借地の地主が死亡した場合、借地契約や地代の支払いがどうなるかご存じですか?
地主の地位は相続されるので、地代の支払いも相続人におこないます。地主の相続人から支払先について連絡がくるので、借地権者はその内容に従えば問題ありません。
しかし、地主の相続人側でトラブルとなった場合、支払先が確定しないという事態もありえます。そのようなケースで、地代の支払先がわからず困っている借地権者も多いでしょう。
相続がどのような状況なのかで借地権者の対応も変わるため、この記事を参考にパターン別の支払い方法を把握しておきましょう。
また、借地を処分してトラブルを避けたい場合は、訳あり物件専門の買取業者に相談するのがおすすめです。借地権という特殊な不動産であっても、最短48時間という短期間でスムーズに買い取ってもらえます。
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地主が亡くなった場合、地代の支払先は相続人の状況によって異なる
地主が亡くなった場合も、地代は期日通りに支払い続ける必要があり、地主の死亡が地代の支払い遅延の理由にはなりません。
「誰に支払うのか」ですが、それは相続人の状況によって異なります。
- 相続人が1人の場合の支払い
- 相続人が共有名義の場合の支払い
- 相続人がいない・相続放棄した場合の支払い
- 戸籍上相続人はいるが行方不明・生死不明の場合の支払い
1.相続人が1人の場合の支払い
相続人が1人の場合は単純に、その相続人が支払い先となります。相続が確定した時点で、相続人から土地賃貸人変更通知書が自宅宛に送られてくるはずです。
そのため、その通知書に記載されている支払先・支払い方法にしたがって、地代を支払い続ければ大丈夫です。もし支払い方法に指定がなければ、通知書に記載されている連絡先に確認しておきましょう。
2.相続人が共有名義の場合の支払い
続いて、相続人が共有名義の場合です。このとき、誰に支払うかは相続人の方たちの決定次第となります。支払い先としては、代表者に支払うか、共有名義人それぞれに支払うかです。
しかし、相続人の中で話がまとまらず、共有名義人それぞれが「地代はまとめて自分に支払ってほしい」と請求してくることがあります。このように、地代を誰に支払うことが正解なのかわからないときには「供託」という手段を取ることが安心です。
「供託」とは、国家機関である供託所に供託物を提出してその管理を委ね、供託所を通じて債権者などの特定の相手に取得させることにより、一定の法律上の目的を達成しようとする制度です。ここでは、地代相当額を供託所に供託することで、地代の支払い責任を果たしたとみなされます。
そして、複数の相続人から地代の請求を受けるといったときには、土地の賃借人である借地権者の過失がないのに地代の支払先を知ることができないという状況です。この場合「債権者不確知」を供託原因として弁済供託できます。
供託は、法務局と地方法務局、そして、これらの支局で取り扱われています。近隣の供託所は、下記法務省の「供託所一覧表」からご確認ください。
参照:法務省 供託 供託所一覧表
3.相続人がいない・相続放棄した場合の支払い
相続には優先順位があります。被相続人である亡くなった地主からみて配偶者である妻や夫は常に相続人となり、子供や孫は第1順位の法定相続人です。そして、父母・祖父母は第2順位、兄弟姉妹は第3順位と民法で定められています。
そして、最初は配偶者と第1順位の方が相続することになりますが、この方たちが相続放棄した場合には、第2順位の方が相続します。また、第1順位の方のみが相続放棄した場合には、配偶者と第2順位の方が相続することになります。そのため、相続人が相続放棄した場合でも、次の優先順位にいる法定相続人が相続するので、地代の支払い先は「最終的に相続した方」です。また、最初から相続人がいなかったり、法定相続人全員が相続放棄したりした場合、家庭裁判所から相続財産管理人が選任されます。
その後、相続財産管理人によって一定期間、内縁関係などの特別縁故者も含めて相続財産を受け取れる方を探しますが、それでも見つからなかった場合には、土地は国のものとして、国庫に帰属することになります。つまり、相続放棄から国庫に帰属するまでには時間がかかります。しかし、その間、地代を支払わなくてもいいというわけではありません。この場合も、地代を供託する必要があります。
もし、地代の支払先がわからないからといって、そのまま地代を支払わないでいると地代の滞納となり、借地契約を解除される可能性もあるので十分に注意してください。そのため、地主が亡くなって、どう対応すればいいかわからなくなったときはすぐに、専門家である不動産会社や弁護士に相談することがおすすめです。
