家の解体費用が払えない!7つの対処法とは?補助金や費用相場も

空き家 解体費用 払えない

実家を相続したものの、すでに持ち家を所有していて住む予定がない場合、空き家となっている実家の解体を検討するケースは珍しくありません。

通常、空き家の解体費用は建物の構造や面積によって異なり、木造家屋の解体費用相場は坪単価3~5万円程度、鉄骨造になると坪単価5~7万円が相場となります。また、RC(鉄筋コンクリート)造なら坪単価6~8万円が目安となり、合計で100~200万円程度の費用がかかることが一般的です。

決して少なくない金額が必要となるため、費用の工面ができずに空き家の解体を躊躇している人も多いのではないでしょうか。

しかし、空き家は放置すると余分な税金がかかったり、倒壊や火災が発生して近隣住宅に迷惑をかけたりするなどさまざまなリスクがあるため、できるだけ早く解体したり売却したりして手放すのが賢明です。

この記事では、空き家を放置するリスクや、空き家解体に利用できる補助金やローン、賃貸・売却など解体費用が払えない際の対処法などを解説します。解体費用を安くするコツについても解説するので、空き家の解体を検討している人はぜひ参考にしてください。

所有した空き家を放置するリスク

所有した空き家をそのまま放置すると、どのようなリスクがあるのでしょうか?

  • 所有するだけで税金がかかる
  • 倒壊や火災の恐れがある
  • 犯罪の被害に遭う可能性がある
  • 害虫や害獣の住処になる
  • 近隣住民とのトラブルの原因になる
  • 資産価値が著しく減少する

次の項目から、それぞれのリスクについて詳しく解説します。

所有するだけで税金がかかる

家は、たとえ住んでいなかったとしても、所有しているだけで固定資産税や都市計画税といった税金がかかります。

固定資産税や都市計画税は、毎年1月1日現在に家の所有者として固定資産課税台帳に登録されている人に対して課税される税金です。つまり、家を所有している間は、毎年固定資産税や都市計画税を払い続けなければならないのです。

なお、固定資産税や都市計画税は、家の課税標準額に対し「固定資産税は1.4%」「都市計画税は0.3%」の税率でかかります。

課税標準額は、毎年春頃に市区町村から送られてくる固定資産税の「納税通知書」に記載されている、課税明細書や固定資産税評価証明書で確認することが可能です。「価格」または「評価額」の欄に家の評価額が土地と建物に分けて記載されており、この評価額が課税標準額となります。

参照:固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 税金の種類 | 東京都主税局

「特定空き家」認定で固定資産税が上がる可能性がある

通常、家が建っている土地を所有していると「住宅用地の特例措置」が適用されるため、更地を所有している場合よりも固定資産税は安くなります。(最大1/6)

住宅用地の特例措置が適用された場合の固定資産税・都市計画税の税率は、以下のとおりです。

固定資産税 都市計画税
更地 課税標準額×1.4% 課税標準額×0.3%
敷地面積200m2以下の部分 課税標準額×1.4%×1/6 課税標準額×0.3%×1/3
敷地面積200m2を超える部分 課税標準額×1.4%×1/3 課税標準額×0.3%×2/3

ただし、所有している家が「特定空き家」に指定されてしまうと、住宅用地の特例措置を受けられなくなり、最大でいままでの6倍の固定資産税を支払わなければならなくなります。たとえば、現在の固定資産税が10万円だった場合は、最大で60万円になるということです。

特定空き家の認定基準

特定空き家とは、倒壊や近隣に迷惑をかける恐れがあると自治体に判断された空き家のことです。空家等対策の推進に関する特別措置法第2条の2では、以下のいずれかの状態にあると認められる空き家のことを特定空き家と定めています。

  • 1.そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • 2.著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 3.適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • 4.その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
1.そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

例)

  • 地盤や建物の基礎が沈下して建物が傾いている
  • 土台が腐ってボロボロになっている
  • 屋根や外壁などが脱落する恐れがある
2.著しく衛生上有害となるおそれのある状態

例)

  • 不法投棄されたゴミが放置され害虫や害獣が発生している
  • 浄化槽の破損などにより溜まった汚物が悪臭を放っている
3.適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

例)

  • 外壁に付着した汚物や落書きを放置している
  • 敷地内にゴミが散乱していたり、山積みになったゴミが放置されたりしている
  • ツタや立木などが家の全面を覆うほど伸び切っている
4.その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

例)

