるかもしれない」「契約不適合責任を負うかもしれない」といったリスクが常に付きまといます。一方、買取は仲介と比較して手元に残るお金は少ないものの、これらのリスクを負わずに売却手続きをスピーディーに進められます。
不動産の状況や、売却で重視する点によって最適な売却方法が異なるため、自分の状況に合った売却方法を選択することが大切です。
まずは仲介で買い手を探し、見つからない場合は「訳あり不動産専門の買取業者」への売却を検討
自殺物件の売却方法を検討する際は、まず仲介で買い手を探し、どうしても見つからない場合に訳あり不動産専門の買取業者への売却を検討するのが基本の流れです。自殺物件は一般の買い手から敬遠されやすく、仲介での売却は難航しやすいものの、立地や築年数などの条件次第では一般の買い手が現れる可能性も十分にあります。
仲介は買取よりも高値での売却が期待できるため、仲介で売却できる見込みがある場合は、まず利益を重視して仲介での売却を試みることをおすすめします。立地や築年数などの条件が悪く、仲介で売却できる見込みがない場合や、仲介を試みても買い手が現れなかった場合は、最終手段として訳あり不動産専門の買取業者への売却を検討してみましょう。
買取業者に売却する場合は、以下のようなメリットがあります。
- 一般的な仲介で買い手がつかない物件でも買い取ってもらえる可能性がある
- 最短数日〜1ヶ月で現金化できる可能性がある
- 仲介手数料がかからない
- 「契約不適合責任」が免責になるケースが多い
- 特殊清掃・リフォーム不要でそのまま買い取ってもらえる可能性が高い
- 周囲に知られずに売却できる
一般的な仲介で買い手がつかない物件でも買い取ってもらえる可能性がある
訳あり不動産専門の買取業者であれば、一般的な仲介では買い手がつかないような自殺物件でも買い取れる可能性があります。実務の現場でも、「仲介では長期間売れなかった」「複数の不動産会社に断られた」といった物件を、最終的に私たちが買い取ってきたケースは少なくありません。
専門の買取業者は、買い取った自殺物件にリフォームやリノベーションなどを施して資産価値を高め、第三者に高値で転売したり活用したりすることで利益をあげています。
専門業者としてこれまで培ってきた専門知識やノウハウ、独自の販売ルートなどを活かし、自殺物件を市場に流通可能な魅力的な商品に再生できるという強みがあるため、一般の買い手や不動産会社から敬遠されがちな事故物件でも積極的な買取を実現できるのです。
買い手がつく見込みがある場合はまず仲介での売却をおすすめしますが、買い手がつく見込みがない場合は最初から買取を検討するのも選択肢の1つです。仲介でも売れる可能性がある物件と買取を検討すべき物件の特徴は以下の通りです。
【仲介でも売れる可能性がある物件】
- 立地が良い(駅近、都市部などの需要が高いエリア)
- 築年数が浅く、建物の状態が良い
- 自殺から時間が経過しており、心理的抵抗が薄れている
【買取を検討すべき物件】
- 立地が悪く、もともと需要が低いエリア
- 築年数が古く、建物の老朽化が進んでいる
- 室内汚損が激しく、特殊清掃やリフォームの負担が大きい
- 早期に現金化したい事情がある
買取業者の立場から見ても、すべての自殺物件が買取向きというわけではありません。仲介で十分に売れる可能性がある物件を、最初から買取に出してしまうと、結果的に手取りが少なくなることもあります。
大切なのは、「仲介でどこまで現実的か」「どの時点で買取に切り替えるべきか」を冷静に見極めることです。ご自身の物件がどのタイプに近いのかを把握したうえで、状況に合った売却方法を選択しましょう。
最短数日〜1ヶ月で現金化できる可能性がある
買取業者に売却すれば、最短数日~1ヶ月程度で現金化できる可能性があります。実務の現場でも、条件が整っている物件であれば、査定から契約、決済まで数日間で進むケースも珍しくありません。
仲介の場合は、まず購入希望者を探す必要があるため、買い手が見つかるまでに半年以上かかることも多く、最終的に成約に至らないリスクもあります。特に自殺物件は、検討の対象から外れてしまうことも多く、売却期間が読みづらいのが実情です。
一方、買取の場合は買取業者が買い手となるため、仲介のように買い手を探す必要がありません。広告への掲載や問い合わせ・内覧対応などの売却活動にかかる手間が省けるため、その分売却までの手続きも迅速に進められます。早期売却を希望する場合は、買取業者への売却が有力な選択肢となります。
