土地と建物の名義が違う家を売却する3つの方法
土地と建物の名義が違う場合、売却方法には次の3つがあります。
スムーズに売却するには、各方法のメリットとデメリットを理解した上で、自分に合った売却方法を選ぶことが大切です。それでは、それぞれの具体的な内容とメリット・デメリットをみていきましょう。
あわせて、どのような人に向いているのかも解説するため、該当する物件の売却を検討している場合はぜひ参考にしてください。
(1)土地と建物をそれぞれ単独で売却する
| メリット |
名義人同士の了承が不要 |
| デメリット |
買い手がつきにくい・市場相場価格より下がる |
| 向いている人 |
名義人同士の話し合いが難しい人 |
土地と建物が別々の名義になっている場合、各名義人は相手の同意を得なくても、自身が所有している不動産のみを単独で売却できます。たとえば、土地の名義人が建物の名義人に相談せずに土地だけを売却することも、法律上は可能です。
名義人同士が疎遠であったり、関係性が悪く相談が難しい場合でも手続きが進められる点は、この売却方法のメリットといえます。ただし、土地と建物を別々に売却するケースは実務上ほとんどなく、買い手がつきにくいのが実情です。
特に土地の場合は、上に建物が残っている限り買主が自由に活用できず、解体や建て替えの判断も土地所有者だけでは行えません。そのため、単独で買い手が現れるケースはほぼないといえます。
一方、建物を単独で売却する場合、土地の利用が可能になる「賃借権」や、土地の利用・建築・売却などを幅広く認める「地上権」が設定されていれば、買主が土地を利用できるため売却しやすくなるケースもあります。
ただし、土地付きの建物に比べると活用の自由度が低く、相場より売却価格が下がる傾向がある点は理解しておく必要があるでしょう。
こうした理由から、土地と建物の名義が異なったまま単独で売却を検討する場合は、権利関係が複雑な不動産の取り扱いに慣れた不動産買取業者へ相談する方法が現実的です。
専門業者であれば、買い手が付きにくい物件でも正しく評価し、早期の売却につながることがあります。また、名義人同士が直接やり取りをする必要がないため、関係が良くないケースでも円滑に進められます。
(2)土地か建物を一方の名義人が買い取り、名義を揃えてから売却する
| メリット |
買い手が見つかりやすい・市場相場で売れやすい |
| デメリット |
名義人同士の交渉や、買取資金が必要 |
| 向いている人 |
資金が潤沢で名義人同士の関係が良好な人 |
土地と建物の名義が異なる不動産を売却する際には、片方の名義人がもう一方の不動産を買い取り、所有権を一本化してから売却する方法があります。名義を揃えることで、土地と建物を一体の不動産として扱えるため、権利関係が整理され、売却手続きも通常の不動産と同じ流れで進めることが可能です
名義統一ができれば買主側の不安要素も大きく減り、市場相場に近い価格で売却できる可能性が高まることから、理論上は最も望ましい方法といえます。
しかし、訳あり物件の相談を受けていると、名義統一には次のような実務上のハードルが見られます。
- 片方の名義人が土地または建物を買い取るだけの資金を用意できない
- そもそも名義人同士の関係が悪く、買取価格の交渉が進まない
- 価格設定を誤ると贈与とみなされ、予想外の税負担が生じる
実際、資金不足や関係性の悪化により名義統一が進まないケースは非常に多く、理想通りに進まないことが多いのが実情です。
そのため、名義統一が可能な状況であれば有効な選択肢ですが、現場では「合意形成が難しい」「手続きが長期化する」「専門家の調整が必要になる」など、心理的・金銭的な負担も無視できません。
もし名義統一が難しい場合には、無理に相手と交渉を続けるよりも、土地と建物が別名義のままでも買い取りが可能な専門の不動産買取業者に相談するという選択肢もあります。
専門業者であれば、名義が分かれた不動産特有のリスクを理解したうえで評価し、売主の負担を最小限にして手続きを進められます。
名義統一に必要な具体的な手順については、後述の「土地と建物の名義を統一する手続きの流れ」で詳しく解説します。
(3)土地と建物の名義が異なったまま「同時売却」する
| メリット |
市場相場に近い価格での売却の可能性 |
| デメリット |
買い手がつきにくい・名義人同士が不仲や疎遠の場合は実現が困難 |
| 向いている人 |
名義人同士の関係が良好な人・名義変更なしでできる限り高値で不動産を売りたい人 |
土地と建物の名義統一が難しい場合でも、両名義人が売却に合意している場合は、土地と建物を同じ購入者にまとめて売却する「同時売却」という方法が取れます。
たとえば、妻名義の土地の上に夫名義の建物が建っているケースでも、双方が協力すれば、土地と建物をセットとして購入希望者に売却できます。
