土地を借りる権利である「借地権」ですが、借地権を売買するときの基準価格や、借地の地代・更新料の計算方法を知っている人は多くありません。
借地価格や地代・更新料の計算方法は、期限の有無や借地の用途といった「借地権の種類」によって異なります。
目的に応じた価格の調べ方と計算方法を知っておかなければ、適切な価格での借地権売買や地代・更新料の設定ができません。
借地権価格は自分でも計算できますが、なるべく早く価格を知りたい場合は、不動産会社の査定を受けましょう。物件ごとの状況や最新の不動産動向をもとに、正確な借地権価格を調べてもらえます。
ただし、普通の不動産会社では知識や経験がなく、借地権の査定をできない場合もあります。そのため、査定は借地権の売買実績がある専門買取業者に依頼しましょう。
借地権価格とは
借地権価格とは、借地権の評価額です。
ただし、借地権価格は評価する目的によって意味が異なります。
借地権評価額 | 相続税や贈与税などの税額を計算するときに用いられる |
---|---|
借地権価格 | 借地権・借地権付き建物を売買するときに用いられる |
税額計算における借地権価格は、借地権の種類に応じた計算方法が明確に決められています。
一方で、売買のための借地権価格は、様々な要素に関連して算出されることになります。
- 地代や更新料の有無
- 承諾料の価格
- ローン承諾の有無
- 売主と土地所有者との関係性
- 条件が近い不動産の価格など
そのため、同じ借地権でも、相続税・贈与税のための借地権価格と売買のための借地権価格では金額に差があります。
借地権価格の調べ方と計算方法
具体的な借地権価格の調べ方と計算方法について解説します。
借地権価格は税額計算に用いられるものと、売買に用いられるものに二分されます。
税額計算に用いられる借地権価格 | 普通借地権の借地権価格 |
---|---|
定期借地権等の借地権価格 | |
一時使用目的の借地権の借地権価格 | |
売買に用いられる借地権価格 | 売買に用いられる借地権価格 |
税額計算に用いられる借地権価格の調べ方と計算方法
まず相続税・贈与税の金額を算出するときの借地権価格の調べ方と計算方法です。
借地権には普通借地権、定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権、一時使用目的の借地権の5種類あります。
そのうち、定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権は「定期借地権等」として、1つの計算方法にまとめられているので、合計3つの区分から該当する借地権の種類で計算します。
1.普通借地権の借地権価格の調べ方と計算方法
普通借地権で基準となるのは、相続税路線価と借地権割合です。相続税路線価をもとに借地の面積をかけて、さらに借地権割合をかけることで借地権価格を算出します。
相続税路線価は毎年7月に発表され、所轄の税務署で誰でも閲覧できます。
また、税務署まで行かなくても、国税庁ホームページの「路線価図・評価倍率表」で確認することもできます。
路線価図に表示されている値は千円単位です。200と表示されていれば、20万円ということになります。
借地権割合も同様に、路線価図に掲載されています。路線価の右隣にはA~Gの記号がついており、路線価図上部にある表の記号に対応する割合が借地権割合です。
・更地価格2,000万円
・借地権割合が70%
この場合、借地権価格は2,000万円 × 70% = 1,400万円となります。
ただし、実際の計算では、奥行価格補正率や側方路線影響加算率などを考慮する必要があるため、不動産会社など専門家に依頼するようにしましょう。
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2.定期借地権等の借地権価格の調べ方と計算方法
定期借地権とは、更新のない借地権です。
税額計算に用いられる定期借地権の借地権価格を計算するときには、借地権者に帰属する経済的利益の総額と残存期間年数がポイントです。
一般的には、借地が更地だった場合の価格に、次の計算式で算出された値を掛けることで借地権価格を計算することになっています。
「借地権者に帰属する経済的利益の総額」は、具体的には3つあり、財産評価第2章第2節27-3に詳しく書かれています。
- 権利金、協力金、礼金などの借地契約終了時に返還されないお金の合計金額
