地主に借地権を買い取ってもらうことは可能だがあくまでも交渉次第
借地権は、金銭的な価値を持つ権利であり、地主がこれを買い取ること自体は法律上問題ありません。実際にも、契約関係を整理したい場合や、将来的な土地活用・相続対策などを理由に、地主が借地権を買い取るケースは一定数見られます。
ただし、地主に借地権を買い取る義務があるわけではありません。借地権はあくまで賃貸借契約にもとづく「賃借権」であり、借地借家法や民法にも、地主に買取を強制する規定は設けられていません。そのため、借地人が買取を希望しても、地主が同意しなければ取引は成立しないのが原則です。
法的な整理としては、借地権の買取は、現在の賃貸借契約を当事者の合意によって終了させ、その対価として金銭を支払う「任意の売買(合意解約)」という位置づけになります。つまり、価格や引渡し条件などについて、双方が納得しなければ契約は成立しません。
また、借地借家法では借地人の立場が手厚く保護されていますが、その内容は主に更新拒絶や明渡しに関するものです。地主に対して積極的に金銭の支払いを求められる権利までを認めたものではありません。
この点を誤解し、「借地人なのだから買い取ってもらえるはず」といった前提で交渉を進めてしまうと、話し合いがこじれ、かえって関係が悪化してしまうおそれもあります。
そのため、地主に借地権を買い取ってもらうには、法的に主張するのではなく、双方にとって納得感のある条件を示し、話し合いによって合意を目指すことが現実的な進め方といえるでしょう。
具体的には、適正な価格の根拠を示すことに加え、建物をどう扱うのか、引渡しの時期、解体費用の負担などを整理し、地主側の事情にも配慮した提案を行うことが重要です。
こうした交渉は専門的な判断が求められる場面も多く、当事者同士だけで進めると感情的な対立に発展しやすい傾向があります。借地権の取扱いに詳しい不動産会社や専門家を間に入れることで、無用なトラブルを避けながら、現実的な着地点を見つけやすくなるでしょう。
地主に借地権を買い取ってもらうメリットとデメリット
地主に借地権を買い取ってもらう方法には、費用面でのメリットがある一方、注意しておきたいデメリットも存在します。
地主に借地権を買い取ってもらうメリット
地主に借地権を買い取ってもらうメリットは、第三者へ売却する場合に必要となる「譲渡承諾料」が不要な点です。
通常、借地権を第三者へ譲渡する際には地主の承諾が必要となり、借地権価格の1割前後を目安とした譲渡承諾料を支払うのが一般的です。しかし、地主自身が買主となる場合は第三者への譲渡にあたらないため、承諾料は発生せず、手元に残る金額が増えやすくなります。
また、購入希望者を探す必要がなく、地主との合意が得られれば売却手続きを比較的スムーズに進めやすい点も特徴です。
地主に借地権を買い取ってもらうデメリット
地主に借地権を買い取ってもらう場合は、第三者へ売却する場合と比べて、売却価格が低くなりやすい傾向があります。地主は借地権を買い取る義務を負っているわけではなく「少しでも安く買い戻したい」という立場になりやすいため、価格交渉では借地人に不利な条件が提示されるケースも少なくありません。
また、借地契約の終了時には原則として更地で返還する必要があるため、建物を解体して引き渡すよう求められたり、そもそも買取自体に応じてもらえない可能性もあります。
交渉が難航しそうな場合や条件に不安があるときは、借地権に詳しい不動産会社や専門家へ早めに相談することが重要です。
地主に借地権買取の交渉をするための3つのポイント
地主に借地権を買い取ってもらう交渉は、借地契約の内容や双方の事情が絡むため、思った以上に難航しやすいのが実務です。特に地主には買取義務がないため、どのように話を進めるかで結果が大きく変わります。
地主に借地権買取の交渉をするためのポイントは、以下の3つです。
- 不動産業者に仲介に入ってもらう
- 価格交渉しすぎない
- 売却目的なら地主に同時売却を提案する
1.不動産業者に仲介に入ってもらう
借地権の買取では、交渉内容が価格に直結するため、誰が間に入るかによって結果が大きく変わります。
借地権には不動産・法律・税務など幅広い知識が必要で、提示された価格が適正かどうか判断するのも容易ではありません。さらに、交渉がこじれると地主との関係が悪化してしまう恐れもあります。
このため、借地権の取扱いに精通した不動産会社に仲介に入ってもらうことが重要です。借地権を扱い慣れた専門業者であれば、借地権の査定を行い、借地の種類・残存期間・更新条件などの契約内容を確認します。そのうえで、妥当な価格帯や交渉ポイントを整理して提示してくれるでしょう。
