過去に事件や事故で人が死亡した物件や、自殺や殺人などがあった物件など、心理的な理由で敬遠される可能性がある物件を一般的に「事故物件」と呼びます。
価格が安いというメリットがある一方で、実際に住んでみると精神的なストレスを感じたり、売却する際に買い手がつきにくいといったデメリットもあります。
事故物件を購入する際は、活用方法や将来的な処分の計画まで含めて検討しなければ、総合的に損失を出してしまう可能性があります。価格の安さだけにとらわれず、メリットとデメリットをしっかり理解したうえで判断することが大切です。
本記事では、事故物件の概要をわかりやすく解説するとともに、購入前に押さえておきたいメリット・デメリットや、できるだけ安く購入するためのポイントを紹介します。事故物件の購入を検討している方が、安心して判断できる情報をまとめています。
事故物件とは「心理的瑕疵のある物件」
「事故物件=自殺や殺人が起きた物件」というイメージを抱く方も多いのではないでしょうか。
そうしたイメージも間違いではないですが、正確には「心理的瑕疵のある物件」を事故物件といいます。
「心理的瑕疵のある物件」とは、過去に人が死亡するなどの事件や事故があり、心理的抵抗を感じてしまう事項(心理的瑕疵)がある物件のことです。
ただし「心理的な瑕疵」は法律で定義されているわけではなく、あくまで個人の判断に任せられています。
また、雨漏りやシロアリ被害による欠陥、建築資材へのアスベスト使用などの問題は物理的瑕疵となります。
わかりやすくいうと、事故物件とは「知っていたら契約をしなかったかもしれない」と感じる心理的瑕疵のある不動産のことです。
「事故物件を購入してもデメリットしかない」と思われがちですが、メリットも少なくありません。
次の項目では、事故物件を購入する前に知っておくべきメリットやデメリットを解説します。
事故物件を購入する2つのメリット
まずは、事故物件を購入するメリットについてご紹介します。
事故物件を購入するメリットは以下の2つです。
- 一般的な不動産よりも安く購入できる
- 賃貸物件として利用すれば高い利回りを期待できる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
1.一般的な不動産よりも安く購入できる
事故物件を購入する1つ目のメリットは、一般的な不動産よりも安く購入できることです。
事故物件を売買する場合、事故物件となった原因(心理的瑕疵)について売主から買主へ必ず告知する必要があります。
もし売主が買主へ心理的瑕疵を告知しない場合、告知義務違反となるため契約自体の取り消しや、瑕疵担保責任にともなう損害賠償を請求できます。
※瑕疵担保責任・・・不動産を購入した時点で物理的瑕疵または心理的瑕疵があった場合、売主が買主に対して負う責任のこと
事故物件に関する説明を受けて、抵抗を感じてしまう方も多いかと思います。
そのため、事故物件は一般的な不動産と比べると需要が低く、平均的な販売価格では売却しづらいと判断され、価格が低いのです。
事故物件の販売価格の目安は以下のとおりです。
| 心理的瑕疵の要因 |
販売価格 |
| 自然死(孤独死や病死など) |
一般的な販売価格から10%程度の減額 |
| 自殺 |
一般的な販売価格から20~30%程度の減額 |
| 他殺(殺人事件) |
一般的な販売価格から30~50%程度の減額 |
殺人事件などで亡くなった事故物件の場合、アパートやマンション名などが報道されるため、重度の心理的瑕疵と判断されて周辺相場の半額まで値下げされているケースもあります。
そのため、一般的な不動産に比べると事故物件は安く購入できるというメリットがあるのです。
2.賃貸物件として利用すれば高い利回りを期待できる
事故物件を購入する2つ目のメリットは、賃貸物件として利用すれば高い利回りが期待できることです。
以下のような条件の不動産は高く売買されることが多いです。
・住まいの建物と駅が近い場所にあるなどの利便性に優れた土地
・不動産の周囲に生活に必要な施設が揃っている環境の良い物件
このような不動産でも、事故物件であれば基本的に安く購入できます。
賃貸経営を成功させたい場合、できる限り費用を掛けずに賃貸物件を入手したい貸主が多いです。
リフォームやリノベーションなどで事故物件の雰囲気を払拭できれば、周辺相場と変わらない家賃での貸出が可能になるケースも多くあります。
安く購入した事故物件を賃貸物件にして入居者を集められれば、高い利回りが期待できます。
ただし、貸し出すときは事故物件であることを告知する義務があると忘れないようにしましょう。
事故物件を購入する2つのデメリット
つづいて、事故物件を購入するデメリットを解説していきます。
事故物件を購入する場合、以下の2つのデメリットがあります。
- 実際に住むと精神的なストレスを感じることがある
- 売却する場合に買主が見つからない可能性が高い
次の項目から、それぞれ詳しくお伝えします。
1.実際に住むと精神的なストレスを感じる場合もある
