事故物件とは自然死・不慮の事故以外の事件性などが高い死や特殊清掃が必要な死が発生した物件
事故物件とは、物件内・敷地内で発生した人の死亡案件のうち、「購入前に知っておけば契約しなかった」と判断できるほど心理的マイナスが強い死が発生した物件のことです。
事故物件の不動産を売却・賃貸するときには、買主・借主側に事故物件である事実を告知する義務が発生します。以下では、告知義務が発生すると思われるケースと、思われないケースのおおまかな基準をまとめました。
<告知の対象となる主な死>
- 他殺・自殺で亡くなっている
- 火災による焼死・事故死・不明死などで亡くなっている
- 自然死のなかでも長期間放置されて遺体の腐敗が進んでいた
- マンションやアパートの共用部分で亡くなっている
- 隣の部屋が殺人事件の現場だった
- 上の階の遺体発見に時間がかかり、下の階の部屋にも特殊清掃が入った
<告知の対象とならない主な死>
- 漏水や病死などの自然死
- 転倒事故・誤嚥(気管まで食べ物が入ること)など日常生活中の不慮の死
- 隣接住戸・日常生活で通常使用しない集合住宅の共用部分で起きた、自然死以外の死、特殊清掃などがおこなわれた死
- 心理的瑕疵がなくなったと判断できる期間が経過している
上記の事故物件の定義は、国土交通省が示した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を基におおまかに解釈したものです。事故物件の法律的な定義はなく、死の状況、部屋の状況、死の原因、社会的評価などを総合的に判断します。たとえば遺体発見が遅れれば、不慮の事故による死亡でも事故物件として扱うことがあります。
そもそも不慮の事故であっても人が死亡した事実は変わらないことから、買主・借主側の心理的ハードルも高くなるでしょう。事前に事故物件であると告知をした場合、事故物件は心理的抵抗の大きさや物件の損傷などの影響で、一般の人からは利用を忌避される傾向にあります。
一般の不動産市場においても需要が低くなり、売却相場も通常の価格より10〜50%下がる傾向が見られます。人の死がかかわる場合の、不動産売却相場は主に次の通りです(特殊清掃などの影響は除く)。
ケース |
主な相場 |
自然死・孤独死 |
10~20% |
自殺 |
20~50% |
他殺 |
30~50% |
また、事故物件だと家賃も通常よりも20〜30%下げるのが一般的です。実際の売却価格・家賃は、心理的瑕疵の大きさ、買主側からの印象、事故物件自体の資産的価値や需要などによって変動します。
「事故物件でも気にしない」「家賃が安くなるならむしろ事故物件がよい」という人からは、事故物件でも一定の需要が存在します。
事故物件の損害賠償請求は入居者(借主)との賃貸借契約を相続した相続人(遺族)へ
賃貸物件の一室を入居者(借主)に貸しているとき、もしその入居者の死亡が原因で事故物件となったときは、死亡した入居者の相続人へ損害賠償請求ができる可能性があります。
前提として知っておきたいのは、入居者が自分が所有する物件内で亡くなったときでも、入居者と結んだ賃貸借契約を勝手に解除できない点です。賃貸借契約といった権利義務も財産と同じく、相続人への相続対象となるからです。
(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
e-Gov法令検索 民法第896条
つまり事故物件の発生に対して損害賠償請求は、賃貸借契約を結んだ入居者の相続人に対しておこなうことになります。
また、死亡した入居者の部屋に残っている残置物も相続対象であるため、原則として大家が勝手に処分できません。大家我の判断で処分するには、相続人へのお願いや、事前に入居者と「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を締結して第三者の受任者に処分してもらう、といった対応が必要です。
事故物件の自殺なら相続人(遺族)へ損害賠償請求ができるがそれ以外は難しい
事故物件になったことで大家が受ける損害は、入居者の遺産を相続する相続人(遺族)や連帯保証人へ賠償請求できる可能性があります。損害賠償請求の対象となるのは、入居者の自殺によって事故物件となったときです.。一方、入居者の死因が他殺、病死、孤独死だと損害賠償請求の対象にならないので注意しましょう。