また、今後の土地活用・相続対策・建物の老朽化など、地主の事情も踏まえて交渉方針を調整します。こうした配慮があることで、当事者だけでは生じがちな感情的な対立を避けやすくなり、スムーズに合意形成が進みやすくなります。
2.価格交渉しすぎない
借地権を買い取ってもらう際、できるだけ高く売りたいと考えるのは自然です。しかし、強気に交渉しすぎると、地主に買取を拒否されたり、提示額を下げられてしまったりする恐れがあります。
借地権は一般の不動産と異なり、第三者に売却するには地主の承諾(承諾料)が必要で、流通性も高くありません。そのため、実務では市場価格よりも、借地人と地主の交渉によって最終価格が決まるケースが大半です。
あまり市場価格にこだわりすぎると交渉が前に進まず、地主が買取を断るリスクがあります。特に借地人側から買取を依頼する場合は、ある程度の歩み寄りを前提にすることが大切です。
なお、借地権を第三者に買い取ってもらう場合、地主へ借地権割合の10%前後の承諾料を支払うのが一般的です。一方で地主が借地権を買い取る場合は承諾料が不要となるため、承諾料分を踏まえて価格調整が行われることもあります。
3.売却目的なら地主に同時売却を提案する
地主側にも土地を手放す意向がある場合は、より高く売却できる可能性のある「同時売却」を提案する方法があります同時売却とは、借地人の「借地権」と地主の「底地」を同じタイミングで第三者へ一体として売却する方法です。
底地と借地を分けずに売却できるため、買主にとっては実質的に完全所有権と同様に扱われ、金融機関の融資も受けやすくなります。その結果、単独で売却するより高値がつきやすく、地主・借地人双方にメリットがあるでしょう。
また、同時売却では所有権移転を一体で行うため、地主へ承諾料を支払う必要がないケースも多く見られます。
ただし、売却代金の分配方法(借地権者と地主の取り分)は当事者間での合意が必要です。一般的には借地権割合に応じて配分しますが、割合がまとまらない場合は、妥協案として売却益を折半する形で合意するケースもあります。
なお、取り分の交渉は感情的になりやすいため、不動産会社に仲介してもらい、客観的な基準にもとづいて調整することをおすすめします。
借地権を地主に買い取ってもらう場合の基本的な流れ
借地権の買取では、適正な価格の算出や合意形成だけでなく、手続きを正しい順序で進めることが重要です。建物の取り扱い、必要書類、引渡し時期などを誤ると、追加費用が発生したり契約のやり直しが必要になったりすることもあります。
そのため、地主に借地権を買い取ってもらう際は、次の5つのステップで進めるのが一般的です。
- 不動産会社に相談
- 不動産調査
- 地主に提案・交渉
- 借地権の売買契約締結と手付金の支払い
- 借地権の引き渡し
それぞれの流れを詳しくみていきましょう。
1.不動産会社に相談
借地権を買い取ってほしいと思ったときは、地主へ交渉する前に不動産会社へ相談しましょう。
自分で地主と交渉する借地人もいますが、交渉がスムーズに進まず地主との関係性が悪くなってしまう場合もあります。
借地権の取扱いに慣れた不動産会社であれば、次のような対応を任せることができます。
- 借地契約書の内容確認(残存期間・更新料・地代など)
- 借地権の価格査定
- 適切な交渉方針の整理
- 地主への提案・交渉の代行
相談時には、地主の性格や人柄、これまでの経緯を共有しておくと、より適切な交渉計画を立てやすくなります。また、借地権の賃貸借契約書を持参すると、地代・更新条件・残存期間などが査定金額にどう影響するかを精査でき、査定の精度が高まります。
2.不動産調査
借地権の買取価格を算出するために、現地調査と役所調査を行います。
調査では主に次のような項目を確認します。
- 土地の形状・面積・前面道路の幅員・接道状況
- 隣地境界の状況、越境物の有無
- 生活利便性、騒音、日照などの周辺環境
- 路線価・借地権割合など価格に関わる公的資料
- 建築基準法・都市計画法などの法令上の制限
- 建て替えの可否や建物の用途・構造・規模
加えて、借地契約書を確認し、地代・残存契約期間・更新料の有無など「契約条件」が価格にどのように影響するかも精査します。
これらの調査結果をもとに借地権の査定価格を算出し、買取交渉時の価格根拠とします。
なお、査定時には売却にかかる仲介手数料・建物解体費・引渡し費用などの諸費用も試算してもらうと、実際に手元に残る金額を把握しやすくなります。
3.地主に提案・交渉
価格査定が完了したら、地主へ買取の提案と交渉をしましょう。
買取価格のほか、以下のような重要な条件も話し合います。
- 更地で引き渡すか
- 建物を取り壊す場合の費用負担
- 決済日と引渡し時期の調整
