事故物件とは誰かが亡くなった場所である物件のこと
事故物件とは、一般的に事件や自殺などによって過去に誰かが亡くなった場所である物件を指します。人が亡くなったという事実は買主・借主の心理や判断に重大な影響を与えます。
そのため、所有する物件が事故物件に該当する場合は、契約前にその旨を買主・借主に告知する義務が生じます。
事故物件に抵抗がある人は85%に上る
当社では、10~80代以上の男女1000人にアンケートをとりました。その結果、事故物件に住むのにやや抵抗がある・抵抗があると答えた人は、85%に上る結果となりました。
事故物件への抵抗の有無 |
割合(%) |
やや抵抗がある |
25.5% |
抵抗がある |
59.9% |
あまり抵抗がない |
11.0% |
抵抗がない |
3.6% |
さらに、抵抗があると答えた方に理由を聞いたところ、下記の意見が挙げられました。
・自分は霊感などはもともとなく、幽霊も見たことがないのだが、過去になにか起きた場所というのはやはりすこし恐ろしく感じるので夜眠れないと思うから。
・何か悪いことが起こりそうだから。
・心霊現象や良くないことが起きそうだからです。
・縁起的なものを考えてしまい、ニュートラルな精神状態で生活しにくいから。運が悪いだけで、どうしても余分な思考をしてしまうから。
このように、事故物件に対して多くの方々が心理的瑕疵を感じていることがわかります。
告知の必要があるケースとないケース
実は、人が亡くなった経歴のあるすべての物件が事故物件に該当するわけではありません。
そもそも事故物件は法律で明確に定義されているわけではなく、不動産業界の慣習や判例、各不動産会社の判断基準に依存している部分が大きくあります。そのため、告知義務の範囲や期間が曖昧であり、不動産会社によって対応が大きく異なっていました。
そこで国土交通省は、2021年に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定し、告知義務の範囲や期間について一定の基準が設けられました。現在、国土交通省のガイドラインでは告知義務の範囲が以下のように定められています。
告知義務あり |
告知義務なし |
自然死・日常生活での不慮の事故死以外の死(殺人・自殺・火災・不審死など) |
自然死(老衰・病死など) |
特殊清掃や大規模なリフォームが行われた場合(自然死・不慮の事故死も含む) |
日常生活での不慮の事故死(階段やベランダからの転倒死・入浴中の溺死・食事中の誤嚥など) |
買主・借主から事案の有無を問われた場合 |
日常的に使用しない共有部分(屋上・非常階段など)での死亡(殺人・自殺・火災を含む) |
社会的な影響の大きさなどから、借主・買主が把握しておくべき特段の事情があると宅建業者が判断した場合 |
隣接住戸での死亡(殺人・自殺・火災を含む) |
殺人や自殺など事故物件に該当する死因であっても、同じマンション内の別の部屋や日常的に使用しない共有部分で発生した場合は、原則として自分の部屋は事故物件に該当せず、売却時の告知義務は発生しません。
自殺や殺人など事件性がある場合は事故物件に該当する
自殺や殺人など、死因に事件性がある場合は原則として事故物件に該当するため、売主・貸主には告知義務が課されます。
アパートやマンションなどの集合住宅の場合は、人が亡くなった場所によって告知義務の範囲が異なります。
死亡した場所 |
告知義務の範囲 |
専有部分(室内・ベランダなど) |
事案が発生した部屋の購入・入居希望者 |
日常的に使用する共有部分(廊下・エレベーター・階段・エントランスなど) |
事案が発生した共有部分を日常的に使用する入居者全員 |
ただし、屋上や非常階段など日常的に使用しない共有部分で自殺や殺人が発生した場合は告知義務の対象外となっています。
火災があった場合は死者が出ていなくても事故物件になりえる
過去に火災が発生したという事実は、心理的瑕疵や物理的瑕疵に該当します。全焼・半焼するほどの大規模な火災はもちろん、ボヤ程度の小規模な火災でも原則として告知義務が発生するのが一般的です。
実際、過去にボヤが発生した事実の告知を怠り、それが告知義務違反として認められた判例もあります。ボヤ程度だからといって告知義務を怠ると、売却後のトラブルにつながる恐れがあるので注意しましょう。
事件・事故によってはマンション全体が事故物件として取り扱われることも
同じマンション内で事件・事故が発生しても、原則として事故物件に該当するのは事件・事故が発生した部屋のみで、マンション全体は事故物件として取り扱われません。
ただし、以下のようなケースではマンション全体が事故物件として取り扱われる可能性があります。
- 事件・事故が社会的に大きな影響を与えた場合(連日ニュースで取り上げられた、有名人が自殺したなど)
- 入居者が日常的に使用する共有部分で事件・事故が発生した
マンション全体が事故物件になってしまった場合、事件・事故とは一切関係ない自分の部屋も事故物件として取り扱われるため、売買・賃貸借取引時は告知義務が生じ、売却価格も大きな影響を与えます。
