借地の固定資産税は誰が払う?借地権者が負担する税金と地代の考え方を解説
他人から土地を借りて建物を建てている場合、その土地を「借地」、土地を借りる権利を「借地権」と呼びます。借地の税金関係は、土地と建物で負担者が分かれるため注意が必要です。
土地の固定資産税・都市計画税は、原則として1月1日時点の所有者である地主が支払います。借地権者が土地の固定資産税・都市計画税を直接納税する義務はありません。
ただし実務上、借地権者は「地代(借地料)」を通じて、間接的にこれらの税金を負担しているのが一般的です。地代は、固定資産税などの「公租公課」を踏まえて決められることがあり、結果として借地権者の負担が増減することがあります。一般的に、住宅地の地代は「公租公課の3〜5倍」程度がひとつの目安とされています。
一方で、借地上に建てた建物については、借地権者自身が建物の固定資産税・都市計画税を納める必要があります。つまり、土地の税金は地主、建物の税金は借地権者がそれぞれ負担する仕組みです。
実務でよく受ける相談に、「地主から固定資産税の増額を理由に地代の値上げを要求された」というケースがあります。固定資産税が上昇すると、それを理由に地代の値上げ交渉が行われることが多いのですが、単に税金が上がったという理由だけで、地主の言い値がすべて正当化されるわけではありません。地代の改定には、近隣の地代相場と比較して不相当になっているかといった客観的な判断も必要です。
まずは契約書に「公租公課の○倍」といった算定根拠の記載があるか確認しましょう。納得できない値上げ要求に対しては、しっかりとその根拠を求めて交渉することが可能です。
権利関係が複雑な場合や、地主とのトラブルに発展しそうな場合は、弁護士と提携した不動産業者などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。
本記事では、借地と固定資産税の関係、地代の決まり方と具体的な計算方法、値上げ要求への正しい対処法について詳しく解説します。
借地権者は土地の固定資産税の代わりに地代(借地料)を支払っている
他人から土地を借りて建物を所有する借地権者は、土地に課される固定資産税・都市計画税の納税義務を負いません。
しかし実務上、多くのケースで借地権者は地代を通じて、間接的に土地の税金を負担しています。
地代は土地の固定資産税・都市計画税を基準に決められるのが一般的であり、「地代のなかに固定資産税などの公租公課が含まれている」と解釈できるためです。
納税通知書は地主に届き、地主が納税しますが、実質的には「借地権者→地主→地方自治体」という流れで税金が支払われている形になります。
以下では、固定資産税・都市計画税の詳細と、借地権者が実際に負担する税金について解説します。
固定資産税を納めるのは借地となっている土地の所有者
借地とは、地代を支払って第三者から借りている土地のことです。この土地を借りて建物を建てる権利を「借地権」と呼びます。
借地に発生する固定資産税や都市計画税は、土地の所有者へ納税通知書が送付され、土地の所有者が納税します。
借地というのはあくまで、地主の土地を借りて「利用する権利」を持っているだけで、土地そのものを所有しているわけではないからです。
ただし例外として、「百年より永い存続期間の定めのある地上権」に関しては、土地の所有者ではなく地上権者が納税義務を負います(地方税法第343条第1項)。
この例外が適用されるケースは極めて稀で、一般的な借地権(賃借権)では該当しません。
建物にかかる固定資産税は建物の所有者への課税
固定資産税・都市計画税は、土地以外の不動産にも課せられる税金です。
借地権を行使して建物を建築した場合は、建物の所有者に対して当該建物の固定資産税・都市計画税が課せられます。
納税通知書は建物の所有者へ送られ、1月1日時点での建物の固定資産税評価額を基に計算された固定資産税・都市計画税を支払う必要があります。
地代の相場は公租公課の3~8倍
借地権者は、土地の所有者へ支払う地代によって、間接的に固定資産税・都市計画税を負担しています。
地代の相場は、「(固定資産税+都市計画税)×相場の倍率(3〜8倍)」だと言われています。一般的な地代の相場は次の通りです。
- 借地が宅地の場合:3〜5倍
- 借地が商業地の場合:5~8倍
商業地の倍率が高いのは、事業収益が見込めるため地主の期待利回りも高くなるためです。上記はあくまでおおまかな目安であり、詳細な地代の計算は「公租公課倍率法」などが用いられます。また、計算をおこなわず、借地契約の当事者同士の話し合いで合意した金額になるケースもあります。
