事故物件の価格相場は市場価格よりも安くなりやすい
「事故物件」とは、過去に自殺・他殺・孤独死などの事情があった不動産を指す一般的な呼称です。
法令上の定義はありませんが、業界では一般に「心理的瑕疵(買主が心理的抵抗を覚えるような事情)がある物件」を指す俗称として使われています。
事故物件は、立地・間取り・築年数などの条件が同じ一般の不動産と比べて価格が下がる傾向があり、その原因は以下のとおりです。
- 心理的瑕疵のある物件は、媒介業者に買主への告知義務があるため、説明を受けた段階で購入をためらう人が多くなる
- 売却をするときに売りにくく市場性が劣るため、結果として担保評価が低く見積もられることがあり、住宅ローンの審査が通らない、または希望額を借りられないケースがある
- 事故の情報が近隣やインターネット上で知られていると、現地を見に来る人すら少なくなるケースもある
実際の売却相談でも、「まずは通常物件と近い価格で売り出したい」という希望は少なくありません。
しかし、事故物件では購入検討者が現地確認の段階で離脱したり、住宅ローン審査を理由に契約へ進まなかったりするケースもみられます。
とくに実務上多いのは、「問い合わせ自体はあるものの、告知内容を伝えた後に検討が止まる」というケースです。
不動産会社から事情説明を受けたあと、家族の反対や将来の売却不安を理由に購入を見送る人も一定数います。
また、事故から年数が経過していても、インターネット上に情報が残っていることで、買主側が慎重になるケースも珍しくありません。
実際の売却現場でも、「過去の掲載情報を見た家族が反対した」「内見直前でキャンセルになった」といった話は一定数みられます。
心理的瑕疵がある場合、仲介業者には宅地建物取引業法に基づく「告知義務」が生じます。とくに自殺・他殺など買主の判断に大きく影響する内容は、もちろんですが自然死であっても、長期間発見が遅れた場合などは告知義務の対象になることに注意が必要です。
これらの要因が重なることで、売主は価格を下げざるを得ないケースが多く、結果的に市場価格よりも安値で取引されやすいのです。
事故物件は本当に売れづらいのかの独自アンケート結果
事故物件は「心理的な抵抗がある人が多いため売れづらい」と言われますが、実際にどれほどの人が抵抗を感じているのでしょうか。
当サイトを運営するクランピーリアルエステートが実施したアンケートによると、男性の約73%、女性の約92%が「事故物件に住むことに抵抗がある・やや抵抗がある」と回答しています。
この結果からもわかるように、性別を問わず多くの人が事故物件に対して一定の抵抗を感じており、一般的な物件と比べると買主がみつかりにくい傾向があるといえます。
実際の売却相談でも、「価格が安ければ気にしないと言われたものの、最終的には家族の理解が得られず契約に至らなかった」というケースは少なくありません。
事故物件は、購入希望者本人が納得していても、配偶者や親族の意向によって話が進まなくなることもあるためです。
一方で、「家賃が安ければ気にしない」「清掃が行き届いていれば問題ない」といった意見も一定数みられ、価格設定や物件管理の工夫次第では、購入につながる可能性もあるでしょう。
実際の売却現場でも、特殊清掃やリフォーム後に室内状況を丁寧に整えたことで、比較的スムーズに成約へ至ったケースはあります。
また、投資用物件として収益性を重視する買主の場合、心理的瑕疵よりも利回りを優先して検討されるケースもみられます。
そのため、事故物件は一律に「売れない」と言い切れるものではなく、価格設定や情報開示の方法、物件管理の状態によって売却のしやすさが変わる点は押さえておきたいところです。
本アンケートは、事故物件を「自然死や不慮の事故死以外の死」や「特殊清掃が必要な死」が発生した物件と定義して実施されたものです。
事故物件の売却相場は発生した事故の種類によって変動しやすい
事故物件の売却価格は、物件内で発生した事故の種類によって大きく左右されます。
実務上は、「どのような亡くなり方だったか」だけでなく、「発見までにどれくらい時間がかかったか」「室内に臭気や汚損が残っているか」「近隣やネット上でどの程度知られているか」といった事情まで含めて査定されるケースが一般的です。
とくに「心理的な抵抗感」の強さが価格に影響しやすく、自然死や病死など事件性のないケースでは価格の下落幅も小さめです。一方、自殺や他殺など事件性があった場合は、相場が大きく下がる傾向にあります。
以下は、実際の不動産売却事例をもとにした、死因別の下落率と告知義務の目安です。
| 種類 |
売却相場の下落率目安 |
告知義務(原則) |
| 孤独死・病死・自然死/日常生活の中の不慮の事故 |
通常物件より1〜2割程度下がる |
原則不要(ただし発見の遅れや特殊清掃があれば必要) |
| 自殺 |
通常物件より1〜3割程度下がる |
必要 |
| 他殺 |
通常物件より3〜5割程度下がる |
必要 |
上記は過去の売却事例をもとにした目安であり、実際の価格は物件の状況や買主の受け止め方により異なります。
たとえば同じ孤独死でも、「発見が翌日で室内ダメージも軽微だったケース」と、「真夏に数週間発見されず特殊清掃や床材交換が必要になったケース」では、買主の反応や査定額に大きな差が出ることがあります。
また、実際の相談現場では、「事故そのもの」よりも、「近隣住民がどこまで把握しているか」「事故情報サイトへ掲載されているか」を気にする買主も少なくありません。
ここからは、それぞれのケースに応じた売却相場や注意点について、詳しく解説します。
孤独死・病死・自然死等が起きた物件の相場:1割〜2割程度下がる
孤独死や病死・自然死が発生した物件は、他の事故物件と比べて心理的な抵抗感が小さいとされ、相場の下落幅も比較的抑えられる傾向があります。
宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインでも、老衰や病死、日常生活での不慮の死は「原則として告知不要」とされています。「人の死の告知に関するガイドライン」とは、不動産で過去に人が亡くなっていた場合、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき義務の解釈について現時点における裁判例や取引実務に照らし、一般的に妥当と考えられるものを整理し、とりまとめたものです。
実際の売却相談でも、高齢者の病死や介護中の自然死については、「やむを得ない事情」と受け止める買主も一定数います。
とくにファミリー層より、投資家や単身層向け物件では、価格次第で比較的スムーズに成約するケースもみられます。
そのため、同条件の通常物件と比較して、売却価格は1〜2割程度の下落にとどまるケースが多いです。通常の物件で2,000万円なら、1,600万〜1,800万円程度が一つの目安です。
ただし、病死や自然死であっても、遺体の発見が遅れた結果、腐敗や異臭が発生し、特殊清掃が必要となる場合には事情が変わります。
実務上は、「孤独死そのもの」よりも、「特殊清掃後も臭気が残っていないか」「床下や壁内部まで原状回復が必要か」が価格に影響するケースが少なくありません。
実際の取引現場でも、「フローリングの張替えのみで済んだケース」か「下地材や配管周辺まで交換が必要になったケース」では、売却価格や売却期間に大きな差が生じています。
このようなケースでは、買主に与える心理的影響が大きいと判断され、告知義務が発生し、売却価格が3割以上下がるケースもあるでしょう。
なお、告知が必要かどうかは「買主の判断に重要な影響を及ぼすか」が基準とされており、発見までの時間や部屋の状態などによって判断がわかれます。
個別の事情により異なるため、不動産会社や専門家の意見をあらかじめ確認しておくことが重要です。
一方で早期に発見され、特殊清掃も不要だった場合には、事故物件として扱われず、通常価格で売却できるケースもみられます。
心理的な抵抗感が強いと、一般の買主への売却が難航することもあります。そのような場合は、事故物件の取り扱い実績がある不動産買取業者への売却を検討するのも1つの方法です。
自殺が起きた物件の相場:1割〜3割程度下がる
自殺が発生した物件は、心理的な抵抗感が強まることから、売却価格は1〜3割程度下落するのが相場です。たとえば2,000万円の物件であれば、1,400万〜1,800万円ほどが目安になります。
国土交通省の宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインでも、自殺は日常生活における自然死とは異なり、原則として買主への告知が必要とされています。このため、孤独死や病死に比べても価格の下落幅が大きくなりやすい傾向があるでしょう。
実際の売却現場では、「内見予約までは入るものの、告知後にキャンセルになる」という流れは珍しくありません。
とくに小さな子どもがいる家庭では、家族会議の結果として購入を見送るケースもみられます。
ただし、下落幅は自殺の状況によって大きく異なります。血痕の残留や腐敗によって室内の状態が著しく損なわれている場合は、3割以上の値下がりにつながるケースもあるでしょう。
一方、飛び降りや軽度の自傷など発生したのが室内であり、建物自体に損傷がないケースでは、下落幅が1割前後にとどまる場合もあります。
実務上は、「室内で亡くなった」という事実よりも、その後の原状回復状況や情報拡散の有無を重視する買主も増えています。
たとえば、以下のような事情がある場合には、購入検討が進みやすくなるケースもあります。
また、事故から数年経過している場合でも、事故情報サイトやSNS投稿が残っていることで、価格交渉を受けやすくなるケースもみられます。
心理的瑕疵の程度やリフォームが必要かどうかも価格に影響を及ぼすため、事故物件の取扱実績がある不動産買取業者への相談・依頼が選択肢となります。とくに原状回復が難しい場合や早期売却を希望する際には、有力な選択肢となるでしょう。
他殺があった物件:3割〜5割程度下がる
殺人事件が発生した物件は、事故物件のなかでもとくに心理的な抵抗が強く、売却価格は通常より3〜5割程度下落するのが相場です。たとえば2,000万円の物件であれば、1,000万円〜1,400万円ほどが目安です。
他殺物件の価格が大きく下がる理由としては、事件性の高さやニュース報道などによって、周囲の印象に強く残りやすい点が挙げられます。こうした事情から、買主に敬遠されやすくなるのが現実です。
実際の売却現場でも、「事故から10年以上経過しているが、ネット検索ですぐ事件情報が出てくる」という理由で、一般市場での売却が長期化したケースがあります。
また、購入検討者本人は前向きでも、家族や親族の反対によって契約直前で白紙になるケースもあります。
とくに、全国ニュースで報道された事件があった物件は、一般市場では買主が見つかりにくく、売却が難航するおそれがあります。
国土交通省の宅地建物取引業者による人の死の告知に関する告知ガイドラインでは、殺人などの事件が発生した場合は「原則として買主への告知が必要」と明記されています。
売主や仲介業者には亡くなった 方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要があることから、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はないですが、これらを除いた事件の内容などを正しく説明する義務があり、説明を怠った場合には契約解除や損害賠償請求といったトラブルに発展するおそれもあるでしょう。
売却を検討する際は、事故物件の買取実績が豊富な専門業者に早めに相談するのが現実的です。
事故物件の売却相場を知りたいときは実際の買取事例も参考にしてみる