死亡原因 |
損害賠償の可否 |
自殺 |
◯ |
他殺 |
✕ |
病死 |
✕ |
孤独死 |
✕ |
もし事前に「孤独死保険」に加入していれば、事故物件になったことによる損害の補償が受けられる可能性があります。以下では、事故物件の損害賠償先についての詳細を解説します。
入居者の自殺なら相続人へ損害賠償ができる
入居者の自殺が原因で事故物件になった場合、損害賠償請求は原則として入居者の相続人へおこないます。入居者に連帯保証人が存在するときは、連帯保証人への請求です。連帯保証人へ請求する場合、国土交通省の「極度額に関する参考資料」における極度額より高額な金額は無効になります。
損害賠償請求の順番は、先に相続人、次に連帯保証人というのが一般的です。
損害賠償の対象となるのは、自殺によって部屋が受けた損害を回復させる「原状回復費用」と、発生するはずだった利益を表す「逸失利益」の主に2つです。原状回復費用と逸失利益については、事故物件になったことによる損害賠償の種類と金額の目安にて詳しく解説します。
死亡原因が他殺・病死・孤独死・そのほか自然死なら損害賠償請求はできない
入居者の死亡原因が他殺・病死・孤独死・そのほか自然死の場合だと、原則として相続人や連帯保証人への損害賠償はできません。これらの死因は、入居者に故意・過失がないからです。「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」でも、損害賠償の対象にならないと記載されています。
①賃貸借取引及び売買取引8の対象不動産において自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合老衰、持病による病死など、いわゆる自然死については、そのような死が居住用不動産について発生することは当然に予想されるものであり、統計においても、自宅における死因割合のうち、老衰や病死による死亡が9割9を占める一般的なものである。
(中略)
このほか、事故死に相当するものであっても、自宅の階段からの転落や、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥など、日常生活の中で生じた不慮の事故による死については、そのような死が生ずることは当然に予想されるものであり、これが買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いと考えられることから、賃貸借取引及び売買取引いずれの場合も、自然死と同様に、原則として、これを告げなくてもよい。
国土交通省 引用元タイトル宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
損害賠償請求ができない死因で入居者が死亡したときは、その部屋の復帰にかかる費用は原則として大家や管理会社の負担です。
ただし特殊清掃が必要なレベルで遺体放置されていた場合だと、畳・カーペットといった退去後も引き続き必要なものの交換などにかかる費用は、相続人や連帯保証人に損害分を請求できる可能性があります。
「孤独死保険」なら自殺・孤独死に関係なく補償が受けられる可能性がある
自殺や孤独死などの死因にかかわらず、入居者の死亡を事前に察知するのは不可能に近いでしょう。大家側の対応で、事故物件になるのを100%防ぐ方法は存在しません。
そこで「孤独死保険」へ事前に加入していれば、入居者の死亡が原因の損害に関する補償を受けられる可能性があります。孤独死保険とは、入居者の死亡事故によって生じた「原状回復費用」「家賃損失」「遺品整理費用」などについて補償が受けられる保険です。大家が加入するのは、原則として「家主型」の孤独死保険です。
出典:日本少額短期保険協会「第8回 孤独死現状レポート」
孤独死保険の補償額は、負担額を上限として、最大数百万円となります。
日本少額短期保険協会「第8回 孤独死現状レポート」によると、高齢の病死だけでなく20~40代の自殺も高い水準となっています。借主の年代にかかわらず事故物件になるリスクは存在しているため、孤独死保険で万が一に備えておくことも検討してみてください。
相続人へ事故物件に関する損害賠償を請求する際の考え方
入居者の相続人へ事故物件に関する損害賠償を請求する際には、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 損害賠償は「不可分債務」であるため相続人の1人へ請求する
