火葬場や葬儀場などの施設が周辺にある物件は心理的な抵抗感を抱きやすいため、売却価格の相場が低かったりなかなか売れないという問題があります。
実務上、売却相場の下落幅は施設の種類によっても異なります。遺体を火葬し、煙や臭いの懸念が伴う「火葬場」が近い場合は20〜30%程度安くなることも珍しくありません。
一方で、お葬式のみを行う「葬儀場」であれば、数%〜10%程度の下落で済むケースも多いのが実情です。
ただし、下落幅の数値はあくまで目安であり、実際の影響はエリアの特性や地域住民の認識、周辺環境などによって大きく異なります。
具体的には以下のような方法で売却できる可能性があります。
火葬場や葬儀場近くの物件を売却する方法
| 売却・活用方法 |
内容 |
注意点 |
| 一般的な相場価格で売り出す |
最初から値下げせず、まずは通常の相場価格で売却活動を始める方法 |
火葬場・葬儀場への心理的抵抗感から、反響が少なくなるケースもある |
| 価格を下げて売却する |
相場価格で売れない場合に、価格調整をしながら売却する方法 |
最初から大幅値下げすると、価格交渉で不利になる可能性がある |
| 葬儀場に駐車場として売る |
葬儀場や火葬場の駐車場需要を見込んで土地を売却する方法 |
建物がある場合は、解体費用や整地費用の負担を事前に協議する必要がある |
| 訳あり物件専門の買取業者に依頼する |
訳あり物件を専門に扱う不動産業者へ直接売却する方法 |
仲介より売却価格が低くなる傾向があるため、複数社比較が望ましい |
まずは通常の相場価格で売却活動を始め、反響状況を見ながら価格調整していくのが基本的な流れです。それでも売れない場合は、売却手段を変えて駐車場として売ったり、訳あり物件を専門としている買取業者に売却するのが実務上の選択肢となります。
なお、売却以外の選択肢として「コインパーキングとして運営する」「コンビニ用地として貸し出す」など、収益化を目的として土地を活用する方法もあります。
ここで売却における注意点をお伝えします。火葬場や葬儀場が近い物件は、買主によっては心理的・環境的な嫌悪感を抱く可能性があるため、状況によっては「環境的瑕疵」として説明が必要になるケースがあります。
その事実を把握しながら買主へ十分説明せずに売却すると、後から契約不適合責任を巡るトラブルにつながる可能性もあるため注意が必要です。
火葬場や葬儀場近くの物件はいくらで売却できる?
火葬場や葬儀場が近くに存在しているというだけでは、物件自体に問題はありません。一見、売却価格には影響がなさそうに思えます。
しかし、実際は「死が連想されるので縁起が良くない」「煤煙や臭気などの居住環境が良くない」というイメージがあり、価格に影響が生じます。
火葬場や葬儀場が近い物件の相場
ひとえに火葬場や葬儀場が近い物件といっても、売却相場への影響は施設の種類によって異なります。火葬場が近い物件のケースでは、遺体を火葬して煙や臭いの懸念が伴う場合、20〜30%程度安くなることも珍しくありません。
一方で、お葬式のみを行う「葬儀場」であれば、数%〜10%程度の下落で済むケースも多いのが実情です。
ただし、下落幅の数値はあくまで目安であり、実際の影響はエリアの特性や地域住民の認識、周辺環境などによって大きく異なります。
火葬場や葬儀場に近い物件の相場が下落するのは「死」に関連する施設という印象から、需要が下がりやすいのが原因です。購入希望者が少なくなるので、一般的な相場より安くしなければ売れないケースが多いのです。
弊社へのご相談でも「立地は悪くないのに、火葬場が近いことで内覧後に断られる」「購入希望者から値下げ交渉を受けた」といったケースは少なくありません。
また、古い火葬場の場合は煤煙や臭気、照明設備や騒音などの影響を受けるリスクもあります。ただし、最近は設備を新しくし、目隠しを設けるなどの配慮がされる葬儀場や火葬場も少なくありません。
実際に火葬場や葬儀場から受ける影響が少なければ、一般的な相場に近い価格で売却できる可能性もあるでしょう。
不動産売却で「火葬場や葬儀場の近く」であるデメリット
不動産売却で「火葬場や葬儀場の近く」であるデメリットを具体的に紹介すると、以下の2つが挙げられます。
- 買主が少なく売却価格も安くなる
- 瑕疵担保責任を負う恐れがある
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
【デメリット1】買主が少なく売却価格も安くなる
火葬場や葬儀場は「死」に関連する施設であるため、心理的な抵抗感を持つ方も一定数います。
「死」に関する事柄は、なるべく避けたいと思うのが普通です。住居として不動産を購入予定の人にとって「火葬場や葬儀場の近く」という条件は、とくに気になる要素でしょう。