老衰など自然死の場合は該当しない
老衰や病死など自然死によって人が亡くなった場合は、原則として事故物件には該当しません。国土交通省のガイドラインでも、以下のように定められています。
【告げなくてもよい場合】
【賃貸借・売買取引】取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活での不慮の死(転倒事故、誤 嚥など)。出典:宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
買主・借主に告知する義務は発生しないため、通常の物件と同じように取引ができます。
該当しない死因でも特殊清掃が必要なら事故物件
自然死や日常生活での不慮の事故死など事故物件に該当しない死因であっても、特殊清掃が行われた場合は事故物件として取り扱われます。
特殊清掃とは、遺体の発見が遅れて腐敗が進み、一般的なハウスクリーニングでは落とせないほどのシミや悪臭が発生した場合に行われます。
特殊清掃が行われたという事実は買主・借主に大きな心理的負担を与えることから、死因に関わらず告知することが法的に義務付けられています。
事故物件には告知義務があるため人の死を隠して売却は原則できない
事故物件は人の死が影響することから、買い手が現れづらい物件です。場合によっては、「売れやすくするために事故物件であることを隠して売却はできないか?」と考えるかもしれません。
しかし、事故物件であることを隠して売却することはできません。国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」にも記載されているように、事故物件を売却する際には、その物件での人の死に関する事案を伝える必要があります。
これを「告知義務」といい、事故物件を売却する際には方法にかかわらず売り手はこの義務を負わなければなりません。
基本的に、人の死があった物件であれば告知が必要ですが、前述のとおり自然死や日常生活の中での不慮の死があった物件であれば、基本的には告知義務が不要とされています。
POINT
買い手に告知しなければならないのは、事故物件となった原因だけではなく、「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」も該当します。具体的には、「雨漏り」「シロアリ被害」「接道義務を満たしていないこと」などの瑕疵が挙げられます。
物理的瑕疵も法律的瑕疵も、買い手が今後物件を使用するにあたって悪影響を与えかねないものです。
告知義務に違反した場合も事故物件であることを告知しなかった場合と同様に、売買契約の解消や損害賠償の請求となる可能性があります。
事故物件を売却する場合、物件自体に瑕疵があれば、すべて買い手に伝えるようにしましょう。
事故物件の売買において時効は定められていない
売却契約の場合、告知義務に時効は定められていません。そのため、人の死から数年経過していた物件であっても、売却をする場合にはその事実を買い手に伝えなければならないのです。
「事故物件を売却する場合、告知義務は何年まであるのだろう」と考えるかもしれませんが、事故から何年経過していたとしても物件売却の際には、買い手にその事実を伝えるようにしましょう。
賃貸借取引の場合は事故物件になってから3年経過すれば通常通り取引できる
賃貸借取引の告知義務期間は事故物件になってから原則として3年間です。
事故物件になってから3年経過すれば告知義務が消滅するため、通常の物件と同様に取引ができます。
事故物件であることを隠して売却するのは絶対にNG
事故物件であることを隠して売却すると告知義務違反となり、売買契約の解消や損害賠償の請求となる可能性があります。
そのため、事故物件を売却する際には、「買い手がつかないから事故物件であることは伏せよう」とはせずに、買い手に事実を伝えるようにしましょう。
事故物件を売却する際に購入希望者へ告知する方法
事故物件の告知は、売買契約締結前に行われる重要事項の説明の際に行うのが一般的です。告知の際は、重要事項説明書(法35条書面)に心理的瑕疵の存在を記載した上で口頭でも説明します。
口頭のみだと証拠が残らず、買主と告知の有無でトラブルになった際に不利になってしまうため、必ず書面を残しておきましょう。
事故物件の売却価格相場は1〜5割ほど下がるのが一般的!事故物件の種類によって下落率も変わる
あくまで目安ですが、心理的に抵抗を感じさせやすい事故物件は、売却価格が通常の物件よりも1割から5割ほど下がるのが一般的です。
売却金額の下落率は事故物件の種類によって変動する傾向があり、その割合は下記のとおりです。
事故物件の種類
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売却金額の下落率
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孤独死や病死があった物件
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1〜2割