- 相続人が相続放棄したときは放棄した人へ損害賠償請求はできない
- 相続人がいないときは「相続財産管理人」に請求するケースがある
それぞれの詳細を解説します。
損害賠償は「不可分債務」であるため相続人の1人へ請求する
損害賠償は「不可分債務」であるため、事故物件の損害について請求するときは相続人のうち1人だけにおこないます。不可分債務とは、数人の債務者(賃貸借契約を相続した相続人など)が持つ何らかの債務のうち、分割ができないものです。
不可分債務の場合、「相続人がお金を出し合って一括で支払う」は認められますが、「相続人がそれぞれで債務を分割し別々で支払う」はできません。そのため複数人の相続人がいても、事故物件に関する損害賠償は相続人の1人へ請求し、一括で支払ってもらいましょう。
なお入居者の死亡によって賃貸借契約の解除を申し出るときは、相続人全員に解除を主張し同意を得る必要があります。民法第544条の解除権の不可分性において、「当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員からまたはその全員に対してのみ、することができる。」と定めがあるからです。
相続人が相続放棄したときは放棄した人へ損害賠償請求はできない
相続放棄とは、被相続人(亡くなった入居者など)から相続を受ける権利および相続財産のすべてを、相続人が放棄することです。
入居者の相続人が相続放棄すると、入居者と結んでいた賃貸借契約に関する権利義務も一緒に放棄されてしまいます。そのため、相続放棄をした人は賃貸借契約に関する損害賠償を支払う義務はなく、大家側もその相続人へ損害賠償請求はできません。別の相続人や連帯保証人へ請求することになります。
相続放棄は、被相続人が亡くなってから3か月以内に家庭裁判所にて申立する必要があります。3か月経っても相続人がまだ放棄していない場合は、原則として損害賠償請求が可能です。
相続人がいないときは「相続財産清算人(相続財産管財人)」に請求するケースがある
入居者のなかには、相続人が存在しない人もいます。入居者に相続人や連帯保証人がいないときに損害賠償請求をする場合、相続財産清算人(相続財産管理人)を選任して相続財産管理人へ請求する方法があります。
相続財産清算人とは、相続人がいない・不明などのケースで、相続人の代わりとして相続財産の調査や換価などに対応する、家庭裁判所が選任した者です。弁護士などの専門職の人が選ばれることが一般的です。
とはいえ、相続財産清算人の選任には6か月以上の公告期間といった、非常に長い時間がかかります。また選任後も訴訟が必要になる可能性があり、回収できる費用より裁判にかかる費用が高額になる可能性があります。
事故物件になったことによる損害賠償の種類と金額の目安
所有不動産が事故物件になったときの損害賠償として請求できるのは、「原状回復費用」と「逸失利益」です。
請求できるもの |
概要 |
原状回復費用 |
自殺した入居者が原因で受けた部屋の損害
・特殊清掃の金額
・利用できなくなった設備の交換費 |
逸失利益 |
事故物件になったことで、本来得られたはずの利益
・通常の家賃と減額する家賃の差額
・次の入居者が決まるまでに発生していたはずだった家賃 |
以下では、それぞれの詳細と請求できる金額の目安を解説します。
特殊清掃や設備交換で発生する「原状回復費用」
原状回復は費用とは、「借りた当時の状態に戻す」のではなく、「通常使用を超える使用による損耗・毀損を復旧する」ための費用です。原状回復費用には、主に以下のものが該当します。
- 入居者の死亡によって発生する部屋の特殊清掃
- 部屋に付着した血痕・匂いの除去
- 利用できなくなった設備の交換
- 部屋全体のリフォーム代
特殊清掃にかかる費用の目安は次の通りです。
特殊清掃の作業 |
費用目安 |
特殊清掃の基本料金 |
5万~6万円 |
設備(風呂やキッチンなど)の解体費用 |
1万~3万円 |
遺品整理費用 |
1万~10万円 |
1人部屋の特殊清掃だと、20~30万円程度かかる計算です。
さらに以下では原状回復費用の目安として、日本少額短期保険協会「第8回 孤独死現状レポート」における孤独死保険の支払実績を見ていきましょう。
保険金の種類 |