事故物件を購入する1つ目のデメリットは、精神的なストレスが皆無とはいえないことです。
先述したとおり、事故物件とは過去に事件や事故などがあった物件のことです。
売主から告知されているので、買主は事故物件の心理的瑕疵を理解しているはずですが、実際に住んでみると気になってしまう方も多くいます。
もちろん「事故物件に住んでも何も感じない」という方もいますが、これは実際に事故物件に住んでみないとわかりません。
売却するにも時間や労力がかかるので、事故物件の購入は精神的ストレスを考慮して慎重に検討しましょう。
2.売却する場合に買主が見つからない可能性がある
事故物件を購入する2つ目のデメリットは、売却する場合に買主が見つからない可能性が高いことです。
さまざま事情から、購入した事故物件を手放さないといけない状況が起きたとします。
そのような状況でも、事故物件に関する告知義務があるため、購入希望者に心理的瑕疵を告知しなくてはいけません。
自分は購入時に問題ないと判断した心理的瑕疵でも、他人からすれば購入を躊躇するほど重大な瑕疵と捉えられてしまう場合もあります。
いつまでも事故物件を売却できないと、その間も固定資産税や管理費がかかってしまいます。
事故物件を安く購入できる2つの方法
ここまで、事故物件を購入するメリットやデメリットを解説しました。
もし事故物件を購入するのであれば、できるだけ安く購入したいですよね。
事故物件を安く購入できる方法は以下の2つです。
- 事故物件になったばかりの不動産を購入する
- 不動産会社と価格交渉をして安く購入する
それぞれの方法について、くわしく解説します。
1.事故物件になったばかりの不動産を購入する
事故物件を安く購入する1つ目の方法は、事故物件になったばかりの不動産を購入することです。
つまり、事故物件になってから一度も購入されていない不動産の購入をおすすめします。
事故物件の心理的瑕疵は事件や事故が原因ですが、日が経つにつれて人々の記憶から薄れていくことが多いです。
もし自分が購入する前にも購入者がいた場合、事故物件に対する心理的瑕疵は少なくなると考えられます。
- 数十年前に事故物件となった不動産(事故物件となってから2組の入居があった)
- 数ヶ月前に事故物件となった不動産(事故物件となってから入居者はいない)
上記の2つの事故物件を比べてみてください。
「数十年前に事故物件となった不動産」は、事故物件となってから年月が経っているだけでなく、過去の入居歴もあります。
「数ヶ月前に事故物件となった不動産」は、事故物件となってからの日が浅く、事故物件となってからの入居歴はありません。
どちらも事故物件とひと括りにされますが、一般的にみると「数ヶ月前に事故物件となった不動産」の方が人々の記憶に新しく、心理的瑕疵も重いと判断されます。
そのため、同条件の不動産であっても、不動産会社は「数ヶ月前に事故物件となった不動産」の方を安く販売することが多いです。
そのため、安く購入したい場合、事故物件になったばかりで一度も購入されていない不動産を購入するとよいでしょう。
2.不動産会社と価格交渉をして安く購入する
事故物件を安く購入する2つ目の方法は、不動産会社と価格交渉をすることです。
事故物件は一般的な不動産より需要が低く、なかなか買主も見つからずに困る不動産会社も少なくありません。
確実に事故物件を購入してくれるとわかれば、不動産会社も価格交渉に応じてくれる可能性があります。
よって、事故物件を購入する前には、一度は価格交渉してみることをおすすめします。
事故物件を賃貸にするには相応のリスクがある
事故物件は、利回りもよく不動産投資としては人気となっています。
そのため、事故物件を購入した後、賃貸物件として利用したい方も多いのではないでしょうか。
しかし、事故物件を賃貸物件とするには相応のリスクが発生します。
まず大前提として、事故物件は賃貸物件を探す借主にも敬遠されがちです。
そのため、賃貸物件として貸出するには賃料を安く設定する必要があります。
さらに、実際に事故物件を賃貸として扱う場合、いくら家賃を下げたとしても借主が見つからない可能性も十分にあります。
そのため、安く購入できる事故物件であっても、入居希望者が現れない限りは利益を出せず、維持費だけが掛かってしまうリスクがあるので注意しましょう。
まとめ
「事故物件」にマイナスなイメージを抱く方も多いですが、以下のようなメリットもあります。
- 一般的な不動産よりも安く購入できる
- 賃貸物件として利用すれば高い利回りを期待できる
もちろん事故物件には、以下のような特有のデメリットが存在することも忘れてはいけません。
- 実際に住んでみると精神的なストレスを感じることがある
- 売却する場合に買主が見つからない可能性がある
事故物件は日が経つにつれて、事件や事故の記憶が薄れていくため、価値も戻る傾向にあります。
そのため、事故物件を安く購入したい方は、事故物件となってからの日が浅く、一度も購入されていないものを購入しましょう。