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共有持分のリスクは?トラブル回避策と発生時の対処法も解説

共有持分 リスク

共有名義の不動産を所有している方から、「処分方針について話し合いが進まない」「使っていないのに維持費だけ負担している」など、トラブルに悩まされている相談を受けることはよくあります。

実際に共有不動産は、持っているだけで次のようなリスクを抱えるケースも少なくありません。

項目 リスク
共有者間の意思決定に関するリスク ・共有者全員の同意や判断がなければ共有物の変更や処分ができない
・過半数の持分所有者の同意がなければ管理行為が行えない
・自分以外の共有者が団結して自分の意に沿わない意思決定をされかねない
・保存行為は各共有者が単独で勝手にできてしまう
・共有者の状態(認知症・未成年・所在不明など)によっては意思決定が困難になる
人間関係・トラブルに関するリスク ・知らない人と突然共有関係になる恐れがある
・共有者に占有されると原則追い出せない
・固定資産税や維持管理費の支払いで揉めやすい
・離婚時の財産分与で揉めやすい
法的・経済的なリスク ・共有物分割請求を受ける可能性がある
・相続があるとさらに権利関係が複雑になる
・持分だけでは買い手が付きにくい
・共有者の滞納や借入が原因で、突然不動産を失う可能性がある

このように、共有状態を放置していると「動かせない資産」になってしまい、結果的に損失を抱える可能性があります。そのため、早めに共有関係を解消しておくことが重要です。

基本的には、相続をきっかけに共有名義の不動産を所有することになるケースも多いため、相続の前後で共有状態になるのを防ぐ対策をしておくのがおすすめです。もちろん、すでに所有している場合でも共有状態を解消することは可能です。

具体的には、以下の対策が挙げられます。

  • 被相続人の生前に不動産を手放してもらう
  • 遺言書で不動産を単独で所有する人を指定してもらう
  • 遺産分割協議時に共有を避ける(現物分割・代償分割・換価分割)
  • 相続放棄で不動産含め全ての遺産相続権を放棄する
  • 第三者に自己持分を売却する(共有持分買取業者が現実的)
  • 自己持分の放棄で他の共有者に譲る
  • 共有物分割請求で共有者全員を相手に共有の解消を求める

共有関係を放置すると、将来的に相続を通じて子どもや孫世代までトラブルを引き継いでしまうリスクがあります。早い段階で整理しておくことが、家族に迷惑をかけない最善の対策です。

もっとも、他の共有者との話し合いが進まず、共有状態のまま身動きが取れないケースも少なくありません。そのような場合でも、自分の持分だけを売却するという方法があります。

共有持分の売却であれば、他の共有者の同意が得られなくても手続きが可能です。特に、共有不動産の扱いに詳しい専門業者に依頼すれば、共有者との関係性や法的な注意点を踏まえて安全に進めることができ、最短数日での現金化も実現できます。

ただし、共有持分の買取価格は業者によって大きく異なります。そのため、複数の専門業者に査定を依頼して条件を比較することが重要です。

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共有持分を所有すること自体に様々なリスクがある

共有名義の不動産は、1つの不動産に対して複数人が所有権を持っている状態です。そのため、下記のようにさまざまな制約やリスクが伴います。

  • 自由に住んだり処分・活用したりできない
  • 権利関係が複雑化しやすい
  • 不動産の活用や処分方針で共有者間の意見の食い違いが起きやすい
  • 相続が発生するたびに共有者が増える
  • 利用できなくても固定資産税や管理費の支払い義務は発生する

実際に、「他の共有者が反対していて売却できない」「自分は使っていないのに、他の共有者が占有していて管理費だけ支払っている」といった相談が頻繁に寄せられます。

理論上は持分のある所有者として権利を主張できるはずですが、現場ではその権利を思うように行使できないのが実情です。

特に、共有名義の不動産は関係者が増えるほど意思決定が難しくなり、手続きや管理が複雑化していきます。最初は問題がなくても、時間の経過とともに「動かせない資産」になってしまうリスクを抱えているのです。

なかには、「共有者の一人が認知症になって売却の手続きが止まった」といったケースも見受けられます。こうした事例を見ると、共有持分の所有は資産というよりも、将来的なトラブルの火種になりやすい性質を持っているといえるでしょう。

共有者間の意思決定に関するリスク

共有名義の不動産で最も厄介なのが、「共有者同士の意思決定」です。共有名義の不動産の場合、不動産に対する行為について、不動産に与える影響の大きさに沿って「保存行為」「管理行為」「変更行為」の3つに分けられており、それぞれ必要な同意が以下のように異なります。

共有物に対する行為の種類 内容 具体例 他の共有者の同意の要件
保存行為 共有物の現状を維持するための行為 ・雨漏りの修繕
・屋根や壁などの破損箇所の修繕
・不法占拠者に対する建物の明け渡し請求
各共有者が単独で実行可能
管理行為 共有物の性質を変えない範囲内で、その利用や改良を目的とする行為 ・短期の賃貸借契約の締結・更新・解除
・賃料の請求・回収
・給湯器やエアコンの交換
持分割合の過半数の同意が必要
変更行為(軽微な変更) 形状(外観、構造等)や効用(機能や用途など)の著しい変更を伴わない行為 ・間取りの変更を伴わない内装のリフォーム
・外壁の塗り替え
・砂利道からアスファルト舗装への変更
・土地の分筆・合筆