- 保証金・敷金などの借地契約終了時に返還されるお金の支払いがあったときには、その額をもとに一定の計算式で算出された金額
- 定期借地権等の設定のときに、実質的に贈与を受けたと認められる差額地代の額があるときには、その額をもとに一定の計算式で算出された金額
文章にすると難しく思えますが、国税庁ホームページにある「定期借地権等の評価明細書」に従って項目を埋めていくだけで計算できます。
基準年利率による複利年金現価率もPDFで公開されています。
そのため、これらの公開されている資料をもとに、自力で計算することも可能です。
参照:国税庁「定期借地権等の評価」
参照:国税庁「借地権者に帰属する経済的利益の総額」
参照:国税庁「定期借地権等の評価証明書」
参照:国税庁「複利表」
3.一時使用目的の借地権の借地権価格の調べ方と計算方法
一時使用目的の借地権は、選挙事務所やサーカス会場の設置、工事のための資材置き場などのために設定されるものです。
ほとんどの場合、借地契約は法人名義となるので相続で問題になることはありません。
ですが、故人の趣味がDIYでその資材置き場として、一時使用目的の借地権を取得していることがないとも限りません。
そのようなときには、相続財産と認定されるので借地権価格を算出することになります。
この場合の借地権価格は、雑種地の賃借権の評価方法と同じ方法で算出します。
計算方法は2つあり、賃貸借契約の内容、借地の利用状況などを考慮して次のどちらかの方法が用いられます。
賃借権の登記がされていたり、借地権設定の対価として権利金や一時金の授受があったり、堅固な構築物の所有を目的としていたりする場合です。
【雑種地の自用地としての価額 × 法定地上権割合と借地権割合とのいずれか低い割合】で計算されます。
借地権価格の計算方法は【雑種地の自用地としての価額×法定地上権割合×1/2】です。
また、法定地上権割合は賃借権の残存期間に応じて決められています。
残存期間 | 法定地上権割合 |
5年以下 | 100分の5 |
5年超10年以下 | 100分の10 |
10年超15年以下 | 100分の15 |
15年超 | 100分の20 |
以上が、相続税・贈与税を計算するときに用いられる借地権価格の計算方法になります。
国税庁ホームページの掲載されている内容を確認しながら進めていくことで、自身で計算することも可能です。
しかし、納税に用いる借地権価格は正確性が何よりも大切です。
計算間違えによって納税額が少なかった場合は追徴課税の対象で通常よりも多くの税金を納めることになる上、納税額が多かった場合でも還付の手続きが面倒です。
そのため、費用はかかりますが不動産鑑定士のような専門家に借地権価格の算出を依頼することをおすすめします。
売買に用いられる借地権価格の調べ方と計算方法
売買に用いられる借地権価格の調べ方と計算方法についてです。
手軽な調べ方は、不動産売却の一括査定サイトを利用することです。
複数の不動産会社にまとめて査定を依頼できるので、査定結果から市場で取引されるおおよその借地権価格がわかります。
しかし、あくまでも概算です。
納税額を算出したときのように借地権価格は明確に決まりません。
なぜなら、売買のときの借地権価格は、下記のような要素が関係してくるためです。
・売主と地主の関係性
・土地の立地
・地代の金額
・更新料の有無
・建替え承諾料の金額
・ローン承諾の有無
・買主にとっての借地権の魅力
「どうしてもその立地でなければならない」というような買主がいれば借地権価格は高くなりますし、魅力的な立地でも買主がなかなか現れなければ借地権価格を安くせざるをえません。
とはいえ、基本的な計算方法はあります。
それは、借地権の対象となっている土地が所有権だった場合を想定して、その価格よりも借地権価格の方が総合的に安くなるように計算します。
先述したとおり、借地権を取得した場合、買主は以下のものが必要になります。
- 地代
- 増改築時の承諾料
- 第三者に売却するときの承諾料
その他にも、契約によっては権利金や更新料も必要になるかもしれません。
これらの費用は土地の所有権を取得したときにはかからないものなので、借地権価格と足しても所有権を取得する場合よりも安くなるように計算することになります。
例えば、隣り合った土地で同じ形状・面積・築年数・間取りといった条件の借地権でも、地代が異なれば借地権価格は異なるということです。
正確な借地権価格は専門家の査定で調べよう
借地権の売買価格を正確に調べる一番の方法は、不動産会社に査定してもらうことです。専門家の観点から、個々の物件がもつ条件や、周辺地域の不動産需要、最新の法制度などから借地権価格を算出します。
