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アパートの減価償却が終わったらどうなる?耐用年数や確定申告についても解説

アパート減価償却終わったら

アパートの減価償却が終わると取得にかかった費用を経費計上できなくなり、税金の負担が増えてしまいます。税金が増えるとキャッシュフローが悪化し、場合によっては黒字倒産してしまうケースがあります。そのためアパートの減価償却が終わる前から早めに対策しておくことが大切です。

減価償却が終わる時期に合わせてやるべき対策はいくつかあり、大きく分けて「アパートをそのまま運用する方法」と「売却する方法」があります。そのまま運用する場合には、建て替えかリノベーションが必要です。

今回は、アパートの減価償却と法定耐用年数の関係、減価償却が終わったらどうなるか、減価償却が終わったらどうするべきかを解説します。

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減価償却と法定耐用年数の関係

アパートなどの建物、いわゆる固定資産は購入した時点で全て会計上の費用となるわけではありません。固定資産は分割して一定期間にわたり費用計上します。固定費用を分割して計上する会計処理を「減価償却」と言い、一定期間のことを「法定耐用年数」と言います。

法定耐用年数とは国が定めた固定資産を使用できる期間のことで、資産の種類や使用用途によって年数は異なります。
固定資産は使用するにしたがって物理的に消耗し、価値が減少します。そして最終的にはその資産が持つ本来の価値を喪失することになります。法定耐用年数は固定資産が本来期待する役割を果たすと考えられる期間の目安を、国が定めたものです。
実際に使用可能な年数ではなく、あくまで会計上必要となる年数です。

構造 法定耐用年数
木造 22年
鉄骨造 骨格材の厚み3mm以下 19年
鉄骨造 骨格材の厚み3mmを超え4mm以下 27年
鉄骨造 骨格材の厚み4mm以上 34年
鉄筋コンクリート造 47年

減価償却は、「固定資産は使用するにしたがって資産価値が減少する」という考えのもと定められた会計処理のことです。法定耐用年数に合わせて固定資産の費用を1年ずつ分割し、経費計上します。金額が同じ資産でも、耐用年数が短ければ毎年の減価償却費は多くなり、耐用年数が長ければ減価償却費は少なくなります。
つまり減価償却をする際に必要となるのが法定耐用年数です。

法定耐用年数が設定されている理由は、納税者の公平性を保つためです。もし固定資産の使用可能な期間を納税者の判断に委ねたら、納税者によって耐用年数がばらばらになり、課税も不公平になります。
法定耐用年数が定められることで納税者の間にも公平性が保たれ、減価償却費を正しく計算できます。

ちなみに機能面で問題なく使用できると公示された期間のことを耐久年数といいます。商品の製造メーカーなどが調査・実験をして判断した期間であり、法律で定められているものではありません。
耐久年数は使用に問題ないと製造元に定められた期間であり、耐用年数は資産として価値があると国に定められた期間です。

【構造別】アパートの耐用年数

アパートの法定耐用年数は木造や鉄骨造、鉄筋コンクリート造など構造と骨格材の厚み別に設定されています。またアパート本体だけではなく、付属設備にも耐用年数が設けられています。

新築アパートの場合、国が定めた法定耐用年数がそのまま適用され、中古アパートの場合は取得後に残っている法定耐用年数をもとに計算します。「法定耐用年数の一部を経過している」か「法定耐用年数のすべてを経過している」かで計算方法が異なります。

法定耐用年数を一部経過している」場合の計算方法は次の通りです。

取得時の耐用年数 = (法定耐用年数- 経過年数) + 経過年数 × 0.2

法定耐用年数のすべてを経過している」場合の計算式は以下です。

取得時の耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%

法定耐用年数はローンが組める期間にも関係します。金融機関の多くは、ローンが組める期間を耐用年数以内としています。

木造アパートの耐用年数

木造アパートの耐用年数は22年です。
木造アパートは建物の構造体に木材が使用されているため、加工がしやすいといったメリットがある一方で、燃えやすく鉄骨やコンクリートと比較して耐久性に劣る特徴があります。そのため鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物と比較すると耐用年数が短く設定されています。

木造モルタルアパートは純粋な木造のみで構成されておらず、純粋な木造と比較して強度が下がることから法定耐用年数は20年です。

軽量鉄骨アパートの耐用年数

軽量鉄骨アパートは骨格材の厚みで耐用年数が決まります。

 
構造 法定耐用年数
鉄骨造 骨格材の厚み3mm以下 19年
鉄骨造 骨格材の厚み3mmを超え4mm以下 27年
鉄骨造 骨格材の厚み4mm以上 34年
鉄筋コンクリート造 47年

厚みがある骨格材ほど建築のコストはかかりますが、その分頑丈なため耐用年数が長く設定されています。
厚み3mm以下の軽量鉄骨はコストを抑えて建築できますが、耐用年数は木造より短くなります

