
相続財産に不動産の共有持分が含まれていた場合、当然ながら遺産分割協議の対象になります。
そのため、共有持分の相続が発生したときにどのような手続きをすればよいか、どのような相続方法があるのか疑問を抱く人も少なくありません。
相続の方法は大きく3つの方法にわかれ、それぞれ「現物分割」「代償分割」「換価分割」といわれます。状況によって適切な方法は違いますが、共有持分を売却して売却益を分割する換価分割がもっともスムーズに分割・相続できるといえるでしょう。
この記事では、共有持分の相続が発生したときにするべきことと、売却して現金を分割すると決めたときの流れや注意点を解説します。
目次
共有持分の相続時にするべきこと
共有持分を相続するとき、単独所有の不動産を相続するときと同様に、名義を変更する相続登記が必要です。また、相続財産ですので、相続税を納める必要もあります。
具体的には次のような流れで手続きを進めます。
- 遺言書を探す
- 遺産分割協議
- 相続登記
- 相続税を納める
1.遺言書を探す
被相続人が遺言書を残していたかどうかで、その後の手続きが変わります。そのため、まずは遺言書を探しましょう。
自宅に置かれているケースもありますが、弁護士や司法書士のような専門家が保管している可能性もあります。そのような専門家の名刺や連絡先の有無を確認してみましょう。
それでも見つからない場合、公証人関与のもと作成する「公正証書遺言」がある可能性も考えてみてください。
公正証書遺言が作成されているかは、公証役場で確認します。遺言者の死亡や相続人であることを証明するための戸籍謄本や、身分証明書を持参することで照会可能です。
また、公正証書遺言以外の遺言書は、開封するときに家庭裁判所で検認手続きが必要です。正当な手続き以外で開封した場合、開封者が罰則を受ける可能性もあるので注意してください。
遺言書が見つかれば原則、遺言書の内容にしたがって遺産を分割するので、遺産分割協議は不要です。そのまま相続登記・相続税申告の手続きを進めてください。
2.遺産分割協議
遺言書が見つからなかったり、遺言書はあっても共有持分について記されていない場合、遺産分割協議によってどのように遺産をわけるか協議しなければいけません。
遺産分割協議で大切なことは、相続人全員が協議の内容に同意していることです。全員がそろっていない状態で遺産分割協議をおこなっても、無効となるので気をつけましょう。
また、遺産分割協議書の作成には実印と印鑑証明書が必要です。遺産分割協議書の書式に規定はありませんが、記載必須の項目などはあります。
遺産分割協議書の作成に疑問や不安がある場合、弁護士や司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。
3.相続登記
遺産分割協議が完了したら相続登記をおこないます。相続登記とは、共有持分の名義を被相続人から相続人に変更する手続きです。
登記申請書を作成し、添付書類として登記原因証明情報と住所証明書・評価証明書を準備します。
登記原因証明情報とは、遺産分割協議書や遺言書になります。戸籍謄本と印鑑証明書は、相続人全員のものが必要です。
登記申請書は、個人でも作成できますが手間のかかる作業です。さらに、誤りがあると繰り返し修正しなければなりません。
そのため、費用はかかっても弁護士や司法書士に任せたほうが、手間もなく確実に書類を作成できるでしょう。
4.相続税を納める
相続した共有持分には相続税がかかります。実際に納める税額は共有持分以外の相続財産や各種控除によって変わりますが、相続した共有持分のみを見ると相続税は下記のように算出します。
22.相続した共有持分の割合をかける
また、相続人が被相続人の配偶者であれば1億6,000万円までの相続が非課税となります。さらに不動産の相続には、小規模宅地等の特例など相続税を抑えるための制度が多くあります。
節税のためにも、相続税額を計算するときには専門家である税理士に相談することがおすすめです。

共有持分を相続するための3つの方法
ここまで共有持分を相続するときの基本的な流れについて解説してきました。次に、共有持分を相続するときの3つの分割方法を解説します。それが以下の通りです。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