ただし、借地権は特殊な不動産取引となるので、不動産会社によっては知識も経験もなく、安値の査定額しかつけられないケースがあります。
そのため、借地権を専門に取り扱う不動産会社に査定してもらうことが重要です。
当サイトを運営するクランピーリアルエステートも、借地権を専門に取り扱う不動産会社です。豊富な実績と、弁護士と連携して多様な法的問題に対応できる強みを活かし、借地権の高額査定をおこなっています。
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地代の相場と計算方法
自宅を建てるために借地権を取得した場合の地代相場は、固定資産税と都市計画税の合計額の2~3倍といわれています。
このような、固定資産税と都市計画税の合計額の一定倍率に基づいて地代を算出する方法は公租公課倍率法と呼ばれるものです。
たとえば、公租公課の金額が50万円だったとすれば、年間の地代は100万~150万円となり、毎月の地代は8.3万~12.5万円となります。
この計算方法は、専門家でなくてもわかりやすい点がメリットです。
しかし、固定資産税・都市計画税の金額は、土地の上の建物がどのような目的で使われているかで軽減措置が適用されるかどうかが異なります。
また、同じ住宅地であっても、小規模住宅用地の特例のみが適用される200平方メートル以下かどうかで、軽減額の程度に影響します。
また、固定資産税評価額は3年ごとに見直しが行われていて、周辺環境などの変化によって評価額が大きく上昇したときには、納税者の急激な負担増加に配慮して、調整が行われるという仕組みもあります。
そのため、どのような場合でも一定の倍率を公租公課の金額に掛ければいいということにはなりません。
都市計画税が課税されない地域で公租公課倍率法を使うと、地代が低くなる点にも注意が必要です。
そこで、より正確な地代を計算するために、専門家である不動産鑑定士が地代算定のときによく使う計算方法を次で解説します。
新規で借地契約を結ぶときの地代を決めるための計算方法と、地代を改定するときに用いられる計算方法で使われる方式が大きく違うので、2つに分けてお伝えします。
新規で借地契約を結ぶときの地代の計算方法
新規で借地契約を結ぶ時に決める地代の計算方法には次の3つがあります。
- 積算法
- 賃貸事例比較法
- 収益分析法
1.積算法
積算法は更地価格に期待利回りを掛けた金額に、必要経費を足して地代を算出します。地代の計算の中でも使われることが多い計算方法です。
計算式はこのようになります。
- 地代=(更地価格 × 期待利回り) + 必要経費
この方法で求めた地代を特に「積算賃料」と呼ぶこともあります。
また、期待利回りは国土交通省が公開している不動産鑑定評価基準で「賃貸借等に供する不動産を取得するために要した資本に相当する額に対して期待される純収益のその資本相当額に対する割合」と決められています。
期待利回りは不動産評価の方法の1つである収益還元法における還元利回りを求める方法にのっとることとなっていますが、正確に求めるには難しい計算が必要です。
そのため、専門家に頼らずに積算賃料を算出するときは、期待利回りは大まかに2%として計算することが多いです。
積算法の必要経費には、以下のものが含まれます。
- 固定資産税や都市計画税などの公租公課
- 火災保険などの保険料
- 維持管理費
- 減価償却費
例えば、更地価格が5,000万円、必要経費が年間60万円だったときには、期待利回りを2%として年間地代を計算すると「(5,000万円 × 0.02 + 60万円) = 160万円」です。
毎月地主に支払う地代は、約13.3万円となります。
2.賃貸事例比較法
賃貸事例比較法では、たくさんの地代設定の事例を集めます。
その中から、その土地の近隣地域で条件などが近い事例を選択し、土地の形状や面積、立地、借地権の種類、契約期間、権利金の額、地主や借主それぞれの契約当時の事情による地代への影響、など様々な要素を考慮して地代を求める計算方法です。
借地となる土地に近い地域で、対象の土地と近い賃貸借が頻繁に行われていて、事例が豊富にあるときによく使われます。
3.収益分析法
収益分析法は、借主が法人などの企業の場合に使われる計算方法です。
事業の売上高を分析して、不動産が一定期間に生み出すだろうと期待される純収益を求め、必要経費等を足して地代を求めます。