- (建物がある場合)建物の買取の有無、保存登記の状況
借地権の交渉は、お金の問題に加え、資金状況・相続対策・将来の土地活用など地主側の事情も絡むため、当事者同士では折り合いがつかず、主張が平行線になるケースも少なくありません。
査定価格を提示しても、地主がその価格や条件に納得しなければ買取に応じてもらえない可能性があります。そのため、提案時には希望条件だけでなく「価格・時期・引渡し方法の優先順位」を整理して伝えることが大切です。
交渉が難航しそうな場合は、不動産会社に仲介を依頼し、双方の条件をすり合わせてもらうことで、合意形成が進めやすくなります。
4.借地権の売買契約締結と手付金の支払い
地主から買取の同意を得たら、売買契約を締結します。契約書は仲介する不動産会社が作成するため、内容を確認し不明点を事前に整理しておきましょう。
このとき手付金を支払います。相場は売買価格の5〜10%程度で設定されることが多いです。
手付金は、不動産売買契約において契約を締結する際に買主から売主に支払う売買代金の一部で、残金決済の際に売買代金に充当されます。契約内容を確認し納得したうえで署名・押印をすると、売買契約が正式に成立します。
なお、このタイミングで不動産会社から仲介手数料の半金を請求されるケースが一般的です。
借地権の売買契約では、建物の扱い(買取の有無)や借地権の消滅・名義変更に関する記載も重要となるため、契約書の内容は慎重に確認しましょう。
5.借地権の引渡し
売買契約締結後は、契約で定めた期日に残金決済と借地の引渡しを行います。残金決済は通常、司法書士の立会いのもとで行われ、同時に借地権(および建物)に関する登記手続きを進めます。
このとき、不動産会社に仲介手数料の残金を支払います。
建物もあわせて買い取ってもらう場合は、建物の所有権移転登記が必要です。借地権登記がされているケースは多くありませんが、登記されている場合は借地権の消滅登記を行いましょう。
また、老朽化などで建物を取り壊して引き渡す契約の場合は、事前に建物滅失登記を行うことがあります。これらの登記手続きを適切に完了させたうえで、残金決済と鍵の引渡しが行われます。
これらの手続きが完了すると、借地権の買取が正式に完了します。
借地権を地主に買い取ってもらう際の注意点
借地権の買取は、価格や条件について合意できたとしても、解体費用の負担や登記手続き、税金の扱いなどを曖昧にしたまま進めると、後からトラブルになる可能性があります。
特に地主との取引は、今後の近隣関係や相続にも影響するため、
「話がまとまったから安心」と考えず、実務上の注意点を事前に整理しておくことが重要です。
借地権を地主に買い取ってもらう際の注意点は、次のとおりです。
- 解体費用を地主・借地人のどちらが負担するか明確にしておく
- 口約束ではなく書面で契約を結ぶ
- 所有者移転登記と建物の登記状況の確認を忘れない
- 借地権を買い取ってもらうと地主に不動産取得税と固定資産税がかかる
それぞれ解説します。
解体費用を地主・借地人のどちらが負担するか明確にしておく
地主が借地権を買い取る際、ほとんどの場合は更地の状態に戻すように言ってきます。
しかし、買取金額の交渉が先に進んでしまうと、地主も借地人も解体費用の負担について取り決めるのを忘れてしまう場合があります。また買取金額の折り合いがついたのに、地主は更地渡し、借地人は現況渡しとお互いに思っていることが異なる場合もあるでしょう。
地主が借地権を買い取る場合、借地権上の建物を更地にして引き渡さなければならないのか、現況で引き渡せばよいのかを確認しながら交渉を進める必要があります。
後々のトラブルを防ぐためにも、解体をするのかしないのかだけではなく、解体費用の負担者も明確にしておきましょう。
口約束ではなく書面で契約を結ぶ
地主に借地権を買い取ってもらう際は、書面で契約を結びましょう。
借地権を買い取ると地主と口約束をし、建物を取り壊して更地にしたのに、地主が買取を拒むといったトラブルが発生する場合があります。借地上の建物は、借地人が借地権を主張する大切な要素のため、このようなトラブルは避けなければなりません。
そのため地主に借地権を買い取ってもらう際は、口約束ではなく書面で契約を締結することが重要です。
引き渡しまでに借地人が更地にしなければならない場合は、地主の都合で売買契約が解除になったときの解体費用負担などを契約書に明確に記載しておきましょう。契約書に記載しておけば、後々のトラブルリスクを減らすことができます。
所有者移転登記と建物の登記状況の確認を忘れない