持分割合の過半数の同意が必要
変更行為(軽微な変更以外) 形状(外観や構造など)や効用(機能や用途など)を変更する行為 ・不動産全体の売却
・建物の解体
・増築・減築・改築
・大規模なリフォーム
・不動産全体に抵当権を設定
・長期の賃貸借契約の締結・更新・解除
共有者全員の同意が必要

そのため、たとえ自分が所有者のひとりであっても、以下のように他の共有者の同意なしには何も進められないという状況に陥りやすいのです。

  • 共有者全員の同意や判断がなければ共有物の変更や処分ができない
  • 過半数の持分所有者の同意がなければ管理行為が行えない
  • 自分以外の共有者が団結して自分の意に沿わない意思決定をされかねない
  • 保存行為は各共有者が単独で勝手にできてしまう
  • 共有者の状態(認知症・未成年・所在不明など)によっては意思決定が困難になる

ここからは、それぞれのトラブルについて詳しく見ていきましょう。

共有者全員の同意や判断がなければ共有物の変更や処分ができない

共有名義の場合、不動産全体に変更を加えたり処分したりするには、他の共有者全員から同意を得なければならないと法律で定められています。

第251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索

自分の持分がある不動産であっても、自由に活用ができないのはデメリットといえるでしょう。実際に、「他の共有者が売却に反対していて、何年も話が進まない」といった相談が後を絶ちません。

ただし、2023年の民法改正によって、軽微な変更であれば、共有持分割合の過半数を超える共有者が同意すれば可能になりました。軽微な変更とは、共有物の形状や効用を著しく変えない変更行為を指します。

同意要件 具体的な行為内容
共有者全員の同意が必要 ・不動産全体の売却
・不動産を担保に融資を受ける
・不動産の取り壊し
・全面的なリフォーム
・長期の賃貸借契約を締結して他人に賃貸する
過半数の持分所有者の同意が必要 ・ゴミ箱の設置・撤去
・インターネット設備の設置
・設備の更新
・外壁の塗り替え・屋上防水といった大規模修繕工事
・砂利道のアスファルト舗装
・階段のスロープ設置

不動産の形状や効用を変化させる変更・処分については、共有者全員の同意が必要です。例えば、不動産全体の売却は、共有者全員の同意がなければ行えません。

一方、ゴミ箱の設置といったささいな変更であれば、共有持分割合の過半数を超える共有者の同意があれば、共有者の中に反対する人がいても行うことができます。このとき注意すべきなのは、同意が必要なのは共有者の過半数ではなく、共有持分割合の過半数である点です。

例えば、5人で共有する不動産に対して、3人が変更に同意したとしても、3人あわせた共有持分の割合が1/2より多く達しない場合は、過半数に当たらないため変更・処分はできません。

また、相続が発生すると、共有者が知らないうちに増えてしまい、気づいたときには全員と連絡を取り合える状況になかったというケースもあります。仮に連絡がとれなくても、同意が取れていないことになるため、この時点で売却や活用はできません。

実際に、共有名義の不動産を売却しているものの、共有者の一人が行方不明で売却が止まっているという事例もありました。その間、固定資産税や管理費だけが発生し続け、結果的に持っているだけで損をする不動産になってしまうケースも少なくないのです。

過半数の持分所有者の同意がなければ管理行為が行えない

民法252条によって、共有名義の不動産の管理行為は、過半数の持分所有者の同意を得て行うことが定められています。

第252条
共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索

252条に基づく管理行為には、例えば次のようなものが該当します。

  • 賃貸借契約の解除
  • 不動産の価値維持を目的とする軽微な修繕工事・リフォーム工事
  • 共有土地にある樹木の伐採
  • 清掃
  • 管理会社の選任

なお、管理行為に含まれるものでも、規模が大きくなると民法251条の「変更行為」に該当する場合があります。実務上は、この管理行為と変更行為の線引きが非常に難しいところです。

たとえば外壁の塗り替えや屋上防水といった工事は、「劣化を防ぐ目的」なら管理行為や軽微な変更ですが、構造を変えるレベルに及ぶと「変更行為」とみなされ、全員の同意が必要になります。

管理行為の場合、共有持分割合の過半数を超える共有者の同意を得ていれば実行可能ですが、後に共有者同士で「聞いていた話と違う」という対立に発展するケースも珍しくありません。

そのため、どの程度の行為を行うのかは、事前に共有者全員でしっかりと話し合うことが必要です。このように、たとえ「管理」という範囲の行為であっても、ひとりの判断では前に進めない構造になっています。

この「ちょっとしたことでも全員に確認が必要」という煩雑さこそ、共有不動産が抱える根本的な不便さだといえるでしょう。

自分以外の共有者が団結して自分の意に沿わない意思決定をされかねない

共有不動産では、全員の同意が不要な行為も多く存在します。一見、柔軟に物事を決められるように思えますが、裏を返せば、自分の意思に反した決定が進んでしまう危険性も含んでいるということです。

もし、共有者のうち多数が結束してしまえば、少数派の意見は簡単に押し流されます。法律上は「持分の過半数」で決議できる行為も多いため、自分以外の共有者が団結すると、自分の意思がまったく反映されないまま決定が下されることも珍しくありません。

特に、2023年の民法改正によって、共有不動産の管理や活用の自由度は確かに広がったこともあり、少数派の共有者の意思が無視されるリスクも増したのが実情です。

実際に、3人で1/3ずつ所有するマンションで、他の2人が勝手に修繕会社と契約を進めてしまった事例がありました。残りの1人は打ち合わせにも呼ばれず、契約内容を後から知ったことで強い不信感を抱き、結果的に共有関係そのものが悪化してしまいました。

