
共有不動産の売却時は、原則として共有者全員が契約や引渡しに立ち会う必要がありますが、海外に共有者がいる場合、立ち会いが難しい場合も多いでしょう。
しかし、共有者が海外にいて立ち会いができない場合でも、代理人を立てることで共有不動産を売却できます。
これは共有持分の売却でも同様で、代理人を立てれば海外にいながら日本にある不動産の共有持分を売却可能です。
海外から共有不動産や共有持分を売却する場合、必要書類や手続きの手配を任せられる「弁護士・司法書士と連携した買取業者」に相談するとよいでしょう。
目次
共有者が海外に住んでいる場合の共有名義不動産の売却方法
共有名義不動産を売却するときは原則、すべての共有者が売買契約に立ち会います。
そのため、共有者が海外に住んでいる場合は、共有者本人が立ち会えるかを確認しなければなりません。
共有者本人の立ち会いが難しいときは、代理人を立てましょう。
それぞれの場合の売却方法は下記のとおりです。
本人が売買契約に立ち会える場合
本人が契約に立ち会える場合、基本的に通常の共有名義不動産を売却する流れと変わりません。
そのため、売却の手順について気にすることはありません。
異なるのは必要書類です。
不動産を売却するときには、印鑑証明書や住民票が必要になります。
しかし、海外に住んでいる場合は日本国内の住民票はありません。
そして印鑑証明書の発行には住民票が必要となるので、印鑑証明書も発行でないでしょう。
したがって、海外居住者は別の方法で同等の書類を準備する必要があります。
それが、在留証明書とサイン証明書です。
海外の日本大使館などの在外公館で取得できます。
1.在留証明書
在留証明書は、海外に住んでいる方の住民票のようなものです。
現在、海外のどこに住所があるかを証明します。
在留証明書の発行は在外公館のみで発行されているもので、日本国内で手に入れることはできません。
万が一、在留証明書を取得せずに日本に戻ってきた場合は、担当する不動産会社に相談してください。
現地の公的機関が発行した納税証明書、公共料金の領収書、現地の運転免許証などが、在留証明書の代わりとして認められる可能性があります。
ただし、在留証明書の代用が認められるかは不動産会社次第です。
そのため、海外に住んでいる本人が共有名義不動産の売却の場に立ち会えるときは、忘れずに在留証明書を取得してから帰国するように伝えてください。
2.サイン証明書
サイン証明書は、海外に住んでいる方の印鑑証明書のようなものです。
本人の署名と拇印(ぼいん)が領事の目の前でおこなわれたことを証明します。
そして、証明の方法は2種類あります。
1つが、在外公館が発行する証明書と、本人が領事の目の前で証明した私文書を綴り合せて割り印をおこなうもので、もう1つは、本人の署名を単独で証明するものです。
共有名義不動産を売却するときには、割印をおこなう方法で証明しなくてはいけません。
具体的には、売渡承諾書や司法書士への委任状を海外に在住している共有者へ送ります。
そして、本人が在外公館へ書類を持っていき、領事の目の前で署名と拇印をしてサイン証明書と綴り合せてから割印をおこないます。
領事の面前で署名と拇印をしなければならないので、事前に記入しないよう注意しましょう。
事前に記入してしまった場合はその署名を抹消し、余白にあらためて署名と拇印をすることになります。
代理人をたてる場合
共有者が売買契約を交わす場に立ち会えない場合は、代理人を立てる必要があるでしょう。
このとき、共有者本人の在留証明書、サイン証明書以外に代理権限委任状も用意します。
この委任状は、不動産売買契約を交わすときに「代理人が本人に代わる権利を持っている」と証明する書類です。
本人が望まない価格や条件で売却されるのを防ぐために、代理人の権限を明確に記載しましょう。
委任状に特定の書式はなく、インターネットで検索すればテンプレートを見つけることもできます。
委任状を作成に不安があるなら、信頼できる不動産会社や弁護士・司法書士などの専門家に依頼するのがおすすめです。
ご自身と共有不動産の状況に合わせて、記載漏れがないように作成しましょう。
委任する代理人に制限はなく、家族や親戚以外でも大丈夫です。
しかし、不動産売却は共有名義であっても大金が動きます。
安心して任せるためにも、信頼できる家族や親族、もしくは弁護士・司法書士などに委任するといいでしょう。
海外在住の共有者も持分のみを売却できる
ここまで共有者全員が同意して売却する全部売却を前提にお伝えしましたが「在留証明書」「サイン証明書」「代理権限委任状」を用意できれば、海外在住の共有者が、自分の持分のみを売却する一部売却も可能になります。
ただし、持分のみの売却となると用途が限られるため、個人相手では一般的に買い手がつきません。
