建築工事の不備や、地震による地盤のズレなどで、家が傾いてしまうことがあります。
「家が傾いていると売却できない」と考える人は多いのですが、法律上の制限はなく、買主が傾きを承諾していれば売却は可能です。
しかし、実際に売り出しても買主がつきにくく、売却価格も大きく下がります。
傾いた家をスムーズに売却するためには、訳あり物件専門の買取業者に相談するのがおすすめです。
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家の傾きはどの程度まで許容範囲なのか?
家が傾いているかどうかを正確に判断する基準には、下記の2つがあります。
- 既存住宅状況調査
- 品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)
調査法や法律により判断基準が多少異なりますが、少しの傾きであれば瑕疵の可能性が低いと判断されることもあります。
ただし、実際に家の傾きが問題になるか否かは、買主の一存によります。
つまり、家が傾いていても構わないと買主が判断すれば、傾いた家をそのまま問題なく売却できるのです。
まずは傾きがある家について、一般的にどこまでが許容範囲とされるのかを確認しましょう。
家の傾きは瑕疵にあたる恐れがある
「瑕疵」とは、法律上何らかの欠点・欠陥があることを指します。
より具体的には、売買の目的物が本来備えている機能・性質を備えていない状態です。
そして、家を購入する場合、通常では傾いていないことが前提であると考えます。
つまり、購入した家が傾いていた場合、売買の目的物である家に瑕疵があると判断される恐れがあるのです。
国が定めている具体的な判断基準
「傾きが瑕疵に該当するか否か?」は、以下のように法的な基準があります。
- 住宅の品質確保の促進に関する法律(品確法)
- 災害にかかる住家の被害認定基準
どの程度の傾斜から「傾いた家」とみなされ、売却に影響するのか、詳しく見ていきましょう。
既存住宅状況調査では勾配の傾斜が6/1000以上だと「傾斜有り」と判断される
既存住宅状況調査とは、国の定める講習を終了した建築士が行う、建物の劣化・不具合を把握するための調査です。「ホームインスペクション」とも呼ばれます。
既存住宅状況調査では、床・梁・内壁の3部位で、勾配の傾斜が6/1000以上のときに「傾斜あり」とみなされます。
調査項目 | 「傾斜あり」の基準 |
---|---|
床の著しい沈み | 6/1000以上の勾配の傾斜(凹凸の少ない仕上げによる床の表面における2点(3m程度離れているものに限る)の間を結ぶ直線の水平面に対する角度をいう) |
梁の著しいたわみ | 柱の6/1000以上の勾配の傾斜(凹凸の少ない仕上げによる柱の表面と、その面と垂直な鉛直面との交差する線(2m程度以上の長さのものに限る)の鉛直線に対する角度をいう) |
内壁の傾き | 6/1000以上の勾配の傾斜(凹凸の少ない仕上げによる壁の表面と、その面と垂直な鉛直面との交差する線(2m程度以上の長さのものに限る)の鉛直線に対する角度をいう) |
6/1000の勾配を傾斜角度に直すと、0.3438°になります。床・梁・内壁に0.3438°以上の傾斜があると、傾いた家とみなされます。
品確法では傾きによって瑕疵の可能性が決まる
既存住宅状況調査では傾斜の有無を判断しますが、「傾斜が瑕疵になるか否か」は、品確法(住宅品質確保促進法)に基づき、国土交通省が定める基準を参考にします。
つまり、傾きがあるからといって必ずしも問題になるとは限らず、国土交通省の基準を参考にケース・バイ・ケースで判断するということです。
品確法による瑕疵の判定は、以下の3段階に分けて行います。
- 3/1000未満の傾き→瑕疵の可能性が低い
- 3/1000以上6/1000未満の傾き→瑕疵の可能性がある
- 6/1000以上の傾き→瑕疵の可能性が高い
3/1000未満の傾きの場合は瑕疵の可能性が低い
3/1000未満の傾きの場合には「瑕疵の可能性が低い」と判断されます。
国土交通省が定める品確法では、3/1000未満であれば健康被害などに対しても自覚症状はほぼないものとされています。
しかし、絶対に健康被害がないというわけではなく、通常生活で実際に何らかの支障をきたしている場合は瑕疵とみなされます。
3/1000以上6/1000未満の傾きの場合は瑕疵の可能性がある
3/1000以上6/1000未満の傾きの場合には「瑕疵の可能性がある」と判断されます。
3/1000以上6/1000未満の傾きだと、自覚症状がないか、傾斜は感じるものの生活への支障はないケースが大半です。
