賃貸人から土地を借りる権利である「借地権」を第三者に売却する場合、売却価格の参考となるのが「借地権割合」です。
国税庁のホームページを参考にすれば、借地権割合を確認できますし、自分で借地権評価額も計算することも可能です。
ただし、借地権評価額と借地権の売却価格は異なるため、実際の価格を知りたい人は不動産業者の査定を受けましょう。
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借地権割合を調べる前の基礎知識
まずは、借地権割合がどのようなものかを見ていきましょう。
自分が所有している不動産を売却する場合は、実際にその地域で取引されている時価などを参考に、売却価格を決めていきます。
一方、借地権の売却価格を決める際に参考にするのが、借地権割合です。
借地権とは土地を借りて使用する権利
借地権とは、土地を借りて使用する権利のことです。
土地を借りて家などの建物を建てるときに、借地権を設定することになります。
そのため、駐車場など建物なしで使う用地の場合、借地権は発生しません。
また、借地人に貸している借地は、貸主の都合で自由に売却や自己利用することができません。
借地権には大きく分けて普通借地権・定期借地権の2つがある
借地権には大きく分けて、2種類があります。
- 普通借地権
- 定期借地権
普通借地権は、契約期間満了時に借地人が希望する場合、正当な理由がない限り、地主側から契約更新を拒否することはできません。
定期借地権は、借地契約が満了すると自動的に契約終了となり、建物を取り壊して更地にしてから返還します。
一般的に借地権と呼ばれているものは、普通借地権です。
建物の所有を目的に貸している土地には、底地権と借地権という、2つの権利があると考えます。
底地権は借地の地主が持っている権利、逆に借地権は借地人が持っている権利です。
貸している土地の価値は、この底地権と借地権の2つに分かれます。
つまり、所有している不動産が自己利用の場合は1億円の価値がありますが、貸地になると借地権を差し引いた4,000万円まで価値が下がります。
借地権割合とは、その土地の評価額のうち、借地権がいくら占めるかの割合のことです。
上記の例なら、土地の評価額1億円のうち借地権が6,000万円を占めているため、借地権割合は、6,000万円/1億円=60%になります。
借地権割合を自分で調べる方法
借地権割合とは、その土地の評価額のうち借地権がいくら占めるかの割合のことで、国税庁のホームページから調べることができます。
借地権割合を調べる手順は3ステップです。
- 国税庁のホームページで該当ページを開く
- その土地がある地域の路線価図を開く
- 借地権割合を確認する
それぞれの手順を順番に解説していきます。
1.国税庁のホームページで該当ページを開く
国税庁のホームページで「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」を開きます。
これは相続・遺贈・贈与により取得した財産にまつわる、相続税・贈与税の財産を評価する場合の路線価や評価倍率をまとめたページです。
以下のリンクから、該当ページにアクセスできるので、ぜひ利用してみてください。
2.その土地がある地域の路線価図を開く
「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」を開くと、日本地図が表示されます。
その土地がある都道府県をクリックすると「○○県 財産評価基準書目次」のページが表示されるので「路線価図」をクリックします。
選択した都道府県の住所が表示されるので、その土地がある住所を選んでいくと、その土地がある地域の路線価図が表示されます。
3.借地権割合を確認する
路線価図の右上に「記号」「借地権割合」が記載されている表があります。
その表と路線価図を見比べて、借地権割合を確認しましょう。
これをもって、借地権割合を自分で調べることができます。
借地権評価額の計算方法
つづいて、借地権評価額の計算方法を見ていきましょう。
借地権評価額の計算方法は、次の3ステップです。
- 土地の評価額を求める
- 借地権割合を求める
- 借地権評価額を計算する
それぞれのステップを順番に解説していきます。
1.土地の評価額を求める
借地権は、その土地の評価額に借地権割合を乗じて計算します。
計算式にすると、次のようになります。
まずは、その土地の評価額を計算する必要がありますが、土地の評価には2種類の方法があります。
- 路線価方式
- 倍率方式
路線価方式
路線価方式とは、土地の評価額を、路線価図を用いて計算する方法です。
都市部の宅地の多くは路線価地域にあり、路線価方式を用いて評価します。
路線価図を見ると、土地に面した道路に、数字やアルファベット、丸や四角の図形などが記載されています。
このうち数字は、道路に面した土地の1㎡あたりの価額を千円単位で表しています。
その土地の面積が500㎡の場合は、200,000円×500㎡=1億円がその土地の評価額となります。
ただし、この計算は土地が正方形だったと仮定した場合のおおよその土地の評価額を求めるものです。
実際の土地の形は間口が狭かったり、奥行きが長かったりときれいな正方形ではありません。
そのため、実際の評価額は路線価に面積を乗じて求めた評価額に、さまざまな補正を加えて評価額を求めます。
多くの場合は、減額要素を見つけ、評価額を減額していきます。
例えば、減額要素のある土地とは以下のような土地です。
- 奥行きが短い場合や長い土地
- 間口が小さいが、奥行きがある土地
- 不整形な土地
- 崖になっている土地や傾斜地になっている土地
- 道路に接していない土地
- セットバックが必要な土地
- 周囲に騒音があったり、墓地があったりする土地
倍率方式
もう1つの評価方法が、倍率方式です。
