自殺があった跡地の売却価格は相場より10〜20%安い
事故物件の売却相場は、心理的瑕疵の内容によって異なります。
| 死因 |
売却価格 |
| 孤独死 |
0~10%下がる |
| 自殺 |
10~20%下がる |
| 殺人 |
20~40%下がる |
弊社に寄せられる事故物件の買取相談でも、自殺跡地の査定依頼は少なくありません。筆者の現場感覚に過ぎませんが、建物を解体した更地のほうが建物が残っている物件よりも査定額は高くなりやすい印象です。ただし、同じ「自殺跡地」でも、事件の内容や近隣住民の認知度、インターネット上の情報の残り方などによって査定額にはかなりの差が出ます。一律の相場で判断するのではなく、個別の事情を踏まえた査定を受けることが大切です。
なお参考までに、建物が残っている事故物件の場合、一般的な下落幅はこれより大きく、自然死や孤独死で10~20%、自殺で20~30%、殺人で30~50%程度とされることがあります。
自殺の跡地(建物を解体した更地)であれば、事故のあった建物自体がなくなる分、心理的瑕疵の影響が弱まるため、上記のテーブルのように下落幅は比較的抑えられる傾向があります。
ただし、必ずしも上記の価格になるとは限らず、好条件の物件なら高額売却できるケースもあるため、安値で手放さないように注意しましょう。
好条件の物件なら相場相応の価格で売却可能
正直なところ、心理的瑕疵を重く受け止めるかは買主によって異なります。
そのため、自殺跡地でも条件さえ良ければ、わざわざ売却価格を下げる必要はありません。
なぜなら、立地や広さなどのメリットが心理的瑕疵のデメリットを上回れば、自殺跡地でも高値で購入してくれる買主も多いからです。
一度でも売却価格を下げると値上げしにくいので、まずは市場価格に近い価格で売り出して、様子をみて値下げしていくとよいでしょう。
あまり意識されないことですが、心理的瑕疵の「伝え方」も売却価格に影響することがあります。告知義務があるからといって最初から過剰に説明しすぎると、買主の不安をあおってしまうことも考えられます。
実務上は、時期や場所、死因の概要など事実を簡潔に伝えたうえで、その後の特殊清掃の実施、建物の解体済みといった対応状況をセットで説明すると、買主の安心感につながりやすいです。
なかなか売れない場合は売却価格を値下げしよう
買主の中には、売出価格での購入を予定していたものの、心理的瑕疵を有していることを理由に、値下げを要求する人もいます。
また、心理的瑕疵を有している跡地であることを理由に、そのままの市場価格では買主が見つからない可能性もあります。
そのような場合の選択肢は、買主の値下げに応じること、売出価格を下げて買い手を見つけることです。
なるべく価格を下げたくないと考えている人も多いと思いますが、時間がかかれば固定資産税や都市計画税などが必要以上にかかるため、価格を下げて売ることも視野に入れる必要があるでしょう。
正確な売却価格は複数の不動産業者に確認するのがベスト
自殺があった跡地のより正確な売却価格を知りたい場合、まずは複数の不動産業者に査定依頼しましょう。
弊社に事故物件の売却相談をいただく方のうち、感覚的には6割前後の方が「最初に1社だけに査定を依頼し、その金額に納得がいかなかった」という経緯でお越しになります。事故物件は通常の物件以上に不動産会社ごとの査定ノウハウや経験値に差が出やすいため、最低でも3社程度には査定を依頼しておきたいところです。
一社ではなく、複数社を比較することで、より客観的な売却価格を知ることができます。
自殺の跡地の売却相場を左右するポイント
先述の通り、自殺が発生した物件は、心理的瑕疵があると判断されるため一般的に価格が下がりやすくなります。
ただ、その下落幅は一律ではなく、実際の売却相場は主に以下のような要素によって左右されます。
実際、弊社にお寄せいただくご相談のうち、自殺や他殺、孤独死といった「事故物件(心理的瑕疵物件)」に関するお問い合わせは1,433件(全体の約6.9%)にのぼります。多くの所有者様が、周囲の目や価格の下落幅、インターネット上の情報の残り方などに頭を悩ませており、個別の事情に応じた慎重な判断が求められていることがデータからも伺えます。
- 事件性の強さ
凄惨な自殺現場であった場合や、メディアで広く報道されたケースでは、買主が強い抵抗感を抱きやすく価格が通常より大きく下がりやすくなります
- 立地条件
駅から近い、周辺施設が充実しているなど、そもそも需要が高い土地は、心理的瑕疵があっても一定のニーズが残るため、価格の下落幅が抑えられることがあります。
- 自殺発生からの経過年数
自殺の発生から年月が経つほど、当時の印象が薄れ、周囲の認知も少なくなるため、心理的瑕疵の影響が弱まる傾向があります。
このように、自殺跡地の売却価格は、複数の要因を総合的に判断したうえで決まります。
弊社へのご相談でも、「10年以上前の自殺なのに、近所の人はまだ覚えているのか」「インターネットの事故物件サイトに載っているが、これは消せないのか」といったご質問をいただくことがあります。事件情報サイトに掲載されている場合は、年月が経過しても情報が残り続けるため、価格への影響が長期化しやすい傾向があります。こうしたデジタル上の情報の残り方も、近年では価格に影響する重要な要素の一つになっています。
自殺があった跡地を黙って売ることはできる?