そのため、売却先は投資家か買取業者に絞られます。
しかし、売主が国外在住で日本に住んでいないときは買主側に源泉徴収などの手間が増えるため、購入を避けられがちです。
海外に住んだまま持分のみを売却したいときは、事前に不動産会社へ対応可能かどうか確認するようにしてください。
本サイト「イエコン」を運営する株式会社クランピーリアルエステートでも共有持分の買取をおこなっております。
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海外在住の共有者が不動産売却したときの税金と確定申告
海外在住であっても、日本の国内で発生した「国内源泉所得」については日本の所得税が課税されます。
つまり、海外在住の共有者が不動産売却で得られた譲渡所得は、日本の所得税の対象となり確定申告が必要です。
この場合の譲渡所得と所得税の計算方法は、日本に住んでいる方と同じ計算方法になります。
ちなみに住民税は、国内非居住者は日本に住所がないため課税対象外になるでしょう。
具体的な納税手順は次の通りです。
1.譲渡所得額を計算する
まずは、共有名義不動産を売却したときにかかる譲渡所得額を計算します。
譲渡所得税は利益に対してかかるので、売却金額から不動産取得費と売却費用、特別控除を差し引いてプラスになった金額が課税対象額です。
相続によって不動産を取得した場合の不動産取得費は、亡くなった方が不動産を購入したときの購入代金や購入手数料をもとに算出してください。
しかし、実際は取得費がわからないことも多く、その場合は売却金額の5%相当額を取得費として計算します。
譲渡所得税は、その対象不動産の所有期間に応じて税率が異なるでしょう。
売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超えている場合、税率は長期譲渡所得が適用されて15%です。
5年未満の場合は短期譲渡所得となり、税率は30%となります。
この所有期間について、相続によって取得したときには亡くなった方が取得した時期をそのまま引き継ぎます。
つまり、すでに20年所有された不動産が相続で共有名義不動産となり、翌月に売却したとしても所有期間は20年として所得税額は計算されるというわけです。
相続してすぐに売却すると、短期譲渡所得になるのではと思われる方も多いのですが、そのようなことはないので安心してください。

2.納税管理人を選出する
国内に住所を持たない海外在住者が確定申告をするには、納税管理人を選任する必要があります。
納税管理人は、海外在住者に代わって日本の税務署へ確定申告書の提出をしたり、税金を納めたり、税務署からの連絡を受けたりする人のことです。
納税管理人は個人・法人どちらでも選任可能になります。
そのため、親族などと関係が悪く納税管理人を頼めない場合には、会計事務所や税理士事務所を指定できるでしょう。
納税管理人を決めたら、その方の納税地を所轄する税務署長に「所得税の納税管理人の届出書」を提出します。
届出書提出後は、納税管理人へ税に関する連絡、書類は届くので、必要に応じて連絡を受けるようにしてください。
3.確定申告をする
確定申告は、売却した翌年2月16日から3月15日までです。
この期限内に共有名義不動産の売却で得た所得を計算して確定申告をおこない、所得税を納めます。
源泉徴収される場合もある
海外在住者が不動産を売却するとき、その買主は購入代金から源泉徴収して納税しなければならない場合があります。
これは海外在住者が日本国内での所得を、そのまま海外に持ち出して確定申告しないことを防ぐための対策です。
源泉徴収の必要がないのは、下記の3つの条件を満たしているときだけになります。
- 買主が個人
- 買主の本人または買主親族の居住用
- 共有者の持分に応じた売却価格が1億円以下
このうち、共有名義不動産が大豪邸でもなければ、持分に応じた売却価格が1億円を超えることはまずないと思います。
ですが、不動産会社へ買取を依頼することになったり、買主が不動産投資を目的として購入したりする場合には、支払価格の10.21%相当額が源泉徴収されます。
源泉徴収をして納税する義務は買主側にあるので、手続きについて心配する必要はありません。
ただし、海外在住者が受け取れる金額は譲渡価額に持分を掛けた金額よりも少なくなることに注意してください。
また、源泉徴収された金額が計算した所得税よりも多かった場合には、確定申告することで還付を受けられます。
そのため、源泉徴収されている場合には共有名義不動産の売却で所得税がかからなかったとしても、納税管理人を選んで確定申告するようにしてください。
海外在住の共有者が不動産を賃貸する場合はどうすればいいのか?