事故物件の売却価格は、発生した出来事の内容や立地、建物の状態によって大きく変動します。
実務上も、「事故物件だから一律で安くなる」というより、「買主がどこを懸念するか」によって査定額が変わるケースが多くみられます。
そのため、相場を把握するうえでは、実際に売却された事例を参考にするのも有効な手段です。
以下に、事故内容や状況が異なる2つの具体的な買取事例を紹介します。
変死があった戸建住宅が500万円で買取された事例
千葉県松戸市にある戸建てを買い取った事例です。
| 買取情報 |
概要 |
| 物件の種類 |
戸建て |
| 所在地 |
千葉県松戸市 |
| 事故・事件の内容 |
居住者の親子2人が変死 |
| 買取金額 |
500万円 |
この物件は、建物内で親子2人の変死が発生したことが原因で事故物件になったケースです。発見が遅れたこともあり、心理的な影響が強く、売却が難航していました。
実際の取引現場でも、戸建住宅は近隣住民との距離が近いため、地域内で事情が共有されやすい傾向があります。
とくに地方や住宅街では、「昔から近所で知られている」という理由で、内見後に購入を見送られるケースもあります。
本事例は事故から2年以上が経過していたものの、詳細な調査と査定を経て、500万円での買取に至っています。
「売れないかもしれない」と不安を感じたら、事故物件の買取に実績のある専門業者に相談してみるのも1つの選択肢です。
共用部分で飛び降りがあったマンションが1,300万円で買取された事例
東京都足立区にあるマンションを買い取った事例です。
| 買取情報 |
概要 |
| 物件の種類 |
マンション |
| 所在地 |
東京都足立区 |
| 事故・事件の内容 |
共用部分で飛び降り自殺 |
| 買取金額 |
1,300万円 |
マンションの共用部分で飛び降り自殺が起きたケースです。本事例は、事故が発生したのが取引の対象となる住戸でなく、その隣接住戸や普段使用されない共用部分で発生した場合には、告知義務の対象にならないケースに該当しました。そのため、比較的高い査定での買取が実現しています。
このように、事故の内容や場所を正しく見極めて査定してくれる専門業者であれば、適正価格での買取も可能です。
実務上も、「事故物件になると思っていたが、実際には価格影響が限定的だった」というケースは一定数あります。
一方で、全国ニュース化した事件や、事故情報サイトに詳細が掲載されているケースでは、共用部分であっても価格調整が必要になる場合もみられます。
事故物件の相場は売却価格だけでなく家賃も安くなりやすい
事故物件は売却時だけでなく、賃貸として貸し出す場合にも家賃が安くなる傾向があります。とくに自殺や他殺など事件性がある場合には、心理的な抵抗感から借り手がつきづらく、家賃を相場より2〜3割ほど下げて募集するケースが一般的です。
法律上、事故物件であっても家賃を下げる義務はありません。
ただし事故物件は、過去に人の死があったことから心理的な抵抗を与えやすく、借主が見つかりにくい傾向があります。そのため、多くの貸主は空室リスクを避けるために、賃料を下げてでも借主を確保しようとするのが実情です。
実際に、「相場通りで募集したが問い合わせがほとんど入らず、途中で家賃を下げた」というケースは珍しくありません。
とくに単身向け物件では、近隣に類似物件が多いため、事故歴があるだけで比較検討から外されやすい傾向があります。
こうした状況が続くことで「事故物件=家賃が安い」というイメージが世間に浸透しているともいえるでしょう。
また、遺体の発見が遅れて特殊清掃が必要となった場合は、借主に心理的な面に加え、衛生面の不安を与えることがあります。いくら原状回復しても敬遠されることが多く、追加で1割〜2割の値下げが必要になることもあるでしょう。
実務上も、特殊清掃後に臭気が残っていたり、床下・壁内部まで工事が必要になったりしたケースでは、さらに賃料を下げなければ入居が決まらなかった事例があります。
とくに近年は、事故物件情報サイトの普及により、物件情報をインターネットで簡単に調べられるようになりました。その結果、部屋を借りようとする人が事前に情報を得たうえで「家賃交渉を前提に内見する」ケースも増えています。
また、入居後の心理的不安による短期退去や家族の反対による契約キャンセル、内見後の辞退などが発生するケースもあり、通常物件より募集期間が長引くことがあります。
このように事故物件は売却時だけでなく、賃貸として運用する場合にも期待どおりの利回りが得られない可能性があります。収益物件として活用する際は、家賃下落や空室リスクを織り込んだうえで、慎重に判断することが重要です。
事故物件の売却価格を左右する要素
事故物件の売却価格は、事故物件の特性や買手側の需要などによって最終的に判断されます。
実務上も、「事故物件だから一律で安くなる」というより、「どれだけ需要が残るか」「買主がどこに不安を感じるか」によって価格差が生まれるケースが多くみられます。
たとえば、同じ自殺物件でも、都心駅近マンションは比較的早期に成約した一方で、地方の老朽化した戸建ては長期間売れ残ったといったように、事故内容以外の条件が価格へ大きく影響することも珍しくありません。
事故物件の売却価格を左右する要素として、主に次のものが挙げられます。
- 不動産の元々の価値
- 事故の内容
- 物件の状態
- 売却のタイミング
- 事故物件の売却先
実際の売却現場でも、「事故内容は重いが立地需要が強く比較的高値で売却できたケース」がある一方、「事故自体は軽微でも建物老朽化や再建築不可が影響し、査定が伸びなかったケース」もあります。
以下では、事故物件の売却価格を左右する要素について、詳細とクランピーリアルエステートが実施した口コミなどを紹介します。
不動産の元々の価値
事故物件とならなかった場合の不動産本来が持つ快適性や利便性(ここでは元々の価値といいます)は、売却価格を大きく左右する要因になります。
