水路に面している土地の売却価格は約3割低下しやすい
あくまで目安ではありますが、水路に面している土地は、一般的な宅地と比較して3割程度価格が下がる傾向があり、実務上は「通常相場の7割前後」が一つの目安とされることがあります。
その主な要因の一つが、地盤の弱さによる物理的瑕疵です。
水路沿いの土地は水分を多く含みやすく、地盤が軟弱である可能性があります。このような土地では、建物を建てる際に地盤改良工事が必要となるケースがあり、数十万円〜数百万円単位の追加費用が発生することもあります。
買主にとっては「購入後に追加コストがかかる可能性がある」という不確実性があるため、その分を見越して価格交渉が行われやすくなります。結果として、売出価格や成約価格が周辺相場よりも低くなる傾向が見られます。
また、地盤リスクは目に見えにくいため、購入検討時には慎重に判断されやすいポイントです。特に個人の買主の場合、「将来的な不同沈下の不安」や「追加工事の負担」を懸念し、購入自体を見送るケースもあります。
実際のご相談でも、「地盤改良が必要と分かったことで当初の予算を超えてしまい、購入を見送られた」というケースは一定数見られます。
さらに、水路に面している土地は地盤要因に加えて、接道条件や建築制限など複数の要素が重なることも多く、これらが総合的に評価されることで価格が調整されるのが実情です。
そのため、売却を検討する際は、周辺の取引事例だけでなく、地盤状況や造成履歴なども踏まえたうえで、現実的な価格設定を行うことが重要といえます。
とはいえ、物件の立地や周辺環境などによって相場は前後するので、あくまで目安として押さえておくと良いでしょう。
水路に面している土地はデメリットが多く売れにくい
土地はいずれかの面が道路に面しているのが一般的です。
しかし、農地が広がるエリアでは、道路ではなく水路に面している土地もあります。
水路とは、用悪水路とも呼ばれており、かんがい用または排泄用の水路を指します。田畑を潤すための水路(用水)と使用後の水を排泄するための水路(悪水)の2つの水路があるのです。
使用後の水を排泄するための水路は、衛生上の観点から地下を通っているのが一般的です。
そのため、道路に面しているのは、ほとんどが田畑を潤すための水路といえます。
田畑を潤すための水路であれば、衛生上の問題もないため、土地を売却する際にもほとんど影響がないと思われがちです。
しかし、水路に面した土地には接道条件や地盤、利用制限などの観点でデメリットが多くあるため、結果として売却に時間を要するケースがあります。
まずは、水路に面した土地のデメリットについて、くわしく見ていきましょう。
デメリット1.建築不可の可能性がある
土地が水路に面している場合でも、すべてが建築不可になるわけではありません。重要なのは、建築基準法上の「接道義務」を満たしているかどうかです。
水路があることで道路との接続状況が制限され、接道義務を満たしていないと判断される場合は、建築確認が下りず新築できません。
建築確認の際に許可が下りず、接道義務を満たしていない土地には建物を建設すると、建築基準法違反として3年以下の懲役または300万円以下の罰金に科される可能性があります。(建築基準法98条)
接道義務とは・・・建築基準法で定められている幅員が4m以上の道路、特定行政庁が指定した区域内では、幅員が6m以上の道路に接していなければならない義務のこと。
実務上は、水路の位置関係によって判断が分かれるため、代表的な2つのケースに分けて解説します。
敷地と道路の間に水路があるケース
実務上もっとも多いのが、敷地と道路の間に水路が挟まっているケースです。
この場合、見た目上は道路に接しているように見えても、水路が介在していることで「道路に直接接していない」と判断され、接道義務を満たさない扱いとなる可能性があります。
ただし、以下のような一定の条件を満たした橋(通路)を設置することで、接道義務を満たせるケースもあります。
- 橋の幅が2m以上確保されている
- 恒久的な構造物として認められる
- 行政から水路占用許可を取得している
上記のような要件を満たすことで、「道路に接している」とみなされる可能性があります。
「橋がある=即接道認定」ではなく、占用許可の内容や構造図面、通行実態まで含めて総合判断されるため、事前に建築指導課へ個別照会を行うケースが一般的です。
道路がなく水路にしか面していないケース
一方で、敷地が建築基準法上の道路に一切接しておらず、水路にしか面していないケースも存在します。
この場合、橋を設置しても接続先が「建築基準法上の道路」でなければ、接道義務を満たすことはできません。
たとえば、以下のようなといったケースでは、原則として建築不可となります。
- 水路の先に道路が存在しない
