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借地権の登記は必要?登記するメリット・タイミング・必要書類・費用を解説

借地権の登記は必要?登記するメリット・タイミング・必要書類・費用を解説

借地権とは土地を借りる権利のことであり、法務局に申請すれば登記することができます。

しかし、借地権を登記していないという人も多いため、登記をした方がよいのかどうか悩んでいる方も多いでしょう。

借地権の登記は法律で義務付けられているわけではありませんが、土地を借りていることを第三者に主張するためにも登記をした方が良いケースがあります。

具体的に借地権の登記が必要なタイミングは、以下の4つです。

  1. 借地契約の締結または建物を建てたとき
  2. 借地権の譲渡を受けたとき
  3. 借地権を相続で取得したとき
  4. 借地契約を解消して更地で返還するとき

上記のタイミングで借地権の登記をしておけば、万が一明け渡し要求や不法占拠をされた際にも、借地権を第三者に主張できます。

本記事では、借地権の登記をするメリットやタイミング、必要書類、費用などについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

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借地権の登記は必要?しなくてもよい?

借地権の登記は法律で義務付けられているわけではないため、登記していないことでペナルティを受けることはありません。

しかし、借地権の登記をしていなければ第三者に「土地を借りている」ということを主張できないケースがあります。

また借地権の登記が不必要な場合であっても、借地権付き建物の登記は必要です。

次の項目から、借地権の登記が必要な理由や借地権付き建物の登記について、詳しく見ていきましょう。

借地権の登記は義務ではないがした方がよい

借地権の登記は義務ではないため、登記されていないケースも多々みられます。

しかし、借地権の登記をしていなければ、土地の所有者が変わったときや第三者に不法占拠されたときに「土地を借りる権利」を主張できない場合があります。

あらかじめ借地権の登記をしておけば、万が一の事態が起きたときにも借地権を主張できるため、土地を奪われる心配がありません。

また、土地の権利形態や状況などによっては、登記が必須になるケースもあります。

具体的にどのようなケースで借地権の登記が必要になるのかは「借地権の登記が必要なタイミング」の項目で詳しく解説します。

借地権付き建物は登記が必要

借地権の土地は基本的に登記しないケースが多いのですが、借地権付き建物に関しては登記が必要になります。

建物を新築で取得したときや譲り受けたときなどには、登記をしなければならないと法律で義務付けられているからです。

また、建物の登記をしていれば借地権の登記をしていなくても、土地を借りる権利を第三者に主張することができます。

そのため、借地権の登記は絶対ではありませんが、建物の登記は必要と認識しておきましょう。

借地権は「地上権」と「賃借権」の2種類

借地権

借地権とは「他人の土地を借りて利用するために取得する権利」のことです。

有償で借りるか、無償で借りるか、また借りる目的によって権利の種類は異なります。

このうち、建物を建てて利用するために取得する借地権は、「地上権」と「賃借権」の2つです。

地上権 賃借権
・対象の土地を直接的に支配する権利
・地主の許可なく土地を自由に活用できる
・建物を所有する目的で設定されることはない
・土地の使用を請求する権利
・建物の建替や譲渡時には地主の許可が必要
・建物には賃借権が設定されることが一般的