不動産価値の高い物件なら、事故物件でも買手からの需要が発生しやすいからです。もし事故内容が取引の判断に大きな影響を及ぼさないものだと、価格が大きく下がらない可能性があります。
不動産価値を左右する主な要因は以下のとおりです。
- 「駅近物件」「周辺に行政機関や商業施設」「学校や病院の近く」などの利便性
- 土地の面積、土地の形状、間口の広さ、建物の間取りなど不動産の広さ・形
- 建物の築年数やデザイン性
- 不動産に附属する設備の性能・種類
- 地勢・地盤や耐震性などの防災性
「ここに住みたい!」「リノベーションすれば賃貸物件として活用できる」と思わせる魅力があれば、事故物件でも売却価格は高くなるでしょう。
また、都心部のワンルームマンションや再開発エリア周辺、賃貸需要が強い駅近物件などでは、事故物件でも投資家需要が残るケースがあります。
実際の売却相談でも、「事故物件であることは理解しているが、利回りが合えば検討したい」という投資家から問い合わせが入るケースも珍しくありません。
とはいえ、通常の物件と全く同じ価格での売却は原則として困難であると認識しておいてください。
金融機関の住宅ローンでも事故物件の担保価格は低く見積もられることが多く、住宅ローンを組みづらい買手側からすると購入に二の足を踏むケースも想定されます。
<不動産の元々の価値に関する口コミ>
- 居住性・機能性には変わりがないから。(男性)
- 現在住んでいる公営住宅は2021年に入居、高齢の方が亡くなり5年空いていた事故物件ですが随時募集だったので入居。訳ありでも家賃が安く高崎駅に近く便利な所なのでまずまずと思うから。(女性)
事故の内容
事故物件は元々の不動産価値に加えて、「どのような事故・事件だったか」という事故の内容も売却価格を左右します。
一般的には、孤独死なら10〜20%、自殺なら30〜50%、殺人なら50%ほど価格が下がるケースが多いとされています。
ただし、実際の査定では「死因」だけでなく、「どれだけ心理的抵抗を与えるか」が重視される傾向があります。
たとえば「自殺・殺人の死因や背景への嫌悪感が強い」といった、買手が抵抗を感じやすい事故・事件の内容ほど減額幅は大きくなります。凄惨な殺人事件で亡くなっている場合だと、50%を大きく超える割合で減額されることも珍しくありません。
また、全国ニュースで報道されていたり、事故物件サイトに詳細掲載されていたりするといったケースでは、事故から年数が経過していても価格調整が必要になることがあります。
実際の売却現場でも、「事故から10年以上経っているが、ネット検索で事件記事が出るため内見後に断られた」というケースは珍しくありません。
<事故の内容に関する口コミ>
- 事故物件のなかで、殺人、自殺などの場合は、人の想いが強く残っていそうでかなり抵抗がある。ただ、自然死については、そんなに抵抗はない。(女性)
- 事故物件といっても自殺・殺人だけでなく病死などもあるので、どのような状況で亡くなったのかによっても変わります。(男性)
物件の状態
事故・事件の内容や遺体発見のタイミングによっては、死亡者の血液・体液・汚物が床・壁などに付着してしまい、シミや匂いとして染み付いているケースも珍しくありません。
実務上は、「事故があった事実」そのものより、「室内状態がどこまで回復しているか」が価格に直結するケースも少なくありません。
シミや臭い、そのほか事件・事故や遺体の痕跡がどの程度残っているかによって、事故物件の売却価格は左右されますが、一般的に痕跡が明らかである場合には、売却価格は低くなるでしょう。
事件・事故や遺体に関する痕跡は、特殊清掃によって除去します。遺体関係の死臭・腐敗臭の除去や細菌の消毒などは、通常の清掃ではまず落ちないからです。
実際の買取現場でも、売主側が「軽い清掃で済むと思っていた」が、現地調査で臭気残りや害虫発生が判明し、大規模原状回復が必要になったケースがあります。
また、買主側も内見時に臭気や違和感へ敏感なケースが多く、「見た目は綺麗でも臭いで購入を断念した」という話は実務上よくみられます。
そのため、事故物件を売却する際は必ず特殊清掃をおこなうようにしましょう。
特殊清掃にかかる費用は数十万円はかかるのが一般的で、遺体発見が遅れた場合などは100万円を超えるケースもあります。多額の出費となりますが、売却価格や買主の印象に大きく影響するため、結果的に実施したほうが売却を有利に進めやすくなるでしょう。
なお、買取業者への売却の場合は、特殊清掃を買取業者側が負担してくれる可能性もあります。
ただし、実務上は「高額なリフォームをしても、その分だけ売却価格が上がる」とは限りません。
エリア需要や建物寿命によっては、現状売却のほうが合理的なケースもあります。
<物件の状態に関する口コミ>
- 事故の痕跡などが残っていたりすると抵抗がある。(女性)
- どのような状態まで改装されているかわからないから。(男性)
売却のタイミング
不動産の売却価格は、その時々の経済状況やトレンドなどによっても左右されます。同じ地域にある同じ条件の不動産であっても、売却のタイミングによっては平均的な相場よりも高額で売れたり、反対に査定額が低くなることも考えられます。
事故物件自体の相場は最初から低めになるものの、価格相場が高いタイミングで売却できれば少しでも高く売却できる可能性が出てきます。
不動産価値を左右する、経済やそのほか外部的な要因は主に次のとおりです。
- 不動産が所在する地域の知名度や人気の度合い
- 金融緩和といった経済成長の内容(低金利だと住宅ローンが組みやすくなって需要が上がるなど)
- 自治体ごとで導入される各種支援制度
実際の売却相談でも、「コロナ禍では動かなかったが、市況回復後に問い合わせが増えた」というケースはあります。一方で、景気悪化局面では、通常物件以上に事故物件の需要が落ち込みやすくなります。