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自殺があった物件
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1〜3割
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他殺があった物件
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3〜5割
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※当サイトを運営する「株式会社クランピーリアルエステート」での買取事例を参考に下落率を算出しています。必ずこの数値になるとは限らないため、目安程度にお考えください。
ここからは事故物件の種類に応じた売却金額の相場を解説していきます。事故物件の売却を検討している場合、所有している物件の種類に応じた下落率を踏まえて、どの程度の金額で売却できるかを確かめてみてください。
POINT
上記の下落率はあくまで目安であって、実際の売却金額は事故物件の種類や状況、立地などによって決定されます。所有する事故物件の売却金額をより詳しく知りたい場合、複数の買取業者に見積もりを依頼して、それらの査定額から相場感をつかむとよいでしょう。
孤独死や病死があった物件:1〜2割
孤独死や病死は、自然死や日常生活における不慮の死であるため、自殺や他殺よりも心理的な抵抗が少なくなりやすいです。そのため、事故物件のなかでは、孤独死や病死があった物件は売却金額の下落率が比較的少ない傾向があります。
実際に、当社がとったアンケートでも下記のような回答がありました。
事故物件の中で、殺人、自殺などの場合は、人の想いが強く残っていそうでかなり抵抗がある。ただ、自然死については、そんなに抵抗はない。
とはいえ、人が亡くなった物件であるため、通常の物件よりも購入するのに敬遠されやすいことには変わりません。さらに、遺体が放置されて特殊清掃を行った物件であれば、臭いや汚れはなくとも心理的な抵抗は感じられやすくなります。
あくまで目安ですが、孤独死や病死の場合は通常の物件よりも売却金額が1〜2割ほど下がるのが一般的です。通常1,000万円で売却できる金額であれば、800〜900万円程度になると考えられます。
自殺があった物件:1〜3割
自殺があった物件も通常の物件より売却金額が下がるのが一般的です。
目安としては、通常の物件の1〜3割ほど売却金額が安くなる傾向があります。通常1,000万円で売却できる金額であれば、700〜900万円程度になると考えられます。
なお売却金額の下落率は、自殺によって物件の状態にどの程度影響を与えたかによっても変動するのが一般的です。たとえば、リストカットが原因の場合、比較的物件に与えるダメージが少ないため、売却金額の下落率はゆるやかになると考えられます。
また、当サイトを運営する株式会社クランピーリアルエステートの買取傾向からは、飛び降り自殺があった物件は比較的下落率がゆるやかになると予測されます。
あくまで目安ですが、下落率は通常の物件の1割程度になる傾向があり、立地がよい有名なマンションであれば飛び降り自殺があっても通常物件と同等の金額で売却できる可能性もあります。
他殺があった物件:3〜5割
殺人などの他殺があった物件は、ほかの事故物件よりも心理的に敬遠されやすいです。そのため、事故物件のなかでも売却金額の下落率が最も高くなる傾向があり、通常の物件よりも売却金額が3〜5割ほど下がります。
また、この下落率は原因となった事件によっても変動します。たとえば、ニュースで全国的に取り上げられたような事件があった物件であれば悪印象が払拭されづらくなる傾向です。
下落率が高くなり、場合によっては買取を断られることも考えられます。とはいえ、事故物件を専門とする買取業者であれば、他殺があった物件の買取に期待はできます。
買取できるかどうかはその業者次第であるため、他殺があった物件を売却する場合は複数の専門業者に見積もりを依頼してみるとよいでしょう。
事故物件でも売却はできるが仲介では買い手が見つかりづらい
事故物件の売却は、法律などで制限されているわけではありません。そのため、買い手が現れれば人の死があった事故物件でも通常物件と同様の方法で売却できます。
ただし、通常物件と異なり、事故物件は買い手が見つかりづらいため売却が難しいです。その理由を簡単に言えば、人の死があったことが原因で購入が敬遠されやすいことにあります。
前述した当社のアンケート結果から見てもわかるように、過去に人が亡くなった事例があると心理的な抵抗が生じやすく、いわゆる事故物件として扱われて買い手がつきづらくなります。
特に、ニュースで全国的に取り上げられたような事件があった事故物件の場合、悪い印象を与えやすくなるため、買い手はなかなか現れないと予測されます。
そのため、買い手を探す必要がある仲介では事故物件を売却するのは困難と言えるのです。詳しくは下記で後述しますが、基本的に事故物件は買取業者に直接買い取ってもらうのが得策でしょう。