- 接続できる道路が建築基準法上の道路に該当しない
実務上も、このパターンは「再建築不可物件」として扱われることが多く、住宅用途での利用が難しいため、購入検討者が限定される傾向があります。
再建築不可の可能性がある
水路に面している土地で接道義務を満たしていなければ、建築不可になります。
しかし、既にマンションや戸建て住宅が建設されている場合もあるでしょう。
そのような物件は、建築基準法の改正前に建設されており、建物が建設された時点では建築基準法を満たしていたことから「違法建築物」または「再建築不可物件」として扱われます。
違法建築物や再建築不可物件であっても、すぐ「建物を壊さなくてはならない」というわけではありません。
ただし、壊して新しく建て直そうとする場合には、最新の建築基準法が適用されるため、接道義務を満たしていない土地では再建築が認められないケースがあります。
接道義務を満たしていない建物付きの土地を購入しても、建物を建て替えられないため、価値の低い不動産だと判断されます。買主がなかなか見つかりにくいともいえるでしょう。
弊社が実際に聞いた話でも、「現状の建物は使えるが将来的に建て替えできるか不安」という理由で、購入判断に時間がかかるケースは少なくありません。
弊社では、このように買主が見つかりにくい土地や建物を多く扱っており、実際に買取も実現しています。
デメリット2.軟弱地盤の可能性がある
土地が水路に面していれば、土地の水分量が他の土地よりも多いです。
水分量が多い土地は地盤が弱くなるため、建物を建てる際には補強工事が必要になります。
土地の購入後には、補強工事の費用を買主が負担するため、買主の費用負担が大きくなります。
そのため、一般的な土地の相場よりも価格を下げないと、なかなか買主が見つからない可能性があるので注意しましょう。
また、契約後に軟弱地盤であることが発覚して、補強工事が必要になった場合、契約不適合責任を問われる可能性もあります。
【契約不適合責任とは】
契約不適合責任とは、売買契約で約束した内容と実際の物件の状態が一致していない場合に、売主が負う責任のことです。従来の「瑕疵担保責任」に代わり、2020年の民法改正で整理された概念です。
水路に面している土地のケースでは、説明されていない地盤の問題があったとして契約解除や損害賠償請求を求められる可能性があります。
買主とのトラブルを避けるためにも、売主は水路に面している土地であることや地盤状況について、事前に情報提供しておいた方がよいでしょう。
実際に弊社が扱った土地についても、地盤調査の有無や過去の利用状況(土地が元々田んぼだったかなど)が価格交渉に影響するケースが多く見られました。
デメリット3.水路から水が溢れる恐れがある
水路は川からの分流であることが多く、雨が降って流量が多くなった場合は、水路から水が溢れる可能性もあります。
その結果、建物や敷地に浸水被害が発生するリスクも考えられます。
こういったデメリットがあるため、水路に面した土地を売却することは困難だと言えます。
実際の取引でも、浸水履歴の有無や自治体のハザードマップの内容は、購入判断に大きく影響するポイントの一つとなります。
そのため、水路に面した土地の売却を検討する場合は、売れにくかったり、売却期間が長期化したりするリスクを踏まえておきましょう。
水路に面している土地の売却方法
水路に面している土地は条件面の影響を受けやすく、価格が安くなりやすかったり、買主の検討期間が長期化しやすかったりする傾向があります。
しかし、土地の特性に応じた売却方法を選択することで、検討の幅を広げることが可能です。
水路に面している土地を売却する方法として以下の2つが挙げられます。
- 居住用ではない土地として売却する
- 橋をかけて住居用の土地として売却する
それぞれの売却方法について、具体的に解説していきます。
【方法1】居住用ではない土地として売却する
買主が、必ずしも居住用の土地を求めているとは限りません。
田畑が隣接している場合は物置小屋を設置したり、駐車場として利用すれば、居住用以外の方法で活用できます。
そのため、居住用以外の用途を前提に売却することで、一定の需要が見込めます。
しかし、居住用ではない土地として売却する場合、買主が農家や駐車場オーナーなどに絞られて、売却までに時間を要するケースもあります。
すぐ買主を見つけて売却したいと考えていても、条件やタイミングによってはなかなか買主が見つからず苦労するかもしれません。
弊社でもこれまで、水路に面している土地のように、買主の層が限定される不動産を多く扱ってきました。
「資材置き場や駐車場として検討したい」といったニーズで成約に至るケースも実際にあるため、水路に面している土地でも売却を諦める必要はありません。