借地人が借地上に建っている建物の名義変更をせずに相続していると、登記名義人と実際の所有者が違うため、借地権を買い取ってもらう際に手続きがスムーズに進まない場合があります。また、建物が古い場合には、そもそも表題登記がされておらず、未登記のままになっていることもあるでしょう。
このような問題を防ぐためにも、建物の登記状況を確認することは重要です。土地及び建物の登記簿謄本は、不動産の所在地を管轄する法務局で取得可能です。
なお所有権移転登記を行わないと、第三者に所有権を主張できません。そのため決済後は、建物の名義を借地人から地主に必ず移転しましょう。
借地権を買い取ってもらうと地主に不動産取得税と固定資産税がかかる
借地権を買い取る場合、不動産取得税や固定資産税、都市計画税がかかります。
|
概要 |
計算方法 |
| 不動産取得税 |
不動産を取得した際に取得した人に対して課税される税金 |
固定資産税評価額×4%
ただし、土地や住宅の場合は3% |
| 固定資産税 |
毎年1月1日時点で土地や家屋を所有している人に課税される税金 |
固定資産税評価額×1.4%
ただし、税率が軽減できる特例がある |
| 都市計画税 |
市街化区域内に土地及び建物を所有している人に課税される税金 |
固定資産税評価額×0.3%
ただし、地方自治体により税率が異なる |
不動産取得税とは、不動産を取得したときに、取得した人に対して課税される税金です。
借地権だけを買い取っても、その土地の所有権は持っていないため、不動産取得税は課税されません。しかし借地の上に建物が建っている場合や、借地権を買取り後に建物を建てた場合は、建物に対して不動産取得税がかかります。
不動産取得税の納税額は、固定資産税評価額×4%です。ただし、令和9年3月31日までに取得した土地と住宅については、軽減税率として3%が適用されます。
また、固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や家屋を所有している人に課税される税金です。都市計画税は、市街化区域内に土地及び建物を所有している人に課される税金です。固定資産税や都市計画税も、不動産取得税と同様に借地には課税されません。
計算方法は、次のとおりです。
- 固定資産税:固定資産税評価額×1.4%
- 都市計画税:固定資産税評価額×0.3%
なお固定資産税は1月1日に不動産を所有している人に課税されるため、年の途中で借地を売買している場合は、借地人がすでに納税していることがあります。その場合は、契約書上で定めた方法で精算し納税負担を決定します。
借地権を地主に買い取ってもらう場合の価格相場は?
実務では、借地権の買取価格は「どちらから売買を持ちかけたか」で大きく変わります。私が相談を受けているケースでも、先に買取を希望した側のほうが交渉上不利になりやすく、その結果、提示される価格にも差が出ることが少なくありません
一般的な相場は以下のとおりです。
| 買取を持ちかけた側 |
相場の目安 |
| 地主から買取を提案した場合 |
更地価格の60〜70% |
| 借地人から買取を希望した場合 |
更地価格の50%程度 |
それぞれのケースで相場が変わる理由を詳しく解説します。
地主から買取を提案した場合は更地価格の60~70%
地主が自ら土地を利用したい場合、次のような理由から借地権の買取を持ちかけるケースがあります。
- 自分や親族の居住地として利用したい
- アパート・マンション経営など新たな土地活用を始めたい
- 老朽建物の建替えや、相続対策として借地権を整理したい
このように地主側に明確な利用意向がある場合、買取価格の相場は更地価格の60〜70%が1つの目安になります。
この割合は国税庁の借地権割合(路線価)も参考にしつつ、地主の利用目的・地域の市場状況・建物の状態など、実務上の事情によって調整されることが一般的です。
また、地主側から買取を持ちかけるケースでは、借地人の転居費用や新居取得費用の一部を補填するため、買取価格が上乗せされる場合もあります。ただし上乗せの有無や金額は地主の事情・資金力・交渉状況によって大きく異なり、必ずしも全ての取引で適用されるわけではありません。
借地人から買取を希望した場合は更地価格の50%程度
借地人から地主へ買取を希望した場合、買取価格は更地価格の50%程度に下がる傾向があります。多くの借地人は借地権割合(路線価)にもとづき60〜70%程度の価格を期待しますが、実務では最終的に50%前後での買取に落ち着くケースが多いのが実情です。
これは、借地人側に資金負担・老朽建物の維持などの事情があると「早く売りたい」というニーズが強くなり、交渉上の主導権が地主側に移りやすいためです。また、第三者へ借地権を売却するには地主の承諾と譲渡承諾料が必要で、買主も限られるため期待通りの価格では売れません。