仲介手数料がかからない
買取業者に自殺物件を売却する場合、仲介手数料は一切発生しません。これは、買取では「売主と買取業者が直接売買契約を結ぶ」ため、不動産会社による仲介が介在しないからです。
一方、仲介で売却する場合は、不動産会社に買主探しを依頼することになるため、売買が成立した際に成功報酬として仲介手数料を支払う必要があります。仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法によって次のように定められています。
| 売買価格(税抜) |
仲介手数料の上限 |
| 400万円超の場合 |
(税抜の売買価格×3%+6万円)+消費税 |
| 200万円超、400万円以下の場合 |
(税抜の売買価格×4%+2万円)+消費税 |
| 200万円以下の場合 |
(税抜の売買価格×5%)+消費税 |
たとえば、仲介で3,000万円(税抜)の不動産を売却する場合、売買が成立した際に支払う仲介手数料の上限は105.6万円となります。
(3,000万円×3%+6万円)×1.1(消費税)=105.6万円
自殺物件の場合、この仲介手数料に加えて、特殊清掃費用やリフォーム費用を売主が負担するケースも多く、売却にかかる諸費用が想定以上に膨らむことがあります。結果として、「売却価格は高かったものの、最終的に手元に残った金額はそれほど多くなかった」というケースも実務では珍しくありません。
買取であれば、こうした仲介手数料が発生しないため、売却時にかかる費用をあらかじめ読みやすいというメリットがあります。
売却価格だけを見ると仲介が有利に見えても、最終的にいくら手元に残るのかという視点で比較すると、買取のほうが合理的になるケースもあるため、費用面も含めて慎重に検討することが重要です。
「契約不適合責任」が免責になるケースが多い
買取業者に売却する場合、「契約不適合責任」が免責となるケースが多いです。前述のとおり、通常は売買契約時に買主に告知していなかった瑕疵が後から見つかった場合、売主は契約不適合責任を負わなければなりません。
特に築年数が古い物件や事故物件では、売主自身も把握していなかった雨漏りや構造上の不具合、設備の故障などが後から見つかることも珍しくありません。そのため、仲介での売却では、売却後も契約解除や損害賠償を請求されるリスクを完全に排除するのが難しいのが実情です。
一方、買取業者に売却する場合は、「後から欠陥や不具合が見つかっても、売主は責任を負わない」という特約を付けて売買契約を結ぶケースが多いです。買取業者は不動産のプロであり、隠れた瑕疵が見つかった場合のコストやリスクも承知したうえで買い取ることが可能だからです。
自殺物件の売却が完了した時点で、後から売買契約の解除や損害賠償などを請求されるリスクから解放されるのは、売主にとって大きな安心材料となります。ただし、免責=すべて隠してよい、という意味ではありません。
すでに売主が認識している瑕疵や、取引判断に重大な影響を与える重要事項については、買取業者に対しても告知義務が生じます。
もし、自殺があった事実をあえて告げずに売却した場合、その心理的瑕疵については免責とならないため、後々買取業者から損害賠償などを請求される恐れがあります。契約不適合責任が免責となるケースでも、自殺があった事実やその他の重要事項については、買取業者へ正直に告知しましょう。
特殊清掃・リフォーム不要でそのまま買い取ってもらえる可能性が高い
専門の買取業者であれば、基本的には現状のままで買い取りが可能です。仲介で自殺物件を売却する場合、シミや臭いなどが残ったままでは買い手に心理的な嫌悪感を与えてしまうため、そのままの状態で売却するのは困難です。
そのため、仲介では売主が自己負担で特殊清掃やリフォームなどを行ってから売却するのが基本です。
一方、専門の買取業者に買い取ってもらう場合、基本的に売主は特殊清掃やリフォームなどを行う必要はありません。専門の買取業者は、物件の資産価値を高めるため、特殊清掃やリフォームを行うことを前提として買取を行っています。
これまで培ってきた再生ノウハウや、特殊清掃業者やリフォーム業者との提携ルートを活かし、安価で効率的に作業を行えるケースも多いため、現状のままでの買取が可能となっています。特殊清掃の費用は汚染状況によって異なりますが、数万~数十万円程度かかります。
また、売主側で清掃やリフォームを行っても、必ずしも売却価格に見合う効果が得られるとは限りません。まずは現状のまま査定を受け、そのうえで必要な対応を判断することが、結果的に無駄な出費を防ぐことにつながります。