【方法2】田畑として売却する
水路が残っているエリアは、周辺に田畑が残っている可能性もあります。
そのため、田畑が隣接している場合には、農地としての活用を前提に田畑として売却するという選択肢もあります。
ただし、現状が田畑の場合にはそのまま売りに出せますが、一度整地している場合に田畑として売り出すのは容易ではありません。
土地として売り出す際は、現状や需要などを考慮しながら決める必要があります。
橋をかけて住居用の土地として売却する
接道義務を満たしていない水路に面した土地は、建築基準法の要件を満たしていないため、建物の建築が制限されるケースがあります。
そこで、道路との間口が2m以上ある橋をかければ、接道義務を満たすため、建築基準法の要件を満たした土地として売却できます。
しかし、水路の所有権は土地所有者に付随しているわけではないため、橋は勝手にかけられません。
水路は主に行政などが管理しているケースが多く、設置には事前の許可手続きが必要です。
では、どのような手順で水路に橋をかければよいのでしょうか?橋をかけて住居用の土地として売却する手順は以下の3つです。
- 水路の占用許可を取得する
- 水路の占用許可を承継できるか確認する
- 建築時の条件について確認する
次の項目から、詳しく見ていきましょう。
水路の占用許可を取得する
水路は国や都道府県、市町村といった行政が管理しているため、橋をかけるには、水路の占用許可を申請しなければなりません。
市町村に水路の占用許可を申請しますが、占用料が発生する可能性もあるので注意が必要です。
例えば、京都市は水路の占用料として1㎡あたり年間750円支払わなくてはなりません。
自治体によっては占用料が変わってくるため、事前に確認しておきましょう。
水路の占用許可を承継できるか確認する
水路の占用許可を取得して、道路に2m以上接する橋を設置すれば、接道義務を満たす可能性があります。
ただし、売却後にその占用許可を買主へ引き継げるかどうかを確認しておかなくてはなりません。
承継の可否によっては、買主側で再度手続きが必要になる場合があります。
承継できない場合は不法に水路を占用していることになるため、後で買主が自治体とトラブルに発展する可能性があります。
実際の取引でも、「許可の承継可否が不明確なまま話が進まず、検討が止まる」といったケースは少なくありません。
第三者に承継できない場合は、買主が次に水路の占用許可を取得するのにどんな手続きが必要か伝えておけば、買主も安心して土地を購入できるでしょう。
建築時の条件について確認する
水路に面している土地に、橋をかけて建築基準法の接道義務を満たしても、一般的な敷地と同様の建築条件が適用されるとは限りません。
宅地として認められても、容積率、建ぺい率、道路からのセットバックなど、何らかの制限が加わる可能性があります。
また、田畑が広がるような水路に面している土地は、都市計画区域内ではあるものの、用途地域の定められていない「市街化調整区域」で建物の建築に制限されていることもあります。
「建てられる住宅が制限されていると事前に知っていれば契約しなかった」いったトラブルを防ぐためにも、事前に土地に関する建築条件を確認しておきましょう。
水路に面した土地の建築条件が不明であれば、不動産に詳しい弁護士へ相談しても一つの手です。
弊社は水路に面した土地などの通常売れにくい不動産の買取も行っており、連携している士業事務所のご紹介も可能です。
「本当に売れるのか」「今の土地の建築条件はどうなっているのか」など疑問にも、必要に応じて士業事務所と連携してお答えいたします。
水路に面している土地の売却における注意点
水路に面している土地の売却時には、以下の3点に注意しましょう。
- 橋をかけると費用がかかる
- 橋にも固定資産税がかかる
- 制限がある場合は告知義務と契約不適合責任がある
それぞれの注意点を1つずつ解説していきます。
橋をかけるには多大な費用がかかる
橋をかけると、道路と面することになるため、建築基準法の接道義務を満たせます。
しかし、橋をかけるには、水路を管理する行政の許可が必要になるだけでなく、橋をかける費用がかかります。
とくに、橋の上を車が通過するといったケースでは、橋の耐久性も上げなくてはなりません。
水路の幅や耐久性によって費用は大きく異なりますが、数百万円かかることが一般的です。
橋をかけることで水路に面した土地を売れたとしても、橋の工事費用で赤字になっては元も子もありません。事前に必要な費用を確認しておいた方がよいでしょう。
弊社ご相談いただいた中でも、「橋を設置すれば住宅用地として売却できる可能性があるが、費用対効果が見合うか」で売却を判断されるケースもありました。