理論上は正しい決定であっても、現場では「納得できない」「勝手に決められた」といった感情の対立が深刻化し、話し合いが完全に止まってしまうケースも多いのです。

保存行為は各共有者が単独で勝手にできてしまう

ここまで解説してきとおり、「他の共有者と話し合わないと何もできない」と思われがちです。しかし、保存行為に関しては例外で、民法上、他の共有者の同意なしに単独で行うことが認められています。

第252条
5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索

保存行為は、共有物の現状を維持し、価値を保つための行為で具体的には、下記の行為が挙げられます。

  • 雨漏り部分の応急修繕
  • 屋根・外壁など破損箇所の修理
  • 不法占拠者への明け渡し請求

こうした行為は、共有者全員にとって利益になる行為とみなされるため、ほかの全員の承諾を取る必要はありません。理論上は非常に合理的な制度ですが、実務ではこの「単独でできる」ことがトラブルの火種になるケースも少なくないのが実情です。

たとえば、「建物のためになる」と思って共有者の一人がリフォームを行った場合でも、その内容が保存行為の範囲を超えてしまうと「管理行為」や「変更行為」に該当します。その場合、他の共有者の同意が必要だったと判断されてしまうのです。

実際に、共有者の一人が善意で修繕したものの、他の共有者が「勝手にやった」と不満を募らせ、費用負担を巡ってトラブルになった例があります。保存行為は単独で実行できますが、「これは保存行為だから大丈夫だろう」と自己判断で動くのは非常に危険です。

そのため、たとえ法律上は単独でできる内容であっても、事前に他の共有者へ一報を入れることが実務上は望ましいとされています。判断が難しいときは専門家に確認してから進めるのが確実でしょう。

共有者の状態(認知症・未成年・所在不明など)によっては意思決定が困難になる

前述のとおり、共有名義の不動産では共有者全員の合意がなければ売却や処分ができません。そのため、共有者の中に「判断能力がない」「連絡が取れない」人がいると話し合いが進まず、売却や管理の手続きが長期化してしまうリスクがあります。

その場合は、状況に応じて下記のような法的手続きや対策が必要になります。

状況 リスク 必要な対策・手続き
認知症の共有者がいる 意思能力がなく、売買契約が無効になる 家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任し、後見人が代理で手続きする必要あり
未成年の共有者がいる 法律行為を単独で行えないため、契約が無効になる 法定代理人の同意・署名が必要。親が当事者の場合は特別代理人の選任が必要
行方不明の共有者がいる 連絡が取れず、合意が得られないため売却が進まない 不在者財産管理人制度または所在等不明共有者持分取得/譲渡制度(2023年改正)で裁判所の許可を得る必要あり

実際に、「親が認知症で判断ができず、共有名義のマンションを売りたくても動けない」という相談も数多く寄せられます。認知症の共有者がいる場合は、成年後見人の選任を経て進めるしかありません。

成年後見制度とは、認知症や知的障害などにより判断能力が不十分な人に代わって、家庭裁判所が選任した成年後見人が法律行為を代理して行う制度です。

不動産の売却や契約、預貯金の管理などを後見人が代わりに行える仕組みですが、裁判所をはさむため売却完了まで数カ月単位の時間がかかるのが現実です。

一方で行方不明の共有者がいる場合は、2023年4月に新設された以下の制度を使用できます。

  • 所在等不明共有者持分取得制度
  • 所在等不明共有者持分譲渡制度

上記の制度を利用して裁判所の許可を得れば、他の共有者が行方不明者の持分を取得したり、第三者に譲渡したりすることも可能になりました。ただし、いずれも裁判手続きが必要で、解決までには時間と費用がかかります。

現場の感覚として、こうしたケースは「話し合いでは解決できない」ことがほとんどです。
成年後見や裁判手続きを経るのは時間がかかりすぎるため、実際は自分の持分だけを買取専門業者に売却して現金化するという選択を取る方もいます。

他の共有者の同意を待たずに整理できるため、「早く関係を清算したい」「管理費や税金の負担をなくしたい」という方には現実的な手段です。

人間関係・トラブルに関するリスク

複数人で不動産を所有することには、次のような人間関係・トラブルに関するリスクも伴います。

  • 知らない人と突然共有関係になる恐れがある
  • 共有者に占有されると原則追い出せない
  • 固定資産税や維持管理費の支払いで揉めやすい
  • 離婚時の財産分与で揉めやすい

共有持分の人間関係・トラブルに関するリスクについて詳しくみていきましょう。

知らない人と突然共有関係になる恐れがある

共有持分のみの売却であれば、他の共有者の同意なしでの売却が可能です。つまり、他の共有者にとっては、突然知らない人が共有関係に入ってくる可能性があります。

実際、「気づいたら見知らぬ人が共有者になっていた」という相談はよく寄せられます。特に、共有持分のようにリスクが高く活用しづらい不動産は、一般の個人が購入することはまずありません。

そのため、新たな共有者になるのは、ほとんどの場合が専門の買取業者です。買取業者は、買い取った持分を活用して単独所有化や再販、賃貸運用などで利益を得ることを目的としています。

つまり、もともとの共有者と業者の間では目的そのものが異なるのです。その結果、次のようなトラブルに発展するケースが少なくありません。

  • 売却や活用の意見が一致しない
  • 連絡が取れない、交渉が進まない
  • 占有や使用料をめぐるトラブルに発展する
  • 持分を業者に売却するよう求めてくる
  • 業者の持分を買い取るよう求めてくる