自殺があった物件は心理的な抵抗感から敬遠されやすく、売りたくてもなかなか買い手が見つからず、売却価格も大きく下がりやすい傾向があります。
自殺があった物件を解体して更地にすれば、建物そのものは存在しなくなるため、建物がある状態よりは心理的な抵抗感が軽減されると考えられています。
そのため、「更地なら事実を伝えなくても問題ないのでは」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
実際のところ、自殺があった跡地を黙って売ることはできるのでしょうか?
自殺の跡地は心理的瑕疵のある物件
自殺があった跡地は、自殺現場となった建物を解体した後でも「心理的瑕疵」を有していると考えられます。
心理的瑕疵とは、買主がその事実を契約の前に知っていれば購入の判断を躊躇していたような事実です。
例えば、その物件で過去に自殺や他殺、事件・事故が発生した場合や、周辺に嫌悪施設がある場合、心理的瑕疵を有する物件と扱われます。
嫌悪施設とは、以下のような施設です。
- ・心理的に忌避される施設:墓地、風俗店、パチンコ店、葬儀場
- ・騒音や振動を発生させる施設:高速道路、飛行場、鉄道
- ・危険を感じさせる施設:ガソリンスタンド、暴力団事務所
- ・煤煙や臭気を発生させる施設:工場、下水処理場、火葬場
心理的瑕疵を有する物件は購入をためらう買主が多いため、売却時に買い手が見つかりにくく、売却価格も低くなりやすい傾向があります。
心理的瑕疵を有する物件と事故物件の違い
「事故物件」と聞くと、自殺や他殺、事件・事故が発生した物件を想像する人が多いと思いますが、事故物件とは、過去に人の死にまつわる出来事があった物件を指すのが一般的です。
なお、不動産の「瑕疵(欠陥)」には、シロアリ被害や雨漏りなどの物理的瑕疵と、人の死に起因する心理的瑕疵がありますが、一般に「事故物件」と呼ばれるのは後者の心理的瑕疵を有する物件です。
「建物を壊して更地にすれば、もう事故物件ではなくなるのでは」と考えて相談に来られる方も少なくありません。しかし実際には、建物を解体しても土地の心理的瑕疵が消えるわけではなく、売買では告知義務も残ります。建物の有無で変わるのはあくまで心理的瑕疵の「程度」であって、「有無」ではないという点は覚えておいていただければと思います。
しかし「瑕疵とは何か?」については、法律で明確に定義されている訳ではありません。
物理的瑕疵は建物の欠陥なので、目視で容易に判断できますが、心理的瑕疵については買主によって基準が異なるので判断が困難です。
買主へ心理的瑕疵を告知しなければならない
心理的瑕疵を有している物件にもかかわらず、売主から何も告知されないまま売買契約が成立すると、買主に想定外の不利益が生じてしまいます。
そのため原則として、心理的瑕疵を有している物件を売る際は、その事実を買主へ告知しなければなりません。
告知義務を果たしたうえで、物件を購入するかどうかは買主が判断する仕組みです。
事実を知ったうえで不動産を購入した場合、売主は契約不適合責任を問われにくくなります。
一般的に買主への告知は不動産会社がおこないますが、不動産会社がすべての情報を把握しているというわけではありません。
売主から情報提供がなければ、不動産会社は買主に対して正確な情報を告知できないため、告知義務を果たせないことになります。
そのため、告知義務を果たすためにも、売主は不動産会社へ心理的瑕疵の詳細をきちんと事前に説明しておきましょう。
なお、2021年10月に国土交通省が公表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、自殺や他殺といった事案について、売買では告知期間の定めがなく、事実上いつまでも告知が必要とされています(賃貸では概ね3年が目安)。
もし心理的瑕疵を告知せずに売却した場合、契約不適合責任を問われるリスクがあるため注意が必要です。
心理的瑕疵を告知せずに売ると契約不適合責任を問われる
売主は不動産を売る際に「契約不適合責任」を負います。
契約不適合責任とは、売買の目的物が契約の内容に適合しない場合に、売主が買主に対して負う責任です。2020年4月の民法改正により、それまでの「瑕疵担保責任」から名称・内容ともに変更されました。
もし心理的瑕疵を告知しないで売却した場合、契約不適合責任を問われるリスクがあるため注意しましょう。具体的には、以下のような請求を受ける可能性があります。
- 損害賠償を求められる
- 売買契約の解除を求められる
- 代金の減額を求められる