ただし、3/1000未満のときと同様、実際に生活への支障を感じるようであれば、何らかの対策が必要となります。
6/1000以上の傾きの場合は瑕疵の可能性が高い
6/1000以上の傾きの場合には「瑕疵の可能性が高い」と判断されます。
6/1000以上になると、傾斜を感じるだけでなく、次のような健康被害も考えられます。
- ふらつき
- めまい
- 睡眠障害
6/1000以上の傾きがある場合、大半のケースで修繕が必要となるでしょう。
ただし、必ずしも修繕が必要というわけではなく、小さい傾きでも実生活に影響が出ると瑕疵とみなされるように、傾きが大きくても生活に支障がないのであれば「許容範囲」とみなされます。
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傾いた家の売却価格の相場
傾いた家の売却価格の相場は、家が傾いている原因によって異なります。
例えば、床のみが傾いているだけであればそれほど価格は下がりませんが、基礎自体が沈下してしまっている場合には大幅に価格が下がります。
「どの部分が原因で傾いているのか?」を確認することで、どのくらい家の売却価格が下がるのかを予想できます。
続いては、傾きの原因ごとに売却価格の相場を解説します。
床だけが傾いている場合は50万~100万円程度下がる
施工不良などが原因で床だけが傾いている場合には、50万~100万円売却価格が下がります。
柱や外壁は問題がなく、床材や基礎の構造材だけが傾いている場合、修繕範囲も小規模なので、値下がり幅も小さくなります。
全体的に傾いていると約300~500万円近く下がる
床だけでなく、壁や梁などを含めた家全体的に傾いている場合は、約300~500万円近く売却価格が下がると考えられます。
特に、家が大きかったり、鉄筋コンクリート造のように頑丈な構造だったりすると、修繕費用が高くなるため、値下がり幅が大きくなります。
地盤沈下している場合は500万円以上下がる
地盤沈下による家の傾きの場合、売却価格は500万円以上下がることが多いです。
地盤沈下は、建物の重さに地盤が負けてしまう軟弱地盤や、防空壕や井戸など地下にある空洞が、主な原因と考えられます。
地盤を直すためには、一度建物を持ち上げたのちに地盤を改良しなければならないため、一部分のみが原因の傾きときより工事費用が高くなります。その分の値下げとして、売却価格も500万円以上下がってしまうのです。
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家が傾いているかどうかを調べる方法
「家が傾いているか?」を調べるためには、2種類の調査方法があります。
- 自分で調べる
- 専門業者に依頼する
専門業者を利用する場合でも、目的によって利用する機械なども変わります。
この項目では、それぞれの方法について具体的に解説します。
自分で調べる
自分で傾きを調べる方法としては、以下の3つが挙げられます。
- スマホアプリで調べる
- ホースを利用して調べる
- 5円玉を使って調べる
それぞれの詳しい測定方法を解説していきます。
スマホアプリで調べる
スマホのセンサー機能を使ったアプリで、家の傾きを調べることが可能です。
アプリを起動し、スマホを置くだけで測定できるので、誰でもお手軽に傾きを調べられます
無料・有料問わずさまざまなアプリがありますが、住宅調査会社や地盤工事会社などが出しているものなら、信頼性も高いのでおすすめです。
例としては、以下のようなアプリがあります。
→有限会社オプト「家の傾き簡単計測アプリ」
→株式会社よつば鑑定「傾きチェッカー」
ホースを利用して調べる
ホースを利用すれば、床の傾きを自分自身で調べることが可能です。
両端が3メートル以上ある場所で測定すれば、より正確に測定できます。
具体的には、下記の手順で測定します。
- テープでホースを壁に固定し、壁から床面まで垂直に下ろす
- ホースを床に沿って反対の壁まで伸ばし、1と同じようにテープで固定する
- ホースに水を満たす
- ホースの水面から床面までの高さを測定(両方ともおこなう)
両方のホースの水面から床面までの高さを測定できたら、その数値を次の計算式に当てはめます。
上記の計算方法では、単位をすべて「mm(ミリメートル)」とします。
計算の結果、床に傾きがあるようであれば、専門業者へ相談してより正確に調べてもらいましょう。
5円玉を使って調べる
5円玉と紐を利用することで、柱や壁の傾きを調べることが可能です。