平均損害額 |
平均支払保険金額 |
原状回復費用 |
397,158円 |
312,098円 |
残置物処理費用 |
237,218円 |
236,196円 |
一方で、自殺との関連がない清掃、補修、部品交換などは損害賠償請求の対象外です。また、原状回復費用のうち経年劣化して価値が下がったものは、年数等に応じて損害賠償金額が下がるようになっています。
出典:国土交通省「「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について」
事故物件になったことで発生した未払家賃や家賃減額分などの「逸失利益」
逸失利益とは、事故物件になったせいで本来手元に入るはずだったのに発生しなくなった利益のことです。事故物件における逸失利益の例は次の通りです。
- 入居者が滞納していた未納家賃
- 事故物件になったことで発生する通常家賃と減額家賃との差額
- 次の入居者が決まるまでに発生した空室期間に応じた損害
不動産においては、入居者の自殺も「善管注意義務」における違反と解されることから、入居者の相続人や連帯保証人が逸失利益分の損害賠償請求対象になるとされます。
逸失利益の損害賠償は、賃貸借契約の内容などで大きく変わります。家賃減額に関しては、「告知義務の目安が3年」であることを考慮して、「3年ほどの家賃減額分の合計」が相場です。事故物件になったときの家賃減額割合は平均20~30%で、死因や状態によっては50%以上下がるケースもあるでしょう。
判例のなかには「集合住宅の共有部分での死亡は逸失利益の対象」「賃借人以外の入居者の死亡は逸失利益の対象」とされたものもあれば、「ほかの入居者の賃金減額は対象外」とされたものもあります。逸失利益が認められるかは、死亡時の状況や影響力などに左右されます。
事故物件になった後は大家が特殊清掃やお祓いの対応をおこなう
事故物件となった賃貸物件の大家は、遺体が見つかった部屋を再び貸し出せる状態にするために、特殊清掃やそのほかの対応が必要です。たとえば死亡現場の処理に時間がかかると遺体の体液、血液、異臭などで部屋に大きく損傷したり、ウイルスや雑菌が繁殖したりなど、賃貸物件として致命的なダメージを負うリスクがあります。
以下では入居者が孤独死していた場合における、事故物件になった後に大家が取るべき主な対応をまとめました。
事故物件への対応 |
概要 |
入居者の関係者へ連絡する |
滞納家賃や損害賠償の有無の確認
賃貸借契約の引き継ぎや解約手続き |
特殊清掃業者の選定・依頼 |
これまでの実績や特殊清掃士在籍などの確認
無料見積もりの依頼 |
特殊清掃 |
体液や汚物の除去
汚染箇所の解体・清掃
消臭・消毒などの感染症予防
害虫駆除 |
不用品の処分 |
ゴミや日用品などの破棄
遺族が引き取る財産等の分別と引き渡し |
お祓い |
自殺・他殺などの場合はお祓いによる入居への心理的抵抗軽減 |
部屋のリノベーション・リフォーム |
フローリングや畳、壁紙などの張り替え
バスルームやキッチンなどの設備の交換 |
新しい入居者の募集 |
準備が終了したら募集開始
原則として新しい入居者には事故物件である点の説明 |
賃貸物件で人が死亡したときでも、既存の入居者への説明義務は原則としてありません。しかし、不要なトラブルを避けるためにも事情を説明するのがよいでしょう。なお既存入居者側から家賃減額や退去費用を請求されても、原則として対応する必要はありません。
事故物件の売却・賃貸時に告知義務違反すると今度は損害賠償される可能性がある
事故物件の大家は、入居者から損害賠償請求をされる側になる可能性があります。事故物件の売却・賃貸をしたときに、事故物件についての告知義務違反を犯したときです。
不動産における告知義務とは、不動産の売主・貸主が対象不動産の重要説明事項について、買主・借主に対して必ず告知をおこなう義務です。以下では、事故物件の売却・賃貸時の告知義務違反の概要と損害賠償請求について解説します。
事故物件を売却・賃貸する際は告知義務がある
事故物件を売却・賃貸する際には、事故物件に関する心理的瑕疵の事実などについて、買主・借主側に告知する義務があります。事故物件の事実は「取引する相手の判断に重要な影響を及ぼすもの」であり、隠したままで話を進めるのは正常な取引と言えないからです。