ただし、必ずしも全員が気にするとは限りません。実際に、弊社では火葬場や葬儀場が近いことなどを理由に売却が難航している、いわゆる「訳あり物件」のご相談を受けることがあります。そのなかで購入を検討される方の中には「価格が安ければ気にならない」「利便性や立地を優先したい」と考える方も一定数いらっしゃいます。
しかし、自身が気にしない人でも、値下げ交渉の材料として火葬場や葬儀場であることを指摘してくる方が一定数いるのも事実です。交渉の結果、他の物件より安くせざるをえないケースもあるでしょう。
葬儀場や火葬場の近くは心理的に気になる人もいる
葬儀場や火葬場に集まる会葬者は喪服姿で、暗い雰囲気になっているのが一般的です。また、物件が葬儀場や火葬場沿いにある場合には、霊柩車を目撃する機会も増えます。
直接的に人の死に触れるというわけではありませんが、喪服姿の会葬者や霊柩車を目にする機会が多いことについて、心理的に気にする人もいるのが実情です。
これらは、買主の購入意欲を下げる要因です。そのため、周辺の雰囲気や住み心地を気にする購入者に対してはケアが必要です。
「霊柩車の通り道にはならない」「小規模な施設だから参列者はそこまで多くない」といった情報があれば、買主に伝えてあげることでスムーズな売却につながるでしょう。
【デメリット2】契約不適合責任を負う恐れがある
物件になんらかの瑕疵(欠陥や欠点)が潜んでいるにもかかわらず、買主に対して告知せずに売却した場合、売主は契約不適合責任を負います。
契約不適合責任とは、売買した不動産が「契約内容と違っていた」場合、売主が買主に対して負う責任のことです。
たとえば、「火葬場や葬儀場の近くにある」という事実も、買主によっては心理的・環境的な嫌悪要因として受け止められる場合があります。そのため、状況によっては重要事項として説明が必要になるケースもあります。
「契約不適合責任」は以前、「瑕疵担保責任」という名称でしたが、2020年4月の民法改正によって「契約不適合責任」に改正されました。なお、改正に伴う売主の告知義務など、実務上の大きな変更はありません。
火葬場や葬儀場は環境的瑕疵に該当する
環境的瑕疵とは、不動産実務において物件周辺に嫌悪施設が存在している状況を指します。嫌悪施設とは、住宅の近隣にあると嫌悪感や不快感がある施設です。
具体的な嫌悪施設としては、次のようなものがあります。
- 高速道路や線路
- ガソリンスタンド
- 暴力団事務所
- 葬儀場や火葬場
- ゴミ焼却場
「物件と嫌悪施設に、どれだけの距離があれば告知義務がなくなるか」という基準はありません。個々の条件で異なるため、不動産業者に聞いてみるのが確実です。
火葬場は「施設の設備」によって瑕疵としての影響度が変わる
火葬場は、設備によって「瑕疵としての影響度」が変わります。高機能の設備があれば周辺環境への影響が抑えられるため、価格の下落幅は小さくなる傾向があります。
古い施設の場合は、設備状況によって臭気や粉じんなどが問題になるケースもあります。しかし、新しい施設の場合は煤煙や臭気に対する対策が取られているため、これらの問題が生じる可能性はほとんどありません。
そのため、火葬場がいつできたのかによって周辺環境におよぼす影響が変わり、物件の売却価格に対する影響も変動するのです。
火葬場や葬儀場近くの物件を売却するときのコツ
火葬場や葬儀場近くの物件にはさまざまなデメリットがあるため、一般的な住宅に比べて需要が限定される傾向があります。
しかし、価格設定や売却方法を工夫することで、十分売却できる可能性はあります。
火葬場や葬儀場近くの物件を売るときの「コツ」を紹介していきます。
まずは一般的な相場価格で売り出す
火葬場や葬儀場が近いからといって、最初から値下げする必要があるとは限りません。まずは一般的な相場価格で売り出し、反響状況を見ながら価格調整するのがおすすめです。
火葬場は心理的な抵抗感を持たれやすい施設ですが、住宅地から離れていることも多く、物件から火葬場が見えないケースも少なくありません。
また、近年の火葬場は設備の改善が進み、煙や臭いなどが問題になりにくくなっています。生活への影響が少なければ、一般的な相場に近い価格で売却できる可能性があります。
葬儀場は火葬場よりも価格への影響が小さい傾向があります。特に駅前や幹線道路沿いなど利便性の高い立地では、購入希望者が葬儀場の存在を大きなデメリットと捉えないケースもあります。
周辺にスーパーや商業施設が充実している場合は、立地のメリットが評価され、相場価格で売却できることも珍しくありません。
弊社にも「火葬場が近いので最初から安く売るべきか悩んでいる」というご相談をいただくことがあります。その際は、まず周辺相場に近い価格で売り出し、問い合わせ件数や内覧状況などの反響を見ながら、必要に応じて価格を調整していく方法をご提案することがあります。
また、葬儀場や火葬場の存在を気にしない人もいます。