現物分割は共有持分をそのまま分割する方法
現物分割は共有持分を相続人が共有して相続する分割方法です。
例えば、下記のような相続があったとします。
「相続人は子供3人のみ」
「配偶者にあたる妻・夫はいない」
このとき、相続人それぞれが「相続する共有持分の1/6」を相続することになります。つまり、現物分割では共有持分が細分化されて相続されます。
共有持分をさらに共有して相続することで権利関係がより複雑になるため、共有不動産の取り扱いを巡ってトラブルに発展する可能性が高いといえます。しかし、遺産分割協議がまとまらないため「とりあえず共有で相続する」というケースも多くあります。
将来のトラブルの可能性を考えれば避けるべき方法ですが、相続時にもっとも手間がかからず、均等に分割しやすいので公平感があるのはメリットといえます。
上記のほかに、現金や車などほかに相続財産があったとき「Aさんが車」「Bさんが現金」「Cさんが共有持分すべて」というような、種類別に財産分割したときも現物分割に該当します。
代償分割
代償分割は相続人のうち特定の1人が持分をすべて相続することです。このとき、ほかの相続人には、持分をすべて相続する人から持分に応じた現金が支払われます。
例えば、下記のような状態があったとします。
「相続財産は共有不動産の持分1/2のみ」
「共有不動産全体の評価額は3,000万円」
代償分割によってAが代表してすべての持分を相続すると決めた場合、AはB・Cに対して持分1/6に相当する現金(=500万円)を支払います。
このような手続きを踏むことにより、A・B・Cはそれぞれ法定相続分に基づいた財産を相続できます。
ただし、共有持分を相続する人は多額の現金が必要です。また、共有不動産はその土地・建物を自由に使用できるわけではなく、共有者との協議が必要になります。
換価分割
換価分割は、相続財産である共有持分を売却し、その売却益を相続人でわける分割方法です。共有持分を取得しないため共有不動産のトラブルに巻き込まれず、現金による公平な遺産分割が可能になります。
売却代金を得てから分割するので、代償分割のように相続人のだれかが現金を用意する必要もありません。
ただし、共有持分の売却は、単独名義である通常の不動産売却に比べて難しいことがデメリットといえるでしょう。
売却に時間がかかる可能性や、相続人の間で売却価格に合意が取れないなどの可能性があります。
共有持分を売却してから相続するための方法
共有持分を換価分割で売却することになったときの流れは次のとおりです。
- 遺産分割協議で換価分割に合意する
- 必要書類を集める
- 不動産業者に売却を依頼する
- 売買契約を結ぶ
- 決済・引き渡しをおこなう
1.遺産分割協議で換価分割に合意する
共有持分を売却する場合、共有不動産の変更行為となるので相続人全員の合意が必要です。相続人が1人でも反対していると換価分割を進めることはできません。
そのため、まずは遺産分割協議で共有持分を換価分割することに対して相続人全員の合意を取ることが大切です。
2.必要書類を集める
共有持分を売却すると決まったあとは、必要書類を集めます。詳細は不動産業者に確認すると確実ですが、少なくとも以下の書類が必要です
- 権利証または登記識別情報
- 固定資産税納税通知書
- 土地測量図
- 登記簿謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の住民票
これらの書類すべてが、売却活動をはじめる前に必要というわけではありません。しかし、買主が見つかったときに滞りなく手続きを進められるよう、前もって準備しておくとよいでしょう。
3.不動産業者に売却を依頼する
共有持分のみを取得しても、不動産を実際に使用するには共有者と協議しなければいけません。「自由にリフォーム・リノベーションできない」「見知らぬ人と住居を共にする可能性がある」などの制限があるため、住居用としての需要はほぼありません。
そのため、買主の候補となるのは「ほかの共有名義人」「投資家」「共有持分専門の買取業者」です。
ほかの共有名義人に売却できれば、その人にとっても持分をまとめられるのでメリットがあります。しかし、その共有名義人に買い取れるだけの資金がないといけません。