軽量鉄骨アパートの場合、骨格材の厚みを知っていないと耐用年数がわかりませんが、骨格材の厚みは資料に明記されていないケースがあります。資料に明記されていない場合は、建築会社やハウスメーカーに問い合わせるか、図面から算出する必要があります。

付属設備の法定耐用年数

アパートに付属する設備はそれぞれ法定耐用年数が定められており、アパート本体と分けて減価償却できます。
素材によって耐用年数が異なる場合もありますが、一般的な付属設備の耐用年数は次の通りです。

 
設備 法定耐用年数
エスカレーター 15年
給排水・ガス管など 15年
電気設備 15年
蓄電池設備 6年
エアコン 6年
インターホン 6年

付属設備を分けて減価償却するメリットは「償却期間を短くできる」という点です。
付属設備の耐用年数は一部の蓄電池設備や冷暖房設備などを除き、基本的に15年以内となっています。アパート本体と比べて耐用年数が短い分、1年ごとの償却費を大きく取れるため、所得税を減らしてキャッシュフローを多くできます。

減価償却が終わったらどうなる?

減価償却が終わっても建物自体に問題がなければ今まで通り経営できますが、会計上では変化が生じます

減価償却費が終わるとアパート取得にかかった費用を経費計上できなくなるため、これまで計上していた減価償却費の分は、帳簿上の利益が増えることになります。利益には税金がかけられるため、これまでより税負担が大きくなってしまいます
実際に手元に残る利益が増えるわけではなく、帳簿上での利益のみ増えてしまう点がポイントです。

また減価償却が終わったアパートは建物の価値がほぼゼロになったと金融機関から判断されます。

新築アパートの場合は金銭的負担は少ない

新築アパートを購入した場合だと、ローンの返済と減価償却の終了が同じタイミングで来ることが多いため、金銭的負担が少なくてすみます。

新築アパートの多くは、ローンの返済期間が耐用年数で設定されます。そのため耐用年数の終了と同時にローンが完済します。
減価償却が終わり、税負担は増えますが、代わりにローンは完済するためそこまで金銭的な負担は大きくなりません。

中古アパートの場合はローン返済と税金で負担が増える

中古アパートの購入でローンの返済が残っている場合、返済と合わせて税負担も上がるので金銭的な負担が大きくなります

新築アパートと異なり中古アパートを購入した場合は減価償却終了以降もローンが残っていることが多く、返済と合わせて税負担の増加に追われることになります。これまでよりキャッシュフローは悪くなるので、減価償却終了以降のアパート経営が苦しくなる可能性が高いです。
その結果デッドクロスが起こってしまいます。

中古アパートは利回りは良いですが、減価償却後はキャッシュフローが悪化しやすいというデメリットがあります。

デッドクロスとは

デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回っている状態です。
多くの場合ローンの返済方法は元利均等返済が採用されていますが、元利均等返済は「年々元金の返済が増えていく」返済方法です。返済元金は経費に計上できないため、減価償却費が元金返済額を超えると税金の支払額が急激に増えます。そこからは経費にできない支出が年々増え、税金も増加していきます。

実際の利益には変化はありませんが帳簿上は大きな利益が出ていることになり、結果的に税金の支払額が大きくなってしまいます。デッドクロスになると資金繰りが悪化し、最悪の場合黒字倒産してしまう可能性もあります

減価償却が終わるアパートはどうするべき?

減価償却が終わったアパートは、そのまま運用するか、売却する選択肢があります。

そのまま運用する場合には、キャッシュフローの悪化を防ぐために少し工夫して経営する必要があります。売却する場合は減価償却が終わると資産価値がなくなってしまうので、減価償却終了前だと売れやすいです。

運用を続けるか、売却するかは、キャッシュフローと手元に入る収益を事前に計算して判断しましょう。

減価償却終了後もそのまま運用する

減価償却が終わっても、建て替えリノベーションをすることで経費計上が可能になります。建て替えの場合は減価償却費を再度復活でき、リノベーションの場合は目的によって減価償却費を計上できるかが異なります。

アパートの立地条件が良い場合は今後も安定した賃貸経営ができる可能性が高いので、建て替えの検討がおすすめです。建て替えの大きなメリットは、新築として再び減価償却の対象とできる点です。また建て替えることでしばらくは修繕費を抑えられますし、新築になるので元の家賃より高い価格設定も可能です。

しかしアパートに入居者がいる場合は、立ち退き交渉を行い立ち退き料を負担する必要があります。また建て替え中は家賃収入が得られない点もデメリットです。
建て替えで得られるメリットとデメリットを長期的に考え、実際に計算して比較することが重要です。

