借地にある建物の建て替えは原則地主の承諾が必要
借地に建つ建物を建て替える場合は、原則として地主の承諾を得なければ工事を進めることはできません。多くの借地契約には増改築禁止特約が設けられており、この特約がある場合に無断で建て替えを行うと、契約違反として解除を求められるおそれがあります。
もっとも、事前に承諾を得ておけば、借地上の建物であっても建て替え後も契約の継続が可能です。
一方で、借地契約の区分によっては、地主の承諾なしで建て替えが認められる場合もあります。ここからは、「普通借地契約」と「定期借地契約」における建て替え時の扱いの違いを整理して解説します。
普通借地:増改築禁止特約がなければ法的には地主の承諾なしで建て替え可能
普通借地契約の場合、賃貸借契約書に増改築を制限する特約が記載されていなければ、地主の承諾なしで建て替えが可能です。
通常、地主から土地を借りるときに交わす賃貸借契約書には、増改築禁止特約が書かれています。増改築禁止特約とは、借地上の建物を増改築してはならないとする契約上の取り決めで、借地人が工事を行うには地主の承諾が必要となるというものです。
もしも、土地の賃貸借契約書にこのような増改築を制限するような特約が記載されていなければ、当然ながら承諾も必要ないということになります。
なお、増改築禁止特約は契約書に明記されていることがほとんどですが、古い借地契約の中には契約書自体が存在しない、あるいは口頭で取り交わされたまま何十年も経過しているケースも珍しくありません。弊社に寄せられる借地の相談でも、「契約書が見当たらない」「親の代に口約束で借りた」というケースは体感で3割ほどあり、こうした場合には特約の有無を地主と改めて確認する作業から始めることになります。
地主の承諾を得て建て替えを行った場合には、借地権の残存期間が、承諾を得た日または建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続するものとされています(借地借家法第7条1項)。これは、借地権の契約期間満了直前に承諾を得たにもかかわらず、地主に正当事由があれば契約が終了してしまい、建て替え承諾の意味が失われてしまうことを防ぐためです。
そのため、承諾を取らずに建て替えを行った場合には、この20年延長が受けられず、契約期間満了時に更新の可否が問題となる可能性があります。
また、承諾が必要となるケースでは、後ほど詳しく解説する「承諾料」が発生します。
地主の承諾不要となるのはあくまで「増改築禁止特約がない場合」に限られ、特約が存在する場合には承諾料を支払って許可を得るのが一般的です。
【注意】承諾不要なのは初回契約期間のみ
普通借地契約で増改築を制限する特約がない場合でも、地主の承諾なく建て替えができるのは借地契約の最初の存続期間のみです。
借地契約を一度でも更新した後の期間では、たとえ特約の記載がなかったとしても、地主の承諾なく建て替えを行うと、地主に借地契約の解約申入権が発生します(借地借家法第8条2項)。この解約申入れがなされると、借地権は3ヶ月後に強制的に消滅してしまいます。つまり、更新後は承諾を得ずに建て替えると、借地契約を失うリスクが極めて高いため、必ず事前に地主の承諾を得てから進めるようにしましょう。
実際に弊社へ寄せられるご相談の中にも、「うちの借地契約は増改築禁止特約がないから、承諾なしで建て替えできるはず」と考えてそのまま工事を始めようとされたケースがあります。しかし確認してみると、すでに契約が一度更新されていたため、特約の有無にかかわらず地主の承諾が必要な段階に入っていた、というパターンでした。初回期間なのか更新後なのかは意外と見落とされがちなので、まずは契約の時系列を整理しておくことをおすすめします。
定期借地:建て替えには承諾が必須・満了時は返還が必要
定期借地契約では、契約書に増改築禁止特約が含まれているのが一般的であり、建物の建て替えには地主の承諾が必要となるケースがほとんどです。定期借地は契約期間の満了時に確実に土地を返還することが前提の制度であり、建て替えによって建物の耐用年数が延び、返還時の原状回復が複雑になるおそれがあるため、契約上で増改築を制限する条項が設けられていることが多くあります。
また、地主からの承諾を得て建て替えをおこなう際、借地権の存続期間が延長されるのは普通借地権の場合です。
定期借地権の場合、地主の承諾を得て建て替えしたとしても、存続期間は延長されないため注意してください。
現場の肌感覚で言えば、定期借地権付き建物の建て替え相談はそもそも件数が限られます。これは、定期借地では契約満了時の建物取壊し・返還が前提であるため、建て替え費用を投じても残りの契約期間でしか回収できないリスクを考えると、建て替えではなく売却や用途変更を検討される方が多いのが実態です。