  • 立木の枝が折れ、近隣の道路や住宅の敷地などに散らばっている
  • 草や立木の枝などが近隣の道路にはみ出し、通行の妨げとなっている
  • 動物の鳴き声などの騒音、糞尿などの汚物が地域住民の生活に悪影響を及ぼしている
  • ねずみ・はえ・シロアリなどの害虫・害獣が大量に発生し、近隣住民の生活に悪影響を及ぼしている
  • 門や扉の鍵が壊れていたり、窓ガラスが割れていたりするなど、不審者が簡単に侵入できる状態で放置されている

参照:空家等対策の推進に関する特別措置法第2条の2 | e-Gov法令検索

特定空き家の認定の流れ

前述した特定空き家の認定基準に当てはまっていたとしても、すぐに特定空き家となるわけではありません。以下のような段階を踏んで、最終的に「特定空き家」と認定されます。

  1. 近隣住民から市町村へ、空き家に関する苦情や相談が寄せられる
  2. 行政の担当者が空き家の状況を調査・把握する
  3. 空き家の所有者に管理状況を問い合わせる
  4. 所有者に対して空き家の管理状況を改善するよう助言・指導する
  5. 助言・指導をおこなっても状況が改善されない場合は、行政の担当者が空き家の立ち入り調査をおこなう
  6. 調査の結果、認定基準に当てはまると判断されれば「特定空き家」に指定される

特定空き家に指定された場合、その原因となっている状況を改善できれば指定を解除してもらうことが可能です。具体的には「剥がれかけている屋根瓦を修復する」「崩れかけているブロック塀を撤去する」「隣接する道路に伸びている木の枝を除去する」などの対処をおこないます。

行政からの助言や指導があった際は、速やかに空き家のある市町村へ連絡し、改善措置を取ってください。行政からの助言や指導があったにもかかわらず改善を怠った場合は、50万円以下の罰金が科されたり、行政が樹木の伐採や空き家の取り壊しをおこない、その費用を所有者に請求する「行政代執行」がおこなわれたりすることもあります。

倒壊や火災の恐れがある

空き家を放置しておくと、自然災害(台風や地震、津波など)が起こった際に倒壊や火災が発生する恐れがあります。

たとえ自然災害がなかったとしても、雨漏りによる浸水で柱や床が腐朽したり、シロアリ被害などが発生したりすれば、いずれは倒壊する恐れがあるでしょう。

また、空き家内の配線機器が放置されていると、塵や埃が溜まったりネズミなどにかじられて漏電したりして、火災の原因となる恐れもあります。

倒壊や火災が発生した際に近隣の住民や住宅に被害が及べば、空き家の所有者の重過失として責任を問われる場合もあります。

被害状況によっては修繕費や損害賠償を請求され、空き家の解体費用以上の金額を支払う羽目になる恐れもあるのです。

犯罪の被害に遭う可能性がある

人気のない家は、放火やタバコのポイ捨て、不法投棄などの格好の的となります。

空き家に放火され、その火が近隣住宅に燃え広がりでもすれば、その住宅の所有者から損害賠償を請求されてしまうでしょう。

また、不法投棄が原因で特定空き家に指定されれば、固定資産税や都市計画税の金額が跳ね上がる恐れもあります。不法投棄されたゴミに放火され、火災が発生する恐れもあるのです。

くわえて、空き家には不審者や犯罪者が勝手に住みつく可能性もあります。間接的に犯罪を助長してしまう恐れがありますし、不審者や犯罪者が居ると知らずに空き家を訪れれば、所有者自身が被害を受ける恐れもあるでしょう。

薬物の使用や栽培などの犯罪行為をおこなう場所として、空き家が使用される恐れもあります。状況によっては空き家の所有者が犯罪行為に関わっていると疑われる可能性も考えられるのです。

他にも、薬物を乱用した人が近隣住民へ危害を加えたり、空き家周辺で薬物の売買がおこなわれたりして、治安悪化を招く恐れもあるでしょう。

害虫や害獣の住処になる

空き家は人の住んでいる家に比べて、猫・ネズミ・ハクビシン・アライグマなどの野生動物が大量に住みつく可能性が高いといえます。また、スズメバチなどの虫が巣を作った際、発見が遅れて巨大化している場合も多いです。

これらの害獣や害虫は、近隣住民に刺す・噛むといった被害を及ぼす恐れがあります。

また、直接的な被害以外にも、糞尿などの汚物によって景観が損なわれたり、鳴き声などの騒音や悪臭などが近隣住民の日常生活に悪影響を及ぼしたりする恐れもあるでしょう。近隣住民が行政へ苦情を訴える事態になれば、特定空き家に指定され、罰金や固定資産税・都市計画税の軽減措置解除の罰則を受けることになりかねません。