周囲に知られずに売却できる
買取業者への売却には、周囲に知られずに売却できるメリットもあります。自殺物件の場合、「近隣に事情を知られたくない」「余計な詮索を受けたくない」と考える方も多く、この点を重視して買取を選ばれるケースは少なくありません。
仲介では購入希望者を募るため、インターネットやチラシなどに物件情報が掲載されたり、購入希望者が実際に物件を見学しに来たりします。
そのため、物件内の写真や不特定多数の人が出入りしている様子から、周囲の人に物件を売りに出している事実やその理由を察知されてしまうリスクがあります。一方、買取では買取業者が買主となるため、仲介のような広告掲載や内覧対応は一切ありません。
査定のために買取業者が物件に訪れるケースもありますが、車両や身なりに配慮して買取業者であると悟られないように細心の注意を払ってくれるため、隣住民や知人にバレるリスクを最小限に抑えられます。
物件を売りに出している事実やその理由を周囲に知られたくない人からすれば、プライバシーを守りつつ売却手続きを進められる買取は最適な選択肢となります。
自殺物件を買取業者へ売却する際の流れ
自殺物件を買取業者に売却する際は、以下の流れで手続きを進めていきます。仲介のように買主探しや内覧対応を繰り返す工程がない分、スケジュールを立てやすいのが特徴です。
- 【前提】複数の買取業者に査定を依頼する
- 現地調査・査定結果の提示を受ける
- 買取価格・条件の交渉
- 売買契約の締結
【前提】複数の買取業者に査定を依頼する
買取業者への売却を検討しているのであれば、好条件で信頼できる買取業者を見つけるためにも、まずは複数の買取業者に査定を依頼しましょう。不動産の査定額は、買取業者によって異なります。
特に自殺物件のような特殊な事情を抱えている物件は、専門的な知識やノウハウがないと適正に評価するのが難しいため、査定額に数百万円ほど差が生じることも珍しくありません。
1社の査定のみで判断してしまうと、提示された査定額が適正であるか判断できないため、自殺物件を適正価格よりも安く買い叩かれてしまうリスクが高まります。複数の買取業者に査定を依頼すれば、大まかな相場感や高値での買取に応じてくれる業者を把握できるため、不当に安い価格での買取を未然に防げます。
また、担当者の対応やサービスの内容など、査定額以外の部分も比較できるため、信頼できる優良な買取業者を見極めやすくなります。買取業者を探す際には、最低でも3社程度に査定を依頼し、価格や条件を比較したうえで慎重に判断するようにしましょう。
現地調査・査定結果の提示を受ける
査定を依頼した後は、買取業者による訪問査定を経て、具体的な査定結果の提示を受けます。訪問査定では、買取業者が実際に現地に訪れ、物件の状態や土地の状況、周辺環境、管理状況などを細かく調査し、その結果を踏まえて買取価格の査定額が算出されます。
事故物件専門の買取業者であれば、通常の査定項目に加えて事故内容や瑕疵の程度、清掃の有無など、事故物件ならではの事情も考慮したうえで算出するため、より現実的な売却価格を把握できます。
訪問査定も無料で対応してうるケースが多いため、より精度の高い査定結果を受けるためにも、積極的に訪問査定を活用しましょう。
買取価格・条件の交渉
買取業者から提示された査定結果に納得がいかない場合は、買取価格や条件について交渉することも可能です。複数の買取業者に査定を依頼していれば、他社の査定額を交渉材料として活用できます。
「他社よりも高い価格を提示してくれるのであれば、御社との契約を検討したい」といった意思を示すことで、買取価格の上乗せに応じてもらえる可能性があります。
ただし、自殺物件の買取価格は、事故内容や想定される清掃・改修コスト、再販時のリスクなどを織り込んだうえで算出されています。
そのため、大幅な価格アップが常に可能というわけではない点は理解しておく必要があります。無理な値上げ交渉を行うよりも、現実的な範囲で条件をすり合わせることが重要です。
買取業者との交渉の際には、買取価格だけでなく、引き渡し時期や契約不適合責任の免責などの条件面も確認してみましょう。「最終的にどれだけ手間やリスクを減らせるか」という視点で交渉を進めることで、結果的に満足度の高い取引につながりやすくなります。
売買契約の締結
買取業者と買取価格や条件について合意できた後は、売買契約の締結に進みます。売買契約を締結する際には、主に以下の書類をあらかじめ用意しておく必要があります。