ただし、すべてのケースで契約不適合責任を問われるわけではありません。
では、自殺跡地の場合はどうでしょうか。
自殺があった跡地の売主は契約不適合責任を負う
原則として、自殺のあった物件は心理的瑕疵が大きいため、売主は契約不適合責任を負います。告知せずに売却することはできません。
建物を解体して更地として売る場合や、賃貸で次の入居者が入った後に貸し出す場合は、心理的瑕疵の影響が軽減されると考えられています。ただし、心理的瑕疵の感じ方は買主によって異なるため、影響が軽減されたとしても契約不適合責任を免れるとは限りません。
買主から契約解除や損害賠償を請求される恐れがある
一般財団法人不動産適正取引推進機構(RETIO)が2011年7月に発表した「心理的瑕疵に関する裁判例について」によると、心理的瑕疵に関して以下のような判例が出ています。
【事例1】
建物取り壊しを前提とした不動産の売買で、約1年4カ月前に建物内にて自殺があったケースの裁判です。自殺が生じてからの期間が短いことなどを理由に挙げ、買主に告知義務が必要だったと判断し、売買代金の25%を買主の損害賠償額としました。
【事例2】
8年7カ月前に物件上の共同住宅で焼身自殺があり、その後駐車場として使用されていた土地を売買したケースの裁判です。事件から8年以上が経過し、買主の分譲住宅が完売していたことなどから販売価格に事件の影響がなかったと判断し、瑕疵はないとしました。
住宅建築を目的とした土地の売買では、取り壊された建物で自殺があっても、既に事件のあった建物が滅失しているため、心理的瑕疵は多少和らぎます。
また、火災(失火)による死亡事故や殺人事件と自殺は別物と考えられるため、心理的瑕疵が軽減するものと考えられます。
しかし、近隣住民の噂を耳にする機会も多く、それが生活に支障を与える可能性も否定できません。
弊社が提携する弁護士からは、「自殺跡地の告知で最もトラブルになりやすいのは、口頭だけで伝えて書面に残していないケースだ」という話をよく聞きます。実務上も、重要事項説明書への記載だけでなく、告知内容を別紙として交付し、買主から受領の署名をもらっておく対応が増えているとのことです。こうした書面を残しておくことで、万が一のトラブル時にも「告知義務を果たした」という証拠になります。
自殺のあった跡地であっても、事件が風化するまでは告知義務があると考えられるため、告知義務を怠った場合には契約不適合責任を問われる可能性があります。
後で買主との間で契約解除や損害賠償などのトラブルに発展することを防ぐためにも、瑕疵は必ず事前に告知しましょう。
自殺があった跡地の売却を目指す方法
自殺のあった建物を壊して更地にすることで、物理的な痕跡がなくなり、買い手の心理的抵抗感が和らぐことで、取引条件が有利になる可能性はあります。ただし、心理的瑕疵そのものが消えるわけではなく、告知義務も引き続き残る点には注意が必要です。
ここでは、自殺があった跡地をできるだけ有利に売却するための方法を紹介します。
- 駐車場に用途変更してから売る
- トランクルームを設置してから売る
- 訳あり物件専門の買取業者へ売る
それぞれの方法について、くわしく解説していきます。
【方法1】駐車場に用途変更してから売る
居住用の土地として売却する際は「居住していた人が過去に自殺した跡地」という心理的瑕疵の影響を受ける可能性が高いです。
しかし、居住用の土地ではなく、駐車場に用途変更した状態で売れば、心理的瑕疵の影響を大きく軽減できます。
また、駐車場の運用結果が良好であれば、ある程度の価格で売ることも期待できるでしょう。
月極駐車場への転用にかかる費用は、整地やアスファルト舗装を含めて50~200万円程度が目安です(敷地面積や地盤の状態によって変動します)。コインパーキングの場合は運営会社がイニシャルコストを負担する方式もありますが、心理的瑕疵のある土地では運営会社の審査が通りにくいこともあるため、複数の運営会社に事前に打診しておくと安心です。
駐車場に用途変更して、運用してから更地に戻して居住用の土地として売却するという方法も考えられます。
過去の判決内容を見ると、用途変更して数年経過した後は自殺があったという事実が薄れて告知義務が生じなくなると読み取れます。
そのため、用途変更前よりも良い条件で買主が見つかる可能性もあるのです。
「実際に告知義務が生じないかどうか?」について宅建業者などの専門家に確認する必要はありますが、自殺跡地として売るよりも有利に売却を進めやすいでしょう。
注意:住宅用地の特例が外れ、固定資産税が最大6倍に