くわえて、住みついた害獣や害虫を駆除するのに、多額の費用がかかるケースも珍しくないのです。

近隣住民とのトラブルの原因になる

ここまで紹介したように、空き家を放置することには以下のようなリスクがあります。

  • 倒壊や火災の恐れがある
  • 犯罪の被害に遭う可能性がある
  • 害虫や害獣の住処になる

くわえて、上記のことが原因で近隣住民とトラブルに発展するリスクがあることも留意しておきましょう。

所有する空き家が原因で近隣の住民や住宅が被害に遭うと、近所付き合いに悪影響が及んだり、最悪の場合は裁判沙汰に発展したりする恐れもあります。

資産価値が著しく減少する

放置されている空き家は換気がなされないため、カビやダニの温床になりやすいです。また、水の循環もないため排水管の鉄もすぐにさびてしまうでしょう。このように、一度人が住まなくなった空き家は著しく劣化が進み、家の資産価値を早く減少させることになります。

資産価値が減少してしまうと、空き家を手放すために売却しようとしても思うような値がつかなかったり、買い手がなかなか見つからなかったりといった事態になりかねません。

場合によっては、売却益より建物の解体やリフォームにかかる費用のほうが高くなり、空き家を手放すために多額の費用がかかってしまうケースも珍しくないのです。

空き家の解体費用が払えない時の対処法

空き家の解体費用が払えない場合は、どうすればよいのでしょうか?

この場合、考え得る対処法は以下のとおりです。

  • 国や自治体の補助金を利用する
  • 空き家解体にローンを利用する
  • リフォームして賃貸に出す
  • 相続放棄する
  • 自分や親族が住む
  • 解体せずに売却する
  • 解体前提で売却する

次の項目から、それぞれの対処法について詳しく解説します。

国や自治体の補助金を利用する

近年、空き家の増加が問題となっており、防災や防犯、景観を守る観点から空き家の解体を進めるため、国や自治体が補助金を出してくれるケースが多くあります。

利用できる補助金の種類は、地域や築年数、空き家の状態、所有者の所得や資産状況、過去の納税状況などによって異なります。自分の場合どのような補助金が使えるかは、インターネットで検索したり市役所の窓口へ直接問い合わせたりして調べるとよいでしょう。

まずは、インターネット上で「○○(空き家がある地域) 解体 補助金」などのキーワードを入力し、検索します。自治体のホームページなどで利用できそうな補助金制度の名称などを大まかに調べ、その情報をもとに自治体の窓口へ具体的な要件や申請方法などを問い合わせるとスムーズでしょう。

次の項目から、空き家の解体時に利用できる国や自治体の補助金制度について、代表的なものを紹介します。ただし、補助金制度の名称や補助率などは各自治体によって若干異なる場合もあるので、注意してください。

空き家対策総合支援事業

空き家対策総合支援事業は、国土交通省が空き家対策に取り組む自治体に対し支援をおこなう事業です。

空き家の所有者が空き家の解体や解体した後の土地の整備、空き家の活用などをおこなう際に、国と自治体それぞれから補助金が出ます。

補助対象となる代表的な空き家対策の内容と、各内容に対する補助率は、以下のとおりです。

空き家対策 補助率(国) 補助率(自治体)
空き家の解体 2/5 2/5
空き家解体後の土地整備 1/3 1/3
空き家の活用 1/3 1/3

参照:住宅:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報 – 国土交通省
条文別施策情報>財政上の措置及び税制上の措置等(第15条関係)>財政上の措置>■空き家対策総合支援事業(平成28年度~) (R5概要資料)

老朽危険家屋解体撤去補助金

老朽危険家屋解体撤去補助金は、老朽化により倒壊のリスクが高まっている危険家屋の解体を促進する補助金制度です。

補助金を受け取るには自治体が実施する事前調査を受け、基準を満たす必要がある場合が多いので注意してください。

また、受け取れる補助金額の上限や補助率、補助対象となる空き家の要件は、各自治体によってさまざまなので、必ず各自治体のホームページなどで確認してください。

たとえば、飯塚市の場合、補助金額は「50万円を上限として補助対象経費の1/2以内」となっていますが、南伊豆町の場合は「150万円を上限として補助対象経費の3/4以内」となっています。