「買取」か「仲介」かは事故物件に該当するかで決めるのが得策
事故物件に限らず、不動産の売却方法は買取か仲介が一般的です。どちらにも異なる特徴があり、所有している物件によってどちらの方法を選ぶべきかが変わります。
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特徴
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選ぶべき状況
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買取
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不動産会社や買取業者に依頼して、物件を直接買い取ってもらう方法。
仲介のように買い手を探す必要がないため比較的早期で売却できるが、仲介よりも売却金額が安くなるのが一般的。
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・買い手がつかない事故物件を所有している
・過去に不動産会社に仲介を断られた、または依頼しても買い手が現れなかった
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仲介
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買い手と売り手の間に不動産会社が入って契約を成立させる方法。
買取よりも高値で売却できるのが一般的だが、買い手が現れない限り物件を売却できない。
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・所有している物件が事故物件ではなかった
・事故物件でも物件の条件がよい
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上記のように、売却したい物件が事故物件に該当するのかどうかで、仲介または買取のどちらが向いているかが変わります。事故物件に該当するなら買取、該当しないなら仲介で売却するのがよいでしょう。
ここからは、仲介と買取で事故物件を売却する方法について詳しく解説していきます。事故物件を売却したい場合には参考にしてみてください。
売却が難しい事故物件なら専門の買取業者に依頼するのがおすすめ
建物自体の損傷が酷かったり、話題性が高い事件が起きてしまったりした場合は仲介を依頼しても買い手がなかなか現れない可能性があります。
また、そもそも不動産会社から仲介を断られたりすることも考えられるため、基本的に売れそうにない事故物件であれば買取業者に依頼するのが得策です。
買取業者であれば依頼した業者が買い手となるため、仲介のように買い手を探す必要がありません。そのため、売買契約が成立すれば、確実かつ仲介よりも早期で事故物件を売却できます。
あくまで目安ですが、買取業者に依頼してから1週間〜1か月程度で物件を売却できるのが一般的です。そのため、「すぐにでも事故物件を売却したい」という場合には、買取業者に依頼するのが向いています。
また、詳しくは「事故物件を専門とする買取業者に依頼する」の見出しで解説しますが、買取業者のなかには、事故物件のような訳あり物件の買取を専門とする業者もあります。
そのような買取業者であれば、基本的にどのような事故物件でも買取に期待できるうえに、活用方法や高値での転売に関するノウハウによって、ほかの買取業者よりも高値で買い取ってもらえる可能性もあります。
「仲介では物件を売れなかった」「できるだけ高く事故物件を売りたい」という場合、事故物件を専門とする買取業者に依頼することを検討してみるとよいでしょう。
条件のよい事故物件であれば仲介で売却することを検討する
事故物件だからといって、絶対に仲介で売却できないとは限りません。心理的な抵抗を感じる基準は人によって異なりますし、そもそも物件自体の条件がよければ、仲介でも買い手がつくことも考えられます。
◻︎条件がよい物件の例
- 都心のような人気のエリアにあり、駅から徒歩5分〜10分圏内の物件
- 築年数が5年以下の築浅物件
- タワーマンションのような物件自体の価値が高いマンション
「条件がよければ必ず売却できる」とはいえませんが、上記に該当する場合は事故物件であっても仲介に依頼して売却できる可能性があります。買取よりも高値で売却できるのが一般的であるため、条件がよい事故物件を所有している場合は仲介で物件を売却することを検討してみてもよいでしょう。
告知義務がない物件なら仲介での売却にも期待できる
前述したように、人が亡くなった物件でも事故物件にはならないケースもあります。その場合は告知義務が必須ではないため、通常の物件と同様に不動産会社に仲介を依頼して物件を売却するのがよいでしょう。
買取の場合、仲介よりも売却金額が安くなるのが一般的です。あくまで目安ですが、30〜50%ほど売却金額が下がるといわれています。そのため、仲介であれば買取よりも高く物件を売れることに期待できるのです。