現在の地代が公租公課に対して何倍になっているかを調べるには、土地公課証明書(固定資産公課証明書)を取得するとよいでしょう。土地公課証明書とは、所有している土地の評価額・課税標準額・税額を証明する書類です。取得するには、土地の所有者または同居する家族が市区町村の役場窓口(東京都は都税事務所)で申請します。自治体によっては、コンビニでの取得が可能です。
実務上の印象としても、地代が公租公課の何倍にあたるかを把握していない方は7割以上にのぼります。地代の妥当性を判断するためにも、まずは土地公課証明書で税額を確認することをおすすめします。
固定資産税・都市計画税の金額の決まり方
土地および建物の固定資産税・都市計画税の計算方法は、借地権の有無に関係なく通常のものと同じです。
【一般的な固定資産税の計算方法】
固定資産税評価額×1.4%(標準税率)
【一般的な都市計画税の計算方法】
固定資産税評価額×0.3%(制限税率)
借地権で建築したのが住宅だった場合、住宅用地の特例措置が適用される可能性があります。
| 区分 |
固定資産税 |
都市計画税 |
小規模住宅用地
住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分 |
価格×1/6 |
価格×1/3 |
一般住宅用地
小規模住宅用地以外の住宅用地 |
価格×1/3 |
価格×2/3 |
意外と見落とされがちですが、住宅用地の特例は「住宅が建っている」ことが前提です。たとえば老朽化した建物を取り壊して更地にすると、翌年から特例が外れて固定資産税が大幅に上がり、連動して地代の値上げ交渉につながるケースがあります。借地上の建物を建て替える際にも、一時的に更地状態になる期間の扱いについて地主と事前に確認しておくことが重要です。
住宅用地の特例措置によって固定資産税・都市計画税が安くなると、安くなった税金を基に地代が計算されます。つまり借地権でマイホームを建てたときは、支払う地代も安くなっている可能性が高いです。
地代とは別に権利金の支払いも必要になる場合がある
借地契約を結んだとき、地代とは別に権利金の支払いを求められる場合があります。権利金とは、賃貸物件における礼金のようなイメージですが、実務的には「地主が長期間にわたって土地を自由に使えなくなることへの対価(借地権価格の一部前払い)」としての性質を持つ一時金です。
借地権における権利金の額は、一般的に更地価格にその地域の国税局が設定した借地権割合(30〜90%、地域により異なる)を乗じた金額が目安とされています。たとえば、路線価図に「D(60%)」と記載されたエリアであれば、更地価格の60%程度が権利金の目安です。とはいえ厳密には権利金の決め方に法的な規定はないため、両者の合意があれば任意に設定が可能です。
「権利金を払っているのだから、毎月の地代はもっと安くなるべきでは?」というご質問をいただくこともありますが、権利金と地代はそもそも性質が異なります。権利金は借地権という権利を設定する対価であり、地代は土地を継続的に使用する対価です。両者は別々の費用であるため、権利金を支払ったことで地代が下がるという直接的な関係はありません。
ただし、借地契約を結んだ当事者が親族同士だったり同族会社間の取引だったりすると、権利金が発生しないケースがあります。
もし権利金が発生しない借地契約だと、通常の地代よりも高額の「相当の地代」の支払いが発生します。相当の地代の金額は、「自用地としての価額(過去3年間の平均額)×おおむね6%」が目安です。
参考:国税庁「No.5732 相当の地代及び相当の地代の改訂」
土地の固定資産税が値上げされると地代も上がる可能性あり
土地の地代の計算に固定資産税・都市計画税が使われている場合、土地の固定資産税が値上げになると、地代も一緒に値上がりする可能性があります。
【固定資産税が上がる主な理由】
・3年に1度の評価替えで土地の評価額が上昇した
・住宅用地の特例が外れた(建物を取り壊した、事業用に転用したなど)
・周辺の開発により地価が上昇した
以下では、地代の増減を請求される正当な理由、請求が認められないケース、地代の値上げに納得がいかないときの法的手続きについて解説します。
地代の増減を請求される理由
借地借家法第11条では、以下の場合には地代の増減を請求できる旨が定められています。
- 土地に対する租税その他の公課の増減
- 土地の価格の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動
- 近傍類似の土地の地代等に比較して不相当
参考:e-Gov法令検索「借地借家法」