参照:飯塚市/飯塚市老朽危険家屋解体撤去補助金制度

参照:老朽危険家屋等解体撤去補助金について | 南伊豆町ホームページ

建て替え建設費補助金

建て替え建設費補助金は、老朽化した空き家を解体し、新たに住宅を建築する際に利用できる補助金制度です。

解体費用や建築費用の一部が補助対象となります。

なお、建て替え後の建物が、耐火建築物・準耐火建築物である、省エネ基準に適合しているなどの条件が設定されている場合もあります。詳しくは、各自治体のホームページなどを確認するようにしてください。

参照:大阪市:建替建設費補助制度(戸建住宅への建替え) (…>災害に備える>その他)

木造住宅解体工事費補助金

木造住宅解体工事費補助金は、地震発生時における木造住宅の倒壊などによる被害を防止するため、木造住宅の解体工事にかかる費用の一部を補助する制度です。自治体が実施する木造住宅耐震診断を受け、一定の基準を満たしていた場合に利用できます。

なお、受け取れる補助金額の上限や補助率、補助対象となる空き家の要件は、各自治体によってさまざまなので、必ず各自治体のホームページなどで確認してください。

たとえば、一宮市の場合、補助金額は「20万円を上限として補助対象工事に要する経費の23%」となっていますが、豊橋市の場合は「解体工事費用の23%の額または30万円のいずれか小さい額」となっています。また、豊川市の場合は「解体工事にかかる費用の2/3の額または20万円のいずれか小さい額」となっています。

参照:地震による住宅の倒壊から身を守るために、住宅の解体工事を行う方に、その費用の一部を補助します。|一宮市

参照:木造住宅解体工事費補助金/豊橋市

参照:木造住宅解体工事費補助金

都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金

都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金は、都市の景観を守るため、長い間放置されている空き家の解体費用を補助する制度です。

なお、受け取れる補助金額の上限などが各自治体によって異なるため、必ず各自治体のホームページなどで確認してください。

たとえば、函館市の場合、補助金額の上限は30万円ですが、陸別町の場合は補助金額の上限が50万円に設定されています。

参照:都市景観形成地域老朽空き家解体費支援事業 – 市民活動情報

参照:陸別町景観形成事業 | 取組・計画 | 町政・行政情報 | 日本一寒い町 北海道 陸別町

空き家解体にローンを利用する

前述したように、空き家を放置することにはさまざまなリスクが伴うため、利用する予定のない空き家は早めに解体したいと考える人は少なくありません。

実際に空き家解体の需要は増える傾向にあり「空き家解体ローン」や「空き家対策ローン」といった名称のローン商品を扱う金融機関が増えています。

空き家解体ローン(空き家対策ローン)の金利は実質年率2.5〜5%程度と、フリーローンよりも低く設定されている場合が多いです。

くわえて、住宅ローンを借りている人向けに、さらに低い金利を設定している金融機関もあります。たとえば、群馬銀行の「空き家解体ローン」を利用する場合、住宅ローンを利用していない人は年3.1%の最下限金利が適用されるのに対し、住宅ローンを利用している人は年2.6%の最下限金利が適用されます。

住宅ローンを利用中の人は、借入先の金融機関に空き家解体ローンや空き家対策ローンといったローン商品がないか確認してみるとよいでしょう。

また、ろうきんの「リフォームローン+α」や清水銀行の「しみず住宅諸費用ローン」のように、空き家の解体費用にも利用できるリフォームローンや住宅諸費用ローンを提供している金融機関もあります。

ただし「空き家解体ローン」や「空き家対策ローン」といったローンは、カードローンやキャッシングなどに比べて審査に必要な書類が多く、審査内容も厳しい傾向があります。そのため、契約から融資までに時間がかかると考え、早めに準備しておくよう心がけましょう。

参照:空き家解体ローン | 群馬銀行

参照:北陸ろうきん [ リフォームローン+α ]

参照:清水銀行 – 商品ラインナップ – しみず住宅諸費用ローン

リフォームして賃貸に出す

賃貸の需要がある地域に空き家があるのであれば、賃貸に出すのも1つの手段です。

建物の劣化具合によってはリフォームや修繕が必要な場合もありますが、住宅ローンの支払いがない分、早く費用を回収して利益を得られる可能性が高いです。

ただし、空き家の立地などによっては、多額の費用をかけてリフォームや修繕をおこない賃貸に出したとしても借り手が見つからず、損をしてしまう可能性もあります。

リフォームや修繕にかかる費用と解体費用を比較し、賃貸に出した場合の詳細なシミュレーションをおこなうことが大切です。

個人で判断するのは困難なため、空き家のある地域の賃貸事情に詳しい不動産会社などに相談しながら検討することをおすすめします。

相続放棄する

問題となっている空き家が相続により取得したものなら、相続放棄することを検討してもよいでしょう。

相続放棄をすると、空き家の所有権が国に継承され、解体費用や固定資産税の支払い義務を免れることが可能です。

ただし、空き家以外に相続したい財産がある場合、相続放棄をしてしまうと空き家以外の財産も相続できなくなってしまうので注意してください。

また、相続放棄が無事にできたとしても「相続財産管理人」に空き家を引き渡さない限り、空き家の管理責任は残ったままです。管理責任が残っている間は、空き家が倒壊したり火災が発生したりしないよう、引き続きメンテナンスをおこなわなければならないので注意が必要です。

