高低差のある土地の売却は「買取」が検討される理由
土地や不動産の売却では、一般的に不動産会社を通じた仲介で買主を探す方法が用いられます。
一方で、高低差のある土地については、土地条件や法規制の影響から、仲介ではなく、買取を選択肢として検討するケースもあります。
実務上は、以下のような事情が背景にあることが多いです。
- 高低差のある土地における需要と売却方法の関係
- 仲介と買取それぞれの販売・査定の進め方の違い
- 土砂崩れ対策工事を行わずに現況のまま売却できる可能性
1.高低差のある土地における需要と売却方法の関係
高低差のある土地は、立地条件や造成の必要性などの影響を受けやすく、一般的な宅地と比べて購入検討のハードルが上がる場合があります。そのため、売却時には仲介による市場流通に加え、物件の状態や条件を踏まえた買取という方法が検討されることもあるのです。
高低差がある土地では、一般的に以下のような要素が検討材料となることがあります。
- 高低差による安全性や利用計画への影響
- 接道条件や建築基準法上の要件への適合状況
- 敷地と道路の高低差により動線や駐車計画に制約が生じる場合
- 前面道路の幅員やアクセス性の条件
- 造成工事(盛土・切土など)が必要となる可能性
- 山林や傾斜地など地勢的に利用計画が限定されるケース
- 都市計画法・建築基準法などによる建築制限の対象となる場合
- 土地形状による利用制約(旗竿地などの非整形地)
これらの要素により、購入検討にあたっては個別条件の確認が重要となり、結果として売却手法として仲介・買取のいずれが適しているかは、物件ごとの状況によって異なります。
2.仲介と買取それぞれの販売・査定の進め方の違い
不動産の仲介販売(不動産業者と媒介契約を締結して買主を探す方法)は、一般的に新築戸建てや中古戸建てなど、居住用としての需要が比較的見込まれる物件を中心に販売活動が行われる傾向にあります。
一方で、隣地との高低差がある土地については、造成の必要性や利用計画への制約などから、住宅用地としての条件を慎重に検討する必要が生じる場合があるのです。また、立地条件や周辺環境によっては、販売活動の進め方に差が出ることもあります。
そのため、物件の特性によっては、仲介による市場流通に加えて、買取による売却方法が検討されることもあるのです。買取の場合は、不動産会社が直接購入を前提に査定を行うため、条件やリスク要因を織り込んだうえで価格が提示されるのが一般的です。
売却方法の選択については、物件の状態や市場環境によって適切な手段が異なるため、それぞれの特徴を踏まえて検討することが重要です。
3.土砂崩れ対策工事を行わずに現況のまま売却できる可能性
がけ地や斜面地を含む土地では、売却の進め方として仲介による市場流通のほか、物件の状態を前提とした買取など、複数の方法が検討されることがあります。
このような土地を保有し続ける場合には、将来的な利用計画や安全面への配慮などを含め、個別の状況に応じた判断が必要となるのです。
例えば、がけ地や斜面が含まれる土地では、立地条件や周辺環境によっては土砂災害リスクへの配慮が求められるケースがあるのです。また、必要に応じて擁壁や土留めなどの対策工事を検討する場面もありますが、その内容や費用負担は土地ごとに異なります。
そのため、売却にあたっては事前に対策工事を行うケースもあれば、現況のまま不動産会社に引き渡す形で取引が進むケースもあるのです。特に買取の場合は、現況条件を前提として査定・検討が行われるため、工事を行わずに売却が進むこともあります。
いずれの方法が適しているかは、土地の状況や売却目的によって異なるため、複数の選択肢を比較しながら検討することが重要です。
訳あり物件の買取は専門業者に依頼することで売却が進みやすい傾向がある
不動産の売却方法には、仲介によって買主を探す方法と、不動産会社が直接購入する買取があります。物件の特性や市場環境によっては、買取が検討されるケースもあるのです。
訳あり物件の場合、一般的な市場では条件面から購入検討のハードルが上がることがあり、買取に対応している不動産会社へ相談されるケースも見られます。
訳あり物件を取り扱う買取業者の中には、がけ地や斜面地など、一般的な流通市場では条件が整理しづらい物件についても、再販売や活用方法を踏まえたうえで査定を行う場合があるのです。条件によっては一般的な仲介とは異なる評価の考え方がされることもあります。
また、買取の場合は現況のまま取引が進むケースもあり、売却準備の負担を抑えられる可能性があります。一方で、仲介と比較した場合の売却条件や価格水準については、物件ごとの状況や市場環境によって異なるのです。高低差のある崖土地の売却は、複数の選択肢を比較検討することが重要です。
隣地と高低差のある土地の売却では取引後に調整が必要となるケースもある
高低差のある土地は、立地条件や法規制の影響を受けやすく、売却後に利用方法や建築計画に関して追加の確認や調整が必要となる場合があるのです。