それぞれの権利の性質や、取得することで発生する権利と義務について詳しく解説します。

1.地上権

地上権とは、他人の土地で竹木や道路、建物、電柱などの工作物を所有するために取得する権利です。

地上権は「物権」と呼ばれる種類の権利で、対象の物を直接的に支配する効力を持っています。

そのため、地上権では土地の所有者である地主の許可がなくても、土地を貸したり担保として設定したりすることが可能です。

非常に強い権利の種類であるため、地主にとって不利なことが多く、一般的には地上権が設定されることはありません。

地上権が設定されるのは、トンネルや地下鉄、高速道路などの工作物を所有する場合に限定されることがほとんどです。

地上権の登記の場合は地主に協力義務がある

土地に地上権を設定したときには、借地権者が地上権を登記するための協力義務が地主にはあります。

地主は、借地人から登記の協力を求められると、拒否することはできません。

そして、地上権を登記しておけば、底地権の譲渡や相続などで地主が変わったとしても関係なく、自由に使い続けることができます。

さらに、地上権を他人に貸したり、他人に譲渡したりすることも地主に承諾なく行うことができるのも特徴です。

地上権はこのような非常に強い権利として認められているため、実際には、居住用・事業用にかかわらず、建物所有を目的とした借地権で設定されることはまずありません。

そのため、一般的に「借地権」というと、次に解説する「賃借権」を指します。

2.賃借権

賃借権とは、賃料を払って他人の物を利用する権利です。

賃借権は「債権」という種類の権利で、契約を交わした相手に対して、一定の行為を請求できます。

土地の借地権であれば、契約の相手である地主に対して「土地を使わせてほしい」と請求できる権利が認められるということになります。

賃借権はあくまでも「土地を借りる権利」のみであるため、建物を建て替えるときや第三者に譲渡する場合は地主の許可が必要です。無断で建て替えや譲渡をすると、借地契約の解除となる可能性もあるので注意してください。

また、賃借権は原則として当事者間でのみ有効とされています。

そのため、地主が土地を第三者に譲渡したときには、その土地を譲り受けた新しい地主に対して「土地を使わせてほしい」と請求することはできません。

賃借権の登記の場合は地主に協力義務はない

賃借権の登記の場合、地主に協力義務はないため、賃借権が登記されることは稀です。

なぜなら、登記することで借地権の力が強くなることを地主が嫌がるからです。

しかし、借地人に極めて不利な状態となるため、借地借家法では「借地人が借地上の建物を自分名義で登記していれば、賃借権の登記をした場合と同じように第三者への対抗力を持つ」と定められています。

建物の登記は借地人単独の意思で行えて、地主の承諾は必要ありません。

ただし、借地人の子供名義や配偶者名義で建物の登記をした場合、借地権の第三者への対抗力は認められないので注意してください。借地権と建物の名義人は必ず揃える必要があります。

このように定められているので、建物の登記さえしていれば、地主が変わったとしても安心して借地を利用し続けることができます。

借地権の登記をするメリット

借地権の登記は義務ではありませんが、登記をすることで地主と借地人の双方にメリットが得られるケースがあります。ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説します。

地主(貸す側)のメリット

地主(貸す側)の視点から見た場合、賃借権の中でも「定期借地権」と呼ばれる権利形態であれば借地権の登記にメリットがあります。

定期借地権とは、契約で定められた期間のみ土地を借りられる権利のことです。10年以上、50年未満の範囲で契約期間が設定されます。

定期借地権の契約が切れたとき、借地人は建物を解体して地主に返還する必要があります。しかし、「長年住み慣れた家を手放したくない」などの理由から、借地人に返還を拒否されるケースも考えられます。

拒否された場合は契約書類に基づいて明渡請求権を行使することになるのですが、契約期間が50年にも及ぶと書類を紛失してしまうこともあるでしょう。

もしも契約書類を紛失すると定期借地権であることの証明ができなくなり、土地を返還してもらうことが難しくなります。

そこで借地権を登記していれば、万が一契約書類を紛失しても、その土地が定期借地権であることを証明できます。

なお、定期借地権の他には「普通借地権」という権利形態があるのですが、こちらは借地人が望む限り、半永久的に土地を借り続けることが可能です。

定期借地権のような問題が発生しないため、普通借地権の場合は地主側に登記のメリットはありません。

定期借地権であれば地主側にリスク管理のメリットがあるため、借地権の登記に応じてもらえる可能性があります。

借地人(借りる側)のメリット

借地人(借りる側)が借地権を登記するメリットは、第三者に対して権利を主張できることです。

たとえば地主が土地を売却して所有者が変わった場合でも、登記していれば借地権を主張し、そのまま土地を借り続けることが可能です。

なお、賃借権の場合は建物の登記をしていれば第三者に借地権を主張できるのですが、建物が滅失すると権利を主張できなくなります。

建物を解体したときや、火災・水害などで建物が消滅してしまったときなどが該当します。

建物が滅失したときは、土地に立札を掲示することで2年間は第三者に対して対抗が可能です。一方で借地権の登記をしていれば、建物の滅失時に立札を掲示しなくても借地権を主張できます。