同時売却の場合、購入者は土地と建物それぞれで契約書を作成する必要があり、契約が2本に分かれる点が特徴です。
ただし、購入者から見ると「土地+建物を一体で手に入れられる」という点では通常の不動産購入と変わらないため、購入後の利用にも制限はありません。そのため、市場相場に近い価格で売却できる可能性も十分あります。
一方で、実務の現場では次のようなハードルが生じやすいのが実情です。
- 契約が2本になるため書類作成や条件調整が複雑になり、購入希望者が敬遠しやすい
- 名義人同士で希望価格や条件が食い違い、売却の話が前に進まなくなる
- 片方の契約だけ先に進んでしまうなど、契約内容に整合性が取れずトラブル化する可能性がある
実際、名義人の関係が疎遠・不仲であったり、そもそも調整が得意ではなかったりするケースでは、協議が進まず売却が長期化してしまうことも珍しくありません。
特に、相続によって共有名義になったなど、複数人が権利を持っているケースでは、売却方針の一致に時間がかかるのが基本です。
そのため、同時売却を検討する場合は、土地と建物の名義が異なるケースに慣れている不動産会社へ相談することが重要です。
契約条件の調整や書類の整合性確認など、専門的な管理が必要となりますが、対応実績の豊富な業者であれば手続きを円滑に進められるでしょう。
土地と建物の名義を統一する手続きの流れ
土地と建物の名義が違う場合は、面倒でも名義を一本化するのが売却への近道となります。なお、名義の統一化は次のような流れで行います。
- 土地と建物の名義を統一することに対し合意を得る
- 買取金額を決める
- 司法書士に名義変更の手続きを依頼する
- 決済・所有権移転登記の申請をする
各ステップの内容と注意点を具体的にみていきましょう。
(1)土地と建物の名義を統一することに対し合意を得る
名義を統一してから売却する場合、まずは土地と建物の名義人同士で「どちらの名義に寄せるか」について話し合い、合意を得る必要があります。親子間であれば子どもの名義に揃えるケースが多いですが、法的にはどちらの名義に統一しても問題はありません。
実務上は、売却手続きを主導する人物の名義に揃えておくと、その後のやり取りがスムーズになりやすいため、売却の状況に合わせて柔軟に判断することを推奨しています。
しかし名義をどちらに寄せるかの合意形成は、手続きの中でも特につまずきやすく、現場では以下のような状況は珍しくありません。
- 双方が自分の名義にしたいと考え、話し合いが平行線になる
- 名義人同士が疎遠・不仲で、そもそも連絡が取りづらい
- 相続などで複数の名義人が存在し、全員の意見がまとまらない
経験上、こうした場合に無理に名義人同士だけで話をまとめようとしても、売却が長期化してしまうケースは多くありました。
そのため、関係性に不安がある場合や早期の売却を希望する場合には、第三者として専門業者や弁護士に間に入ってもらうのがおすすめです。
専門家は法律・税金・不動産の知識に基づき、公正な基準をもとに判断材料を示せるため、双方の納得を得やすくなります。また、第三者が入ることで感情的な対立を避けながら話し合いを調整できる点も大きな利点です。
実際に、当事者同士だけで話していると意見がすれ違ったり、そもそも話し合いの場が持てなかったりするケースも珍しくありません。専門家が間に入ったことで、止まっていた議論がその日のうちに合意に至るケースもあるほどです。
早期に売却を進めたい場合ほど、第三者のサポートを受けながら合意形成を図ることが有効です。
(2)買取金額を決める
お金のやり取りをせずに不動産の名義変更をおこなうと「贈与」の扱いとなり、贈与税が課税されるおそれがあります。
そのため、親子間・夫婦間でも不動産売買と同じように買取価格を決めて、取引するようにしましょう。
ただし、お金のやり取りがあればそれでいいというわけではありません。
極端に安い価格で売買すると、差額を贈与とみなされる「みなし贈与」に該当するおそれがあります。
たとえば時価3,000万円の父親の土地を子どもに名義変更しようと考えたとします。
このとき、時価半額の1,500万円で売買契約を親子間で結んだとしましょう。
ただし、1,500万円は時価の半額ですから「著しく低い」といえます。
その結果、時価との差額の1,500万円に相当する財産が父親から子どもに贈与されたとみなされ、贈与税が課税されることになります。
一般的に、「著しく低い」と判断されやすいラインは明確ではありません。しかし、あくまでも目安ですが、時価の80%を下回るとみなし贈与が課税されるリスクが高くなります。
実際に当事者同士で安易に金額を決めた結果、後から税務署から指摘を受けたケースもあります。
贈与税は税率も高く、意図せず課税されると負担が大きいです。こうしたリスクを避けるためにも、買取金額の設定は不動産業者の査定や税理士の意見を踏まえて決定しましょう。