実際、「他の共有者が持分を業者に売却した結果、その業者から不当に安い金額で自分たちの持分も売却するよう迫られた」という事例もあります。売却を決めたものの、業者側が提示する金額に納得がいかず、相談いただいた次第です。

このように、一度第三者が共有関係に入ると元の共有関係のバランスが崩れ、解決までに年単位の時間を要することもあります。経験上、「知らない共有者が入ってきた時点で、関係を維持しようとするほど事態は複雑化する」傾向です。

そのため、もし第三者が共有者になってしまった場合は、自分の持分を整理して早めに手を引くことを検討するのが現実的です。

共有者に占有されると原則追い出せない

原則として、共有者がその不動産を占有すると、他の共有者がすぐに追い出すことはできません。不動産を占有している人を追い出すことを、専門用語では「明け渡し請求」といいます。

前述のように共有者が占有している場合は、基本的には明け渡し請求はできません。なぜなら、民法249条は、共有持分を持つ人全員に対して、その共有名義の不動産を使用する権利を保証しているためです。

民法249条
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索

つまり、共有者であれば誰でも共有不動産の「全部を使う権利」があるということです。
そのため、仮に他の共有者が自宅代わりに住み込んだとしても、「持分を持っている以上、使用の権利がある」と主張されれば簡単には退去させられません。

過去の裁判例でも、「たとえ過半数の持分を持つ共有者であっても、少数持分の共有者に対して当然に明け渡しを求めることはできない」という判断が下されています。

事件番号昭和38(オ)1021
裁判趣旨
補足説明
共有物の持分の価格が過半数をこえる者は、共有物を単独で占有する他の共有者に対し、当然には、その占有する共有物の明渡を請求することができない。 多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、その明渡を求める理由を主張し、立証しなければならない。

以上の判例を根拠に、過半数の共有持分を持つ共有者であっても、少数の共有持分の共有者に対して、正当な理由なしでは明け渡し請求ができない場合があります。

このときポイントとなるのが「正当な理由」です。例えば、過去に共有者全員で共有名義の不動産の使用方法のルールを設けていたにもかかわらず、それを破って共有者の1人が占有しているとしましょう。

この場合は、「ルールを破った」という正当な理由があるため、明け渡し請求が認められる可能性があります。ただし、実際には使用方法について明確なルールが設けられていないケースが多いのが実情です。

過去には、親族で所有するアパートの売却を検討している途中で、売却に反対する共有者がそのアパートの1室に住み着いてトラブルになったケースがあります。この事例では、アパートの居住ルールについて明確なルールがなかったため、明け渡し請求に難航しました。

不動産の共有は、親族など身近な者同士が「暗黙のルール」に基づいて行うことがほとんどです。そのため、こういった占有に関するトラブルは非常によくみられます。

固定資産税や維持管理費の支払いで揉めやすい

原則として、共有名義の不動産の固定資産税は、共有者全員が連帯して負担します。

地方税法第10条の2
共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索

つまり、誰かが支払いを滞らせても、自治体は「支払った人・していない人」を区別しません。一人でも支払えば納税義務は果たされたことになるため、最終的にはまじめに払っている共有者が損をする構造です。

一方で、清掃費・修繕費・共用設備の費用などの維持管理費については、民法253条によって、共有持分の割合に応じて負担することが定められています。

民法253条
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索

とはいえ、実際はこのルールがあいまいなまま話が進むことが多いです。

特に問題になりやすいのが固定資産税です。固定資産税は法律上「共有者全員が連帯して負担する」と定められているため、誰かが払わなければ全員が滞納扱いになります。

つまり、1人でも支払いを拒否すれば、残りの共有者が全額を立て替えざるを得ないというのが実情です。しかし、立て替えた側は「他の共有者に請求できる」だけで、「確実に回収できる」とは限りません。

仮に訴訟を起こしても、裁判費用だけがかかってしまい、回収できるどころかマイナスににあるケースもあるのです。実際に、共有者のうち1人が固定資産税を払わされており、「支払い不安が重いから売却したい」と相談いただいたこともございます。

このように、共有不動産の固定資産税はまじめな共有者が損をする構図になりやすいため、親族間での共有では感情的な対立に発展するケースも少なくありません。

経験上、費用トラブルが起きた時点で、「共有関係を続けること自体がストレス」になっていることがほとんどです。そのため、トラブルが深刻化する前に自分の持分を整理しておくことが、後悔しないための現実的な対策といえます。

離婚時の財産分与で揉めやすい

離婚したからといって、自動的に共有名義が解消されるわけではありません。名義上はそのまま共有状態が続くため、離婚後もお互いの関係が切れず感情的な対立に発展するケースがも多くあります。

経験上、こうした共有関係を放置してしまうと、以下が原因で離婚後もトラブルに発展するリスクがあるため、早い段階で財産分与によって共有関係を整理することを強くおすすめします。

  • どちらが固定資産税を払うか
  • 売却に同意しない
  • 勝手に住み続ける

財産分与とは、婚姻中に夫婦が共同で築いた財産を、離婚時に公平に分け合う制度です。
基本的な考え方は「原則1/2ずつの分配」であり、過去の共有持分割合は考慮されません。

たとえば、夫が2/3・妻が1/3の共有持分を持つ不動産でも、離婚時の財産分与では「1/2ずつ」の分配が基本になります。この場合は夫の持分が減る形になるため、「不公平だ」と感じて揉めるケースは少なくありません。