共有名義不動産が土地の場合は5年、建物の場合は3年以内であれば賃貸借契約は管理行為とみなされて、持分割合で過半数の同意を得られれば全員の同意は必要ありません。
ですが、この期間を超えて貸し出す場合には共有者全員の合意が必要となります。
このことは、共有者が海外在住・国内在住のどちらでも変わりません。
共有名義不動産を貸し出す方法は次のようになります。
- 賃貸借契約の期間に応じて共有者の過半数または全員の同意を得る
- 周辺相場から賃料を決める
- 税金や管理費などの支出も考慮して、収支を考える
- 不動産会社に賃料の査定を依頼する
- 不動産管理会社に入居者の募集や管理を依頼する
- 賃貸条件を決めて入居者を募集する
- 入居申込者の審査をして賃貸借契約を結ぶ
- 賃料から諸経費を引き、共有者で分配する
賃料が源泉徴収された金額で振り込まれる場合がある
海外在住の方が不動産を貸し出すとき、借主が一定の要件に当てはまるときは、確定申告漏れを防ぐために源泉徴収して税務署に支払う義務があります。
一定の要件とは「借主が法人」「借主本人または借主の親族の居住用以外」のどちらかです。
借主が個人であっても、その借主が自分ではない第三者を住まわせたり、誰かに賃貸物件として貸し出したりする場合には、賃料の支払い時に源泉徴収されます。
源泉徴収額は賃料の20.42%です。
持分割合に応じた金額が源泉徴収の対象となるので、海外在住の共有者の持分が1/3で賃料が9万円だった場合は、3万円が源泉徴収の対象となります。
そのため、受け取れる金額は3万円から源泉徴収を引いた79.58%、23,874円です。
もちろん確定申告して、源泉徴収された金額より所得税額の方が少なければ、その分は還付されるので安心してください。
海外在住者が確定申告するときには納税管理人を選出して、その人がおこなうことになるので忘れずに決めておきましょう。
まとめ
以上、共有者が海外に住んでいる場合の共有名義不動産の売却方法と税金について解説してきました。
まとめると、以下のようになります。
- 非居住者は在留証明書とサイン証明書が必要
- 本人が契約に立ち会えない場合は代理人を立てる
- 確定申告は納税管理人を選出しておこなう
- 売却条件によっては売却価格から源泉徴収される可能性がある
- 賃貸として貸し出す場合も源泉徴収される可能性がある
共有者が海外に住んでいる場合、必要書類が日本にいる方と異なります。しかし、正しく準備することで問題なく共有名義不動産を売却できるので、不安に思うことはありません。
納税の手続きは複雑なので、売却する前に不動産会社や司法書士、税理士などの専門家へ相談するのもおすすめです。
共有持分のよくある質問
共有持分とは共有不動産における「共有者ごとの所有権割合」を表したものです。持分の権利割合は1/3などの数字で表記します。ちなみに共有不動産は「他人と共有している不動産そのもの」を指します。
自分の持分だけを売却することは可能です。設定した自分の持分割合分は共有者の許可無く売却できます。ただし、共有している不動産自体をまるごと売却するときは共有者の許可が必要です。
はい、売却できます。海外にいる場合、代理人を立てれば立ち会いも不要で売買契約を結べます。
印鑑証明書や住民票の代わりになるものを用意しなければいけません。具体的には在留証明書とサイン証明書の2つで、これらは在住している国の日本国領事館および日本国大使館で入手できます。代理人に依頼する場合は、あわせて代理権限委任状も用意しなければいけません。弁護士や司法書士に作成依頼すれば間違いがないでしょう。
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