さらに、定期借地契約では、契約期間満了時に、地主との合意による再契約がない場合には、建物の耐用年数がまだ十分に残っていたとしても、取り壊して借地を返還する必要があります。よって、建て替えの可否や承諾の取得に関する判断は、契約満了後の返還義務を踏まえて慎重に行わなければなりません。
定期借地権ですので、建物買取請求権も行使できません。
地主の承諾があっても既存不適格建築物と接道義務違反物件は建て替え不可
地主から建て替えの承諾を得られたとしても、対象の物件・土地が「既存不適格建築物」「接道義務を満たしていない物件」だった場合は建て替えできません。
これらの建物は、そのままの条件で建て替えしようとすると、建て替え時に必要な建築確認申請で許可を得られないためです。
次の項目から、それぞれ解説します。
既存不適格建築物:現在の法律を遵守できていない不動産
既存不適格建築物は、建築当時は法令の基準を満たしていたとしても、法改正などによって、新しい基準を満たさなくなったものをいいます。
例えば、建ぺい率・容積率をオーバーしている物件や高さ制限を満たしていない物件です。
もしも、既存不適格建築物であれば、現在の法令の基準に適合させた形で建て替える必要があります。
そのため、既存不適格建築物の建て替えの際には「同じ規模では建てられない」「階数や面積を減らさざるを得ない」といった制約が生じるケースが多く、慎重な確認が必要になります。
地主の承諾があっても、法令適合という要件は絶対であり、建築確認が下りない限り建て替え自体ができません。
既存不適格物件に関しては、以下の記事を参考にしてみてください。
接道義務違反物件:建築基準法で定められた規定を満たしていない不動産
接道義務とは、建築基準法で定められた「原則、幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない」という規定です。敷地が接道要件を満たしていない場合、その土地は再建築が認められず、たとえ地主の承諾があっても建て替えは不可となります。
そのため、接道義務を満たしていない物件を建て替えるときには、接道義務を満たす必要があります。
接道義務を満たすための一般的な対策としては、以下の2つが挙げられます。
- セットバックする
- 隣地を買い取る(または隣地の一部を取得して接道を確保する)
ただし、借地の場合は、土地に変更を加えるセットバックや隣地の取得は地主との相談が不可欠です。地主に確認せず、借地権者のみで交渉を進めるとトラブルにつながるおそれがあるため注意してください。
いずれの対策も借地権者だけで判断するのは難しいため、不動産問題に詳しい専門家や不動産会社に早めに相談することをおすすめします。
地主から承諾が得られたら建て替え承諾料を支払う
地主から建て替えの承諾を得られたときには、承諾料を支払います。
承諾料の金額は、法律で定められているわけではありません。地主との話し合いで決まります。
ですが、一般的には、更地価格の3~5%が相場です。
弊社が提携する弁護士によると、承諾料の水準自体は「更地価格の3〜5%」と広く知られているものの、実際の交渉では金額そのものよりも、建て替え後の建物の構造や規模が争点になるケースが多いとのことです。たとえば、木造2階建てから鉄筋コンクリート造に変更するような場合は、単なる建て替えではなく『非堅固建物から堅固建物への借地条件変更』を伴います。そのため、承諾料が更地価格の10%前後まで上がるだけでなく、地代の見直しまで求められることもあるそうです。
借地条件の変更を伴う建て替えの場合、借地条件変更承諾料は更地価格の10%前後になることが多く、実務でもこの水準での提示が一般的です。
もしも、相場を大幅に超える承諾料を要求されたり、請求された金額に納得できない場合には地主との交渉になります。
このとき、当事者同士の話し合いでは金額の妥当性判断が難しく、折り合いがつかないことが多いため、不動産問題に詳しい弁護士や、借地権に強い不動産会社に相談する方がスムーズに進むことが多いです。
借地権は住宅ローン審査が厳しい
借地権の建て替えでは、地主の承諾を得たあとにも課題はあります。
弊社への借地関連のご相談の中でも、「地主から建て替えの承諾は取れたが、住宅ローンが通らない」というお話は体感で4割近くにのぼります。承諾料の準備まで進めたのに資金調達でつまずくケースは想像以上に多いため、承諾交渉と並行して金融機関への事前相談を進めておくことをおすすめします。実際に弊社にお寄せいただくご相談でも、住宅ローンの審査が通らなかったことや地主との交渉が難航したことをきっかけに、建て替えを断念して借地権の売却を検討される方は少なくありません。
一般的に建て替え資金として住宅ローンを利用しますが、借地権は通常の持ち家と比べて審査が厳しくなる傾向があります。
その理由は大きく3つあります。
- 地主による抵当権設定の承諾が必要だから
- 借地上の建物の担保価値が低いから
- 借地契約を解除されるリスクがあるから