| 必要書類 |
役割・注意点 |
登記済権利証 または登記識別情報 |
物件の正式な所有者であることを公的に証明するために必要 |
| 固定資産税納付通知書 |
固定資産税を清算するために必要 |
| 境界確認書 |
土地の境界が確定していることを証明するために必要(戸建ての場合) |
| 印鑑証明書 |
発行から3ヶ月以内のものが必要
実印とセットで用意すること
|
| 本人確認書類 |
原則として顔写真付きで有効期限内のものが必要
(運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど)
|
| 住民票 |
登記簿上の住所と現住所が異なる場合に必要 |
契約書の読み合わせでは、記載の契約内容(売買価格、決済・引き渡し日、公租公課の清算日、契約不適合責任の免責条項など)に誤りがないかしっかりと確認してください。
不明点があればその場で必ず質問し、納得が行くまで説明を受けましょう。契約内容に問題がなければ、買主と売主双方が署名・捺印を行います。これで売買契約が締結され、契約内容に法的効力が生じます。
決済・引き渡し
売買契約を締結した後は、契約で定めた日程で決済と物件の引き渡しを行います。買取業者への売却では、現状有姿での引き渡しが可能なケースが多いため、引き渡し準備の負担も少ないです。当日は以下の流れで手続きが進んでいきます。
- 本人確認や必要書類の確認
- 買取業者から売買代金を受け取る
- 固定資産税などの清算
- 物件の鍵を買取業者に引き渡す
- 法務局で所有権移転登記を申請
所有権移転登記が完了すれば、物件の所有権が買取業者に移転し、売却手続きは正式に完了となります。
自殺物件の買取価格はケースごとに大きく異なる
自殺物件の売却価格は、個々の物件の状況によって大きく異なります。自殺物件の一般的な相場は、あくまで過去の事例から導き出された目安に過ぎず、実際の売却価格は物件の個別的な要素が考慮されたうえで算出されます。
実際の売却価格が一般的な相場と剥離してしまうケースも珍しくないため、相場通りに売却できるとは限りません。売却価格に影響を与える主な要素としては、以下が挙げられます。
- 自殺という死因や不動産の状況
- 物件の立地や周辺環境
- 建物の築年数や管理状態、室内の汚損状況
これらの要素がどの程度マイナス要因として評価されるかは、物件ごとに異なります
より正確な売却価格を把握したい場合は、複数の買取業者に査定を依頼し、現地調査を受けたうえで査定結果を出してもらうことをおすすめします。
自殺物件の買取価格に影響を与える要素
自殺物件の売却価格に影響を与える要素としては、主に以下の2つが挙げられます。
- 死因(自殺・他殺・孤独死など)
- 物件の立地や建物の状態
実務の現場でも、この2点はほぼ必ず査定時に重点的に確認されます。なぜなら、どちらも買い手の心理的抵抗や再販のしやすさに直結する要素であり、買取業者が最終的な価格を判断するうえでの基礎になるからです。
要素①:死因(自殺・他殺・孤独死など)
事故物件の売却価格は、物件内で亡くなった人の死因によって大きく変動します。これは、死因によって買い手に与える心理的抵抗の度合いが異なるためです。死因別の仲介における売却価格の下落幅の目安は以下の通りです。
| 死因 |
売却価格の下落幅 |
| 孤独死や病死 |
10〜20%程度 |
| 自殺 |
10〜30%程度 |
| 他殺 |
30〜50%程度 |
孤独死や病死は事件性がなく、告知義務が生じないケースもあるため、事故物件の中では比較的下落幅が小さくなる傾向があります。一方、自殺は告知義務が生じ、買い手に与える心理的抵抗も強くなりやすいため、価格への影響は孤独死・病死より大きくなるのが基本です。
さらに、他殺の場合は事件性や社会的影響が重く受け止められやすく、最も大きな下落要因となります。ただし、これはあくまで過去の事例に基づいて導き出された目安であるため、実際の売却価格は個々の状況によって異なります。
孤独死や病死があった事故物件:10〜20%程度下がる
孤独死や病死があった事故物件の売却価格は、通常物件の市場価格よりも10~20%程度下がります。事件性のない孤独死や病死は、自殺や他殺と比較すると買い手に与える心理的な抵抗が小さいため、人の死があった事故物件の中でも売却価格の下落幅が小さい傾向にあります。