結果として、「確実に売れる」「承諾料が不要」「手続きが早い」というメリットを優先し、借地人が地主へ50%程度で売却する流れになりやすいのです。
借地権売却にかかる経費と税金
借地権を売却する際は、売却価格そのものだけでなく、実際に手元に残る金額を意識することが重要です。実務では、経費や税金を十分に把握しないまま進めてしまい「想定より負担が大きかった」と後悔されるケースも少なくありません。
借地権売却にあたって発生する主な経費・税金は、以下のとおりです。
| 経費と税金 |
概要 |
| 仲介手数料 |
仲介により契約を成立させた不動産会社に支払う手数料 |
| 譲渡承諾料 |
借地上の建物を所有する借地人が、借地権を第三者に売却や贈与などをするときに地主の許可をもらうために支払う費用 |
| 解体費用 |
建物を取り壊す費用 |
| 印紙税 |
契約書や領収証などの経済的な取引にともなって作成した書類に課税される税金 |
| 登録免許税 |
不動産を購入して登記する場合などに納付する税金 |
| 譲渡所得税 |
譲渡所得に課税される税金 |
それぞれ解説します。
仲介手数料:不動産会社が仲介する場合
仲介手数料とは、仲介により契約を成立させた不動産会社に支払う手数料です。
宅地建物取引業法で上限額が定められており、上限額を超えなければ当事者間で報酬額を自由に決められます。
仲介手数料の上限額は、次のとおりです。
| 借地権売買価格 |
仲介手数料上限額 |
| 200万円以下 |
借地権売買価格×5%+消費税 |
| 200万円超400万円以下 |
借地権売買価格×4%+消費税 |
| 400万円超 |
借地権売買価格×3%+消費税 |
※参照:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(国土交通省)
ただし、売買価格が400万円を超える場合は「(売買価格×3%+ 6万円)+消費税」で求める速算式が広く用いられています。
たとえば3,000万円の借地権を売却した場合の仲介手数料は、次のように計算します。
3,000万円×3%+6万円+消費税=105万6千円
なお2024年7月の法改正により「低廉な空き家等の媒介特例」が施行されました。これは、売買価格800万円以下の空き家(土地・建物)について、不動産会社が売主・買主それぞれから最大33万円(税込)まで仲介手数料を受け取れる特例です。
借地権の場合でも、建物がある借地権(借地権付き建物)であれば、この特例が適用されるケースがあります。売買価格が数十万〜数百万円程度と低額な場合は、仲介手数料の負担割合が相対的に大きくなる点に注意しましょう。
ただし、実際の仲介手数料の金額や負担割合は、媒介契約の内容や不動産会社との合意によって異なるため、事前に条件を確認しておくことが大切です。
譲渡承諾料:第三者に売却する場合
借地権や借地上の建物を売却するためには、地主の承諾を得なければなりません。
地主から承諾を得る際には、地主に対して譲渡承諾料を支払うのが一般的です。譲渡承諾料とは、借地上の建物を所有する借地人が、借地権を第三者に売却や贈与などをするときに地主の許可をもらうために支払う費用で借地権名義変更料とも呼ばれます。
承諾料は法律で定められているわけではないため、法的には支払を拒否することも可能です。しかし借地契約で承諾料の規定に合意していたり、規定がなくても過去に承諾料を支払ったりしたことがある場合は、承諾料を支払わないために借地契約が解約される恐れがあるでしょう。
譲渡承諾料の相場は借地権価格の10%ほどです。相場はあくまでも目安で、地主との土地や地域の条件、関係性などによっても変わります。
なお、地主が正当な理由なく譲渡を拒否する場合には、裁判所に許可を求める「借地非訟」という制度があります。詳しくは「地主が譲渡の承諾をしてくれない場合は借地非訟を利用する」をご確認ください。
また地主が借地権を買い取る場合や、相続により借地権を譲渡する場合は、承諾料は不要です。
解体費用:更地に戻す必要がある場合
借地を更地にして売却するのであれば、建物の解体費用がかかります。
解体費用は建物の構造や形状、坪数などによって異なりますが、相場は以下のとおりです。
| 建物の構造 |
解体費用/1坪 |
| 木造住宅 |
3万~4万円ほど |
| 鉄骨住宅 |
3.5万~4.5万円ほど |
| 鉄筋コンクリート(RC)造 |
5万~8万円ほど |
仮に40坪の鉄骨住宅を解体する場合は、140万~180万円ほどの費用がかかります。