主に都市部以外の土地の場合、この倍率方式を使って評価します。
倍率方式では、国税庁のホームページの評価倍率表に記載されている固定資産税評価額と評価倍率表にの倍率を使って、評価額を計算します。
倍率方式における具体的な計算方法は、次のとおりです。
倍率は、評価倍率表に記載されている、宅地・田・畑・山林などの地目ごとの倍率を使います。
固定資産税評価額は、市区町村から送られてくる固定資産税の納付書や通知書に記載されています。
3,000万円×1.1=3,300万円がその土地の評価額です。
2.借地権割合を求める
その土地の評価額を求めたら、次は借地権割合を求めます。
土地の評価額は路線価図の数字などを使って計算しましたが、借地権割合は数字の横のアルファベットを使います。
具体的には、数字の横のアルファベットを路線価図の右上の表にあてはめて、借地権割合を求めます。
3.借地権評価額を計算する
路線価図で数字とアルファベットを確認し、その土地の面積と借地権割合がわかれば、借地権を計算できます。
今までの具体例をもう一度整理して、借地権の評価額を計算してみましょう。
評価方法として一般的な路線価方式を使った場合は、次のようになります。
・土地の面積500㎡
・借地権割合60%の場合
・土地評価額:200,000円×500㎡=1億円
・借地権評価額:土地評価額1億円×借地権割合60%=6,000万円
ちなみに、この土地の底地権評価額は「土地評価額1億円-借地権6,000万円=4,000万円」になります。
借地権評価額と実際の売買価格評価は異なる
実際の売買価格の評価額と借地権割合を使って評価した金額は、同じなのでしょうか。
結論からいうと、実際の売買価格の評価額と借地権割合を使って評価した金額は異なります。
借地権評価額は相続税を支払うための参考価格
借地権割合を使って評価した金額は、相続税を支払うために計算する価格(相続税評価額)で、借地権とは他人に売却もできる権利です。
ただし、簡単に売却できるわけではなく、売却する場合は貸主の承諾が必要です。
とはいえ、借地権を所有している人が亡くなっても、貸主に立ち退きを要求されることはありません。
なぜなら、借地権は親から子供へと相続できる相続財産だからです。
借地権は相続できる相続財産
借地権は相続税の対象なので、相続が開始されると、親族間で遺産分割協議をおこない、税務署に相続税申告と相続税額の税金を支払わなければなりません。
その際に、借地権にいくらの価値があるのかを評価する必要があるので、相続税法では借地権割合を使って、相続する場合の借地権に評価額を計算するように定めています。
路線価は、地価公示価格よりも低い80%程度の価格となっていることや、その人の状況などを加味していないことから、売却価格とは異なったものになっています。
実際の売買価格と借地権評価額の違い
借地権割合を使った借地権評価額は、あくまでも相続税のための金額で、実際の売買価格ではありません。
また、借りている人や不動産の状況、土地価格などによって大きく金額が変わるため、借地権の売却価格には、目安はありません。
借地権の場合、以下のような要因に応じて売却価格が変わります。
- 貸主の承諾
- ローン承諾の可否
- 譲渡承諾料の金額
- 建物の種類や用途など
一般的な不動産の場合は、その地域で同じような大きさや間取り、近隣の環境によって、売却価格の目安となることもあります。
しかし、借地権については、立地や面積が同じだからといって、近しい売却価格になることはないので、注意しましょう。
借地権の売却価格における査定基準
実際、借地権の売買価格には目安がありません。
では、借地権の売却を考えるときには、売却価格をどう考えたらよいのでしょうか。
借地権の売却価格の査定基準には、次のような要素があります。
- ローン承諾許可
- 承諾料の要・不要
- 借地権の更新時期
それぞれの査定基準を、1つずつ見ていきましょう。
1.ローン承諾許可
ローン承諾許可とは、地主が、借地権の買主が金融機関のローンを利用して、抵当権を設定することを許可することです。
借地権は、土地の価格の数割の価格となることから、購入する場合、その金額は数千万円になることが多いです。
たいていの買主は購入資金を自己資金だけで用意できないので、金融機関のローンを利用します。
そのためローン承諾許可がないと、購入者が限定されるため、借地権の売却価格は低くなります。
2.承諾料の要・不要
借地権の売却は通常の不動産売買と違い、自分1人の意思ではおこなえず、必ず地主の承諾が必要となります。
借地権の売却の承諾を得る際、一定の承諾料を求められることがあります。
承諾料は、一般的に借地権価格の10%程度が相場といわれています。
しかし、手もとに残る現金のことを考えると、承諾料が必要なケースでは費用が増えるため、売却価格を高くせざるを得ません。
そのため、借地権の売却価格を高く設定すると、買主が見つからずに売れ残ってしまうため注意しましょう。
3.借地権の更新時期
借地権の更新時に更新料が必要な場合、更新直前に借地権を売却しようとすると、買主が見つかりにくくなる場合があります。
その場合は、売却価格を下げなければならないケースもでてきます。
借地権の売却は、自分一人の意思では行えず、どうしても地主の承諾などが必要です。
そのため、借地権の売却を考える場合は、普段から賃貸人と良好な関係を保っておきましょう。
まとめ
借地権割合や借地権評価額は自分で確認・計算できます。
ただし、借地権割合を使った評価額が借地権の売却価格の目安になるわけではありません。
また、借地権の売却価格はその人や土地の状況などで大きく異なるため、目安はありません。
そのため、自分の借地権の売却価格を知りたい場合、不動産業者の査定を受けて、専門家に価格を予想してもらうことをおすすめします。