自分や親族が住む

いま現在、空き家の遠方に住んでいたとしても、相続などをきっかけに自分たちの住居として移り住むことも選択肢の1つです。

もし、現在は賃貸物件に住んでいるという場合には、空き家に移り住むことで家賃分の節約にも繋がります。自分たちが住むには不便な立地にあるなどの場合には、防犯面や管理をきちんとおこなったうえで物置として活用するのもよいでしょう。

また、自分以外の親族に貸し出して住んでもらうという方法もあります。

ただし、親族だからといって口約束だけで貸し出してしまうと、空き家の使用状況や家賃などを巡って後々トラブルとなる恐れがあります。

親族であっても空き家の使用に関して明確なルールを設け、必ず契約書などを作成して書面に残しておくとよいでしょう。

解体せずに売却する

解体費用が払えないなら無理に解体せず、古家付き土地または中古住宅として売却することも検討しましょう。

雨漏りやシロアリ被害などの重大なダメージがなければ、わざわざ建物を解体しなくてもそのまま売却できる可能性が高いです。

なお、耐用年数(木造なら22年)を超えていれば古家付き土地、耐用年数以内なら中古住宅として扱われることが多いですが、耐用年数を超えていてもリフォームすれば中古住宅として売れることもあります。

空き家を古家付き土地または中古住宅として売却する場合、不動産会社に売却の仲介を依頼するか、不動産会社に直接買い取ってもらう方法があります。いずれの場合も、より多くの不動産会社に依頼して査定をおこない、結果を比較・検討することが大切です。

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解体前提で売却する

空き家の建物があまりにもボロボロだったりすると、古家付き土地や中古住宅として売ろうとしても、なかなか買い手がつかない場合もあるかもしれません。

また、建物が著しく劣化しており、購入後に結局取り壊さなければならない状態の場合、買い手が解体費用がかかることを理由に買い渋る恐れもあります。

そのような場合、更地にする前提で土地を売却し、売却益を解体費用に充てるという方法も検討するとよいでしょう。

この方法なら、買い手が決まってから空き家を解体するので「解体費用をかけて更地にしたのに、結局買い手がつかなくて費用を回収できなかった」という事態を防げます。

空き家売却後に受け取れる金額が少なくなってしまいますが、解体費用を確実に回収する方法として有効です。

空き家の解体費用の相場と費用が変わる要因

空き家の解体費用は、一般的に100万円〜200万円程度かかると考えられていますが、同じ面積の家でも建物の構造によって費用が変わります。

木造家屋の場合、解体費用の相場は坪単価3~5万円程度、鉄骨造になると坪単価5~7万円が相場となります。また、RC(鉄筋コンクリート)造なら坪単価は6~8万円が目安となります。

建物の構造と面積別に解体費用の相場をまとめると、以下のとおりです。

木造(3~5万円/坪) 鉄骨造(5~7万円/坪) 鉄筋コンクリート造(6~8万円/坪)
30坪 90~150万円 150~210万円 180~240万円
40坪 120~200万円 200~280万円 240~320万円
50坪 150~250万円 250~350万円 300~400万円

くわえて、家屋以外の付帯設備や残置物がある場合には、それらの処理にかかる費用が別途必要なケースもあります。

残置物の処理にかかる費用の相場について、代表的なものをまとめると以下のとおりです。

カーポートの撤去 20,000円~
ブロック塀の解体 5,000~10,000円/㎡
庭木の撤去 5,000円~30, 000円/本(木の高さにより変動)
門扉の撤去 30,000〜50,000万円
物置の撤去 15,000円~30,000円/個
井戸の埋戻し 10万円前後