ただし、仲介の場合は買い手が現れるまで物件を売却できないため、売却できるまでに買取よりも期間がかかる場合があります。
そのため、依頼する不動産会社の担当者に「どれくらいの金額で売れそうか」「売却までにどの程度期間がかかるのか」といった点を相談しておくとよいでしょう。
事故物件を仲介で売却しやすくする方法
事故物件を仲介で売却しやすくする方法としては、主に以下の4つが挙げられます。
- リフォームや清掃で物件の状態を少しでもよくしておく
- 特殊清掃を依頼しておく
- 事故物件になってからすぐに売却しない
- 更地にしてから売却する
ここからは、それぞれの方法について1つずつ解説していきます。
リフォームや清掃で物件の状態を少しでもよくしておく
仲介では一般の個人に対して売却するため、汚れやニオイ、遺品などが残ったままでは基本的に買い手は付きません。仲介で売れやすくするには、売主自身が清掃を行い、室内の状況によってはリフォームを行う必要があります。
清掃やリフォームによって建物の状態を改善すれば、心理的な嫌悪感や衛生面の不安が緩和され、買い手も付きやすくなるでしょう。ただし、清掃やリフォームを行っても事故物件が必ず売れる保証はありません。
事故物件が売れ残ってしまうと清掃やリフォームにかかった費用が赤字になってしまうので、事前に不動産会社に相談するようにしましょう。
特殊清掃を依頼しておく
通常の清掃やハウスクリーニングでは落としきれない汚れやニオイがある場合は、特殊清掃を行ってから売却しましょう。特殊清掃を行って人が亡くなった痕跡を消すことで、事故物件であることを感じさせにくくなるため、買い手も見つかりやすくなります。
ただし、特殊清掃には30~50万円程度の費用がかかります。特殊清掃を行ったからといって必ず売却できるとは限らないので、仲介で事故物件が売れる見込みがあるか慎重に検討する必要があります。
事故物件になってからすぐに売却しない
ニュースで大きく取り上げられた事件が発生した事故物件は、一定期間置いてから売却するのがおすすめです。
一定期間空ければ事件のことが徐々に風化されていき、嫌悪感も緩和されていくため、事件直後よりも買い手が付きやすくなります。
ただし、売買物件の場合は告知義務の時効がないため、どれだけ期間を空けても事件のことは必ず告知しなければなりません。
事故物件を所有している間は固定資産税や維持管理費用がかかるため、一定期間を空けて仲介で売却する際はその点に注意が必要です。
更地にしてから売却する
建物の老朽化が進んでいる場合や、事件や事故による損傷が激しい場合は、建物を解体して更地にしてから売却するのも1つの手段です。
更地にすることで心理的な抵抗感が薄まり、買主からすると解体費用を負担せずに土地を自由に活用できるメリットもあります。建物が残っている状態と比べると売却しやすいですが、更地にしても告知義務は消滅しないので注意が必要です。
解体費用や固定資産税の増額などデメリットも多い
更地にして売却する場合は、解体費用の負担や固定資産税の増額などデメリットも多くあります。事故物件を更地する際の解体費用は、所有者が全額負担しなければなりません。
解体費用は建物の構造や坪数、立地などによって異なりますが、数百万円単位の高額な費用がかかります。
また、更地にすると住宅用地の特例が適用されなくなるため、固定資産税が最大6倍まで上昇します。更地にしても事故物件の告知義務は消滅しないため、通常の物件と比べると買主から敬遠されやすく売れ残るリスクが高いです。
一度更地にしてしまうとやり直しがきかないので、解体費用や固定資産税の負担も考慮して更地にするかどうか慎重に判断しましょう。
売却価格が下落しにくい事故物件の特徴
事故物件であっても、以下のいずれかに当てはまる場合は売却価格が下落しにくく、比較的買主が見つかりやすいです。
- 事件性が低く社会的影響も小さい
- 立地が良い場所に建っている
- 事件や事故による建物の損傷が小さい
ここからは、それぞれの特徴について1つずつ解説していきます。
事件性が低く社会的影響も小さい
殺人事件が発生してニュースでも大きく取り上げられたような事故物件だと心理的瑕疵が大きいため、一般の個人から購入を敬遠されやすく、売却価格も大幅に下落する傾向があります。
一方、自然死や不慮の事故死であれば、心理的な抵抗をそこまで感じない人も多いため、売却価格を大幅に下げなくても購入希望者が見つかる可能性があります。
立地が良い場所に建っている
利便性が高く立地の良い場所は需要が高いため、事故物件でも一定の需要があります。都心のような人気のエリアで建物の状態も良ければ、通常の物件とほぼ変わらない価格で売却できる可能性があります。
逆に地方は大都市圏と比べて不動産価格が安く、あえて事故物件を購入する人は少ないため、売却価格を大幅に下げないと買主が見つかりにくいです。
事件や事故による建物の損傷が小さい
遺体の腐乱による体液のシミや血液のシミが残っていたり、火災によって壁や天井に焦げ跡が残っていたりすると、事故物件であることを感じさせてしまうため、購入を避けられやすくなります。