このように、第三者への抵抗を強めることができるのが借地権を登記するメリットです。

借地権の登記が必要なタイミング

借地権を登記する目的は、その権利を確かに持っていることを第三者に主張するためで、専門的には「対抗要件」といいます。

借地権を設定する契約は基本的に当事者間でのみ有効なものであり、地主が変わるようなことがあると、新しい地主に借地権を主張できません。

したがって、新しい地主から明け渡しを求められた場合、拒否することができなくなります。このような事態を避けるため、借地権を登記する必要があるというわけです。

具体的に借地権の登記が必要なタイミングは次の4つです。

  1. 借地契約の締結または建物を建てたとき
  2. 借地権の譲渡を受けたとき
  3. 借地権を相続で取得したとき
  4. 借地契約を解消して更地で返還するとき

それぞれ詳しく解説します。

1.借地契約の締結または建物を建てたとき

更地の状態で地主と借地契約を結んだ場合、その借地権が地上権であれば、契約を締結したときに地主へ地上権設定登記の協力を要請します。

一方で、借地権が賃借権だったときには、賃借権を登記せず、その借地上の建物を登記することとなります。

そのため、賃借権の場合は借地契約を結び、建物の建築が完成したときが登記のタイミングです。

このときに行う登記を所有権保存登記といいます。登記の期限は原則として、新築してから1カ月以内です。

期限内に登記をしなければ10万円以下の過料が課せられる恐れがあるため、注意しておきましょう。

2.借地権の譲渡を受けたとき

第三者から借地権や借地権付き建物を購入したり、親族から建物を贈与されたりして借地権を譲り受けたときも、登記を行うタイミングです。

このときに行う登記は、所有権移転登記といいます。

一般的には、借地権付き建物の売買契約を結び、売主と買主がそれぞれ取引の準備を整え、決済・引き渡しをするときに登記手続きも行います。

なお、借地権が賃借権の場合、譲渡するときには地主の承諾が必須です。建物の名義を変えると、第三者に借地権を譲渡したことになるからです。

たとえば建て替えと合わせて建物の名義を親から子供に変更する場合などは、地主の承諾を得るのを失念するケースが多くみられます。

地主の承諾を得ずに名義変更をすると契約違反となるため、必ず地主の承諾を得るようにしてください。

3.借地権を相続で取得したとき

相続が発生して、借地権を取得したときにも登記が必要です。

この登記は「相続登記」と呼ばれていて、亡くなった方から相続人へ不動産の名義を変更する「所有権移転登記」に該当します。

地上権であれば借地権の相続登記を、賃借権であれば借地権付き建物の相続登記を行います。

譲渡を受けたときとは異なり、相続の場合は借地権の取得に地主の承諾は必要ありません。

借地契約書の名義変更もする必要はなく、地主に相続で借地権を取得したことを通知するのみで問題ありません。

口頭で通知してもよいですが、内容証明などの書面で通知したほうが将来的なトラブルを避けられるでしょう。

4.借地契約を解消して更地で返還するとき

借地上の建物を取り壊して、更地で地主に返還するときにも登記が必要になります。

このときの登記を滅失登記といい、借地上に建物が存在しなくなったことを示すことが目的です。

滅失登記を行うことで、その建物の登記簿は閉鎖されます。

滅失登記は、原則として建物が滅失した日から1カ月以内に手続きしなければなりません。

もし、滅失登記の必要があるのに行わなかった場合、10万円以下の過料という厳しい罰則も定められているため、注意してください。

借地権の登記における必要書類と費用

登記

借地権を登記する際には法務局で申請をするのですが、必要書類や費用は登記のタイミングによって異なります。

  • 借地契約を交わした際の必要書類と費用
  • 借地権を譲り受けた際の必要書類と費用
  • 借地権を相続で取得した際の必要書類と費用
  • 借地契約を解消して更地で返還する際の必要書類と費用

今回は、一般的な事例である「賃借権の建物の登記」に必要な書類と費用にフォーカスして紹介します。

借地契約を交わした際の必要書類と費用

借地契約を交わしたときは、新築など建物が完成したタイミングで「所有権保存登記」をおこないます。

所有権保存登記に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 住民票の写し
  • 登記申請書
  • 委任状(司法書士に委託する場合)
  • 住宅用家屋証明書(一定条件を満たす場合)