建物の構造や残置物の処理の有無以外にも、空き家の解体費用に影響する要因はたくさんあります。次の項目から、項目ごとに詳しく解説していくので、参考にしてください。

大きさや構造

空き家の解体費用は、建物の床面積や階数によって変わります。

ただし、平屋、2階建て、3階建て・・・と階数が増えれば増えるほど、それに比例して解体費用も高くなるのかというと、そうではありません。

同じ床面積30坪の家が2軒あったとして、片方は平屋、もう片方は2階建てだった場合、平屋の解体費用のほうが高い傾向があります。

その理由は、平屋のほうがコンクリートを使用している基礎部分の面積が広いからです。30坪の家屋の場合、基礎部分の広さは2階建てなら15坪分、平屋なら30坪分です。

コンクリートは木造に比べて解体に手間がかかるため、コンクリートを使用している基礎部分が広いほど費用は高くなります。

材質

一般的な家屋には、木造・鉄骨・RC(鉄筋コンクリート)の3つのうちどれかの材質が使われています。

そして、木造<鉄骨造<RC(鉄筋コンクリート)造の順に解体費用が高くなる傾向にあるのです。

これは、木造に比べてコンクリートの方が解体に時間がかかり、大型重機などを搬入・搬出する手間や大勢の作業員が必要となることが原因です。

空き家の状態

老朽化した建物や火災によりほとんどが焼失した家屋などは、比較的楽に解体できて費用が安く済むのではないかと思う人もいるかもしれません。

しかし、そのような建物は解体中のちょっとした衝撃で倒壊する恐れがあり、作業には危険が伴います。

そのため、一般的な解体工事より慎重に作業を進める必要があり、時間や手間がかかる分むしろ解体費用が高くなる可能性があるのです。

立地や周辺環境

空き家の立地や周辺環境によっては、解体費用が割高になることがあります。

人口密集地の場合、防音壁を設置したり防塵対策を講じたりする必要があるなど、周囲への特別な配慮が必要となります。

道幅が狭い、狭小地、高低差があるなどの特徴がある場所なら、特殊な車両や機材が必要です。場合によっては車両や機材が工事現場の近くまで入れないため、手作業で解体や廃材の運搬をおこなう必要があり、通常より多くの作業員を要することもあるのです。

また、都市部は地方に比べて作業員の人件費や車両を停めておく場所の駐車場代などが高い傾向にあります。

くわえて、工事現場からゴミ処理場が遠いと、廃材などを処理するのに時間がかかり、その分工期が延びてしまう恐れがあります。

車通りが多い、病院や学校が近い場所などは通常より周囲の安全に配慮する必要があり、警備員の数を増やさなければならないこともあるのです。

付帯設備や残置物の状況

ブロック塀、フェンス、門扉、カーポート、ガレージ、庭の植物、井戸、浄化槽、地中埋設物などがある場合、空き家の家屋を解体する際は一緒に撤去が必要です。また、池がある場合は埋め戻しなども必要となるでしょう。

このような家屋以外の付帯設備や残置物の処理を付帯工事といい、空き家解体の際には解体費用とは別に付帯工事費がかかることが一般的です。

また、家屋の中に家電や家具、布団、衣類、食器、生活雑貨、本、置物などが残っていると、廃棄物として処分費用がかかるので注意してください。

アスベスト除去工事の必要性

アスベスト(石綿)は肺がんなどの病気を発症する原因となる恐れがあるため、特殊な方法で撤去や処分をおこなわなければなりません。

空き家の建物にアスベストが使用されている可能性がある場合、まずは事前に調査をおこないます。実際にアスベストが使用されていた場合は、アスベストの使用レベル(アスベストを含む建材を使用している、吹き付けに使用しているなど)に応じて建物全体を覆うなどの対策をおこないながら、アスベスト除去工事をおこないます。

アスベストが使用されていた場合、解体費用とは別にお金をかけてアスベスト除去工事をおこなわなければなりません。

なお、2006年以降、アスベストは建築物に使用できなくなっています。しかし、それ以前に建てられた建物ならアスベストを使用している可能性があるので、注意してください。

建物の解体費用の相場を調べる方法や解体業者の選び方について、詳しくは以下の記事でも解説しているので参考にしてください。

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土地 売却 解体費用
土地を売るにあたって、建物を解体すべきか悩んでいる人は多いでしょう。 築年数の古い建物は資産価値がなくなるので、更地にしたほうが使い勝手がよくなり、売れやすくなるケースもあります。 しかし、古い建物があってもまったく売れないというわけではありません。むしろ、古家付き土地としての需要もあるので、状況次第では解体せずに売り…

参照:石綿パンフレット等 |厚生労働省
石綿パンフレット等>使用等の禁止>アスベスト全面禁止(平成24年政令改正)