次の項目から、それぞれの理由を順番に確認していきましょう。
1.地主による抵当権設定の承諾が必要だから
住宅ローンを借りるためには、地主からの、その建物への抵当権設定の承諾が必要になります。
法律的には、地主からの承諾なく、借地上の建物に抵当権を設定することは問題ありません。
建物は借地人の所有物なので、地主の承諾がなくても、借地上の建物に抵当権を設定すると、借地権にまで効力は及びます。
しかし、ほとんどの金融機関で住宅ローン審査をするときには、地主の承諾書の提出が求められます。
ここでいう「承諾書」の中身は、単に「抵当権を設定してよい」という承諾だけではありません。金融機関が本当に気にしているのは、万が一ローンが返済できなくなり建物を競売にかけた場合に、落札者へ借地権を引き継がせることを地主が認めてくれるかどうかです。借地権の譲渡には地主の承諾が必要であるため(民法612条)、この事前承諾がなければ、競売で建物を落札した人が土地を使えず、結果として銀行は融資金を回収できなくなってしまいます。
つまり、金融機関が求める承諾書には「抵当権設定の承諾」と「競売時における借地権譲渡の事前承諾」の両方が含まれているのが通常です。このとき、地主にはこれらを承諾する法的義務はありません。
地主から建て替えの承諾を得られたとしても、住宅ローン審査の段階で、競売時の借地権譲渡まで含めた承諾が得られず、結果として融資がつかないケースが実際には多いのです。
2.借地上の建物の担保価値が低いから
住宅ローンは、融資を行う際に、土地と建物のセットを担保として確保するのが一般的です。土地は価値が下がりにくいため、金融機関にとって重要な担保となります。
一方で、借地権者は土地を所有していないため、担保にできるのは建物と借地権のみです。土地を担保に入れられない分、金融機関から見た担保価値は大きく低下します。
さらに、借地権は住宅ローン審査において土地の代わりに担保評価の対象となりますが、所有権の土地に比べて価値が低く評価される性質があります。これは、借地権には地主との契約条件や更新リスクが伴い、自由な利用が制限されるためです。
住宅ローンの担保価値を算定する際には、更地価格から一定割合を差し引いた金額が借地権の価値とみなされるため、結果として担保価値が小さくなります。
借地上の建物に設定した抵当権の担保価値は、建物価格と借地権価格の合計で算定されますが、借地権価格は更地価格と比べて大きく下がります。 たとえば、相続税路線価における借地権割合は地域によって60〜70%程度とされていますが、住宅ローン審査では金融機関独自の評価基準が適用されるため、借地権はさらに低く評価されるケースも少なくありません。実務上、借地権は住宅ローンの審査が通りにくいケースが多く見られます。
3.借地契約を解除されるリスクがあるから
借地権者が地代の支払いを遅延したときには、借地契約を解除される恐れがあります。
もし借地契約が解除されると、建物は「権利がない土地に建っている」状態になります。
銀行が抵当権を実行してこのような建物を競売にかけても、借地権がなければ土地の明け渡しを地主から求められた際に従うしかなく、誰も競り落とそうとしません。そうなれば、銀行も融資した住宅ローンを回収できないリスクが出てきます。
対策として、借地契約解除を避けるために地主から抵当権設定の承諾を提出してもらいますが、それでも絶対に借地契約解除されない保証はありません。
担保としての安全性が著しく低下するため、住宅ローン審査は必然的に厳しくなります。
借地上の建物を建て替えても地代は変動しない
建て替えを理由に、借地権の地代が変動することはありません。地代が変更されるのは、法律や契約実務上、主に次の3つの事情が生じた場合です。
したがって、建て替えそのものは地代改定の理由には当たらず、通常は地代が変動することはありません。
「建て替え=地代が上がる」と思い込んでいる方は実務上かなり多いのですが、法律や契約実務の観点では、建て替えそのものを理由に地代を改定できるとする根拠はありません。ただし、建て替えの前後で「近隣の地代相場との乖離」や「固定資産税の上昇」などの別の事情が重なった場合には、地代の見直しが正当化されることがあります。地主から地代変更を持ちかけられた際には、建て替えを理由にしているのか、それとも別の根拠があるのかを冷静に切り分けて判断することが大切です。
ただし、建て替えのタイミングで地代変更の事情が発生している場合、地代が見直されることがあります。
その際には、地主が提示する地代変更の根拠が妥当かどうかを必ず確認することが重要です。
もしも、地代の改定について地主と意見が食い違ったり、交渉がまとまらない場合には、不動産会社や弁護士などの専門家に早めに相談するようにしましょう。
地主から建て替えを拒否された場合の対応法
最後に、地主から建て替えを拒否された場合の対応法について解説します。