立地条件などによっては費用対効果を発揮するケースもあるため、まずは一度土地の現状や橋をかけた後の需要見込みなどを調べてみるのも良いでしょう。
橋にも固定資産税がかかる
水路に橋を設置した場合、見落とされがちなのが税務上の取り扱いです。
橋は単なる仮設物ではなく、土地に定着した構築物として評価されるため、原則として固定資産税の課税対象となります。
固定資産税は、土地や建物に限らず、構築物(舗装・塀・橋など)も対象に含まれるのが基本的な考え方です。橋についても、コンクリートや鉄骨などで恒久的に設置されている場合は、「償却資産」または「家屋に準ずる構築物」として扱われる可能性があります。
とくに車両通行を想定した橋などは、耐久性のある構造で設置されるため、課税対象として評価されやすい傾向があります。
自治体によって評価区分や課税方法は異なりますが、実務上は設置すれば課税される可能性がある前提で確認しておくことが重要です。
また、橋の設置に伴い行政への使用料が発生するケースもあるため、初期費用だけでなく維持コストまで含めて検討する必要があります。
このように、橋の設置は接道義務の解消につながる一方で、税務面の負担が新たに発生する点にも注意が必要です。
制限がある場合は告知義務と契約不適合責任がある
水路に面した土地を売却する際は「水路に面した土地であること」を買主に対して告知する必要(告知義務)があります。
告知義務とは・・・物件の瑕疵や欠陥をすべて説明する義務のこと。物件の取引時にかならずおこなわれます。
水路に面した土地であることを告知しないまま売却した場合、売主は契約不適合責任を負うことになります。
契約不適合責任では、契約解除や損害賠償の請求が買主に認められているため、トラブルを回避するためにも売買契約が成立する前に必ず告知しましょう。
水路に面した土地の売却は条件に応じて「仲介」と「買取」を比較検討しよう!
これまで説明した通り、水路に面した土地は条件面の影響を受けやすく、売却にあたっては慎重な検討が必要です。
一般的な不動産会社による仲介では、建築制限や地盤条件などを踏まえて価格や販売期間に影響が出るケースがあります。
買主がなかなか見つからないと、その間も固定資産税や都市計画税などを負担し続けなければなりません。また、橋をかける場合には、多額の追加費用がかかります。
そこで、水路に面した土地を売却するなら、不動産会社による仲介に加えて、「訳あり不動産専門の買取業者」による買取も選択肢も含めて比較検討することが重要です。
買取の場合は、条件によっては早期に売却できるケースもあり、スケジュールや手間を重視する際の選択肢となります。
まとめ
水路に面している土地は、居住用でない土地として、あるいは手続きや工事を経ることで居住用の土地として売却することが可能です。
ただし、水路に面している土地は、建築基準法の接道義務を満たしていない土地が多く、売却時にトラブルに発展する可能性もあるため注意しましょう。
駐車場として利用したいなど、居住用でない土地としての需要は一定数あるため、売却時の検討ポイントとなります。
一方、需要を見込んで居住用の土地として売却したい場合には、接道義務を満たす工事が必要なケースもあります。
接道義務を満たすためには、建築基準法で定められている道路に2m以上接していなければなりません。橋を設置することで接道要件を満たせる場合もありますが、水路は公共物であることが多く、自由に工事できるものではありません。
加えて、span class="red">水路に橋をかける際は自治体の許可が必要になり、橋をかける費用として数百万円程度の費用がかかります。
水路に面している土地を売るのは容易ではないため、売却にあたっては土地の特性や条件を踏まえたうえで、仲介・買取のいずれも含めた複数の選択肢を比較検討することをおすすめします。
水路に面した土地の売却時によくある質問
水路に面している土地はなぜ売れにくいの?
「建築・再建築不可の恐れがある」「軟弱地盤である可能性が高い」といったリスクを抱えているため、通常の土地と比べて売却が困難です。
水路に面した土地でも売れますか?
はい、売却可能です。「田畑や駐車場用の土地として売却」「水路の占用許可を取り、橋をかけてから売却」といった方法であれば、スムーズかつ相場に近い価格で売却できます。
水路に面した土地の売却時における注意点は?
告知義務と契約不適合責任に注意が必要です。「水路に面した土地」であることを伝えずに売却すると、損害賠償請求や契約解除される恐れがあります。
告知義務ってなに?
物件の瑕疵や欠陥をすべて説明する義務のことです。物件の取引時にかならずおこなわれます。
水路に面した土地はどこに売ればいい?
「訳あり物件専門の買取業者」へ売却するとよいです。契約不適合責任を負う必要がなく、最短数日で現金化も可能です。