空き家の解体費用を安くする方法

前項では、解体費用を工面する方法や解体せずに空き家を活用する方法などについて紹介しました。

メリット・デメリットなどを考慮して空き家を解体することを選んだ場合、かかる費用をできるだけ安く抑えたいと考える人は多いでしょう。

そこで、この項目では空き家の解体費用を安くする方法について解説します。

具体的には、以下のとおりです。

  • 複数の業者から相見積もりを取る
  • できるだけ残置物を処分する
  • 閑散期に合わせて依頼する

次の項目から、それぞれの方法について詳しく解説します。

複数の業者から相見積もりを取る

複数の業者から相見積もりを取り、作業内容や費用を確認しましょう。

相見積もりを取ることで、解体費用の相場を知ることができます。また、作業内容ごとの費用を調べ、一部の作業のみ別の業者に依頼することで費用を抑えられる可能性もあります。

見積もりに作業の詳細が書かれていない場合、後から追加費用を請求される恐れがあるため注意が必要です。詳しい明細を出してくれる業者を選ぶことをおすすめします。

なお、複数の業者から相見積もりを取ることで、より安い費用を提示してくれる業者に出会える確率が上がりますが、相場からかけ離れた安すぎる業者には注意が必要です。

費用を抑えようとするあまり、本来取り除くべき埋設物などを放置するなどの手抜き工事をされてしまう恐れがあります。必要な作業内容が含まれているか、しっかりと確認してから依頼するようにしてください。

できるだけ残置物を処分する

残置物の処理は解体業者に任せられる場合が多いですが、自分でおこなうことで処分費用を浮かせられます。また、残置物が多く残っているおかげで作業に日数がかかる場合もあり、解体費用が高くなる原因となる恐れもあるので、可能な限り自身で処分しておくことをおすすめします。

残置物の処分は、自身でゴミの回収日に捨てる、粗大ごみに出す、廃品回収業者に依頼して引き取ってもらうなどの方法が、最も手間がかからず簡単な方法でしょう。

しかし、少し手間をかけてリサイクルショップやフリマアプリで売れば、解体費用の足しにできるかもしれません。まだ使えそうな家具や家電など、再利用できそうな不用品はいきなり捨てずに、まずは売却できないか検討してみましょう。

また、以下の記事では残置物のある空き家をそのまま売る方法について解説しています。残置物の処分が面倒だったり、処分費用がかかったりしそうな場合は参考にしてください。

関連記事
残留荷物ある空き家 売る
相続などによって空き家を取得した場合、まだ片付けが済んでおらず、家具や家電といった残置物が残されていることも少なくありません。 法律上の制限はないので、建物を解体したり残置物を片付けなくても空き家は売却できます。 買主のために残置物を処分しようとする人も多いですが、手間や費用を考えると損をしてしまう恐れもあるので、必ず…

閑散期に合わせて依頼する

空き家の解体業には繁忙期と閑散期があり、閑散期に合わせて依頼することで費用を抑えられる可能性があります。

繁忙期には人員不足のため、人件費が高めに設定されていることが多いです。また、人員不足により工期が長くなることも多く、その分解体費用も高くなります。

くわえて、繁忙期は近隣の処分場が満杯で遠方の処分場まで廃材を運ばなければならなかったり、近隣の重機が全てリースされていて遠方からリースする必要があったりするケースも珍しくありません。この場合、運搬費が高くなる分、解体費用も高くなる傾向にあります。

解体業の繁忙期は、一般的に11月~3月あたりといわれているので、この時期に入る前に後期を設定するとよいでしょう。

空き家の解体前に知っておくこと

空き家を解体する際には、費用以外にも知っておくべき注意事項がたくさんあります。

具体的には、以下のとおりです。

  • 建物を解体した際に申請が必要な「建物滅失登記」について
  • 空き家が解体して良い状態か?
  • 空き家が再建築不可ではないか?
  • 空き家は自分で解体しないほうが良い

それぞれの注意事項について、次の項目から詳しく解説します。

建物滅失登記について

建物滅失登記とは、解体などで建物がなくなった際に行う登記のことです。

空き家を解体した際には、解体工事完了後1ヵ月以内に建物滅失登記を申請する必要があります。

建物滅失登記の申請を怠った場合、10万円以下の過料が科されることもあるので注意してください。また、土地の売却や建物の再建築ができなかったり、存在していない建物に固定資産税がかかったりするなど、さまざまな問題が起こるリスクがあるため申請は確実に済ませましょう。