また、事故発生直後は心理的抵抗感が強く、時間経過によって一定程度影響が和らぐケースもあります。
実務上も、「事故直後は反響がなかったが、数年経過後に価格を見直して成約した」というケースは珍しくありません。
売却のタイミングを見極めるには、過去の取引相場を調べたり複数の専門家の査定を受けたりして、事故物件の現在の価値がどのレベルにあるのかを確認するとよいでしょう。
事故物件の売却先
事故物件の売却先がどこになるかによっても、売却価格は大きく変動します。たとえば事故物件は不動産会社などの業者を利用して売却するのが一般的ですが、売却価格は依頼先となる不動産会社の種類や方針に影響を受けます。
業者を利用して売却する際に、売却価格を左右する要素は次のとおりです。
- 事故物件の取引に関する専門知識や取引実績を持っているのか
- 事故物件の所在地における不動産売買に関する実績が存在するのか
- 事故物件の査定額の算出方法は何を採用しているか
実際の相談では、「仲介会社では断られたが、別会社では投資家向け販売を提案された」というケースもあります。
また、一般個人向け仲介か、投資家向け売却か、不動産会社による買取かなど、売却方法によって重視されるポイントも変わります。
たとえば、一般個人向け仲介では心理的抵抗感が大きく影響する一方、投資家や買取会社では「再活用できるか」「収益化できるか」を重視して査定されるケースがあります。
実務上も、「一般市場では反響が少なかったが、投資家向けへ切り替えたことで成約した」というケースは少なくありません。
このように、同じ事故物件の査定を複数の業者に依頼した場合、業者ごとで査定額が大きく変わることも珍しくありません。そのため、事故物件の売却先をどこにするかは非常に重要なポイントになります。
<事故物件の売却関係の口コミ>
- 事故内容をしっかり教えてもらえるのと家賃、売値と関係が見合うかどうかで判断します。(男性)
- やっぱり怖いと感じると思う。その怖さと金額の安さを天秤にかけた時に安さが買った時住めると思う。(男性)
事故物件の価格相場を調べる方法
所有している物件が事故物件に該当する場合「まずはいくらくらいで売れそうなのか把握したい」と考える人も多いでしょう。
実際の売却相談の場では、「相続したものの価格感がわからず動けない」「不動産会社によって査定額が大きく違い、何を信じればいいかわからない」という声はよく聞かれます。
事故物件は、事故内容や室内状況、周辺需要やネット上の情報残存、売却方法などによって価格差が大きくなりやすいため、一般的な不動産以上に相場確認が重要です。
以下の4つの方法を活用すれば、おおよその売却価格の目安をつかむことが可能です。
- 不動産情報ライブラリを確認する
- 買取業者に依頼をして査定結果を参考にする
- 不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する
それぞれの方法について詳しく解説します。
不動産情報ライブラリを確認する
「地価公示」や「都道府県地価調査」は国や都道府県が公的に評価した基準価格であり、土地の目安価格として使われます。
一方で「不動産取引価格情報」や「成約価格情報」は、実際に売買された事例に基づいており、市場の実勢を反映しやすい情報です。
事故物件そのものの価格は掲載されていませんが、周辺エリアの通常物件相場を確認することで、「通常価格からどれくらい下がりそうか」を考える材料になります。
実際の売却相談でも、まず近隣通常物件の相場を調べ、その後に事故内容や室内状態を踏まえて価格調整を検討する流れは一般的です。
たとえば、同じ駅徒歩圏でも築年数で数百万円差がたり、駅近マンションは事故歴があっても需要が残ったりする一方、地方の築古戸建ては通常物件でも需要が弱いといった違いがあり、単純に「事故物件だから◯割安い」とは判断できないケースもあります。
また、事故物件では「エリア需要」が価格へ大きく影響するため、人口推移や駅利用者数、再開発状況などを確認しておくと、売却可能性を判断しやすくなります。
不動産情報ライブラリとあわせて、一般向けに公開されている「レインズマーケットインフォメーション」を利用すれば、地域ごとの売買事例や価格相場を確認できます。
レインズマーケットインフォメーションとは、指定流通機構(REINS)が運営する不動産情報サイトで、不動産会社による実際の成約価格データを一般に公開しています。誰でも無料で閲覧でき、自宅や所有物件の周辺における売買実績や価格相場を調べることが可能です。
参考:国土交通省「不動産情報ライブラリ」
参考:不動産取引情報提供サイト(マンション・戸建住宅の売買価格・相場・取引事例の情報公開サイト)「レインズマーケットインフォメーション」
買取業者に依頼をして査定結果を参考にする
事故物件の売却相場を把握する方法として、買取業者に直接査定を依頼する方法もあります。買取業者は買主を探すのではなく、自社で事故物件を買い取るため、スピーディーに相場を把握できるのがメリットです。
実際に弊社でも、「仲介で売れるかわからないので、まず現実的な買取価格を知りたい」という相談に対応する機会も多くあります。
とくに事故物件専門の買取業者であれば、事故内容や清掃の有無など、個別の事情を考慮したうえで、より現実的な査定価格を提示してくれます。査定結果を確認してから売却するかどうか判断できるため、まずは相談してみるのも一つの選択肢です。
一方で、実務上は、「同じ物件でも会社によって査定額が数百万円違った」というケースも珍しくありません。
たとえば、自社でリフォームできる会社か、投資家ネットワークを持つ会社か、賃貸運用前提で買い取る会社かによって、再活用方法が異なるため査定基準も変わります。
実際の相談でも、「A社では「取り扱いが難しい」と断られ、B社では投資家向け販売前提で査定が出。C社では解体前提で土地価格のみ提示された」といったケースがあります。