個人投資家は、普段から不動産を取り扱う人ならともかく、一般の方が個人で投資家と交渉するのは難しいでしょう。
3つの買主候補のなかでは、共有持分専門の買取業者がもっともおすすめです。査定から買取までにかかる期間は早ければ数日で、共有持分の運用ノウハウもあるため、高額買取もありえます。
共有持分の取引に慣れていない業者に依頼してしまうと「途中でトラブルになって手続きが思ったように進まない」「なかなか購入希望者が見つからない」「不必要な値下げを要求される」などのケースも考えられるので、買取を依頼するときには、共有持分の売買の実績があるかを確認するようにしましょう。
当社クランピーリアルエステートでも、共有持分の取り扱いをしています。不動産事業を通じて全国各地の弁護士・税理士・司法書士だけでなく、投資家の方々と幅広い関係を築いてきました。そのため、弁護士と連携しトラブルを回避、独自の投資家ネットワークで購入希望者を探せます。
よろしければ、ぜひ一度ご相談ください。
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4.売買契約を結ぶ
購入希望者が見つかり、価格交渉も完了したら売買契約を結びます。
共有持分の売買契約を結ぶときには、相続人全員の立ち会いが必要です。
仕事などで忙しかったり、遠方に住んでいたりで立ち会いが難しい場合は、共有者のなかから代表者をたてるか、相続人としての権限を代行する代理人を選びましょう。どちらも権限を委任する形になるので、委任状を作成する必要があります。

5.決済・引き渡しをおこなう
売買契約を結んだあとは、代金の決済・引き渡しです。決済のときには、共有持分の所有権移転登記もおこないます。
共有持分の名義人は、引き渡しの前に被相続人から相続人に変更しておく必要があります。
手続き上、共有持分の名義人を被相続人から買主に直接移転することは不可能です。買主が見つかっても、相続登記で名義を被相続人に変更しておかないと、手続きが滞ってしまいます。
遺産分割協議書の作成が完了時点で、相続登記も速やかに完了させましょう
共有持分を売却するときの注意点
最後に、共有持分を売却するときの注意点を3つ解説します。
- 売却には相続人全員の同意が必要
- 希望売却価格で意見が食い違う
- 共有持分のみの売却は売りにくい
売却には相続人全員の同意が必要
相続財産の1つである共有持分を売却には、相続人全員の同意が必要になります。
遺産分割協議で誰が、どの割合で共有持分を相続するか決まらない限り、共有持分は相続人全員のものです。
そのため、連絡が取れる・取れないにかかわらず、相続人のうち、1人でも反対していれば売却できません。
希望売却価格で意見が食い違う
共有持分の売却は、相続人全員の同意を持ってすすめられます。相続人全員が必要になるのは売却活動をはじめるときだけではなく、いくらで売却するかを決めるときも同様です。しかし、相続人によって希望価格が異なることもありえます。
「できるだけ高く売却したい」「できるだけ早く売却したい」「とりあえず共有持分のまま相続する状況を避けたい」など、共有者によって意志の統一が難しいこともあるでしょう。相続人同士で話がまとまらず、トラブルになる事例は非常に多くあります。
こういった売却価格でのトラブルを防ぐため、売却活動をはじめる前に「最低何円だったら売却に同意する」という最低売却価格を決めておくと、スムーズに手続きをすすめられます。
共有持分のみの売却は売りにくい
一般的な不動産と異なり、共有持分のみの売却活動では買主が見つかりにくくなります。共有持分のみを取得しても、その不動産を買主が自由に使用できるわけではないためです。
そのため、換価分割したいのに買主が見つからないからできない、と悩まれる方もいます。そういった方こそ、買取業者への売却を検討してみましょう。
まとめ
共有持分を相続するときは、現物分割・代償分割・換価分割の3つの分割方法によって必要な対応は異なります。
そのため、遺産分割協議では「どのような形で共有持分を相続するか」を決めることが一番重要です。
そして、もし換価分割をおこなうのであればスムーズに売却を完了させるためにも、共有持分の取引実績が豊富な不動産業者に相談することをおすすめします。