建物滅失登記の一般的な流れは、以下のとおりです。

  1. 建物の登記簿謄本や各種図面を取得
  2. 建物滅失登記申請書を作成
  3. 解体業者から建物取毀(とりこわし)証明書や印鑑証明書を受け取る
  4. 法務局で登記申請する

なお、申請にかかる費用は、自分で申請をおこなう場合と土地家屋調査士に依頼する場合で異なります。

自分で申請する場合、かかる費用は登記簿謄本を取得する際にかかる費用(1,000 円)と、法務局までの交通費や郵送料程度です。土地家屋調査士に依頼する場合は、依頼料が3~4万円ほどかかりますが、土地の売却や再建築などのために急いでいる場合などは相談することをおすすめします。

解体して良い状態か

解体する前に、登記簿で空き家の所有者をいま一度確認しましょう。

空き家が共有名義になっていたり抵当権が設定されていたりすると、勝手に解体したり売却したりすることはできません。

まずは他の共有者たちと空き家の処分について話し合い、方針を決めることが先決でしょう。

再建築不可ではないか

建物を建てる際には、建築基準法の接道義務を満たしている必要があり、この接道義務を満たしていない土地を再建築不可物件といいます。

再建築不可物件は、一度建物を解体してしまうと新たに建物を建てられないため、空き家を解体すべきかどうか慎重に検討する必要があります。

法律が改正されたことにより、以前は問題なく建物が建てられたのに、現在では一度解体してしまうと新たに建物を建てられないケースは珍しくありません。建物を解体する前に、その土地が再建築不可物件ではないかよく確認しておきましょう。

以下の記事では、再建築不可物件を更地にすべきかどうかについて、メリット・デメリットなどを詳しく解説しています。併せて参考にしてください。

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自分で解体しない

解体費用を抑えるために、空き家を自分で解体しようと考える人もいるかもしれません。

結論からいうと、空き家を自分で解体するのはおすすめできません。

自分で解体する場合、事故が発生したり近隣住宅へ被害が及んだりしたら、すべて自己責任で対応しなければなりません。病院代や近隣住民への損害賠償などで、解体費用以上にお金がかかる可能性も考えられます。

また、金銭的な問題だけでなく、今後の生活に支障が出るほどの障害を負う恐れもあるでしょう。

もし、作業途中で自分で解体することを諦めて業者に依頼した場合、最初から業者に依頼した場合よりも時間や費用がかかってしまうこともあるのです。

まとめ

空き家を解体せず放置することには「害虫や害獣の住処になる」「資産価値が著しく減少する」など、さまざまなリスクがあります。

今後住む予定がない場合は、できるだけ速やかに解体したり、売却したりして手放すことをおすすめします。

もし、費用が工面できず解体に踏み切れずにいるなら、国や自治体の補助金制度や空き家関連のローンなどを利用できないか調べてみましょう。

また、空き家の状態によっては、わざわざ解体しなくてもそのまま売却できる可能性もあります。解体する前にまずは複数の不動産会社へ査定を依頼して、空き家をそのまま売却できないか検討するとよいでしょう。

空き家の解体についてよくある質問

空き家の取り壊し費用は誰が支払いますか?

空き家の取り壊し費用は、所有権を持つ人の負担になります。
もし、空き家が相続した家なら、相続人が支払うのが通常です。家が共有名義になっている場合は、共有名義人が持ち分割合に応じて分担して支払うことが一般的です。ただし、共有名義人全員の合意があれば、それぞれの負担額を調整することも可能です。
なお、借地に建つ家の場合は、契約内容によって異なるので契約書などをよく確認してください。

空き家の解体で残していいものは何ですか?

残置物があった場合、解体業者が解体作業のついでに処分してくれる場合が多いです。ただし、処分費用を余分に請求される恐れもあるので注意してください。

優良な空き家の解体業者を選ぶ基準は?

建物の解体業者を選ぶ際には、以下の点をチェックしましょう。
・解体工事に必要な許認可を受けているか
・自社で解体工事を行っているか
・必要な書類をきちんと発行してくれるか
・見積もりが極端に安くないか
・適切な支払い方法を提案してくれるか
・担当者の対応に問題はないか

空き家の解体にはどれくらいの期間がかかる?

建物の大きさ、家屋内の残置物の状況、ブロック塀や庭木の撤去などの付帯工事の有無など、条件によって解体期間は異なりますが、概ね10日~2週間程度と考えておくとよいでしょう。

空き家の解体で税金の控除は受けられる?

建物の解体費用は売却時の諸経費となる譲渡費用のひとつとして扱われます。そのため、解体費用は譲渡所得税の控除対象となります。

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