なお、一般的な仲介会社よりも買取価格はやや低くなる傾向があります。これは、業者がリフォーム費用や保有コスト、再販リスクや売れ残りリスクなどを見込んで査定するためです。
そのため「なるべく高く売りたい」人よりも「早く確実に売りたい」と考えている人に向いています。
また、特殊清掃が済んでいない物件や、心理的瑕疵の強い物件でも買い取ってもらえる可能性があるため、他の査定方法で断られた人にも向いているでしょう。
不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する
事故物件の市場価値を正確に知りたいときは、不動産価値判断の専門家である不動産鑑定士に依頼しましょう。不動産鑑定士とは、不動産の鑑定評価に関する法律に基づく国家資格者です。
事故物件に強い不動産鑑定士なら、物件の状態、周辺施設、経済状況などの詳細な部分まで考慮したうえで、事故物件の適正な価格を判断してくれます。
不動産会社の査定を受ける前に不動産鑑定士の査定額を聞いておくと、業者から掲示される売却価格が低いかどうかの判断基準になるでしょう。
一般的には不動産鑑定士に依頼せずとも、不動産会社による査定があれば、売買契約において十分に根拠のある査定結果を得られます。しかし事故物件は特殊な不動産であるため、事故物件の取り扱い実績が少ない不動産会社の査定だとそのまま信じるのもリスクがあります。とくに相続や財産分与なども絡むような複雑な不動産の価値判断には不動産鑑定士の利用が効果的です。
実務上も、「不動産会社の査定額に納得できず、不動産鑑定士へ依頼した」というケースがあります。
また、事故物件では査定会社によって価格差が大きくなりやすいため、第三者視点で価格整理したい場合に利用されるのも一例です。
ただし、不動産鑑定士への依頼には一般的に20万円以上の費用がかかるため、通常の売却だけであればコスト面がネックとなる可能性もあります。売却交渉や相続トラブルなど、明確な目的がある場合に利用を検討するとよいでしょう。
事故物件を少しでも高く売りたいときの対策
事故物件であっても、売却前の工夫や売却方法の見直しによって、価格の下落幅を抑えられるケースがあります。
実務上も、「事故物件だから大幅値下げしかない」というわけではなく、室内状態や売却戦略によって査定額や売却期間に差が出るケースは少なくありません。
とくに買主の心理的ハードルをどこまで下げられるかによって、価格交渉の受けやすさや反響数が変わる傾向があります。
少しでも高く売りたいときの具体的な対策は、以下のとおりです。
- 特殊清掃やリフォームを行っておく
- 事件や事故の印象が強い場合には売却まで期間をおく
- 複数の業者に査定を依頼しておく
以下で、それぞれのポイントを、実務上の傾向や実例を交えながら詳しく解説します。
特殊清掃やリフォームを行っておく
事故物件では、特殊清掃やリフォームによって室内状態を改善することで、買主の心理的負担を軽減できるケースがあります。
事故物件は、「過去に人が亡くなった」という事実だけでなく、「臭気が残っていそう」「衛生面に不安がある」といった印象を持たれやすい傾向があります。そのため、室内状態を整えることで、内見時の印象改善につながる場合があります。
実際の売却相談でも、最初の内見では臭気を理由に見送りとなったものの、特殊清掃や消臭対応を行った後に再募集したことで成約につながったケースがあります。
また、事故物件では内見時の第一印象が重要になりやすく、長期間放置された残置物や汚損箇所がそのまま残っていると、通常物件以上に買主の警戒感を強めてしまうことがあります。
実務上も、事故歴そのものより、部屋の空気感や管理状態を理由に購入を見送られるケースは少なくありません。
一方で、リフォーム費用をかければ、その分だけ高く売れるとは限らない点には注意が必要です。
たとえば、築年数が古く建物価値がほとんど残っていない戸建てでは、高額リフォームを実施しても査定へ十分反映されないケースがあります。実際の相談現場でも、「数百万円かけてリフォームしたが、売却価格は想定ほど伸びなかった」というケースはみられます。
また、事故物件では「どこまで原状回復されているか」を気にする買主も多く、特殊清掃済みであることや、床下・壁内部まで確認済みであることが安心材料になるケースもあります。
ただし、リフォームには数十万〜数百万円の費用がかかるケースもあるため、どこまで実施するかは慎重に見極める必要があります。事前に不動産会社と相談し、買主に評価されやすい部分に限定してリフォームするのが現実的です。
事件や事故の印象が強い場合には売却まで期間をおく
事故物件は、発生から一定期間をおくと心理的抵抗が薄れ、価格の下落幅が小さくなる傾向があります。
とくに事故直後は、ニュース報道やSNS拡散、近隣での話題化などによって印象が強く残りやすく、価格を下げても反響が集まりにくいことがあります。
実際の売却現場でも、「事故直後は問い合わせ自体がほとんどなかったが、数年後に再募集したところ内見希望が増えた」というケースがあります。
そのため、心理的瑕疵が徐々に風化するまで数ヵ月〜数年待ってから売却を検討するのも1つの方法です。たとえば、自然死や孤独死のような一般的なケースであれば、半年〜1年程度で市場の受け止め方が落ち着く場合もあります。
一方で、凄惨な事件や報道の影響が大きいケースでは、数年経っても印象が払拭されにくく、売却価格が回復しないおそれもあります。
このような場合、価格が回復するのを待つよりも、建物劣化や管理負担、固定資産税などの維持コストを鑑みて、早期に売却や買取業者の利用を検討したほうがよいケースもあるでしょう。
実際の買取現場でも、「価格回復を期待して保有していたが、建物老朽化によって逆に査定が下がった」「空室管理が負担になり、結果的に早期売却した」というケースがあります。