専門家に確認しながら進めることで、後から贈与と判断されるリスクを抑えながら、双方が納得できる価格を設定しやすくなります。
(3)司法書士に名義変更の手続きを依頼する
名義と買取金額について合意が得られたら、名義を移すための本格的な手続きに進みます。名義変更は自力でも行えますが、書類作成や添付書類の準備、登記内容の確認など専門的な作業が多く法的な知識も求められるため、実務では司法書士へ依頼するのが基本です。
司法書士に依頼すれば、必要書類の案内から申請書類の作成、法務局への申請までを一貫してサポートしてもらえます。手続きのミスを防ぎながら、確実かつ早期に名義変更が完了するのがメリットです。
実際、名義人が自力で手続きを進めた結果、書類の不足や記載誤りで手続きが停滞し、売却のスケジュールに影響が出てしまうケースは少なくありません。
なお、司法書士へ依頼する際の費用の合計は以下の通りです。
「名義変更に必要な実費(手数料)+司法書士の報酬」
名義変更にかかる主な実費(自治体により異なる目安)は以下のとおりです。
| 必要書類 |
相場(自治体ごとに異なる) |
| 固定資産評価証明書 |
200~400円/1通 |
| 戸籍謄本 |
450円/1通 |
| 住民票 |
300~400円/1通 |
| 印鑑証明書 |
200~400円/1通 |
| 登記簿謄本 |
600円/1通 |
司法書士の報酬相場は 7~15万円程度が基本なため、名義変更にかかる総費用は概ね10万~15万円ほどが目安となります。
費用は必要書類の数や手続きの内容によって前後しますが、売却をスムーズに進めるうえでは、専門家へ依頼する価値は十分にあります。
(4)決済・所有権移転登記の申請をする
名義と買取金額が確定したら、決済と引き渡しを行ったうえで、法務局へ所有権移転登記の申請を進めます。決済は買取側の名義人が売却側の名義人へ代金を支払うことで、引き渡しは不動産の権利を実質的に移す行為を指します。
こうした不動産の取引は、形式上は当事者同士の口頭でも成立しますが、後々のトラブルを避けるため、仲介業者や司法書士の立会いのもとで書面契約を結ぶのが基本です。
また、決済・引き渡しと所有権移転登記の申請は同日に行うのが原則です。司法書士へ依頼している場合、登記申請自体は司法書士が代理で行うため、名義人自身が法務局へ行く必要はありません。
しかし、当日に書類の不足があると申請ができず、売却スケジュールが遅れる原因となるため、必要書類は事前にすべて揃えておくことが重要です。
名義変更は、所有権移転登記の申請からおおむね1週間程度で完了します。これで土地と建物の所有者が一本化され、権利関係が整理された状態となるため、あとは通常の不動産と同じ手順で売却活動を進められます。
土地と建物の名義が違う家の売却が困難な場合の対処法
ここまで紹介した売却方法は、名義が違う不動産を売却するときに一般的に選ばれる手段です。しかし、実際の不動産売買では、名義人の所在不明・認知症・借地権の問題など、想定以上に権利関係が複雑なケースが多く、通常の手順では進まないことも珍しくありません。
そのため、状況に応じた適切な対処を行うことが重要です。代表的な困難なケースと対処法は次のとおりです。
| 困難な状況 |
対処法 |
| 住宅ローン返済中で土地に抵当権が設定されている |
銀行の承諾を得る |
| 名義人と連絡が取れない(所在不明) |
不在者財産管理人を選任 |
| 名義人である親が認知症で名義変更ができない |
成年後見制度を利用 |
| 土地の名義人が亡くなっている |
遺産分割協議で名義人を統一 |
| 地主が土地の名義人で、自分は借地権しかもっていない |
地主の承諾を得る |
実務では、これらの問題がある場合、売却の準備段階で止まってしまったり、話し合いにすら入れなかったりするケースも少なくありません。
そのため、問題を把握した段階で早めに対処法を検討し、必要に応じて専門家へ相談することが大切です。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
住宅ローン返済中の場合は銀行の承諾を得てから名義変更する
| メリット |
金融機関から合意があればスムーズに売却できる |
| デメリット |
・金融機関との合意形成の手間がかかる
・金融機関に拒否される恐れがある
|
| 向いている人 |
住宅ローン返済中の人 |
住宅ローンを返済中の不動産を名義変更する場合は、必ず金融機関の承諾を得る必要があります。ローン残債がある不動産には抵当権が設定されており、金融機関はその不動産を「担保」として権利を持っているため、承諾なしで名義を変更することはできません。
抵当権とは、ローンの返済ができなくなった場合に備えて、金融機関が不動産を引き上げる権利のことです。金融機関へ無断で所有権移転を行うと契約違反とされ、一括返済を求められる可能性があります。