ただし、企業の事業内容によっても売上が大きく異なることはもちろん、不動産がどれだけ企業の収益に貢献したかを算出するのは、不動産鑑定士でも非常に難しいです。
不動産の貢献度を示す客観的な根拠となる資料を集めることも大変で、実際にはほとんど使われていません。
地代を改定するときの計算方法
借地契約は最低でも30年以上と非常に長い契約です。
そのため、契約時点で設定した地代が現在の適正な地代となっていないこともあります。
そこで、契約期間中でも地代を変更したいという提案を地主から借地人にすることになるのですが、そのときに用いられる計算方法は、新規で地代を設定するときの計算方法とは異なります。
具体的には、次の4つの計算方法が使われています。
- 差額配分法
- 利回り法
- スライド法
- 賃貸事例比較法
それぞれの計算方法を1つずつ見ていきましょう。
1.差額配分法
差額配分法は、対象となっている土地の現時点における適正な地代と、現在決まっている地代との間に発生している差額を出します。
さらに、契約の内容や契約に至った経緯などを考慮して、その差額のうち地主に帰属する部分を算出して、その額を地代に加算・減算して求める計算方法です。
ここでいう「現時点における適正な地代」は、先ほど紹介した積算法や賃貸事例比較法によって求めます。
また「差額のうち地主に帰属する部分」は、地価の変動に伴う地代の変動分を貸主・借主で配分したあとの、貸主の部分です。
このときの配分率を決める際に考慮される項目は、以下の3つです。
- 契約上の経過期間と残存期間
- 契約的越およびその後現在に至るまでの経緯
- 貸主または借主の近隣地域の発展に対する寄与度
2.利回り法
利回り法は、更地価格に継続賃料利回りを掛けて、その金額に必要経費を足して地代を求める計算方法です。
積算法と異なるのは、掛ける割合が期待利回りではなく、継続賃料利回りとなる点です。
継続賃料利回りは、次の式で求めます。
- 継続賃料利回り=現在の地代で合意した時点における地代/現在の地代で合意した時点における更地価格
実際の計算では、この他に、更地価格の変動の大きさや近隣地域での取引事例における利回りなども総合的に考慮して、算出されることになります。
3.スライド法
スライド法は、現在の地代に合意した時点における地代に変動率を掛けて、その金額に価格判定の基準日における必要経費を足して地代を求める計算方法です。
地代は、以下の式で求められます。
- 地代= (現在の地代に合意した時点における地代 × 変動率) + 必要経費
変動率は、地価、物価、所得水準の変動のほか、消費者物価指数や市街地価格指数などの様々な指数が考慮されます。
その他、借地の用途や地域ごとの特性なども合わせて算定されます。
4.賃貸事例比較法
基本的な計算方法は、新規で地代を設定するときと同じです。
地代を改定するときで異なるのは、地代計算で使う賃貸事例です。
ここで用いる賃貸事例は、継続中の借地契約で地代改定した事例の必要があります。
しかし、現実にはそのような事例を集めること自体難しく、見つかる事例も個別性が高いことからあまり使われていない計算方法です。
借地権の更新料の相場と計算方法
借地権の更新料の相場は、更地価格の5%前後です。
ただし、更新料は地主と借地人、当事者間の個別の契約によるので決まった計算方法はありません。
借地借家法では「規定に反する特約で借地人に不利なものは無効とする」と定めていますが、更新料については、地代の額、更新後の存続期間などを考慮して「あまりに高すぎる」と裁判所が判断しない限りは、契約で合意した更新料を支払うことになります。
一方で、借地契約を結ぶときの契約書に更新料に関する特約が記載されていなければ、基本的には支払い義務はありません。
ただし、過去の借地契約更新時に更新料を支払っていた場合、更新料の支払いに合意したこととなり、次回以降の更新時には更新料を支払う義務が生まれるので注意してください。
まとめ
借地権価格には大きく分けて、納税のための評価額と売買のための評価額の2種類があり、納税額を算出するため計算方法は3種類もあります。
このように自分で借地権価格・地代を算出する場合、たくさんの計算方法があるため、正しく計算することは困難です。
借地権価格を正しく知りたい場合、不動産会社などの専門家に相談することをおすすめします。
とくに「訳あり物件の専門業者」であれば、借地権の取扱実績も豊富なので、正しい借地権価格を把握できる上、高額売却するためのアドバイスも貰えるでしょう。