具体的には、下記の手順で測定します。
- 壁から少し離した状態で5円玉をつけた糸を垂らす
- 1の糸の根元の壁からの距離と、先端の糸の壁からの距離を測定
- 糸の長さを測定
1~3でそれぞれの数値を測定したら、次の計算式で壁や柱の傾きを測定します。
柱の傾きを調べる場合には、壁でなく柱でおこなうことで柱の傾きを調べることが可能です。
専門業者に依頼する
自分で測定して傾きの疑いがある場合、専門業者を利用しましょう。
専門業者は、知識を持った技術者が専用機械を使用するため、傾きの正確な数値を測定できます。
具体的には、下記の3つの手順で測定します。
- オートレベル測定器で地盤の傾きを測定
- 下げ振りで建物の傾きを測定
- レーザーレベルで内部から建物の傾きを測定
機械を利用した専門業者による傾きの測定手順について、解説していきます。
オートレベル測定器で測定
オートレベル測定器を使用すれば、地盤の水平さや高さなどの測定が可能です。
具体的には、家の四隅に測定器を当てて、それぞれの目盛り(数値)を測定します。
測定した数値を比較して、数値に誤差がある場合にはそれが地盤の高低差となるため、正確な数値を測定できます。
下げ振りで測定
地盤の傾きを測定したら、下げ振りを利用して建物自体の傾きを調べます。
先ほど解説した5円玉を使った測定方法と似ていますが、専門業者では下げ振りという重りを2階もしくは3階から垂らし、上下の差を測定することで建物の傾きを調べます。
レーザーレベルで測定
レーザーレベルでの測定は、内部から傾きを測定するという測定方法です。
レーザーレベルでは、部屋の中心に測定器を設置し、レーザーによって水平線と床の高さを測定することで床がどれだけ傾いているのかを測定します。
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傾いた家を高い価格で売却する方法3つ
傾いた家をそのまま売却する場合、相場よりも安い価格となることがほとんどです。
傾いた家を高い価格で売却するには、下記の3つの方法があります。
- 傾きを修理・修繕して売却
- 家を解体して売却
- 訳あり物件専門の買取業者に売却
わかりやすくいうと、傾いている家を修理するか、解体するかの2択です。
次の項目から、それぞれの方法を具体的に解説します。
傾きを修理・修繕して売却
傾きを修理・修繕して売却すれば、相場に近い価格で売却できる可能性が高いです。
また、傾きを修理・修繕して売却することのメリットは他にもあり、買主が見つかるまで時間がかからないというのも大きなメリットです。
また傾きを修繕すれば、既存住宅売買瑕疵保険なども利用できるので、品質保証や瑕疵の保険を付けて買主に安心してもらうこともできます。
手間はかかりますが、修理・修繕してから売却するメリットは大きいです。
修繕するなら原因をしっかり特定してから取り掛かる
先述した通り、家の傾きは「建物が傾いている場合」と「地盤沈下が原因の場合」があります。
地盤沈下が原因の場合、建物をどれだけ修繕しても意味はなく、地盤の修正工事が必要です。逆でも同じで、建物が傾いているのに地盤工事を行っても、無駄な出費になるだけです。
まずは建築士が行う既存住宅状況調査(ホームインスペクション)を受けて、傾きの原因を明確にしてから必要な工事を検討しましょう。
家を解体して売却
家を解体した後で更地として売却する方法もおすすめです。
解体費用や手間はかかりますが、家を解体してしまうことで家の傾きなどの瑕疵の可能性がなくなるため、売却しやすくなります。
また「家は必要ないけど土地が欲しい」と考えている方も多いため、買主の幅を広げることが出来ます。
家を解体することで買主の需要が増え、より高額で売れる可能性も高まります。
ただし家が傾いた原因が基礎の沈下にある場合、買主が新しく家を建てても傾いてしまう可能性が高いため、売却後のトラブルを避けるためにも必ず売却前に調査しておきましょう。
訳あり物件専門の買取業者に売却
傾いた家を修繕や解体せずに売却しようとすると、なかなか買主が見つからず売却できないこともあります。
買主が見つからないが「修繕や解体をせずに家を売却したい・・・」という方は不動産買取業者へ売却しましょう。
不動産買取業者に売却すると、立地によっては傾いた家でも高い価格で売却できますし、買主を探す手間が省けます。
訳あり物件専門の買取業者なら、傾いた家でも最短2日で買い取れるため、すぐに売却したい場合はとくにおすすめです。