死因が自然死(老衰や病死など)や日常生活の中での不慮の事故死(食事中の誤嚥や階段からの転落など)であれば、原則として告知義務は生じないため、一般的な中古物件と同様に市場価格とほぼ同等の価格で売却できるケースもあります。
ただし、死因が自然死や不慮の事故死であっても、特殊清掃を行った場合には告知義務が生じます。告知義務が発生すると、心理的瑕疵として評価されるため、売却価格の下落は避けられなくなるでしょう。
自殺があった物件:10〜30%程度下がる
自殺があった物件の売却価格は、通常物件の市場価格よりも10~30%程度下がります。自殺は告知義務が生じる死因であり、孤独死や病死以上に強い心理的抵抗を買い手に与えやすいです。そのため、孤独死や病死があった事故物件よりも売却価格は下がるのが基本です。
ただし、下落幅は一律ではなく、自殺の状況や物件への影響の度合いによって大きく変動します。実務上の査定では、主に以下の点が重視されます。
- 自殺の方法
- 遺体が発見されるまでの期間
- 室内の汚損や修復の必要性
- 建物全体の状態や立地条件
たとえば、リストカットのように物件への物理的な影響が比較的少ない方法で、かつ遺体の発見が早い場合は、売却価格の下落幅は小さくなる傾向にあります。
逆に、遺体が長期間放置された場合や特殊清掃を行った場合は、心理的瑕疵だけでなく物理的瑕疵も加味されるため、売却価格の下落幅も大きくなる傾向にあります。
このように、自殺物件であっても、「自殺があった」という事実だけで価格が決まるわけではなく、個別の状況を総合的に判断したうえで評価されるという点を理解しておくことが重要です。
他殺があった物件:30〜50%程度下がる
他殺があった物件の売却価格は、通常物件の市場価格よりも30~50%程度下がります。他殺は事故物件の中でも心理的抵抗の度合いが最も強く、大半の人が強い嫌悪感や恐怖感を覚えるためです。売却価格の下落幅は、事件の残虐性や社会的な影響などによって変動します。
たとえば、ニュースで軽く取り上げられた程度の事案であれば、下落幅は30%程度に留まるケースも少なくありません。一方で、残虐性が高い事件や、テレビ・新聞・インターネットなどで繰り返し報道された事案の場合は、事件の印象が長期間残りやすく、一般の買い手がほぼ現れないことも珍しくありません。
このようなケースでは、売却価格が50%以上下落することもあり、仲介での売却は事実上困難となることがあります。
場合によっては、事件から年数が経過しても心理的影響が風化せず、価格を大きく下げても成約に至らないこともあります。そのため、他殺があった物件については、仲介による売却に固執せず、専門の買取業者への売却を早期に検討することが現実的な選択とるケースも多いです
要素②:物件の立地や建物の状態
自殺物件の売却価格は死因だけでなく、通常物件と同様に立地や建物の状態によっても大きく左右されます。立地の良く需要が高いエリアであれば、自殺物件であっても比較的買い手が見つかりやすく、大幅な値下げにならないケースもあります。
一方で、築年数が古く、立地条件にも恵まれていない物件の場合は、通常物件であっても需要が低いのが実情です。こうした物件に自殺という心理的瑕疵が加わると、検討対象から外されやすくなり、仲介では買い手がつかず売却自体が長期化するケースも見受けられます。
このように、売却価格を左右するのは「自殺があったかどうか」だけではありません。立地や建物の状態といった物件本来の条件と、心理的瑕疵の影響を掛け合わせて総合的に判断されるという点を理解しておくことが重要です。
立地の良い物件なら自殺物件でも「大幅な値下げ」にならないケースもある
駅近や都市部など、もともと需要が高いエリアであれば、自殺物件であっても大幅な値下げにならないケースがあります。不動産市場では、心理的瑕疵よりも利便性の高さを重視する買い手が一定数存在します。
立地は買い手の努力では改善できない要素であり、特に利便性の高いエリアでは「多少のマイナス要因があっても立地を優先したい」というニーズが根強くあるのです。そのため、立地条件に優れた物件であれば、心理的瑕疵があっても検討対象から完全に外されにくく、比較的早期に買い手が見つかる傾向があります。
実際の取引でも、需要の高いエリアでは価格調整を最小限に抑えられ、売却価格の下落幅が数%程度にとどまるケースも珍しくありません。このように、立地の良さは自殺物件においても価格を下支えする重要な要素となります。
築年数が古く立地も悪い場合は売却が難しいケースもある