実際に当社へご相談いただくケースでも、「購入後に想定していた建物が建てられなかった」「造成や擁壁に関する条件が後から判明した」といった内容のご相談をいただくことがあります。
高低差のある土地においては、次のような点が検討課題となります。
- がけや斜面の影響により建築計画に制約が生じる場合
- 隣地との調整が必要となり擁壁工事が進めにくいケース
- 都市計画上の区域指定により用途が制限される場合
- 境界が不明確なエリアで隣地との確認が必要となるケース
- 接道条件への適合により利用可能面積が変動する場合
また、不動産売買においては、契約前に重要事項として法令上の制限などを説明することが求められています。そのため、売主・買主双方が事前に条件を十分に確認したうえで取引を進めることが重要です。
仮に契約後に認識の齟齬が生じた場合には、取引内容の調整や対応が必要となることもあるため、物件の特性を踏まえた慎重な検討が求められます。
高低差のある土地の売却は「がけ条例」に注意
隣地と高低差のある土地を売却するときには、「がけ条例」の有無を確認することが重要となる場合があります。
がけ条例とは、がけや斜面地の周辺における建築物の安全性を確保するために、建築位置や構造などに一定の制限を設ける自治体ごとの条例を指します。
その土地ががけ条例の適用対象となる場合には、建築計画や土地利用に一定の制約が生じる可能性があるため、売却時には条件を含めた確認が必要です。
「がけ条例」とはがけ付近への建築を制限する条例
がけ条例・・・災害時の危険を防ぐため、がけ上下の土地への建物の建設を制限する条例です。
「がけ条例」は通称であり、条例を定めているそれぞれの自治体(都道府県・政令指定都市・市町村)によって、名称も具体的な規制内容も異なります。
例えば、東京都の場合には、建築安全条例(第6条)ががけ条例に該当するルールとなります。
参照:東京都都市整備局「東京都建築安全条例」
がけ条例による建築制限の例
がけ条例の内容を確認する際には、一般的に次のような点が検討ポイントとなります。
- がけ条例が適用される土地の範囲
- がけ地における規制の内容
- 規制緩和の要件
これらの内容は自治体ごとに異なるため、以下では一例として東京都の条例に基づく考え方について整理して解説します。
東京都においてがけ条例が適用される土地
東京都の建築安全条例では、がけや傾斜地の周辺において、安全性を確保するための建築上の制限が設けられています。
例えば東京都の建築安全条例では、「高さが2メートルを超えるがけ(勾配が30度を超える傾斜地)」が規制の対象として定義されています。自治体によっては「1/2勾配(約26.5度)」といった独自の基準を設けているところもあるため、対象地の条例を正確に確認することが重要です。
1/2勾配・・・底辺:高さ=2:1の比率を目安とした傾斜を指し、がけの形状を判断する際の一つの基準として用いられることがあります。
勾配線について具体的な定めのない(単純に高さだけで判定する)条例もあり、それぞれのがけ条例によってかなり異なります。
なお、がけ条例の適用基準や判断方法は自治体によって異なるため、全国一律で同じ基準が適用されるわけではありません。
がけ地は条件によって建築に制約が生じる場合がある
東京都の建築安全条例では、がけや傾斜地の周辺において、安全性を確保するために建築位置や構造について一定の配慮が求められる場合があります。
一般的には、がけから一定の距離を確保する方法や、擁壁などの安全対策を講じる方法によって建築計画を検討するケースがあります。
- 建物をがけから一定距離離して配置する方法
- 擁壁などの安全対策を講じたうえで建築する方法
例えば、がけの高さが大きい場合には、建物配置に制約が生じることがあり、敷地の有効活用に影響する可能性もあります。
また、擁壁による対応を行う場合には、安全性を確保するために、原則として法令で指定された構造(鉄筋コンクリート造など)の擁壁を設置することが求められます。
そのため、擁壁設置工事は費用が高額になる場合が多く、すでに擁壁がある場合でも、確認済証・検査済証の交付を受けている擁壁であるかどうかをきちんと確認する必要があります。
要件を満たせば建築制限が緩和される
何かしらの事情で新しい擁壁を設置できない場合には、擁壁の管理状態が良好であることを条件に、次のような追加の対応をすることで、がけに近い土地でも建物を建築可能な場合があります。
擁壁周辺の敷地での建築時の対応
| 状況 |
対応・工法 |
| 擁壁の下の敷地に建築する場合 |
建物の安全性を高めるため、鉄筋コンクリート造(RC)などの構造が採用されるケースがある |
| 擁壁の上の敷地に建築する場合(深基礎) |
擁壁に余計な負荷をかけないように深基礎で建築する(基礎を深くして荷重を分散) |
| 擁壁の上の敷地に建築する場合(杭基礎) |