住民票の写しは、建物の所有者の氏名、住所が一致しているかに使用します。

登記申請書は、所有権保存登記を法務局に申請するための書類で、法務局のホームページからダウンロードできます。

登記手続きを司法書士に代行してもらう場合は、委任状の作成も必要になります。そのため、自身で登記申請を行うときには必要ありません。

また一定の条件を満たしている建物の場合、住宅用家屋証明書も併せて準備することで、登録免許税の軽減措置を受けられます。住宅用家屋証明書の交付を受けられるかどうかは、市区町村役場で確認しましょう。

所有権保存登記に必要な費用は以下のとおりです。

項目 費用目安
書類の発行手数料 約2,000円
登録免許税 固定資産税評価額の0.4%
(住宅用家屋証明書がある場合は0.15%)
司法書士報酬 約2万~3万円

書類の発行手数料は合計で2,000円程度です。

登録免許税は建物の固定資産税評価額の0.4%ですが、住宅用家屋証明書の交付を受けられた場合は軽減税率が適用され、固定資産税評価額の0.15%になります。

たとえば建物の固定資産税評価額が1,000万円の場合、登録免許税は4万円または1万5,000円になります。

借地権を譲り受けた際の必要書類と費用

借地権を譲り受けたときに行う登記は「所有権移転登記」です。

登記手続きに必要な書類は以下のとおりです。

  • 不動産売買契約書・贈与契約書
  • 登記識別情報通知書(登記済権利証)
  • 固定資産税評価証明書
  • 登記原因証明情報
  • 登記申請書
  • 住宅用家屋証明書
  • 印鑑証明書
  • 住民票の写し(譲受人)
  • 委任状(司法書士に委託する場合、譲渡人・譲受人どちらも)

このうち、譲受人の方で準備が必要な書類は住民票の写しと委任状のみです。それ以外の書類は譲渡人が準備します。

売買であれば売買契約書を交わして、物件の引き渡しがあったときに法務局へ登記申請します。贈与の場合は、贈与契約書を交わしたときが登記のタイミングです。

所有権移転登記で必要な費用は以下のとおりです。

項目 費用目安
住民票の写しの発行手数料 1通300円
登録免許税 固定資産税評価額の2%
(住宅用家屋証明書がある場合は0.3%)
司法書士報酬 5万~8万円

所有権移転登記での登録免許税率は、固定資産税評価額の2%で、住宅用家屋証明書がある場合は、軽減税率が適用されて固定資産税評価額の0.3%です。

たとえば譲り受けた建物の固定資産税評価額が1,000万円であれば、登録免許税は20万円、または3万円です。

所有権保存登記よりも書類が多く手続きが複雑になることから、司法書士報酬も5万〜8万円と高めになります。

借地権を相続で取得した際の必要書類と費用

借地権を相続で取得したときには「相続登記」をおこないます。

登記申請の中身は借地権を譲り受けたときと同じ所有権移転登記なのですが、必要書類や手続きに違いがあるため注意が必要です。

相続が発生したときには、まず遺言書の有無を確認します。

遺言書があれば、その内容に従って相続財産を分配し、建物と借地権についても誰が相続するかのかが決定します。

もしも遺言書がなければ法定相続分に従って財産は相続されます。

このとき、相続人が1人であればそのまま所有権移転登記の手続きに進みます。

しかし、相続人が複数人いる場合、誰が建物と借地権を相続するのかを遺産分割協議で決めなければなりません。共有名義で相続する場合は、誰がどのような持ち分で相続するのかを話し合う必要があります。

相続登記で必要な書類は以下のとおりです。

  • 被相続人の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票の除票
  • 法定相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言もしくは遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 借地権を相続する方の住民票の写し
  • 委任状(司法書士に委託する場合)
  • 固定資産税評価証明書
  • 登記簿謄本
  • 登記申請書
  • 登記原因証明情報