告知義務があるケースは、事故物件とは自然死・不慮の事故以外の事件性などが高い死や特殊清掃が必要な死が発生した物件で解説した条件に該当する場合です。
<告知すべき内容>
- 事案の発生時期
- 事案の発生場所
- 入居者の死因
- 特殊清掃の有無
- 情報を開示しなかった場合にはその理由
事故物件に関する告知義務をすべき期間は、死亡事案の発生からおおむね3年であるとガイドラインにて規定されました。
しかし売買契約は3年経過後も告知義務はなくならず、実質的に告知義務の時効はありません。過去の判例では、50年以上が経過しても心理的瑕疵が存在すると認められたケースがあります。一方で17年前の火災事故死で瑕疵が否定された事例もありますが、トラブルを避ける意味でも売買契約においては事故物件の告知はしておくべきでしょう。
出典:国土交通省「心理的瑕疵の有無・告知義務に関する裁判例について」
賃貸借契約は3年経過後に告知義務がなくなるものの、心理的瑕疵が大きい、事件性や社会的影響が大きいといった事故物件は、3年経過後も告知義務が必要になるとガイドラインに記載されています。
参考:国土交通省「「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました」
事故物件と知らずに入居した入居者は家主に対して損害賠償を請求できる
大家が新しい入居者に対して告知義務違反となったとき、その入居者は大家に対して損害賠償請求が可能です。また、契約解除、転居などにかかる費用、居住を続ける際の売却代金・家賃の減額なども、大家側に請求できます。損害賠償請求できる金額は、不動産価格や賃貸借契約内容、入居者側の意向などによって変わります。
ただし仲介業者がいる場合、買主・借主に事故物件の事実を告げず、また売主・貸主にはその旨を隠していると、仲介業者の告知義務違反として仲介業者が損害賠償を負うケースも過去にありました。
事故物件絡みで損害賠償請求となった実際の裁判の判例
事故物件の契約等に関する問題が民事訴訟にまで発展した事例は、数多く存在します。ここからは事故物件絡みで損害賠償請求となった、実際の裁判の判例をいくつか紹介します。
参考:国土交通省「心理的瑕疵の有無・告知義務に関する裁判例について」
入居者の自殺によって大家が損害賠償を請求した裁判の判例
入居者の自殺によって、大家が損害賠償を入居人側へ請求し損害賠償が認められた例は次の通りです。
発生事案 |
月額家賃等 |
損害賠償の判決 |
ワンルームアパート室内での自殺 |
家賃6万円
事故発生後は3万5,000円 |
貸室の逸失利益約132万円の支払い
貸質の逸失利益約155万円、隣室の逸失利益約388万円は棄却 |
ファミリータイプの転貸借建物内での自殺 |
家賃14万6,000円
月額転貸手数料8,400円 |
貸室の逸失利益約311万円、転貸手数料約9万円、供養費用約3万円の支払い
貸室の逸失利益・転貸料の中間利息相当分約28万円は棄却 |
ワンルームアパート室内での自殺 |
家賃(共益費込)7万2,000円 |
貸室逸失利益約158万円、原状回復費用8万円の支払い
全面改修相当の原状回復費用約449万円、貸室逸失利益約189万円は棄却 |
ファミリータイプのバルコニーで同居人が自殺
3年後に借主退去 |
家賃(共益費込)10万3,000円 |
貸室逸失利益約61万円の支払い
インターネットサイトで事故物件として紹介されているなどが原因の建物価値の下落やほかの貸室の逸失利益、原状回復費用計4,000万円は棄却 |
マンションの借主で貸室内で知人を刺殺した後に投身自殺 |
家賃7万9,000円 |
4年間の賃料減収額約153万円、貸室修復費用約25万円の支払い
事件による賃料収入の減少や建物価値の下落の計1,664万円は棄却 |
ワンルームにて死亡2か月後に遺体発見 |
家賃10万円 |
自殺と認められない借主に善管注意義務は認めない一方で、原状回復費用63万円と未払賃料の請求を認める
逸失利益約57万円、隣人住民に対する退避費用約6万円、新規入居者からの要求礼金・共益費約79万円は棄却 |
貸室での自殺だと、損失分の損害賠償請求については、大家側の主張が認められている判例が多く見られます。一方、事案に対する逸失利益や資産価値の低下分の請求が過大になっているときは、原則として棄却となっています。
大家の告知義務違反に関係する裁判の判例