4.戸籍上相続人はいるが行方不明・生死不明の場合の支払い
地主の戸籍上には相続人がいるが行方不明、生死不明となって遺産分割協議・相続人の決定に時間がかかる場合があります。
このとき、通常の地代の支払い期日までに支払い先が確定しなければ、地代は供託所に供託します。
手続きは「借地権者の過失がないのに、支払い先を知ることができない」と同じです。
ここまで解説してきたように、地代の支払い先は相続人の状況によって変わります。しかし、支払い先は大きくまとめると以下の2つになります。
- 相続が確定している場合は相続人から通知された支払い先
- 相続が未確定・不明の場合は供託所
つまり、借地人の立場としては、地代の支払い先について「原則、相続人の指示に従う。わからなかったら供託所へ供託」と理解していれば十分です。
地主の死亡後にトラブルが起こらないよう確認すべきこと
地主が亡くなったあと、今後のトラブルを避けるために借地人が確認しておくべきことが3つあります。
- 建物の登記状況
- 地代の今後の支払い先
- 底地の相続人の人数
それぞれの確認点を1つずつ見ていきましょう。
建物の登記状況を確認
借地権は借地上の建物を登記することで対抗要件を備えたら、第三者にも借地権を主張できます。
これは、地主の相続人が底地を売却し、底地の所有者が第三者になったとしても、借地上の建物を借地権者名義で登記していれば借り続けることができるということです。
しかし、借地権と建物を相続で取得したものの、相続登記をしないままだった場合には、借地権者と建物の登記名義人が異なっている状態です。
対抗要件が認められるのは、借地権者と登記名義人が一致していることが原則なので、相続登記を忘れていた場合、対抗要件として認められない可能性があります。
そうなれば、新しい地主から借地の明け渡しを求められると拒否できません。
また、借地権を売却する場合でも、相続登記によって建物の名義を変えておく必要があります。
相続人が多かったり、連絡が取れない相続人がいたりするような状況では、相続登記が完了するまでに時間がかかり、予定通りに売却・処分が進まないかもしれません。
借地を借り続ける・売却する・処分する、いずれの場合でも、建物の登記名義人が借地権者と一致しているか確認するようにしてください。
地代の今後の支払い先の確認
繰り返しになりますが、貸主である地主が亡くなったあとも借地を借り続ける場合、地代の今後の支払い先の確認は必須です。
支払い先がわからないからといって、地代の支払いが滞ると債務不履行となって契約解除される可能性もあります。
地主が亡くなったことがわかれば、以下の2つを守ることが大切です。
- 速やかに今後の支払い先を確認する
- 支払い先が未確定・わからない場合は供託所に供託する
相続人は1人なのか複数人なのか確認
底地の相続人の人数も確認しておきましょう。底地が共有名義になっている場合、売却や処分するときに通常より手間がかかるからです。
たとえば、建物を増改築・建替えをするにしても、地主である共有名義人全員の承諾が必要になります。借地権を第三者に譲渡する場合も同様です。
しかし、共有名義人の中でも意見が割れていて承諾を得られなかったり、「そういうことは○○に言ってくれ」とたらい回しにされたりすることもあります。
また、承諾を得られたあとでも、承諾料の支払いで共有名義人の中でまとまらないこともあります。
相続人が1人であればスムーズに進む手続きも、複数人になることで想像以上に時間と労力がかかります。
これらのことを把握したうえで、借地を借り続ける、あるいは遺産分割協議のタイミングで売却・処分を申し出るか考えるとよいでしょう。
借地のトラブルを避けるには「借地権の売却」も有効
意外に思う人もいるかもしれませんが、借地権は第三者への売却が可能です。借地権を売却し、借地契約から外れることで、借地を巡るトラブルから抜け出すことができます。
しかし、借地という特殊な不動産を欲しがる人は少なく、売り出しても買主はほとんどつかないのが実情です。
そのため、借地権を売却したいときは、訳あり物件専門の買取業者に相談しましょう。買取業者は物件を直接買い取るため、借地のような特殊な物件でもスムーズに売却できます。
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地主が所有していた土地(底地)を買い取る時の価格相場と計算方法
底地は相続財産に含まれており、相続税の課税対象です。
しかも、底地の相続税評価額は実際に市場で取引される価格よりも高くなり、納税の資金を用意することも大変です。
そのため、地主が亡くなったことをきっかけに、相続人からよく底地の買い取りをもちかけられます。