築年数が経過しており、立地条件にも恵まれていない場合は、通常物件であったとしても売却が難しい傾向にあります。なぜなら、築古で立地の悪い物件は以下のように暮らしに直結する課題や、資金調達上の制約も多いためです。
- 生活の利便性が悪い
- 建物のメンテナンスに手間や費用がかかる
- 資産価値が低い
- 住宅ローンの審査が通らない可能性がある
一般の買い手の多くは「居住目的」で購入し、住宅ローンを利用するため、こうした条件の物件は最初から検討対象外とされやすいのが実情です。これに自殺という心理的瑕疵が加わることで、需要はさらに限定的になります。
こういった物件を好んで購入しようと思う一般の買い手はほぼいないため、仲介での売却が事実上不可能なケースも珍しくありません。
自殺物件の買取業者を選ぶポイント
自殺物件は通常物件よりも手続きが複雑で、心理的瑕疵に伴うトラブルのリスクが高いため、取り扱いには専門的な知識や豊富な経験が必要になります。
そのため、自殺物件の買取業者を選ぶ際には、担当者の対応や口コミの評価などの基本的な要素だけでなく、専門性や信頼性も重視したうえで慎重に判断することが大切です。買取業者を選ぶ際に重視すべきポイントとしては、以下の5つが挙げられます。
- 事故物件・訳あり物件の買取実績が豊富か
- 弁護士・税理士など士業との連携があるか
- 買取を希望する物件のエリアに対応しているか
- 不動産の査定額について根拠を示してくれるか
- 過去に行政処分歴がないか
事故物件・訳あり物件の買取実績が豊富か
自殺物件の買取業者を探す際には、まず事故物件・訳あり物件の買取実績を確認しましょう。一般的な不動産会社は、通常物件の売買を主な業務としているため、事故物件の取り扱い経験が乏しいケースが少なくありません。その結果、以下のような対応になることもあります。
- 心理的瑕疵を過度にマイナス評価してしまう
- 再販・活用のビジョンが見えず、極端に低い査定額になる
- そもそも買取自体を断られる
一方、買取実績が豊富な買取業者は、コストやリスクを抑えつつ自殺物件を収益化するための専門知識やノウハウが豊富にあります。自殺物件も物件本来の価値を見極めたうえで適正に評価できるため、一般的な不動産会社よりも高値での買取に応じやすいです。
自殺物件ならではの複雑な問題や手続きにもスムーズに対応できるため、売却手続きも迅速に進められます。
弁護士・税理士など士業との連携があるか
買取業者を探す際には、弁護士や税理士など士業との連携の有無についても忘れずに確認しましょう。自殺物件の売却では、複雑な手続きや心理的瑕疵に伴うトラブルのリスクが生じやすく、法律や税務の専門知識が必要となるケースも多くあります。
弁護士・税理士・司法書士などの士業と連携している買取業者に依頼すれば、複雑な手続きやトラブルの対応もワンストップでサポートしてもらえるため、精神的な負担を抑えつつ、安心して取引を進められます。
士業との連携がない業者の場合、法的な手続きや書類の準備など、売主側に負担が集中してしまうケースも少なくありません。
特に相続した自殺物件をスムーズに売却したい場合や、トラブルを未然に防ぎたい場合は、士業と連携している買取業者に依頼するのがおすすめです。
買取を希望する物件のエリアに対応しているか
買取業者を探す際には、買取を希望する物件のエリアの対応状況についてもチェックしておきましょう。対応可能なエリアは、買取業者によって異なります。全国対応の業者もあれば、特定のエリアのみ対応している業者もあるため、必ず買取に対応してもらえるとは限りません。
特に地方にある自殺物件は、都市部と比べて再販や活用の選択肢が限られるため、対応可能な買取業者の数自体が少なくなる傾向です。エリアに不慣れな業者に依頼してしまうと、立地特性や市場性を正しく評価できず、本来よりも低い査定額になることもあります。
そのエリアの市場や需要を理解したうえで取引を行っている買取業者であれば、物件の特性を踏まえた現実的な価格提示が期待できるので、スムーズな売却につながりやすくなるでしょう。
不動産の査定額について根拠を示してくれるか
自殺物件を買取業者に売却する際は、不動産の査定額の根拠を明確に示してくれる買取業者に依頼するのが賢明です。
「なぜこの価格になったのか」「査定ではどういった要素が考慮されたのか」について明確に説明できるのは、専門的な知識やノウハウに基づいて適正に評価を行っている証拠です。売主の事情や利益を尊重しようとする誠実さの証でもあります。