借地権者は裁判所に対し、借地上の建物の建て替えについて、地主の承諾に代わる許可「代諾許可」を求めることができます。
裁判所への申立て(借地非訟事件)には、実務上、申立てから決定まで半年〜1年程度かかるケースが一般的です。費用面では弁護士費用のほか、裁判所への申立手数料や鑑定費用なども発生するため、総額で数十万円〜100万円超の負担となることもあります。弊社が提携する弁護士に確認したところ、「代諾許可自体は比較的認められやすい傾向にあるが、地主との関係が悪化しているケースでは手続きが長引く」とのことでした。
裁判所は代諾許可を認めるか、以下のような事情を考慮して判断します。
- 借地契約の趣旨に違反していないか
- 土地の通常の利用上問題ないか
- 借地権の残存期間がどれくらい残っているか
裁判所が代諾許可を与えるときには、借地権者に対して地主へ「財産上の給付」と呼ばれる、承諾料に相当する金額の支払いを命じます。
財産上の給付の一般的な金額は、承諾料の相場とほぼ同等の更地価格の3~5%です。
ただし、ここでお伝えしておきたいのは、裁判はあくまで最終手段として考えるべきだという点です。裁判所に申し立てれば建て替えの許可を得ること自体は可能ですが、その代償として地主との人間関係はほぼ確実に壊れます。借地は今後も数十年にわたって地主の土地を借り続ける関係です。将来、借地権を第三者に売却したいときや、地主から底地を買い取って完全な所有権にしたいときなど、地主の協力が不可欠な場面は必ず出てきます。裁判で関係がこじれてしまうと、こうした場面で地主が一切応じてくれなくなるおそれがあり、長い目で見たときのデメリットは小さくありません。
そのため、まずは当事者間の話し合いや、弊社が提携する弁護士のような第三者を介した交渉で解決を目指すことを強くおすすめします。裁判所に代諾許可を求めるには法的な知識や手続きへの対応も必要になりますので、いずれにしても早い段階で不動産問題に詳しい弁護士へ相談しておくのが安心です。
なお、「時間をかけて裁判で建て替えの許可を取る」以外の選択肢として、借地権そのものを専門の不動産会社に売却するという方法もあります。参考までに、弊社の買取実績では、お問い合わせから決済まで30日以内が29.0%、60日以内まで含めると半数以上が2ヶ月以内に完了しています。裁判で長期間争うか、売却で早期に次の住まいへ動くかは、ご自身の生活設計に合わせて慎重に検討するとよいでしょう。
まとめ
借地上の建物を建て替えるには、原則的に地主の承諾が必要です。承諾料も払わなければいけません。建物を地主に無断で建て替えると、借地契約を解除される恐れがあります。
建て替え承諾料の相場は、更地価格の3~5%が一般的です。借地条件の変更を伴う場合には、更地価格の10%前後を求められるケースもあります。
さらに、既存不適格建築物や接道義務違反物件は、地主の承諾があっても建て替え自体が認められない可能性があるため、事前に法令の適合確認が不可欠です。
また、借地権は担保評価や契約解除リスクの面から住宅ローン審査が厳しくなりやすく、地主の承諾があっても資金がつかないケースも少なくありません。
建て替えを進めるにはまず地主の承諾が必要であり、承諾が得られない場合には、本文で説明したように裁判所へ申し立てて承諾に代わる許可(代諾許可)を得る方法もあります。
わからないところがあれば、借地問題に詳しい弁護士や不動産会社に早めに相談するようにしてください。
※1 データについて
データ集計期間:2018年2月21日〜2025年12月31日
データ集計方法:弊社における不動産買取の相談データを集計
※本データにおける「底地・借地」とは、借地権や底地(貸している土地)に特化した相談・取引を指します。
借地権の建て替えでよくある質問
借地権に建っている建物でも、建て替えできる?
借地上の建物であっても、原則、地主の承諾があれば建て替えでき、契約も継続されます。
地主の承諾がないと建て替えはできないの?
「増改築禁止特約」がなければ、初回期間に限って地主に無断で建て替えられます。ただし、後のトラブルを防ぐためにも、地主へ一度相談しておくとよいでしょう。
借地権にある建物を建て替えできないときはどんなとき?
地主から建て替えの承諾を得られたとしても「既存不適格建築物」「接道義務を満たしていない物件」は建て替えが不可能です。
建て替えの際に必要なものはある?
地主から承諾が得られたら、建て替え承諾料を支払うことが一般的です。承諾料の金額は、法律的に定められた基準などはありませんが、更地価格の3~5%が相場とされています。
地主の建て替え許可が得られなければ、建て替えはできない?
裁判所に対し、借地上の建物の建て替えについて、地主の承諾に代わる許可(代諾許可)を求めることができます。ただし、裁判所に代諾許可を求めるには、さまざまな法知識が必要になるため、まずは不動産問題に詳しい弁護士へ相談してみましょう。