大家側の告知義務違反に関係する裁判の判例を、以下で見ていきましょう。告知義務違反に関する判例には、大家側が入居者側を訴えたことで明らかとなるものも多数あります。
発生事案 |
損害賠償の判決 |
ファミリータイプに入居直後に約1年5か月前に自殺事故があったことを知った借主が退去、その退去費用を貸主に請求 |
貸主には借主に本件事実を告知する義務がある
賃料、礼金、保証料、引越し料、エアコン工事代金64万円、慰謝料30万円、弁護士費用10万円の支払い |
貸主の同居人がバルコニーで自殺し、その3年後に借主が退去したが、貸主側が損害賠償請求した |
事件から3年あまり経過しており、心理的瑕疵は相当程度軽減されているとして、家賃等相当額6ヶ月分の損害賠償のみ認められる |
ワンルーム内で借主が自殺し、貸主が借主保証人へ損害賠償を請求 |
判断のなかで、「都市部のワンルームで近所付き合いが希薄なことを考慮すれば、事件後最初の借主を除き、借主には特段の事情がない限り告知する義務はない」とされた |
ワンルーム内で借主が自殺し、貸主が借主相続人へ損害賠償を請求 |
判断のなかで、「本物件が入居者の流動性が高く、本件事件の様態からすれば、事件後最初の入居者を除き、借主には本件事件の告知をする義務があるとは解せない」とされた |
告知義務違反か否かの判断は、「3年が経過しているかどうか」「自殺の状況はどうか」のほかにも、「物件時代の特性」で左右されるケースがあります。告知義務違反がどうかは、大家自身の判断だけで決めるのは難しいと言えるでしょう。
損害賠償を請求するとき・請求されたときは不動産に強い弁護士へ相談しよう
もし入居者との法的争いが発生したときは、請求する側・請求される側のどちらになったかにかかわらず、不動産に強い弁護士へ相談するのがよいでしょう。
不動産に強い弁護士なら、これまでの実務経験や専門知識に基づいて、難しい状況でも適切に判断してくれます。また、損害賠償請求に関する複雑な手続き、損害賠償請求の詳細、相手からの損害賠償請求に対する反論の作成なども、しっかりサポートしてくれます。民事訴訟になったときも、代理人として出廷してくれるのも心強いポイントです。
事故物件の損害賠償は相続や権利関係が関係するうえに、心理的瑕疵といった素人では判断が難しい部分が絡んできます。適切に対処するためには、専門家の力を借りることを推奨します。
事故物件を処分したいときは訳あり物件専門の買取業者へ売却しよう
不動産が事故物件になると、新しい入居者探しの難しさや家賃減額などの影響で「活用が難しいから売却したい」と考える大家様も多いと思われます。しかし事故物件は先述の通り、売却価格も10~50%に落ちるなど売却が困難な面が存在します。
もし事故物件を適切に処分したいなら、訳あり物件専門の買取業者への売却がおすすめです。
買取業者とは、不動産を自社で直接買い取る不動産会社のことです。なかでも訳あり物件専門の買取業者なら、事故物件を含めた一般の市場では売却が難しい不動産を積極的に高額買取してくれます。
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まとめ
所有する不動産が事故物件になってしまった場合、死亡した入居者の相続人、連帯保証人、相続財産清算人へ逸失利益・原状回復費用分の損害賠償請求ができます。
ただし、損害賠償請求できるのは原則として入居者が自殺した場合のみで、他殺、孤独死、自然死などは請求の対象になりません。入居者の死亡に対して備える場合は、孤独死保険への加入も検討してみてください。
また、大家側が物件の買主・借主に対して事故物件に関する告知義務違反を犯すと、今度は大家側が損害賠償請求される可能性があります。告知義務違反が必要な期間は事案発生からおおむね3年間ですが、売買契約は実質無期限、事件性・社会的影響が強い事案は賃貸でも3年以上は告知する義務があるのが原則です。事故物件と伝えることの大家側のデメリットは多いものの、事故物件に関する告知は可能な限りしておくのがよいでしょう。
事故物件に関する法的トラブルが発生したときは不動産に強い弁護士、事故物件の売却なら訳あり物件専門の買取業者と、ケースに合わせて専門家にサポートを依頼するのがおすすめです。
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