遺体が早く見つかって損傷がほとんどない場合や、特殊清掃や大規模なリフォームを行った場合など、損傷具合が比較的小さければ心理的な負担も小さくなるため、売却価格をそこまで下げなくても買主が見つかりやすいです。
事故物件を買取業者に売却するメリット
買取の場合は業者がリフォームや建て替えを前提で買い取るため、その分売却価格は下がってしまいますが、査定額や条件に納得できれば確実に買い取ってもらえます。
買取業者に売却するメリットとしては、主に以下の4つが挙げられます。
- リフォームや建て替えをせずそのまま売れる
- 契約不適合責任が免責になる
- すぐに売却して現金化できる
- 解約されるリスクがない
ここからは、それぞれメリットについて1つずつ解説していきます。
リフォームや建て替えをせずそのまま売れる
仲介は一般の個人が買主になるため、リフォームやリノベーション、遺品整理、特殊清掃などを行ってある程度原状回復した物件でないと売却できません。
原状回復にかかった費用はすべて売主が負担しなければなりませんが、買取の場合は業者が自己負担で原状回復作業をすべて行ってくれます。
そのため、売主は費用や手間をかけずに事故物件を手放せるのが魅力的なポイントです。
契約不適合責任が免責になる
契約不適合責任とは、契約時に買主へ伝えていなかった不具合や欠陥が見つかった場合に売主が買主に対して負う責任のことです。仲介で事故物件を売却する場合は、売主が買主に対して人が亡くなった事実を必ず告知しなければなりません。
事故物件であることを告知せずに売却し、後からその事実が発覚すると、買主から契約不適合責任を問われて損害賠償や契約解除を請求される可能性があります。
しかし、業者に買い取ってもらえば、売却した物件に問題があっても契約不適合責任は問われないため、売却後のトラブルを未然に防げます。ただし、すべての業者が契約不適合責任を免責できるわけではないため、売買契約書の内容をしっかりと確認しておきましょう。
すぐに売却して現金化できる
仲介の場合は一般の個人が買主になるため、買主を探すための売却活動に時間がかかります。特に事故物件は一般の個人から避けられやすいので、長期間売却活動を行っても買主が見つからず、現金化できない可能性が高いです。
一方、買取の場合は業者が買主になるため、仲介のような売却活動を行う必要がありません。業者が提示する査定額や条件に納得すればすぐに売買契約が成立します。
仲介だと通常の物件でも3ヶ月~1年程度かかるのが一般的ですが、買取なら事故物件でも1週間~1ヶ月程度で現金化が可能なので、今すぐにでも事故物件を手放したい人にとっては大きなメリットになります。
解約されるリスクがない
仲介では一般の個人が買主となるため、通常の物件と比べて解約されるリスクが高いです。
一方、買取業者は個人よりも資金力があって信頼性も高いため、仲介と比較すると売却後に解約される可能性が低いです。契約不適合責任も免責となるケースが多いため、契約不適合責任を問われて契約を解除される心配もありません。
ただし、買取でも解約されるリスクがゼロになるわけではありません。悪質な業者も存在しているため、信頼できる業者かしっかりと見極めるようにしましょう。
事故物件を売却できるまでの流れ
事故物件を売却する流れは、売却方法によって変わります。大まかではありますが、買取と仲介ごとに事故物件を売却できるまでの流れをまとめましたので、参考にしてみてください。
◻︎事故物件を買取で売却する場合の流れ
- 買取業者に査定を依頼する
- 所有する事故物件の査定額を提示してもらう
- 査定額に問題がなければ、その業者と売買契約を締結する
- 売買契約で定められた日程に決済・引き渡しを行う
◻︎事故物件を仲介で売却する場合の流れ
- 不動産会社に査定を依頼する
- 査定額に問題がなければ不動産会社と媒介契約を締結する
- 売却活動を通して買主を見つける
- 買主と売買契約を締結する
- 売買契約で定められた日程に決済・引き渡しを行う
買取であれば買い手を探す手間がかからないため、基本的には仲介よりも売却できるまでの流れがスムーズに進みます。一般的に仲介の場合は3ヶ月〜1年程度の期間がかかるのに対して、買取であれば物件を売却できるまで1週間〜1ヶ月程度が目安となります。
なお、仲介でも買取でも、事故物件を売却するには契約の締結が必要となり、その際にはさまざまな書類の提出を求められます。
物件の状態によっても提出する書類が変わるため、事故物件の売却先が決まった後は、その業者にどのような書類が必要なのかを尋ねておくようにしましょう。
事故物件を売却する場合はさまざまな費用がかかる
事故物件を売却する場合、基本的には下記のような費用がかかります。
- 印紙税:物件1つにつき数万円程度
- 譲渡所得税:売却によって利益が出れば数万〜数十万円
事故物件に限らず、不動産を売買する場合は基本的に印紙税がかかります。また、物件売却によって利益が出る場合は必ず譲渡所得税の支払いも必要です。