また、仮に1/2ずつの分配に合意できたとしても、実際の不動産は物理的に半分に分けることが難しいという問題があります。そのため、実務上は次のいずれかの方法で対応するケースがほとんどです。

  • 一方が相手の持分を買い取って単独名義にする
  • 不動産を売却し、売却代金を半分ずつ分ける
  • 土地を分筆してそれぞれの名義にする

上記のうちどの方法にするかを巡って対立が起きるケースも多く、「売りたい側」と「住み続けたい側」で意見が真っ二つになることも珍しくありません。

実際、離婚後の共有名義不動産に関する相談は数多く寄せられており、なかには「離婚して数年経っても、相手が売却に応じず困っている」というケースもあります。そのため、離婚が決まった時点でどちらが住み続けるのか、売却して現金化するのかなど決めておき、速やかに共有状態を解消しておくのがおすすめです。

なお、感情の問題が絡みやすい離婚後の不動産は、双方の意見がまとまらないことも多いです。トラブルを長引かせないためにも、専門家や買取業者などの冷静な第三者を間に入れて早期解決を図ることが重要です。

法的・経済的なリスク

共有持分の所有には、次のような法的・経済的リスクも伴います。

  • 共有物分割請求を受ける可能性がある
  • 相続があるとさらに権利関係が複雑になる
  • 持分だけでは買い手が付きにくい
  • 共有者の滞納や借入が原因で、突然不動産を失う可能性がある

それぞれの内容をみていきましょう。

共有物分割請求を受ける可能性がある

共有名義の不動産では、「他の共有者と全く意見が合わない」「管理を放置している」「話し合いが進まない」などの問題が生じることがよくあります。その結果、最終的には自分が共有物分割請求訴訟を起こされて、強制的に分割させられる可能性もあります。

共有物分割請求訴訟とは、民法第258条に基づいて共有者の一人が裁判所に申し立て、不動産の共有状態を解消する手続きのことです。

第二百五十八条
共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索

裁判所が中立的な立場から不動産の状況や共有者の主張を踏まえ、公平かつ現実的な分割方法を決定します。裁判所が決定する分割方法には強制力があり、たとえ反対してもその決定に従わなければなりません。

分割方法は、以下の3つの方法から選ばれます。

分割方法 内容 採用されるケース
現物分割 不動産を物理的に分割
例:土地を分筆
土地のみの不動産など、公平な分筆ができる場合
換価分割 不動産を競売にかけ、落札代金を分ける 相場の約7割程度で売却されるのが一般的
代償分割 共有者の一人に全体を取得させ、他の共有者へ代償金を支払う 買い取りを希望しており、かつ買い取れるだけの資金がある共有者がいる場合

どの方法になるかは、裁判所が公平性や実現性を踏まえて判断するため、希望した方法で分割ができるとは限りません。

もし換価分割の判決が出た場合は、競売によって市場価格より2〜3割低い価格で落札される可能性があるため、結果的に取り分が減るリスクがあります。

相続があるとさらに権利関係が複雑になる

共有名義の不動産は、相続が発生するたびに権利関係が複雑化していくのが実情です。たとえば、最初はAさんとBさんの2人だけだったとしても、Aさんが亡くなればその子どもCさん・Dさんが相続します。

さらに数十年後、CさんやDさんの孫世代にまで権利が引き継がれ、最終的には10人以上の共有者が関係するというケースも珍しくありません。

実際「祖父の代から共有のまま放置していた土地を売りたいが、誰がどれだけ持分を持っているのか分からない」といった相談をもありました。なかには、相続登記がされていないまま何十年も経過し、登記簿の名義人がすでに全員亡くなっているというケースもあります。

こうなると、不動産の管理どころか売却の話し合いもまともに進みません。共有者の一人でも所在不明であれば、売却や処分の合意が取れず、結果として不動産が塩漬け状態になることも多いです。

さらに、相続を繰り返すことで共有持分がどんどん細分化し、一人あたりの権利がごくわずかになるため、売却しても大きな金額にはなりません。そのため、誰も責任を持って管理しなくなり、空き家化や固定資産税の滞納といった二次的な問題を引き起こすこともあります。

こうした状況を避けるには、相続が発生した段階で早めに共有状態を解消しておく対応が欠かせません。

持分だけでは買い手が付きにくい

これまで解説してきたように、共有名義の不動産はトラブルや制約が多く、一般の人が簡単に手を出せる不動産ではありません。そのため、自分の持分だけを売ろうとしても、一般の購入希望者が見つかることはほとんどないのが実情です。

「自分の持分だけでも現金化したい」という相談はよくありますが、共有持分の取り扱い経験が豊富な不動産会社でなければ、仲介を断られるケースもあります。なぜなら、持分だけを買っても単独で利用できないからです。

実際に相談いただく方からも、「他社に断られた持分を買い取ってもらえた」といった声を多くいただいています。

とはいえ、仮に買主が見つかったとしても、他の共有者が「知らない人が入ってくるのは困る」と反対し、関係がこじれるケースも少なくありません。そのため、他の共有者に売るか、共有持分の買取を専門に扱う業者に相談するのが現実的な選択になります。

共有者の滞納や借入が原因で、突然不動産を失う可能性がある

共有名義の不動産は、自分がきちんと管理していても、他の共有者の行動が原因で突然トラブルに巻き込まれるリスクがあります。代表的なのが、固定資産税の滞納や借入金の返済遅延による差し押さえです。