そのため、「待てば必ず高く売れる」と考えるのではなく、物件状況や市場動向も含めて判断することが重要です。
また、宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインでは、事故から相当期間が経過したもので、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案以外のものであれば告知義務が不要となる場合もあるとされています。売却時期や告知内容に悩んだ際は、不動産会社とよく相談し、事故の内容や地域の市場動向に応じて最適なタイミングを判断することが重要です。
複数の業者に査定を依頼しておく
事故物件を少しでも高く売却したいなら、複数の不動産会社に査定を依頼し、価格や対応方針の違いを比較することが重要です。
事故物件では、通常物件以上に会社ごとの差が出やすい傾向があります。
とくに、事故物件の取り扱い実績がある業者とそうでない業者では、査定額に大きな差が生じることも珍しくありません。心理的瑕疵への向き合い方や、販売手法・買主層の想定にも違いがあるため、1社の判断だけで進めるのはリスクが高いといえるでしょう。
実際の売却現場でも、「A社では売却が難しいと言われたが、B社では投資家向け販売を提案された」というケースは珍しくありません。
また、同じ事故物件でも、仲介前提で考える会社と、買取や投資家向け販売を前提に考える会社では、査定額や販売戦略が変わることがあります。
実務上も、「仲介会社では長期間売れなかったが、投資家向け販売へ切り替えたことで短期間で成約した」というケースがあります。
なお、事故物件に対する評価基準は業者によって異なり「告知義務の要否」や「心理的影響の程度」に対する捉え方にも差があります。事故の内容を正確に伝えたうえで、各社の見解や根拠を確認することが大切です。
注意点として、査定依頼後は営業連絡が増えるケースもあります。電話連絡を避けたい場合は、事前に「メールのみ対応可」などと明記しておけば、不要なストレスやトラブルを避けられるでしょう。
事故物件であることを隠して売却や賃貸の契約をすると告知義務違反となるため注意
事故物件に該当する事案を隠して売却・賃貸契約を結ぶと、「告知義務違反」となり、損害賠償や契約解除を請求されるリスクがあります。
事故物件における「告知義務」とは、過去に発生した死亡事故などの事実について、買主や借主が判断材料として必要とする情報を、あらかじめ伝える法的義務です。
これは宅地建物取引業法上の「重要事項説明」や、民法上の信義誠実義務に基づくものであるので、業者だけでなく個人の売主・貸主にも関係があります。
実際の売却相談では、「どこまで説明すべきかわからない」「昔の事故でも伝える必要があるのか不安」という声は少なくありません。
また、事故物件では、売主側が「すでに古い話だから問題ないと思っていた」が、買主側との認識に差があり、後からトラブルになるケースもあります。
宅建業者が媒介に入る場合は、本ガイドラインで示した対応を行わなかった場合、それで直ちに宅地建物取引業法違反となるものではありません。
しかし、対応を巡ってトラブルとなった場合には、行政庁における監督に当たり、本ガイドラインが参考にされることとなり、場合によっては責任を問われる可能性があります。
国土交通省が定めた宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインによれば、殺人・自殺・火災・事故死など「社会通念上、心理的抵抗を与える死」があった場合は、原則として告知しなければなりません。
一方、老衰・病死・自然死といった「通常想定される死亡」については、原則として告知義務の対象外とされています。ただし、死後長期間放置された遺体があったケースなど、特殊清掃や異臭発生が伴う場合は告知対象となることもあるでしょう。
実務上も、「孤独死だから説明不要と思っていたが、特殊清掃が入っていたため告知対象と判断された」というケースがあります。
告知義務を怠ったまま契約を結んだ場合、買主や借主から損害賠償や契約解除を請求される可能性があります。告知を怠ったことで賃料減額や損害賠償を命じられた裁判例もあり、判例上も貸主・売主側に不利な判断が下された例が多数存在します。
事故物件は一度誰かが住んだとしても告知義務がなくなるわけではない
「一度住めば事故物件ではなくなる」という見方は、誤解に基づくものです。
国土交通省のガイドラインでは、入居歴があるかどうかは判断材料の1つにすぎず、それだけで告知義務の有無が決まるわけではないと明記されています。
とくに殺人や自殺など、社会的にインパクトの大きい死亡事故があった場合は、たとえ入居実績があっても、心理的抵抗が残ると判断され、告知義務が継続する可能性が高いと考えられます。
実際の取引現場でも、「以前に賃貸入居者がいたので問題ないと思っていたが、売却時には告知が必要と言われた」というケースがあります。
告知の要否は、事故の内容や経過年数、立地、周囲の受け止め方などを総合的に判断されるため、「一度入居者がいれば告知不要」とは言い切れません。
実務上も、事件性が強いケースやニュース報道されたケース、ネット検索で事故情報が表示されるケースなどでは、入居歴があっても買主側が慎重になる傾向があります。
そのため、「一度誰かが住んだから告知不要」と自己判断するのは避けたほうがよいでしょう。
なお、事故から相当の時間が経過し、社会通念上、取引に影響しないとみなされる場合には、告知義務が免除される可能性もあります。
実務上も、「孤独死から相当期間が経過し、周辺認知も限定的だったため、通常売却に近い形で進んだ」というケースも存在します。
事故物件の売却なら専門業者への相談が選択肢になる
事故物件の売却では、通常の不動産売却とは異なる難しさが生じるケースがあります。
とくに、心理的抵抗感が強い物件では、仲介で売り出しても内見数が伸びにくかったり、契約直前でキャンセルになったりすることも珍しくありません。