リノベーションしてそのまま運用する場合は、減価償却になるケースとそうでないケースがあります。
リノベーションとは性能や付加価値を高めるために大規模な工事をして間取りや設備を変えることです。減価償却の対象かどうかは「資本的支出」か「修繕費」かで変わります。
維持管理・原状回復する修繕だと「修繕費」となり、減価償却費として計上できません。
具体例は次の通りです。

  • 工事費用が20万円未満のもの
  • 3年以内に定期的に行っているもの
  • 災害で被害を受けた箇所の原状回復のために行われたもの

参照:第8節 資本的支出と修繕費 | 国税庁

資産性を高め、価値を向上させたなら「資本的支出」となり法定耐用年数によって再度減価償却費として計上可能です。
具体例は次の通りです。

  • 用途変更のための模様替えや改装
  • 販促を目的とした改装や増築・設備の追加
  • 災害に備えた設備の強化・追加

参照:第8節 資本的支出と修繕費 | 国税庁

リノベーションする場合は、建物の劣化を修繕しつつ空室を抑えられるかが重要です。定期的な工事にかかる費用と家賃収入を比較し、継続的な運営が可能か判断しましょう。

減価償却が終わる前に売却する

減価償却が終わるアパートの対処法として、減価償却が終わる前に売却する方法があります。

減価償却が終わったアパートは資産価値がないと金融機関に判断されてしまいます。購入者の目線だと、減価償却が終わってしまったアパートは購入する際に融資を受けにくく金利も高いというデメリットがあります。そのため買い手が見つからず、売れるまでに時間がかかってしまいます

売却するのであれば減価償却の期間が終わる数カ月前から売却活動をはじめ、資産価値が残っている間に売却してしまうのも良い手です。

アパート経営を法人化する

減価償却が終わると税負担が増えてしまいますが、経営を法人化することで節税対策が可能です。

個人で経営している場合、アパートの家賃収入額に対して所得税と住民税がかかります。一方、法人の場合は法人税がかかります。所得税と住民税を合わせた税率と法人税の税率を比較し、法人税が低くなった場合には、アパート経営を法人化することで税金を抑えられます。

具体的には個人の所得が「900万円超、1,800万円以下」の場合、所得税33%で住民税10%となり合計43%の税金が発生します。対して法人の場合は資本金1億円以下だと実効税率が35%程なので、法人の方が約8%の節税効果があります。

個人所得が「695万円超、900万円以下」だと合計税率は33%となるため、法人化による節税効果は期待できません。
そのため一般的には、所得が900万円のラインを超えると法人化した方が節税効果があると言われています。

アパート経営時の減価償却費を計算する方法

アパートの減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」の2種類あります。「定額法」は償却費が毎年同額になるのに対し、「定率法」では未償却額に一定の割合を掛けて計算するため償却費が初めの年ほど多く、年々減少していきます。

1998年4月1日以降に取得した建物は定額法で減価償却することになっているので、現在の建物に関する減価償却は基本的に「定額法」で計算されます。

定額法は、アパートの取得価額を耐用年数の期間中で均等に割り、毎年同じ金額で減価償却します。
新築か中古で計算方法は異なります。

新築の場合の計算方法は以下の通りです。

減価償却額 = アパート取得価額 × 償却率

アパート取得価額とは、アパートを建築・購入し、取得するまでにかかった費用のことです。建築費や購入費だけでなく、仲介料や立退料など、取得にあたってかかる費用も含まれます。

償却率は法定耐用年数ごとに決められています。

また中古アパートの場合、「法定耐用年数を一部経過している」か「法定耐用年数のすべてを経過している」かで計算方法が異なります。

減価償却費の計算方法については、以下の記事でも紹介しているので参考にしてみてください。

減価償却が終わるまでにすべきこと

減価償却が終わる前になるべくローンを完済することが重要です。

減価償却が終了すると税額が上がることは避けられません。早めにローンを完済しておくとキャッシュフローの著しい悪化を防げます。
ローンは金利部分しか経費計上できないため、元金が後半に多くなってしまう元利均等返済だと特にキャッシュフローに響きます。

新築アパートだとほとんどの場合が減価償却終了と同時にローンを完済できますが、中古アパートだとローンが残ってしまいます。中古アパートでもなるべく早く完済することでキャッシュフローの悪化を短くできます。

まとめ

アパートの減価償却が終わると収入が増えてなくても税金が増額し、キャッシュフローが苦しくなります。対策としては、建て替えかリノベーションしてアパート経営を続けるか、減価償却終了の前に売却する方法があります。
新築で法定耐用年数が長い物件を選ぶとデッドクロスを防げるので、キャッシュフローが急激に悪化する可能性が低いです。これからアパートを購入する際にはメリット・デメリットを比較したうえでぜひ検討してください。

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更新日 : 2024年05月23日
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