また建物を解体する場合、ブロック塀や樹木の撤去、門扉や倉庫の撤去などの付帯工事が必要なケースがあります。付帯工事費用は、解体費用とは別途必要な金員となるため、家屋を解体する場合は余裕ある資金計画が重要です。
解体費用は解体業者によって変わってくるため、複数の解体業者に見積もりを依頼するとよいでしょう。
なお事前に自分で庭木や雑草を伐採したり、家電製品や家具などを自分で処分したりすると、業者に依頼する付帯工事が減るため費用を抑えられます。
印紙税:売買契約書に添付が必要
借地権の売却の際には、印紙税がかかります。印紙税とは、契約書や領収証などの経済的な取引にともなって作成した書類に課税される税金です。借地権や借地上の建物を売却する際の売買契約書に、売却金額に応じた収入印紙を添付し、押印やサインで消印をして納付します。
収入印紙は売買契約書1通につき1枚となります。契約書は売主・買主分を作成するのが一般的なので、収入印紙は2枚必要です。
契約書に印紙税に関する取り決めがない場合は、売主と買主が平等に負担するのが一般的です。そのため売主・買主がそれぞれ保有する契約書分の収入印紙を負担します。また印紙代の負担割合は、売主と買主が自由に取り決めることが可能です。不動産会社が仲介する場合は、仲介手数料とあわせて負担割合を決める場合もあります。
不動産譲渡に関する売買契約書については、一定期間、印紙税の軽減措置が設けられています。
ただし、借地権のみを譲渡する契約書は軽減税率の対象外となるのが原則です。一方で、借地権とあわせて建物の売買金額を契約書に記載している場合には、軽減税率が適用されるケースもあります。
実際にどの税率が適用されるかは、契約書の記載内容によって異なるため、事前に不動産会社や税務署へ確認しておくとよいでしょう。
なお、印紙税の額は、以下のとおりです。
| 契約金額 |
本則税率 |
軽減税率 |
| 10万円を超え50万円以下 |
400円 |
200円 |
| 50万円を超え100万円以下 |
1,000円 |
500円 |
| 100万円を超え500万円以下 |
2,000円 |
1,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下 |
10,000円 |
5,000円 |
| 1,000万円を超え5,000万円以下 |
20,000円 |
10,000円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 |
60,000円 |
30,000円 |
参照:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁
契約書に記載された契約金額が1万円未満の場合は課税されません。また契約金額が10万円以下の場合(契約金額の記載のないものを含む)は、軽減措置の対象外です。
登録免許税:抵当権抹消や相続登記が必要な場合
借地権上の建物を売却する際に、抵当権が設定されている場合は、抵当権の抹消登記が必要です。
抵当権抹消にかかる登録免許税は、不動産1件につき1,000円です。借地上に建物が2棟ある場合は、2,000円の登録免許税がかかります。
また、借地権や借地上の建物が被相続人名義のままになっている場合は、売却前に相続登記を行う必要があります。
相続登記にかかる登録免許税は、以下の式で計算します。
固定資産税評価額 × 0.4%
評価額は市区町村が発行する固定資産税評価証明書などで確認できます。
登記費用:所有権移転登記や司法書士費用
借地権を売却・取得する際には、建物について所有権移転登記を行う必要があります。建物の登記がなければ、第三者に対して権利を主張できないためです。
所有権移転登記にかかる費用は、売主・買主のどちらが負担しても問題ありませんが、実務上は買主が負担するケースが一般的です。
登記申請は本人が行うことも可能ですが、書類作成や手続きが煩雑なため、司法書士に依頼するケースが多く見られます。
司法書士へ依頼した場合の報酬相場は、登記内容にもよりますがおおよそ1万円〜10万円程度です。
費用は司法書士によって異なるため、事前に見積もりを取って確認しておくと安心でしょう。
譲渡所得税:譲渡所得がプラスの場合
借地権を売却したときに得られる利益を譲渡所得と呼びます。譲渡所得税は、譲渡所得に課税される税金です。
譲渡所得税は、譲渡した年の1月1日時点での所有期間により次の2つにわけられます。
| 譲渡所得の種類 |
所有期間 |
税率(所得税+住民税+復興特別所得税) |
| 短期譲渡所得 |
所有期間が5年以下 |
39.63%(30%+9%+0.63%) |
| 長期譲渡所得 |
所有期間が5年超 |
20.315%(15%+5%+0.315%) |