実際の売却相談でも、「一般仲介で半年以上動きがなかった」「内見までは進むものの事故歴を理由に見送りが続いた」というケースは多くみられます。
そのため、状況によっては事故物件の取扱経験がある専門業者へ相談するケースもあります。
事故物件を扱う会社では、投資家向け販売や再活用ノウハウを持っている場合があり、通常の仲介では売却が難しかった物件でも取引につながるケースがあります。
たとえば実務上でも、「一般個人向けでは反響が少なかった物件を投資家向けへ切り替えた」「リフォーム前提の買主へ販売した」「賃貸運用目的の購入希望者へ提案した」ことで成約につながったケースがあります。
また、事故物件では、特殊清掃や残置物整理などが問題になるケースもあるでしょう。
実際の売却相談の場でも、「遺品整理や特殊清掃をどこへ依頼すればよいかわからない」という声は少なくありません。
業者によっては、提携業者を通じて特殊清掃や残置物撤去などを案内しているケースもあります。
とくに、「早めに整理したい」「遠方に住んでいて管理が難しい」「現状のまま売却したい」といったケースでは、仲介以外の売却方法も含めて比較検討される傾向があります。
一方で、事故物件を扱う業者であっても、得意としている物件種や対応エリア、販売方法や再販方針などには違いがあります。
実務上も、「マンションには強いが戸建ては対応外だった」「買取は可能だが特殊清掃は別手配だった」というケースがあります。
そのため、査定額だけでなく、事故物件の取扱実績やどのような売却方法を想定しているか、特殊清掃や残置物対応や投資家向け販売ルートの有無なども確認しながら比較することが重要です。
ただし、事故物件の専門業者といっても、対応できる物件の種類やサービス内容には違いがあります。売却したい物件の種別に対応しているか、買取実績が豊富か、特殊清掃やお祓いなどが可能かなど、事前に確認しておくことが重要です。
信頼できる業者を選べば、余計な手間をかけずに事故物件を納得の条件で手放すことができるでしょう。
まとめ
事故物件の売却価格は、事故の内容によって大きく変動します。通常の不動産と比較して、孤独死・病死・自然死なら1〜2割、自殺なら1〜3割、他殺なら3〜5割の価格下落が目安です。
ただし、孤独死でも遺体発見が遅れ特殊清掃が必要な場合、売却価格相場が3割近く下がる可能性もあるでしょう。
実務上も、同じ孤独死であっても、早期発見によって室内状態が良好だったケースと、発見が遅れて特殊清掃や大規模修繕が必要になったケースでは、査定額に大きな差が出ることがあります。
また、事故物件の売却価格は、事故の要因に加えて「買主からの需要」「物件の立地や築年数」「建物の状態」などの要素にも左右されます。
実際の相談現場でも、「事故歴はあるが駅近需要が強く比較的早く成約したケース」がある一方、「事故内容自体は軽微でも、空き家期間の長期化や建物老朽化によって査定が伸びなかったケース」もみられます。
相場を把握したい場合は、不動産情報ライブラリの活用や買取業者への無料査定依頼、不動産鑑定士による鑑定評価などの方法があります。
事故物件を売却するときには、特殊清掃やリフォーム対応の有無、告知義務などについて必ず確認しておいてください。確認を怠ると、買主がみつからなかったり損害賠償請求に発展したりといったリスクが発生します。
また、事故物件では一般仲介だけでなく、投資家向け販売や買取など、状況に応じてさまざまな売却方法が検討されます。たとえば、事故物件を売却するときは、事故物件専門の買取業者に依頼するのも1つの方法です。
とくに、長期間空室になっている物件や、遠方に住んでいて管理が難しい物件、特殊清掃や残置物整理が必要な物件では、事故物件の取扱実績がある不動産会社へ相談されるケースもあります。
そのため、査定額だけで判断するのではなく、「どのような販売方法を想定しているか」「事故物件の取扱経験があるか」といった点も確認しながら、自身の状況に合った売却方法を検討することが大切です。
事故物件の売却に関するよくある質問
事故物件を売却したときに税金はどうなりますか?
一般の不動産売却と同様に譲渡所得税が課されます。事故物件であること自体が課税の有無に影響するわけではありません。なお、取得費が不明な場合は概算(売却額の5%)となり税額が大きくなるケースがあるため、売買契約書や領収書などの確認が重要です。不安な場合は税理士などの専門家に相談しましょう。
事故物件と判断されるかどうかの基準は何ですか?
「買主にとって重要な心理的影響があるかどうか」が判断の基準です。孤独死や自然死であっても、発見の遅れや特殊清掃の有無などにより、心理的瑕疵として扱われる場合があります。明確な線引きが難しいため、取引前に専門家へ確認すると安心です。
売却前に遺族とトラブルになることはありますか?
物件に関する相続や遺産分割が完了していない場合、遺族間で売却方針がまとまらずトラブルに発展するケースがあります。相続登記が未了の場合、不動産の売却自体ができません。売却前には相続登記や遺産分割協議を済ませておくことが重要です。
売却後に事故物件であることを理由にトラブルになることはありますか?
はい。売却後に告知漏れが発覚した場合、買主から契約解除や損害賠償請求を受ける可能性があります。こうしたリスクを避けるためにも、媒介業者を通じて適切な説明を行いましょう。なお、告知義務は取引時だけでなく、媒介契約時点でも重要視されます。不動産会社とのやりとりでも、事実関係は正確に共有しておくことが大切です。
事故物件でも買主からの値引き交渉はありますか?
あります。とくに自殺や他殺があった物件では、事前の告知にもかかわらず買主からの価格交渉が入るケースは珍しくありません。価格交渉を想定しておくことで、相場に合った売り出し価格の設定や業者との事前相談がスムーズになります。