また、遺産分割協議がまとまらなかったり、相続後の底地の管理を面倒に感じたりして、地主が亡くなったタイミングで底地を買い取りたいと提案すると、了承してもらえることも多いです。
そこで、ここでは底地を買い取るときの価格相場と計算方法を解説します。
底地の買い取りを相続人から提案されたときは底地割合が基本
まず基本的に、地主の立場から底地の買い取りを提案されることはほとんどありません。
提案されるときは、底地管理の負担や相続税の納税の資金難など特殊な事情があるときです。
特に相続人から底地の買い取りを提案されたときは「できるだけ早く現金化したい」という考えもあり、借地人が有利に交渉を進めやすくなります。
路線価による更地としての評価額に底地割合を掛けた金額でも買い取りを了承してくれることが多く、住宅地の底地割合は30~40%です。
つまり、相続人から提案されたときは、更地価格の30%~40%が相場になり、この金額は底地の相続税評価額でもあります。
相続税は、その他の相続財産も合わせた金額から各種控除を差引いた残額に相続税率がかかって決まるので、相続税の納税だけを考えれば、相続税評価額で買い取ってもらえるだけでも、十分にまかなえる可能性が高いです。
さらに、相続税は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内と期限も決められています。
また底地は、借地人以外に売却しようと思っても買主を見つけることが難しく、売却できたとしても更地価格の10%、高くても15%が相場です。
そのため地主は、底地の売却価格について強く主張できず、借地人の主張が通りやすくなっています。
底地の買い取りを借地人から提案したときは、更地価格の50%程度
相続人から提案を受けるのとは反対に、借地人から底地買取を提案したときは価格も変わります。
この場合、底地を買い取るときの相場は更地価格の50%です。
相続人から提案されたときよりも10%~20%も高くなります。その理由は、相続人の底地を手放す動機が弱いからです。
底地は、土地を自由に使えないといっても、安定した地代収入を得られます。
また、アパート・マンション経営に比べて空室リスクもなく、管理の手間も小さいです。
さらに、借地人が借地を明け渡したときには完全所有権の土地として自由に利用でき、売却すれば実勢価格でも買い手がつきます。
このようなメリットが底地にはあるので、遺産分割・相続税の問題さえ相続人の中で解決できれば、手放す理由がありません。
そのため、底地の売買交渉では地主が有利になり「その金額では売却できない」と地主が結論を出すと、交渉は終わりです。
そこで地主にメリットを感じてもらえる金額として、底地割合に基づく価格よりも高い更地価格の50%を提案するケースがほとんどになります。
借地権は定期借地権でない限り、半永久的に借地人の権利のままです。
「管理の手間もゼロではなく、利回りとしては低い地代収入。借地権もいつ返還されるかわからない。自分が生きている間は返還されない可能性も高い。そんな底地を所有し続けるくらいなら、更地価格の50%のお金がすぐに得られた方がいい」
新しい地主である相続人がそのように考えて、買取りの合意を得られる可能性が上がります。
もちろん、更地価格の50%という金額は借地人にとってもメリットがある金額なので安心してください。
底地を買い取れるなら、無理をしてでも買い取るべき
底地の買取りではすでに借地権を取得している分、更地の土地を買うよりも安いです。
それでも数百万円~数千万円は必要で、購入をためらってしまうかもしれません。
しかし、もし底地を買い取れるのであれば、多少の無理はしてでも買い取ることをおすすめします。
借地権を完全所有権にすることで、今まで地主の許可が必要だった増改築や建て替え、第三者への売却も自由にできるようになるからです。
借地権を更新するときの更新料も不要になります。
また将来、自分が亡くなって相続が発生したときでも権利関係が整理されているのでトラブルになりにくいです。
購入資金も、借地人であれば住宅ローンを組める場合があるので、金融機関に相談することをおすすめします。
まとめ
地主が亡くなった場合でも、地代は相続人から指定された支払い先・方法で支払えばOKです。
地主が亡くなって、地代の支払い先がわからなくなることはよくありますが、地代を支払わない理由にはなりません。
引き続き借地を利用するためにも、速やかに地主の相続人へ新しい支払い先を確認し、それでもわからなければ供託所に供託するようにしましょう。
もし地主が亡くなって、その後の対応がわからなくなれば、不動産会社や弁護士などの専門家に相談してください。