たとえば、代表者が納税手続きを怠った場合、固定資産税は共有者全員が「連帯して支払う」義務を負うため、一人の滞納があれば全員に影響が及びます。実際、代表者が数年分の固定資産税を滞納したことで、他の共有者は代表者に納税額を預け続けていたにもかかわらず、不動産全体が差し押さえられてしまったケースがありました。

真面目に支払っていた共有者からすれば、まさに巻き添えです。また、借入金の場合も同様のリスクがあります。共有者の一人が自分の持分に抵当権を設定してローンを組み、返済を滞らせると、その持分が競売にかけられます。

一見「自分の持分とは関係ない」と思いがちですが、その結果、まったく知らない第三者が共有者として入り込むことになるのです。

実際に、兄弟で共有していた土地のうち、弟の持分が借入返済の滞納によって差し押さえられて競売にかけられた事例もあります。落札された後、落札した投資目的の第三者が「兄の持分もまとめて買い取りたい」と強引に交渉してきたのです。最終的に、兄が精神的に疲弊して手放さざるを得なくなり、より適正な金額で売却するために相談にいらっしゃいました。

このように、共有不動産では自分の責任外の行動で不動産を失う可能性があるリスクもあります。とくに、共有者同士の関係が希薄になっている場合や、代表者が税金や借入の管理を一人で担っている場合は、早めに現状を確認し、持分の整理や売却などのリスクを最小限に抑えるための対策を検討することが重要です。

共有持分のトラブルリスクが高い具体例と対処

共有名義の不動産は、共有者の関係性や状況の変化によって思わぬトラブルに発展することがあります。特に、下記のようなケースでは、管理や処分の話し合いが進まず、金銭的・法的な問題に発展するリスクが高まります。

以下の表では、リスクの高いケースと具体的なトラブル例、そして主な対処法をまとめています。

リスクが高いケース 具体例 主な対処方法
夫婦共有の不動産を持ったまま離婚する 財産分与で持分割合と分配割合が一致せず揉める。

離婚後も共有名義のままで税金・維持費・使用方法を巡る争いが続く。
財産分与の原則に従い折半する/一方が代償金を支払って買い取る/不動産全体を売却して分配する/離婚時に共有を解消して単独名義とする
他の共有者と連絡を取りにくい 疎遠な親族が共有者で所在や連絡先が不明、または連絡が極めて困難。

固定資産税や管理費の請求ができず、売却同意が得られない。
自分の持分だけを専門の買取業者に売却する/所在がわかる場合は共有物分割請求訴訟を検討する(ただし訴訟は負担が大きい)
他の共有者が認知症になる 判断能力が低下し、売却・賃貸などの意思表示が無効となる。共有関係の維持や処分が困難になる。 自分の持分を売却する/家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任し、成年後見人に法的行為を代行してもらう
他の共有者が行方不明になっている 音信不通や所在不明の共有者がいることで、全員の同意を必要とする処分が進まない。 「所在等不明共有者の持分取得制度」または「持分譲渡権限付与制度」を裁判所へ申立てる/弁護士・司法書士と連携する専門業者に相談する
収益物件の経営で揉める 家賃収入の分配や管理費負担を巡る不正、管理者による収益の独占、相続人からの買い取り要求などの金銭トラブル。 当事者間での話し合いを優先する/解決が難しければ不当利得返還請求や損害賠償請求を検討する/自分の持分を他の共有者または買取業者に売却する

これらのトラブルは、共有者間の信頼関係が崩れたり、法的手続きが必要になったりすると、一気に複雑化します。特に、離婚や相続をきっかけに共有関係が生じた場合、最初は良好な関係でも時間の経過とともに連絡が途絶え、意思疎通が困難になることは珍しくありません。

そのような場合でも、自分の持分だけを売却できるという点は覚えておくべき重要なポイントです。共有状態を放置すれば、固定資産税や維持費の負担が続くだけでなく、売却・相続・利用方法の決定などあらゆる場面で制約を受けることになります。

トラブルの芽が見えた段階で、法的な選択肢を確認し、必要に応じて弁護士や買取業者などの専門家に相談することが、早期解決への近道です。

【相続前・相続時】に共有持分のリスクを回避する方法

相続による共有持分のリスクを回避するには、相続の前あるいは相続後に、次のような対策を取ることをおすすめします。

  • 被相続人の生前に不動産を手放してもらう
  • 遺言書で不動産を単独で所有する人を指定してもらう
  • 遺産分割協議時に共有を避ける(現物分割・代償分割・換価分割)
  • 相続放棄で不動産含め全ての遺産相続権を放棄する

それぞれの内容をみていきましょう。

被相続人の生前に不動産を手放してもらう

共有名義や老朽化した不動産に関するトラブルを根本から防ぐには、被相続人が生前のうちに不動産を売却する選択肢が非常に有効です。これはつまり、「相続で揉める原因そのものをなくしてしまう」という考え方です。

実際、「将来、子どもたちが相続で揉めないように今のうちに整理しておきたい」という相談が増えています。とくに、複数の子どもがいる家庭や、相続人同士の関係があまり良くないケースでは、相続発生後に共有状態になることでトラブルが生まれることが多いのです。

生前に不動産を売却して現金化しておけば、相続財産を公平に分けやすく、後の感情的な対立を防げます。また、現金であれば固定資産税や管理費などの維持コストも不要になるため、被相続人・相続人双方にとって負担の少ない方法です。

さらに、築年数が古い家や空き家、使っていない土地などは、時間が経つほど資産価値が下がる傾向にあります。実務でも「もっと早く売っていれば高く売れたのに…」というケースを多く見てきました。