一度下げてしまうと元の売出価格に戻すことは容易ではないため、最初は一般的な価格で物件を売りに出した方がよいといえるでしょう。
価格を下げて売却する
一般的な相場価格で売れなければ、価格を下げて売り出すことを検討しましょう。火葬場や葬儀場近くの物件では、どうしても購入希望者が限定されやすいため、価格を下げることで検討層を広げられるケースもあります。
火葬場に近い物件が相場価格で売却できない場合は、問い合わせ状況を踏まえながら価格を調整することが現実的な方法です。もし、相手から値下げ交渉を受けるケースがある場合は、価格を下げることで売却できる可能性があります。
その際は、早期売却を優先するのか、それとも価格を重視するのかを整理したうえで、売却スケジュールとのバランスを考慮しながら価格を決定するのも方法のひとつです。
一方、葬儀場は火葬場と比較すると価格への影響が小さいケースが多く、立地や建物の条件が良ければ一般的な相場に近い価格で売却できる可能性もあります。そのため、すぐに大幅な値下げを行うのではなく、一定期間の反響を確認したうえで段階的に価格を見直すのが有効です。
ここで実務上の注意なのですが、大幅に下げすぎると、購入希望者との価格交渉で不利になる可能性があります。実際の売買では、購入希望者から「もう少し下げられませんか」と提示価格からさらに値下げを希望する方も少なくありません。
そのため、あらかじめ値下げ交渉を見越した価格設定にしておくことが大切です。値下げ幅は地域相場や反響状況によって異なるため、不動産会社と相談しながら段階的に調整するとよいでしょう。
葬儀場に駐車場として売る
都市部など土地が少なく地価の高いエリアの場合、施設があっても駐車スペースを十分に確保できていない場合があります。
そのような葬儀場や火葬場が近くにある場合、駐車場として土地を売却することも選択肢の1つです。
ただし、建物が残っている場合には、解体費用や整地費用をどちらが負担するのか事前に話し合わなくてはなりません。また、施設側に需要があるとは限らないので、事前に不動産会社を通じて必要性について確認することが大切です。
早く売りたい場合は「訳あり物件専門の買取業者」に依頼する
手間をかけずに不動産を処分したいのであれば、訳あり物件専門の買取業者に依頼するのも選択肢のひとつです。
訳あり物件専門の業者は、火葬場・葬儀場近くの物件や再建築不可、空き家など、一般市場では売却しづらい不動産を専門に取り扱っているのが特徴です。そのため、火葬場や葬儀場に近いという理由でなかなか売れない物件でも、比較的スムーズに売却できる可能性があります。
ただし、一般的に買取価格は仲介より低くなる傾向があるため「価格」と「スピード」のどちらを優先するのか整理したうえで検討することが重要です。
売却せず別の方法で活用する方法
「買主がまったく現れない」「できれば手放したくない」といった場合は、売却以外の活用方法も検討してみましょう。
火葬場・葬儀場近くの土地は、立地条件によっては事業用途として活用できる可能性があります。特に、施設利用者向けの需要が見込める場合は、収益化につながるケースもあります。
コインパーキングにする
自分でコインパーキングを経営すれば、会葬者向けの駐車需要が見込めるケースもあります。
ただし、駐車場需要が葬儀場や火葬場だけに限られている場合には、リスクが高くなります。コインパーキングを手掛ける業者に市場調査をお願いするなど、下準備をしっかり行いましょう。
コンビニ用の土地として貸し出す
周辺の住民や火葬場・葬儀場の利用者の需要が見込まれる場合は、コンビニ用の土地として貸し出すことも選択肢の1つです。
コンビニ用の土地として貸し出す場合、事業用定期借地権と呼ばれる制度を利用します。
事業用定期借地権とは、10年以上50年未満の範囲で事業用の土地として貸し出し、使用料金を徴収する制度です。
契約は必ず公正証書と呼ばれる書類で行う必要があります。公正証書は全国の公証役場で作成可能です。
長期的な契約になるため、契約後のトラブルを避けるためにも、弁護士など事業用定期借地権に詳しい専門家に相談した方がよいでしょう。
まとめ
火葬場や葬儀場に近いというだけで、直ちに不動産価値が大きく下がるとは限りません。とはいえ、物件を探している人の中には、火葬場や葬儀場に近いという状況を好まない人もいるのが実情です。
そのため、条件によっては周辺相場より価格調整が必要になる場合もあります。
相場に近い価格で売りたい場合はまず不動産仲介会社へ相談するのが基本ですが、長期間買い手が見つからない場合や、周囲に知られずスムーズに手放したい場合には、訳あり物件専門の買取業者に相談するのも有効な選択肢です。
訳あり物件専門の買取業者なら、一般市場では売却しづらい不動産でも買取対象として相談できる場合があります。