譲渡所得は、次のように計算します。
譲渡価格-取得費-譲渡費用-特別控除
取得費と譲渡費用の概要は、以下のとおりです。
|
概要 |
| 取得費 |
・借地権や借地上の建物を取得するのにかかった費用
・借地権の更新料や権利金、建物の購入代金や建築代金、登記費用などが含まれる
・借地権者に返還される敷金や保証金などは含まない
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| 譲渡費用 |
印紙税・仲介手数料・譲渡承諾料などが含まれる |
取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として計算することも可能です。ただし、売買契約書・領収書など、取得費を証明する資料が残っている場合は、原則として実額で計算したほうが有利になるケースが多いです。
譲渡所得税は、譲渡所得がゼロやマイナスの場合は、課税されません。
たとえば、取得費や譲渡費用の合計が売却価格を上回る場合は3,000万円の借地権を売却した際、売却価格が2,700万円の場合は譲渡所得税はかかりません。
なお譲渡所得がある場合は、借地権を売却した翌年の2月16日~3月15日までに申告・納税をしなければなりません。申告・納税を行わなかった場合、無申告加算税や延滞税がかかることもあるため、忘れないようにしましょう。
3000万円特別控除:売却する借地上の建物がマイホームの場合
売却した借地権上の建物がマイホームだったときは、3,000万円特別控除の特例を適用できる可能性があります。
3,000万円特別控除とはマイホーム(居住用住宅)を売却した際、所有期間の長さにかかわらず、最大3,000万円を譲渡所得から差し引ける特例です。この特例を利用すれば、借地権を売却した際の譲渡所得が3,000万円以内であれば譲渡所得税がかかりません。
主な適用要件は、次のとおりです。
- 本人が居住していた住宅・敷地の売却であること(借地権を含む)
- 住まなくなった日から3年目の年末までに売却していること
- 売却した年およびその前年・前々年に、他の譲渡特例を適用していないこと
- 売主と買主が親族などの特別な関係にないこと
上記以外にも細かな要件や例外があるため、適用可否の判断に迷う場合は、国税庁の公式情報や税理士などの専門家へ確認するとよいでしょう。
参照:マイホームを売ったときの特例|国税庁
ただし、3,000万円控除特例を適用するには、建物を売却した翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告が必要です。
借地権を地主に買い取ってもらう以外の選択肢
借地権は、必ずしも地主に買い取ってもらえるとは限りません。価格が折り合わなかったり、地主が買取に応じなかったりするケースも実務では少なくないのが実情です。
そのような場合でも、借地人が不利な条件を受け入れる必要はなく、状況に応じて検討できる別の選択肢があります。
借地権を地主に売却する以外の選択肢は、以下のとおりです。
- 借地権が期間満了で終了するなら建物買取請求権を行使する
- 地主が譲渡の承諾をしてくれない場合は借地非訟を利用する
- 地主に借地権を返還する
- 借地権専門の買取業者に買い取ってもらう
それぞれ解説します。
借地権が期間満了で終了するなら建物買取請求権を行使する
借地契約が期間満了となり、更新されずに終了する場合には、借地人は地主に対して「建物買取請求権」を行使できる可能性があります。
建物買取請求権とは、借地契約が期間満了により終了した場合に、借地上に借地人が建てた建物について、地主へ買取を請求できる権利です。
地主は建物買取請求権を原則として拒否できません。
借地契約で「契約満了になっても、借地人は地主に対して建物買取請求権を行使しない」と取り決めていた場合でも無効です。
建物買取請求権を行使する際は、後日のトラブルを避けるため、内容証明郵便で意思表示を行うのが一般的です。
また、仮に建物買取請求権を行使したにもかかわらず地主が応じない場合でも、借地人は直ちに土地を明け渡す必要はありません。
ただし、定期借地権や契約期間満了前の解約など、契約内容や終了の経緯によっては建物買取請求権を行使できない場合もあります。
なお、買取価格はあくまで建物の「時価」が基準となります。借地契約は長期間に及ぶことが多く、契約満了時には建物が老朽化しているケースも多いため、高額での買取は期待できないでしょう。
また、建物の評価は土地や借地権の価値とは切り分けて行われるため、建物価格に借地権の価値が含まれるわけではありません。
地主が譲渡の承諾をしてくれない場合は借地非訟を利用する