亡くなられた被相続人の戸籍謄本は、法定相続人を確定させるために、出生から死亡までの戸籍謄本が必要になります。法定相続人の戸籍謄本は現在のものだけで問題ありません。

相続登記で必要な費用は以下のとおりです。

項目 費用目安
書類の発行手数料 約5,000円
登録免許税 固定資産税評価額の2%
(住宅用家屋証明書がある場合は0.3%)
司法書士報酬 7万~10万円

相続登記は必要書類が多いため、書類の取得費用のみで5,000円ほどかかります。

登録免許税は所有権移転登記と同じで固定資産税評価額の2%、住宅用家屋証明書がある場合は軽減税率が適用されて固定資産税評価額の0.3%となります。

司法書士報酬は、売買や贈与で譲り受けたときよりも高いことが多く、7万〜10万円ほどかかる場合が多いです。

なお、申請だけでなく必要書類の取得まで委託すると1万円〜1万5,000円ほど費用が上がります。

借地契約を解消して更地で返還する際の必要書類と費用

建物を取り壊して、更地にして借地を返還するときには「滅失登記」をおこないます。

滅失登記は、現在登記されている建物が存在しなくなったことを示すための登記なので、現在の登記簿に記載されている情報を正確に記入することが重要です。

滅失登記の申請書の内容が現在の登記簿の情報とわずかでも差があれば、修正しなければならず、余計な手間がかかるからです。

法務局の担当者が現地調査を行い、何も問題なければ滅失登記の手続きは完了で、登記完了証が交付されます。

滅失登記で必要な書類は以下のとおりです。

  • 登記申請書
  • 建物滅失証明書
  • 解体業者の印鑑証明書
  • 解体業者の登記事項証明書
  • 住宅地図
  • 委任状(土地家屋調査士に委託する場合)

建物滅失証明書、解体業者の印鑑証明書、登記事項証明書は、建物を取り壊したときに業者から発行してもらいます。

住宅地図は、建物が建っていた場所を確認するために添付を求められる場合があります。必須ではないので、登記申請する法務局に確認してください。

滅失登記にかかる必要は以下のとおりです。

項目 費用目安
登記簿謄本の取得費 1通600円
土地家屋調査士報酬 4万~5万円

滅失登記の申請は司法書士に委託できない代わりに、土地家屋調査士に委託することができます。土地家屋調査士報酬は4万〜5万円程度です。

その他の登記申請と異なり、登録免許税はかからないため、ほかの登記申請と比べて安く済むケースが多いです。

自身で手続きをすれば登記簿謄本の取得費のみしか発生しませんが、書類の記載ミスがあると余計な手間が生じるため、不安な場合は専門家に依頼しましょう。

借地権の取り扱いや相続登記の申請方法が異なる特殊なケース

ここまで借地権の登記について説明してきましたが、以下のような特殊なケースでは、借地権の取り扱いや相続登記の申請方法が変わってきます。

  • 遺贈によって借地権を引き継いだケース
  • 借地権の相続人が未成年のケース

それぞれのケースについて詳しく紹介します。

遺贈によって借地権を引き継いだケース

先述したとおり、借地権が法定相続人に受け継がれる「相続」であれば、登記の際に地主の承諾は必要ありません。

しかし、借地権が法定相続人以外に受け継がれる「遺贈」の場合、地主の承諾が必要借になります。

相続は遺言や遺産分割協議に従い、親族などの法定相続人が財産を引き継ぐことです。一方、遺贈は被相続人の遺言により、第三者に無償で財産を譲ることです。

遺贈は第三者への譲渡とみなされるため、まずは地主に連絡をして承諾を求めます。地主に譲渡を認めてもらえれば、所有権移転登記の手続きに進むことが可能です。

また相続の場合は地主への承諾料の支払いは不要ですが、遺贈の場合は借地権価格の10%程度の承諾料を支払う必要があるため、注意しておきましょう。

なお、地主から譲渡の承諾を得られなかった場合は、裁判所へ地主の承諾に代わる許可(代諾許可)を申し立てることになります。

裁判所への申し立てで代諾許可を得られれば遺贈が認められ、所有権移転登記の手続きができるようになります。しかし、申立てが却下となると遺贈はできず、法定相続人に借地権が相続されます。