建物を取り壊して駐車場に転用すると、翌年1月1日から「住宅用地の特例」の適用が外れます。住宅用地の特例では、固定資産税が最大1/6に軽減されているため、特例が外れると固定資産税が最大6倍(都市計画税は最大3倍)に跳ね上がります。駐車場の収益でこの増税分をカバーできないと赤字になるリスクがあるため、転用前に必ず収支のシミュレーションを行いましょう。
【方法2】トランクルームを設置してから売る
駐車場に用途変更してから売るという方法と同様、トランクルームを設置してから売るという方法もあります。
トランクルームも運用結果が良好であれば、土地とトランクルームをセットで売ることも期待できます。
また、トランクルームを設置して運用した後、更地に戻して居住用の土地として売却することも可能です。
最近は、駐車場の費用や自動車税による支出などを理由に車を買わない人も増えているため、駐車場に用途変更してもなかなか借り手が見つからない可能性もあります。
しかし、トランクルームであれば「使わないものを預ける」という習慣が少しずつ広まっているため、アパートの近くやマンションの近くなどでは、より安定した需要が期待できるでしょう。
駐車場と同様に、建物を取り壊してトランクルームに転用した場合も、翌年1月1日から住宅用地の特例の適用が外れ、固定資産税が最大6倍(都市計画税は最大3倍)になります。トランクルームの収益と増税分を比較し、収支が合うかどうかを事前に確認してから判断しましょう。
【方法3】訳あり物件専門の買取業者に売る
ここまで解説した自殺のあった跡地の価値を高める方法は、いずれも多大な費用や手間がかかります。
しかし、費用や手間をかけて自殺跡地の価値を高めたからといって、必ずしもそれに見合った金額で売れるとは限らないので、ある種の賭けともいえます。
費用や手間をかけずに早めに売却したい場合は、訳あり物件を専門に扱う買取業者への売却も選択肢の一つです。
通常の取引では、不動産会社に仲介してもらって買主を探しますが、買取では専門の買取業者が買主になるため、仲介手数料を抑えられるメリットがあります。
また買取業者であれば、すぐ買取してもらえるので、固定資産税や都市計画税などの無駄な支出を防げます。
参考までに、弊社の買取実績では、お問い合わせから決済まで30日以内が29.0%、60日以内まで含めると半数以上が2ヶ月以内に完了しています。時間をかけて用途変更や仲介での売却を目指すか、買取業者への直接売却で早期に解決するかは、維持コストや精神的な負担を考慮しながら検討してみるとよいでしょう。
買取業者は心理的瑕疵のある物件の扱いに慣れているため、仲介で一般の買主を探す場合に比べて、売却までの手間や時間を大幅に抑えやすいのが特徴です。
まとめ
自殺や殺人があった物件は心理的瑕疵を有しているため、売りたくてもなかなか買主が見つからず、売却価格も大きく下がってしまう恐れがあります。
対策としては、物件を壊して更地として売れば心理的瑕疵が軽減されるため、売却を有利に進めやすくなりますが、心理的瑕疵が完全になくなるわけではありません。
自殺跡地を売る場合、売買契約後の買主とのトラブルを防ぐためにも、必ず心理的瑕疵について告知した方がよいでしょう。
自殺があった跡地の売却価格は、市場価格より10~20%ほど下がるのが一般的な目安ですが、物件の状況や立地によって変動幅は大きく異なります。高値での売却を目指す場合には、解体費用や用途変更のための工事費用も考慮する必要があります。
こうした事情を踏まえると、まずは不動産会社に現状を相談し、仲介での売却が見込めるかを確認したうえで、難しい場合には訳あり物件の専門買取業者への売却を検討するとよいでしょう。
※1 データについて
データ集計期間:2018年2月21日〜2025年12月31日
データ集計方法:弊社における不動産買取の相談データを集計
自殺跡地の売却に関するよくある質問
自殺跡地を売る場合、事実を伏せても大丈夫ですか?
自殺跡地を売却する場合、買主に心理的瑕疵を告知する義務があります。ですので、自殺が起きた事実を伏せて売却することはできません。
事実を伏せて自殺跡地を売ると、どんなペナルティがありますか?
自殺跡地の売主は「契約不適合責任」を問われ、買主から損害賠償請求や売買契約の解除、代金の減額を請求される恐れがあります。
自殺跡地の売却価格はどの程度ですか?
自殺があった跡地(建物を解体した更地)の場合、売却価格は相場より10~20%ほど安くなるのが一般的な目安です。ただし、立地条件や事件からの経過年数などによって下落幅は大きく変わるため、正確な価格は複数の不動産会社に査定を依頼して確認しましょう。