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傾いた家の売却でトラブルを避けるためのポイント
傾いた家を売却するにあたって、トラブルを避けるためには次の2点に注意しましょう。
- 買主に「家が傾いていること」を具体的に伝える
- 根拠のある価格設定を行う
買主に「家が傾いていること」を具体的に伝える
傾いた家を売る場合、買主に傾いていることを伝えなければ、契約不適合責任に問われる恐れがあります。
売却物の品質や数量などが契約内容と合わないとき、売主が負うべき責任範囲を定めたもの。売主の責任が認められると、代金減額や追完(修繕など)、契約解除や損害賠償を請求される。
取引において買主の意思決定に重大な影響をおよぼす事項は、事前に説明しなければいけません。傾きが瑕疵とみなされるレベルの場合、説明しないと確実にトラブルになります。
売主が瑕疵を把握していなくても責任を問われる可能性があるので、少しでも傾きの疑いがあるときは、しっかりと調査しておきましょう。
根拠のある価格設定を行う
傾いた家をそのまま売る場合、基本的には修繕費分+αの値引きを行います。修繕費分以上に値引きするのは、悪く言えば買主に修繕の手間を押し付けることになるからです。
しかし、実際にいくらで売るかは、あくまで売主に決定権があります。価格が高すぎると売れなくなりますが、低すぎると逆に損失となってしまいます。
また、買主によっては、傾いていることを理由に大幅な値下げを請求してくるかもしれません。
価格交渉で不必要に値下げしないためには、根拠のある価格設定が重要です。そのため、修繕する場合はいくらかかるのか、修繕業者から見積もりを取るようにしましょう。
修繕費用を把握しておけば、どのくらいの価格が適切なのか判断できるので、不必要な値下げをせずに済みます。納得のいく売却ができるよう、根拠をある価格設定を行いましょう。
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傾いた家を放置するリスク
調査や売却活動を面倒臭がって、傾いた家を放置している人もいます。しかし、傾いた家を放置していると、次のようなリスクがあるので注意が必要です。
- 健康面での悪影響がある
- 倒壊する恐れがある
- 空き家の場合は「特定空き家」に指定される
健康面での悪影響がある
すでに解説しましたが、家の傾きが大きいと、めまいや睡眠障害などの健康障害を引き起こす可能性があります。
症状が進行すると日常生活も困難になるかもしれないため、修繕なり引っ越しなり、早めの対策が必要です。
重症化する前に傾き問題を解決し、正常な生活を送れるようにしましょう。
倒壊する恐れがある
家の傾きを放置していると、家全体の構造に歪みが生じ、亀裂が発生する可能性があります。
本来なら水平であるべき建物が、不自然な角度で建っている状態なので、負荷のかかり方も偏ってしまいます。そのため、時間経過とともに歪みや亀裂が拡大し、最悪の場合倒壊するかもしれないのです。
また、倒壊までいかなくても、「ドアが開けにくい」「エアコンの効きが悪い」「水漏れやガス漏れが起こる」など、住宅として性能が下がります。
建物の状態が悪くなるほど、売却時の価格相場も下がってしまうので、早急な処分や修繕が必要です。
空き家の場合は「特定空き家」に指定される
傾いた家が空き家の場合、管理がほとんどされていない状態であると考えられます。
放置された空き家は、人が住んでいるときより劣化しやすく、外観も悪くなります。すると、自治体から「特定空き家」に指定されるかもしれません。
放置することで周辺に著しく悪影響のある空き家に対して、自治体が改善指導や命令を行う制度
特定空き家に指定されると、住宅用地特例(土地の固定資産税の軽減措置)からの除外や、50万円の過料、行政代執行による強制解体など、さまざまなデメリットがあります。
特定空き家の指定を避けるためには、住んでいなくても適切に管理するか、なるべく早く処分するようにしましょう。
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まとめ
この記事では、傾いた家の売却価格や売却方法、売却時の注意点などを解説しました。
傾いた家でも正しい手順を踏めば、トラブルの防止につながったり、より高い価格で売却が可能です。
そして傾いた家を売却できたら、売却によって得た利益をどうするのか検討しましょう。
よりよい不動産投資へ資金を活用したり、貯金して今後の生活資金にするなどあらかじめ資金の使い道を考えておくことで有効活用できます。