そうしたリスクを考えると、元気なうちに整理しておくことが最も合理的な相続対策といえるでしょう。もし「どのタイミングで売るべきか」「親が手放したがらない」といった課題がある場合は、早めに専門業者へ相談するのがおすすめです。

遺言書で不動産を単独で所有する人を指定してもらう

相続前の対策として、遺言書で不動産を単独相続する人を指定してもらうのも効果的な方法です。遺言書で「誰がどの不動産を相続するか」を明確にしておけば、相続発生後に遺産分割協議を行う必要がなく、共有状態そのものを回避できます。

たとえば、父親が「実家の一軒家は長男に相続させる」と遺言書に記しておけば、他の相続人が同意しなくても、その内容に基づいて登記や名義変更を進められます。もちろん、遺言書があっても相続人全員の合意があれば、遺産分割協議によって内容を変更することも可能です。

しかし、遺言書があれば「誰がどの財産を引き継ぐのか」がはっきりするため、感情的な揉め事を防ぐうえで非常に効果的です。実際、「親の遺言があったおかげで相続がスムーズに進んだ」というケースがある一方で、遺言書がなかったことで兄弟間の話し合いが長期化し、不動産が何年も放置されてしまったという相談も多くあります。

不動産は時間が経つほど老朽化や劣化が進み、結果的に資産価値が下がってしまうため、こうした手続きの遅れが大きな損失につながることも少なくありません。不動産の相続で揉めたくない場合は、早い段階で被相続人と話し合い、公正証書遺言など法的効力のある形で遺言を残してもらうことを強くおすすめします。

遺産分割協議時に共有を避ける(現物分割・代償分割・換価分割)

相続が発生した後でも、遺産の分割方法や方針について決める遺産分割協議の段階で共有状態を避けることは可能です。
前述したように、不動産を相続する際の分け方には次の3つの方法があります。

現物分割 不動産を物理的に分割し、各共有者で単独所有する
代償分割(価格賠償) 共有者の1人が不動産全体の所有権を取得し、他の共有者に代償金を支払う
換価分割(代金分割) 不動産を売却し、売却金を共有者全員に分配する

このうち、「現物分割」は現実的には難しいケースが大半です。たとえば、一戸建てやマンションのように物理的に分けられない不動産では、登記上で分筆しても実際の利用が困難になります。

仮に土地を分筆できたとしても、接道義務を満たせなくなくるリスクもあるため、現場ではほとんど採用されません。接道義務とは、幅員4m以上の国が認めた道路に2m以上土地が接していなければならないというルールです。満たせない場合は建物の新築や建替えができなくなるため、土地の価値が著しく低下してしまいます。

そのため、実務的に共有を避ける方法として有効なのは「代償分割」または「換価分割」です。どちらの方法も、最終的に不動産を「一人の名義にまとめる」か「現金に変えて分ける」ため、相続後に共有関係で揉める心配がありません。

たとえば、長男が実家に住み続ける代わりに他の兄弟へ代償金を支払うケースは、家を守りながら公平性を保てるため、比較的スムーズに話がまとまりやすいです。

一方、「誰も住む予定がない」「老朽化している」という場合は、売却して現金で分ける換価分割のほうが合理的です。経験上、「遺産を現金で受け取り、固定資産税などの負担はしたくない」「代償分として支払う現金を用意できない」という理由から換価分割を選ぶケースが多く見られます。

特に、兄弟姉妹間で関係が遠くなっている場合や、将来の管理負担を避けたい場合には、不動産を一度現金化してしまうほうがトラブルを減らせるのが実情です。

相続放棄で不動産含め全ての遺産相続権を放棄する

相続放棄とは、被相続人の不動産を含め、すべての遺産を相続しないと法律上宣言する手続きのことです。つまり、「自分は一切の財産を受け取らない代わりに、負債や固定資産税などの義務も負わない」という考え方です。

実際に「相続で不動産の一部を持ちたくない」「維持費を負担したくない」といった理由で、相続放棄を選ばれる方もいます。特に、老朽化した空き家や利用予定のない土地などでは、「相続するよりも放棄した方がリスクが少ない」という判断が現実的なケースも珍しくありません。

ただし、相続放棄はすべての遺産を対象にするため、「不動産はいらないけど預金はほしい」「車だけ相続したい」といった選り好みは一切できません。

また、相続放棄の手続きは原則として相続開始から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があるため、迷っているうちに期限を過ぎてしまうケースもあります。相続放棄は、うまく活用すれば共有リスクや将来の維持費の負担から確実に離脱できる方法です。

ただし、すべての遺産を放棄することになるため、事前に専門家へ相談して「本当に放棄すべきか」「他の相続人との関係に影響が出ないか」を確認したうえで判断することが大切です。

【所有後】に共有持分のリスクを回避する方法

相続不動産を所有した後でも、共有持分のリスクを回避する方法はあります。例えば、前述した「現物分割」「代償分割」「換価分割」は、不動産の所有後でも可能です。

その他にも、次のような方法で不動産の共有状態を解消できます。

  • 第三者に自己持分を売却する(共有持分買取業者が現実的)
  • 自己持分の放棄で他の共有者に譲る
  • 共有物分割請求で共有者全員を相手に共有の解消を求める

それぞれの内容をみていきましょう。

第三者に自己持分を売却する(共有持分買取業者が現実的)

第三者に自己持分を売却する(共有持分買取業者が現実的)