擁壁より深い地盤まで杭を打ち込み、建物を支持する |
ただし、これらの対応は個別の条件に応じて判断されるため、すべてのケースで適用できるわけではありません。
しかし、これらに対応するための工事をすれば、通常よりもかなり高額な建築費用が必要となることに注意しましょう。
高低差が大きいときには法律によって建築が規制される
高低差が大きいがけ地や急傾斜地の近くにある土地では、各自治体の条例に加えて、土砂災害に関する法令に基づく規制を受ける場合があります。
特に、都道府県によって「土砂災害特別警戒区域(いわゆるレッドゾーン)」や「急傾斜地崩壊危険区域」に指定されている場合には、建築にあたって安全性を確保するための基準が設けられています。
例えば、土砂災害特別警戒区域内で建築を行う場合には、土砂の崩落や流入による影響を考慮し、建物の構造について通常よりも厳しい基準が求められることがあります。
そのため、外力に耐えられる構造の壁や基礎の設計が必要となるケースもあり、結果として建築コストが増加する傾向があります。
筆者の実感では、高低差のある土地の査定額は、不動産会社によって最も差が出やすい分野の一つです。
造成に強い専門買取業者であれば、「どうすれば費用を抑えつつ安全に規制緩和を受けられるか」のノウハウを持っているため、現況のまま適正価格で買い取れる可能性もあります。
高低差のある土地をトラブルなく売却するためには、まずは土地家屋調査士や、がけ地の扱いに長けた専門業者に現状の法規制を調査してもらうことから始めましょう。
また、がけ地の状況や災害リスクの変化によっては、行政から安全確保に関する助言や勧告が行われる場合もあります。
参照:国土交通省「土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等について」
高低差のある土地は建築規制を買主に説明する必要がある
がけ条例や土砂災害防止法などに該当する土地を売却する場合、重要事項として購入希望者に告知しなければなりません。
しかし、土地が規制の適用対象か判断するには、がけの測量や精密な安全調査が必要になります。
なぜなら「擁壁があるだけ」では建物の建築が認められるわけではないからです。
高低差のある土地をトラブルなく売却するためには、がけ地の扱いに慣れた専門の不動産業者や弁護士等に相談・依頼することが大切です。
まとめ
隣地と高低差のある土地の売却は、一般的な不動産と比べて慎重に進めることが重要です。
特に、がけ地が近接している場合には、法令や条例による建築上の制限を受ける可能性があるため、事前に状況を把握しておくことが大切です。
売却を進めるにあたっては、土地の安全性や法的条件について適切に調査したうえで、対応実績のある不動産会社に相談することが望ましいでしょう。
また、高低差のある土地は、条件によっては一般的な市場での売却に時間を要するケースもあります。
そのため、仲介による売却だけでなく、専門業者による買取といった選択肢も含めて、それぞれの特徴や条件を比較しながら検討することが重要です。
買取の場合は、現況のままで引き渡しが可能なケースも多く、管理が難しい土地や活用予定のない土地を保有している場合には、一つの選択肢となり得ます。
崖土地の売却時によくある質問
高低差のある崖土地でも売れる?
高低差のある崖地でも売却できる可能性はあります。ただし、立地条件や法的制限、土地の状態によっては、一般的な土地と比べて買主が見つかるまでに時間を要するケースもあります。 そのため、仲介による売却だけでなく、買取といった方法も含めて検討することが大切です。
仲介と買取の違いって?
仲介は市場で買主を探す方法であり、条件によっては高値での売却が期待できる一方、成約までに時間がかかる場合があります。 一方、買取は不動産会社が直接購入するため、比較的早期に売却できる可能性があり、現況のままで引き渡せるケースもあります。 それぞれに特徴があるため、売却時期や条件に応じて適した方法を選ぶことが重要です。
崖土地を売るときは、どうして買取がよいの?
仲介で買主が見つかりにくい場合は、買取業者へ売却する選択肢もあります。買取業者が直接購入するため、比較的早期に売却できるケースがあります。
そもそも、がけ条例とは?
がけ条例とは、災害時の安全確保を目的として、がけの上下にある土地での建築について一定の制限を設ける条例です。 条例の内容は自治体ごとに異なりますが、建物の配置や構造に制約が生じる場合があります。
崖土地はどこなら買ってもらえる?
崖地など条件のある土地については、一般の買主を探す仲介だけでなく、専門的な知識を持つ不動産会社や買取業者が対応可能な場合があります。 特に、現況での引き渡しを希望する場合や早期売却を希望する場合は、買取という選択肢も検討されることがあります。 いずれの場合も、複数の不動産会社に相談し、条件を比較したうえで判断することが望ましいでしょう。