こうした買取業者に依頼すれば、心理的瑕疵というデリケートな問題を抱えた自殺物件でも、最後まで安心して取引を任せられるでしょう。
一方、査定額だけ提示して根拠を示さない買取業者や、質問しても言葉を濁すような買取業者は、適正な評価に欠かせない知識やノウハウが不足していたり、自社の利益を最優先にして安く買い叩こうとしたりする傾向があります。
査定での不透明な対応は後々のトラブルを招く恐れがあるため、そうした買取業者への依頼は控えるべきです。
過去に行政処分歴がないか
買取業者を選ぶ際は、過去の行政処分歴がないか確認しておくことも重要です。行政処分を受けているということは、過去に以下のような、業務において何らかの問題行為があったことを示しています。
もちろん、行政処分の中には書類不備などの軽微な事務ミスによるものもあり、処分歴がある=即悪質業者と断定できるわけではありません。ただし、少なくともその時点で法令遵守の体制が十分に整っていなかったのは事実であり、業者の信頼性を判断するうえで重要な材料になります。
特に、業務停止以上の重い処分を受けている買取業者への依頼は避けるべきです。こうした買取業者は、社内体制や法令遵守の意識に根本的な問題を抱えているケースが多く、同様のトラブルに巻き込まれるリスクが拭えないためです。
買取業者の過去の行政処分歴は、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で検索できます。このサイトでは、過去5年間に行政処分を受けた宅地建物取引業者の処分内容、処分理由、所在地などを確認できます。
トラブルを未然に防ぐためにも、過去の行政処分歴も確認したうえで信頼できる買取業者か慎重に判断するようにしましょう。
自殺物件の買取事例
ここからは、自殺物件の買取事例を3つご紹介します。なお、ここで紹介する事例は、依頼者の個人情報が特定されないよう、当社が実際に対応した案件の一部内容を編集・加工したものになります。
共用部での飛び降り自殺があったマンションの買取
| 建物の種類 |
マンション |
| 場所 |
東京都足立区 |
| 買取価格 |
1,300万円 |
こちらは、東京都足立区のマンション共用部において飛び降り自殺が発生し、事故物件となってしまったことで当社に買取の依頼があった事例です。売主が早期の売却を希望していたため、スピード感をもって物件調査を行いました。
事故物件としてのマイナス要因は存在するものの、立地条件や物件本来の価値を適正に評価した結果、売主の希望額を上回る1,300万円で買取が成立しました。
居住者が室内で自殺した築浅戸建ての買取
| 建物の種類 |
戸建て |
| 場所 |
埼玉県さいたま市 |
| 買取価格 |
2,950万円 |
こちらは、同業の不動産仲介業者により、過去に取引した顧客の親族が自殺を図った物件について、自社での取り扱いが困難であるとして当社が相談を受けた事例です。
築7年の築浅物件で建物自体のポテンシャルは極めて高いものの、他社の査定では事故物件を理由に大幅な減額提示がなされていました。当社において改めて立地条件や建物の状態を適正に評価した結果、他社の査定額を上回る2,950万円で買取が成立しました。
借金苦による自殺が発生した残置物多数の戸建ての買取
| 建物の種類 |
戸建て |
| 場所 |
埼玉県吉川市 |
| 買取価格 |
120万円 |
こちらは、被相続人が借金苦を理由に室内で自殺し、相続人である実子が実家の残置物や債務の処理に困っているとのことで当社が相談を受けた事例です。
実家は築40年経過しており、室内には家財道具が放置されている状態でしたが、自社にて現地調査を即時実施しました。残置物の撤去処分を自社で引き受けることを条件に、現状有姿のまま120万円で買取が成立しました。
過去の判例からみる自殺物件の売却におけるトラブル事例
自殺物件の売却では、告知義務や契約不適合責任をめぐってトラブルに発展するケースも少なくありません。実際に、売主と買主の認識の違いや、契約内容の不備が原因となり、裁判に発展した事例も数多く存在します。
ここからは、自殺物件の売却に関して実際に裁判所の判断が示された過去の判例を2つご紹介します。
- 建物解体により「嫌悪すべき対象が特定できない」として損害賠償請求が棄却された事例
- 「売主は責任を負わない」と特約を結んだが損害賠償請求された事例
あくまで過去の事例の一部ですが、自殺物件を売却する際の参考にしてみましょう。