共有名義の不動産で他の共有者と折り合いがつかない場合、自分の持分だけを第三者に売却するという選択肢もあります。法律上、共有者は自分の持分を自由に処分できるため、他の共有者の同意がなくても売却が可能です。

ただし前述したように、実際のところは一般の買主が共有持分を購入することはほとんどありません。なぜなら、共有不動産は自由に使えず、他の共有者との関係も複雑なため、購入しても活用が難しいからです。
このため、現実的な売却先は共有持分を専門に行う買取業者となります。実務の現場でも、「共有者と揉めて管理が進まない」「相続したけれど使い道がない」「今のうちに現金化したい」という理由で、ご自身の持分だけを手放す相談を多く受けます。

共有持分買取業者であれば、物件の状況や共有関係を把握した上で、法的リスクを踏まえて査定・買取が進むため、一般の不動産会社よりもスムーズに話が進みやすいです。また、仲介とは異なり買主を探す必要がないため、買取業者が示す査定額に合意できれば契約となります。

そのため、相談から現金化までは数日~数週間とスピーディーなのがメリットです。共有関係のストレスから早く抜けたい方にとっては、現実的でスピード感のある解決策といえるでしょう。

ただし注意すべきは、買取価格が市場価格よりも低くなる点です。共有持分には使用制限や交渉リスクがあるため、買取業者はそのリスクを見越した金額で査定します。したがって、「できるだけ高く売りたい」というよりも、「トラブルを断ち切って、早く身軽になりたい」という方に向いている選択肢です。

自己持分の放棄で他の共有者に譲る

自己持分の放棄で他の共有者に譲る

自分の持分を放棄して他の共有者に譲り渡すという方法もあります。これは、共有関係から早く抜けたい方にとって、最も手軽に共有状態を解消できる手段のひとつです。

第二百五十五条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索

つまり、自分の持分を放棄すれば、その分が自動的に他の共有者に割り振られる仕組みです。一見シンプルな方法に思えますが、実務上は注意すべき点が多いのが実情です。

まず、持分放棄には「放棄によって利益を受ける共有者の承諾」が事実上必要になります。
書類上は一方的に放棄できても、不動産登記を変更するためには他の共有者の協力が不可欠だからです。

この協力が得られないと、登記上は自分の名義が残ったままになり、固定資産税の納税義務も続いてしまいます。また、放棄は「無償」であるため、当然ながらお金は一切受け取れません。

実際に口約束で放棄したものの、「固定資産税の請求が自分に届いたままだった」「他の共有者が登記を変えてくれない」といったトラブルもあります。

そのため、持分放棄は完全に共有者との関係が良好な場合に限って有効な方法です。関係が悪化していたり、他の共有者が連絡を取れなかったりするようなケースでは、放棄よりも共有持分専門の買取業者への売却を検討した方が現実的でしょう。

共有物分割請求で共有者全員を相手に共有の解消を求める

共有物分割請求とは、不動産など複数人で共有している財産の共有状態を解消するため、共有者全員に対して共有物の分割を求めることを言います。任意の協議において分割が決まれば良いですが、利害が一致せずに話し合いがまとまらないことも珍しくありません。

状況が完全に行き詰まった際には、前述した「共有物分割請求訴訟」を行う手段があります。

共有物分割請求訴訟

ただし、訴える際は共有者全員を被告として提起する必要があり、相続で兄弟姉妹や親戚が相手になるケースも多いため、精神的な負担は少なくありません。

共有物分割請求訴訟のメリットやデメリットは以下の通りです。

メリット ・共有者と話し合いができない場合でも共有名義を解消できる
・裁判所の判断で不動産売却や分筆が進められる
デメリット ・弁護士費用や時間、手間がかかる
・共有者全員に対し訴訟を起こすため、関係が悪化しやすい
合意の必要性 他の共有者の合意は不要。
費用目安 ・裁判費用:5万円〜
・不動産鑑定費用:20〜100万円
・弁護士費用:着手金30万円+報酬金5%
(合計100万円を超えることも少なくない)
おすすめなケース ・他の共有者と話し合える状態にない場合
・強制的にでも共有名義を解消したい場合
・裁判費用や時間がかかっても問題ない場合

注意すべきは「訴訟を起こせば自分の思う通りに分けてもらえる」と誤解してしまうことです。前述したように、裁判所は公平性を最優先に判断するため、希望した方法が採用されない場合もあります。

特に「換価分割」になると、競売にかけられて市場価格の7割前後でしか売れず、全員が損をする結果になるケースもあるのです。

「確実に共有関係を終わらせる唯一の手段」ですが、費用や手間もかかる方法のため、本当に利用すべきか、専門家に相談しながら慎重に検討することをおすすめします。

まとめ

共有名義を解消する方法には、様々なものがあります。大切なのは、不動産の状況や自分の希望に合った方法を選ぶことです。単独名義として所有し続けたい場合や、少しでも高く売りたい場合は、まず共有者と相談しましょう。

共有者との話し合いが成立せず、強制的にでも共有名義を解消したいといった場合は、共有物分割請求訴訟という選択肢もあります。

なるべく手間をかけず、少しでも早く共有名義から抜け出したければ、共有持分の売却がおすすめです。専門の買取業者なら、最短数日で現金化もできます。

共有者との協議で揉めてしまったり、共有持分の売却について不安があれば、弁護士や不動産会社などの専門家にも相談しましょう。共有名義に詳しい専門家なら、トラブルなく共有名義を解消するための的確なアドバイスをしてくれます。

共有持分に関するコラムはこちら

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更新日 : 2025年11月07日
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