事故物件の売却を検討している場合、「どのような費用がかかるのか」「いくらほどの支払いが必要なのか」を把握しておくとよいでしょう。
印紙税として数万円がかかる
事故物件を売却する場合、仲介でも買取でも売買契約書を作成する必要があります。売買契約書は印紙税の課税対象となる「課税文書」に該当するため、契約書の作成時には収入印紙が必要です。
売却金額
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本則税率
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軽減税率
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10万円を超える~50万円以下
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400円
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200円
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50万円を超える~100万円以下
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1000円
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500円
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100万円を超える~500万円以下
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2000円
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1000円
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500万円を超える~1千万円以下
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1万円
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5千円
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1千万円を超える~5千万円以下
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2万円
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1万円
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5千万円を超える~1億円以下
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6万円
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3万円
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1億円を超える~5億円以下
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10万円
|
6万円
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5億円を超える~10億円以下
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20万円
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16万円
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10億円を超える~50億円以下
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40万円
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32万円
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50億円を超えるもの
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60万円
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48万円
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参照元:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
たとえば、事故物件が3,000万円で売れた場合、通常収入印紙の金額が2万円となります。
不動産売買の印紙税には軽減措置が設けられており、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成された売買契約書であれば、軽減率が適用されます。
事故物件の売却金額が2,000万円で軽減措置がとられた場合、収入印紙の金額が2万円から1万円になります。
譲渡所得税として数万円〜数十万円がかかる
事故物件に限らず、不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税の支払いが必要です。譲渡所得税は、事故物件を売却することで得られる利益(譲渡所得)に対して課税され、下記の計算式で算出できます。
譲渡収入-(取得費+譲渡費用)
※譲渡収入:物件の売却金額
取得費:不動産を得るためにかかった費用
譲渡費用:不動産売却でかかった諸経費
たとえば、取得費3,000万円の事故物件が3,500万円で売れた場合を想定します。譲渡費用として300万円がかかった場合であれば、譲渡所得は「3,500万円ー(3,000万円+300万円)=200万円」と計算できます。
この場合は200万円の利益が出ており、譲渡所得税はこの200万円にかかる仕組みです。そして、事故物件の所有期間に応じた税率を譲渡所得にかけることで、譲渡所得税を算出できます。
事故物件の所有期間
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譲渡所得税の税率
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5年以下
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30%(復興特別所得税を除く)
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5年超
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15%(復興特別所得税を除く)
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譲渡所得が200万円で所有期間5年以下の事故物件を想定すると、譲渡所得税は「200万円×30%=60万円」と計算できます。
まとめ
事故物件でも売却できないわけではありませんが、購入を敬遠されやすいのは事実であるため、仲介で売却するのは難しいと予測されます。専門の買取業者であれば、仲介で売れなかった事故物件も売却に期待できるため、基本的には買取で売ることを検討するのが得策です。
とはいえ、人の死があったからといって必ず事故物件になるとは限りません。死因が病死などであれば告知義務が必須ではないため、通常物件と同じように売却することも可能です。
仲介であれば買取よりも高値で売却できるのが一般的であるため、「そもそも事故物件ではなかった」といった場合は仲介、「すぐに売りたい」「仲介では売れなかった」という場合には買取を選ぶとよいでしょう。
なお、事故物件は通常の物件よりも1割〜5割ほど売却価格が下がる傾向があります。この下落率は事故物件の種類に応じても変動するため、事故物件を売却する際には事前に複数の業者に見積もりを出して、その査定結果から所有する物件の売却相場をつかんでおくことが大切です。
事故物件の売却に関するよくある質問
事故物件でも誰かが一度住めば売却できますか?
事故物件の売却は法律で制限されないため、居住の有無にかかわらず売却は可能です。なお、「誰かが1度でも住めば事故物件にならない」といううわさもありますが、実際は誰かが住んだ場合も事故物件と扱われるため注意が必要です。
事故物件を売却する時の告知義務はいつまで残りますか?
事故物件を売却する場合は告知義務の時効はありません。賃貸契約であれば概ね3年が告知義務の時効となります。
事故物件はどこに売却するのがベストですか?
「訳あり物件専門の買取業者」に売却しましょう。他社では取扱拒否されるような事故物件でも、相場に近い価格ですぐに売却可能です。
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事故物件を売却する際には死亡診断書が必要なのでしょうか?
告知義務があるため、人の死があったことを証明するために死亡診断書の提出が必要な可能性もあります。とはいえ、売却する物件などによって提出する書類は変わるため、事故物件の売却先へ事前に相談しておくのがよいでしょう。
どうしても事故物件であることを隠して売却したいのですが、バレる原因は何でしょうか?
人の死があったことを知っている近隣住民からバレてしまうケースが挙げられます。そもそも、事故物件であることはさまざまな原因でバレる可能性があり、その際には損害賠償を請求されるリスクもあるため、事故物件であることを隠すこと自体を検討するべきではありません。
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