固定資産税・都市計画税の値上がりは、「土地に対する租税その他の公課の増減」に該当します。そのため、土地の所有者は地代の値上げを請求できる正当な権利を有するのです。
たとえば、建物の取り壊しなどで住宅用地の特例が外れると、土地の固定資産税が最大で6倍程度に跳ね上がることがあります。公租公課倍率法で地代を決めている場合、固定資産税の増額分がそのまま地代に反映されるため、借地権者の負担も大きく増える可能性があります。
とはいえ、一般的には値上げする前に、借主・貸主の間で話し合いがおこなわれます。値上げに納得できれば合意、納得できなければ調停や訴訟などの法的手続きに進みます。
筆者の感覚ではありますが、固定資産税の上昇を理由にした地代値上げのご相談は、3年に1度の評価替えのタイミングに集中する傾向があります。「突然地主から値上げを通知された」というお声をいただくことが多いのですが、実際には評価替えの結果を踏まえた交渉であるケースがほとんどです。
地代の増減請求ができないケース
以下のケースに該当する場合は、土地の所有者であっても地代の増減請求はできません。
- 借地契約時に一定期間地代を増額しない旨の特約を結んだ
- 経済事情の変動が軽微だった
- 土地の所有者の経済状況を根拠に値上げを要請した
上記のケースで土地の所有者から地代の値上げを求められても、納得ができないときはしたがう必要はありません。
弊社へのご相談でも、「地主に言われた金額を払うしかないと思っていた」とおっしゃる方は少なくありません。しかし、増額しない特約があれば地主の値上げ請求を拒否できますし、特約がない場合でも根拠のない値上げに応じる義務はありません。まずはお手元の借地契約書の内容を確認することが第一歩です。
地代の値上げに納得いかないときは調停や訴訟を検討する
地代の値上げに納得がいかず、話し合いでも解決しないときは、調停や訴訟などの法的手続きを経て決着を付けることになります。
借地契約は地主と借地権者の人間関係が重要なこともあり、いきなり主張を直接ぶつけ合う訴訟ではなく、まずは調停で地代を決めることがほとんどです。
弊社が提携する弁護士によると、地代をめぐる調停では、裁判所が選任する鑑定人の評価額をベースに和解が成立するケースが多いとのことです。訴訟まで進むケースは全体の中ではかなり少数であり、調停段階で合意に至ることがほとんどだといいます。
地主から地代の値上げを要求されて結論が出るまでの間については、借地権者が相当と認める額の地代を支払えばよいことになっています。
最終的に、決まった新しい地代とその間に支払った地代の額に差額があれば、その差額分を年1割の利息をつけて精算します。
もし「値上げを要求した地代でなければ受け取らない」と地主が受け取りを拒否したとしても、そのまま支払わなければいいわけではありません。
この場合、借地権者が相当と認める額の地代(実務上は、値上げ前に支払っていた「従前の地代」と同額とするのが基本です)を法務局(供託所)に供託する必要があります。供託とは、地主が受け取らない地代を法務局に預ける手続きで、これにより「支払いの意思があった」ことを法的に証明できます。安易に従前より低い額を供託すると、地代の未払い(債務不履行)とみなされ、借地契約の解除にまで発展するリスクがあるため注意してください。
地主が受け取らないからといって地代を支払わないままであれば債務不履行となり、借地契約の解除にまで発展する恐れがあるので注意してください。
借地権者が支払う地代の計算方法と支払時期
地代は民法上「賃料」にあたります。民法では賃料は後払いと定められていますが、実際には契約で「翌月分を毎月末日に支払う」と記載して前払いとなっていることが多いです。
地代の支払いは民法よりも当事者間の契約が優先されるので、内容によっては「半年に1度」や「1年に1度」と定められている場合があります。
支払金額の算出に関しても、法的に決められた方法があるわけではありません。しかし一般的には、以下の方法のいずれかで地代を計算するケースがほとんどです。
なお、計算した相場よりも現在の地代が極端に安い場合、得をしていると安心するのは早計です。地主側は、毎月の地代を安く抑える代わりに、将来の契約更新時や、建物の建て替え・売却時に発生する「更新料」や「承諾料」といった一時金で利益を回収しようと想定しているケースが少なくありません。安い地代だけを見て「お得だ」と判断すると、更新料(更地価格の3〜5%程度が目安)や建替承諾料(更地価格の3〜4%程度が目安)が発生した際に、想定外の出費に直面することがあります。地代の水準を評価する際は、契約期間全体でのトータルコストを意識することが大切です。