地主に借地権の買取を拒否された場合、第三者へ借地権を売却するためには、地主の承諾が必要です。しかし借地権を譲渡したくても、地主が第三者の買取を同意してくれない場合があります。
そのような場合は、借地非訟を裁判所に申立てることができます。借地非訟とは、地主と借地人の間で借地に関するトラブルが発生したときに、裁判所へ地主の代わりに許可を求める手続きです。
借地人は、借地権の所在地を管轄する裁判所に借地非訟の申立てをします。裁判所が選任した鑑定委員が物件や当事者の状況を確認して、地主の代わりに譲渡承諾を許可するかどうかを判断します。裁判所が譲渡を許可すれば、地主の承諾がなくても借地権の売却が可能です。
ただし借地非訟の申立ては時間と労力がかかるうえ、地主との関係が悪化することにもつながるため、最後の手段といえるでしょう。
地主に借地権を返還する
借地権の売却を拒否された場合、地主に無償で返還するのも1つの方法です。
無償で返還するのであれば、地主の負担もないため実現しやすいでしょう。
ただし、地主に借地を返還する場合は、建物を解体して更地に戻す場合が多いです。建物を解体したら、1ヵ月以内に建物滅失登記の手続きを不動産の所在地を管轄する法務局で借地人が行わなければなりません。
解体工事や建物滅失登記に必要な時間を考慮すると、借地を返却するまでに半年から1年ほどの期間がかかります。借地権の取得にかかった費用や建物の建築費用が回収できないうえに、建物の解体費用も借地人負担のため、借地人の金銭的負担が大きくなります。
そのため、地代の負担からすぐにでも解消されたい場合のみ、おすすめできる方法です。
借地権専門の買取業者に買い取ってもらう
借地権を専門の買取業者に買い取ってもらうのも1つの選択肢です。
借地権の売却を仲介業者に依頼する方法もありますが、仲介の場合は仲介手数料が必要です。また購入希望者を見つける必要があるため、売却するまでに時間を要します。
借地権付き建物は、リフォームや建て替え時に地主の許可が必要だったり、地主とのトラブルの不安があったりするため、市場では売れにくい傾向にあり、売れ残ってしまう可能性もあります。
一方、借地権専門の買取業者に依頼すれば、借地人自身が地主と直接交渉する必要がないケースが多いです。地主との交渉はもちろん、借地非訟が必要となるケースや、法的対応が求められる場面でも、買取業者が弁護士と連携して対応してくれるケースもあります。
借地権に関する法律や規則に精通しているので、地主との交渉が早く進みやすいうえに、購入検討者を探す必要もないため、手早く現金化できます。現況で買取するため、建物を解体したり更地にしたりする費用もかかりません。
「早く売りたい」「地主との交渉を任せたい」「手続きの負担を減らしたい」と考えている場合には、有力な選択肢の1つといえるでしょう。
まとめ
借地を買取するときの価格相場は更地価格の約50〜70%で、地主と借地人のどちらが提案したかによって異なります。
借地権を買い取る際は、地主と借地人の交渉が必要です。しかし借地権は権利関係も複雑なため、間違った認識で交渉を進めてしまうと、後々トラブルになる恐れがあります。
そのため借地権の買取は、借地権に関して専門知識があり、交渉力もある実績豊富な不動産会社へ仲介を依頼しましょう。
また地主が借地権の買取を拒否する場合は、借地権専門の買取業者への依頼を検討をおすすめします。借地権専門の買取業者であれば、借地権を買い取ってもらうために地主と交渉をする必要がありません。
不動産会社が仲介する場合は仲介手数料が必要ですが、買取の場合は仲介手数料も不要です。買取専門業者は、借地権に関する法律や規則に精通しているので、地主との交渉が早く進みやすく、購入検討者を探す必要もないため、最短数日〜1週間で現金化できます。現況の状態で買取するため、建物を解体したり更地にしたりする費用もかかりません。
売却価格・スピード・手間のバランスを考えながら、仲介と買取を使い分けることが重要です。
借地権の買取に関するよくある質問
地主が借地権を買い取りたくても資金がない場合、利用できるローン借入にはどのようなものがありますか?
借地権と建物を取得して自宅として利用する場合は、住宅ローンが利用できることがあります。
また、更地であっても1年以内に住宅を建築する予定があれば、土地先行融資やつなぎ融資が使えるケースもあります。
一方、アパート経営や駐車場経営などを目的とする場合は、不動産投資ローンが対象となります。ただし、住宅ローンに比べて審査が厳しく、金利も高めです。
いずれのローンも、利用可否や条件は金融機関ごとに異なるため、事前に金融機関や不動産会社へ相談することが重要です。