建物解体により「嫌悪すべき対象が特定できない」として損害賠償請求が棄却された事例
こちらは、建物内で発生した自殺は、建物の解体によって「嫌悪すべき対象が特定できない」として、売主の告知義務違反を理由とした損害賠償請求が棄却された事例です。
土地付中古住宅を、取り壊して新築分譲住宅を建設する目的で購入した買主業者が、建物を取り壊した後、同建物内で2年前に売主の母親が首吊り自殺をしたことを知って、契約を解除し、損害賠償を求めた事案において、嫌悪すべき心理的欠陥の対象がもはや特定できない一空間内のものに変容しているから、隠れたる瑕疵に該当しないとして、請求を棄却した事例引用元 RETIO「RETIO判例検索システム H11.2.18大阪地裁」
裁判所は、解体済みの建物内であった自殺は、本来であれば心理的瑕疵に該当し得るものの、本件では「買主の目的が建物ではなく土地の取得であったこと」「自殺のあった建物がすでに解体されていること」が重視されました。
建物の解体によって心理的嫌悪感の対象となる自殺現場は物理的に消滅しており、かつ土地自体に起因する心理的瑕疵の程度は小さいことから、一般人がこの土地の上に新築された建物に住むことを拒むほどの強い嫌悪感には至らないと判断されました。
買主の当初の目的である「新築住宅の建築・販売」は客観的に見て十分達成可能であることから、建物内の自殺はその目的を妨げるほどの心理的瑕疵には該当しないと結論付けられました。
その結果、売主が建物内の自殺を告知しなかったことは告知義務違反にあたらないとして、買主の損害賠償請求を退ける判決が下されました。
「売主は責任を負わない」と特約を結んだが損害賠償請求された事例
こちらは、「売主は責任を負わない」という特約をつけて売買契約を締結したものの、その後に発覚した心理的瑕疵の責任は売主にあるとして、買主の損害賠償請求が認められた事例です。
建物価額を加味しないで売買価額が定められ、建物の瑕疵担保責任の免責特約がある場合でも、同物件で縊首自殺のあったときは、売主は瑕疵担保責任を負うとされた事例
引用元 RETIO「RETIO判例検索システム H9.8.19浦和地裁」
売主は「この建物は老朽化しているため、隠れた瑕疵についても一切の責任を負わない」という特約を結び、建物と土地を一体の目的物として売却しました。しかし、売主は建物内で5ヶ月前に首つり自殺があったことを知りながら、その事実を買主に告知していませんでした。
裁判所は、自殺から5ヶ月という期間は直近の出来事であり、かつ売主はその事実を知りながら意図的に隠したことを重く受け止めました。たとえ「売主は責任を負わない」という特約を結んでいたとしても、その効力は本件に及ばないと結論付けています。
その結果、建物内の自殺に起因する心理的瑕疵の責任は売主にあるとして、裁判所は売主に対し、893万円を買主に支払うよう命じました。
まとめ
自殺物件でも、仲介や買取による方法で売却できます。しかし、通常物件よりも一般の買い手から敬遠されやすく、売却が難航しやすいため、物件の状況に適した方法で売却することが大切です。立地が良い物件や建物の状態が良い物件であれば、自殺物件であっても早期売却に至りやすいため、まずは仲介での売却を検討してみましょう。
もし、仲介で売れる見込みがない場合や実際に仲介では買い手が現れなかった場合は、買取業者への売却を積極的に検討してみてください。自殺物件は買い手の購入判断を左右する心理的瑕疵を抱えているため、売却の際は告知義務が生じます。
告知義務を怠ると法的な責任を問われる可能性があるため、自殺があった事実は必ず買い手に告知しましょう。相続した自殺物件を売却する場合は、決済・引き渡しまでに相続登記が間に合うよう、時間に余裕を持って早めに行動することが大切です。自殺物件の売却で何か疑問や不安があれば、自殺物件の取り扱い実績が豊富な不動産会社に相談することをおすすめします。
自殺物件に関するよくある質問
賃貸物件のオーナーは自殺した入居者の遺族に損害賠償を請求できる?
賃貸物件で入居者が自殺した場合、オーナーは原則として自殺した入居者の遺族に対して損害賠償を請求できます。損害賠償として請求できるのは、自殺によって物件が受けた直接的なダメージを修復するための「原状回復費用」と、自殺がなければ将来得られるはずだった「逸失利益」の2種類です。ただし、入居者の死因が老衰・病死・日常生活の中での不慮の事故死(食事中の誤嚥・階段からの転落など)である場合は、原則として損害賠償は請求できません。