このように、借地権の遺贈は地主との交渉が必要になったり、拒否された場合は別途対応が必要になったり、相続よりも手続きが複雑です。

地主からスムーズに承諾を得られそうにない場合は、専門の不動産会社や弁護士に相談してみましょう。

借地権の相続人が未成年のケース

相続登記の申請は法律行為に該当するのですが、未成年は法律行為ができないと民法で規定されています。

そのため、相続人が未成年者だった場合、代理人を立てる必要があります。このときの代理人は、親権者である親が務めるケースが一般的です。

法定相続分や遺言に基づく相続登記であれば、親が代理人となって手続きを進められます。しかし、相続時に遺産分割協議が行われる場合、親は未成年者である子どもの代理人になれません

親と未成年者の子どもが相続人だった場合、お互いに利益相反の関係になるためです。

たとえば、父・母・未成年者の子供の3人家族で、父親が亡くなったとします。

もしも母親が子供の代理人を務められる場合、母親は自分が有利になるように遺産分割協議を進めることができるため、子供は不利益を被ることになります。

このような状況になることを避けるために、利益相反の関係にある者は代理人になれないと法律で定められているのです。

借地権の相続人が未成年の子供で、かつ遺産分割協議を行う場合は「特別代理人」の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。

特別代理人の条件は利益相反の関係でないこと、つまり、相続人でなければ誰でもよいということになっています。

一般的には、子供の祖父母やおじ・おばなどの親族を特別代理人にして遺産分割協議を行うケースが多いです。

なお、親族への依頼が難しい場合は、司法書士などの専門家を特別代理人候補者にすることも可能です。

特別代理人の選任手続きに必要な書類と費用

特別代理人の選任のための手続きは、利益相反関係にある親と子供が申立人となり、子供の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

選任手続きに必要な書類は以下のとおりです。

  • 申立書
  • 未成年者の戸籍謄本
  • 親権者または未成年後見人の戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票または戸籍の附票
  • 遺産分割協議書案

家庭裁判所は、申立時に提出された遺産分割協議書案の内容を確認したうえで特別代理人の選任を受理するかを決定します。

たとえば親が借地権を含む不動産を単独で相続する場合、「不動産と同程度の価値があるその他の財産が子供に相続されるようになっているか」が確認されます。

もしも不動産含むほとんどの財産が親に相続されるようになっているなど、遺産分割協議書案の内容が子供に不利益なものである場合、特別代理人の選任は認められません。

特別代理人の選任にかかる必要は以下のとおりです。

項目 費用目安
収入印紙 1人につき800円
申し立て報酬 3万~5万円
特別代理人報酬 5万~10万円

特別代理人の選任手続きに必要な費用は、基本的に収入印紙代の800円のみです。

申立の手続きや特別代理人就任を弁護士・司法書士に依頼する場合は、追加で3万〜10万円ほどの報酬が発生します。

まとめ

借地権には地上権と賃借権の2種類があり、一般的な建物には賃借権が設定されてます。

賃借権は地主に登記の協力義務がないため、借地権の登記はしないケースが一般的です。しかし、借地権付き建物の登記は法律で義務付けられています。

建物の登記をしておけば第三者に借地権を主張できるため、地主が変わったとしても借地を利用し続けることができます。

登記手続きは専門家に依頼せずともできますが、申請情報に不備があると正しくなるまで繰り返し修正しなければなりません。

そのため、スムーズに手続きを進めたい方は、登記手続きの専門家である司法書士に依頼することを検討してみてください。

借地権の登記に関するよくある質問

借地権の登記申請はどのような方法がありますか?

借地権の登記申請には、法務局での窓口申請、郵送申請、オンライン申請の3つの方法があります。窓口であれば相談しながら確実に書類を提出できるため、基本的には窓口申請がおすすめです。

借地権の登記にはどの程度の時間がかかりますか?

借地権の登記は、不備さえなければ法務局に申請してから1週間から10日程度で完了します。法務局に申請する書類を準備するのに1週間~2週間程度かかると想定すると、あわせて3週間~4週間程度の時間がかかります。

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更新日 : 2024年11月26日
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