一括返済を求められた場合、資金を用意できなければ差押えや競売に発展するリスクもあります。
こうした問題は離婚に伴う財産分与の場面で特に発生しやすく、以下のようなケースが現場でも見受けられます。
- 名義だけ先に変えようとして金融機関に断られる
- 話し合いは進んでいるのに銀行の承諾が得られず売却できない
そのため、住宅ローン返済中の名義変更・売却は、必ず金融機関に事前相談して承諾を得てから進めましょう。
手続きには手間がかかりますが、承諾さえ得られれば、その後の売却活動はスムーズに進められるケースがほとんどです。
土地にも抵当権が設定されているケースに注意
抵当権への注意が必要なのは建物だけではありません。土地にも抵当権が設定されているケースがあります。とくに多いのが、親名義の土地に子どもが家を建てる際、親が「物上保証人」として土地を担保に差し出しているケースです。
物上保証人とは、他人の借入(この場合は子どもの住宅ローン)の担保として、自分の不動産を提供する人のことです。このように土地に抵当権が設定されている場合も、金融機関の承諾なしに名義変更を行うことはできません。
そのため、住宅ローン残債がある状況では、 建物・土地のどちらの名義を変更する場合でも、まずは金融機関に相談することが重要です。
名義人と連絡が取れない場合は不在者財産管理人を選任する
| メリット |
裁判所の許可があればスムーズに売却できる |
| デメリット |
申し立ての手間と費用がかかる |
| 向いている人 |
相手の名義人が行方不明の人 |
原則として、不動産の名義変更には名義人全員の同意が必要であるため、一人でも所在不明であれば手続きが止まってしまいます。
実務では、相続後に兄弟の一人と音信不通になっているケースや、過去のトラブルから疎遠になり連絡手段がないケースなど、現実的に話し合いができない状況は少なくありません。
このような場合に有効なのが、家庭裁判所へ申し立てを行い「不在者財産管理人」を選任してもらう方法です。
不在者財産管理人とは、連絡の取れない不在者に代わって財産を管理する者のことです。
民法第25条
従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人を置かなかったときは、家庭裁判所は利害関係人の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索
不在者財産管理人が選出された後は、以下の流れで名義を統一することになります。
- 管理人が売却のための「権限外行為許可」を裁判所から取得
- 管理人が不在者の利益を考慮したうえで売却に同意
- 名義を統一し、売却活動を開始する
ただし、不在者財産管理人の役割は不在者の財産を守ることであるため、必ずしも売却に同意が得られるとは限りません。ただし、もう一人の名義人が見つからないため手続きを進められないという場合は、試してみる価値はあるでしょう。
このように、不在者財産管理人を利用すれば、相手の名義人が行方不明でも土地と建物の名義を一本化して売却できる可能性があります。その結果、市場相場に近い価格で売却も可能です。
ただし、不在者財産管理人の制度を利用する場合は、次のような費用がかかる点に留意してください。
| 申立て手続きの手数料・費用 |
収入印紙:800円分
提出書類の取得費用:数百円 |
| 不在者財産管理人の報酬 |
1~5万円/月 |
| 予納金 |
30~100万円 |
また不在者財産管理人の選任手続きには法的な知識が必要になるため、まずは弁護士に相談してみましょう。
認知症の親が名義人の場合は「成年後見制度」を利用する
| メリット |
裁判所の許可があればスムーズに売却できる |
| デメリット |
申し立ての手間と費用がかかる |
| 向いている人 |
名義人が認知症の親である人 |
不動産を売却するためには、売却する本人が契約内容を理解し、自らの意思で判断できる状態である必要があります。そのため、名義人が認知症で判断能力が低下している場合、子どもであっても勝手に名義変更や売却を進めることはできません。
売買契約を結んだとしても、「本人が判断できる状況ではなかった」と判断されれば、あとから契約が無効になる可能性があります。実務でも 認知症が理由で売却がストップするケースは非常に多く、家族だけでは解決できないことがほとんど です。
こうした場合に利用されるのが、成年後見制度です。
成年後見制度とは、意思決定能力がない人を保護し、支援するための制度のことです。
成年後見人には、本人の利益を最優先に以下のような財産管理をする権限が与えられます。
成年後見人は、本人のために必要な保護・支援などの事情に応じて家庭裁判所が選任します。そのため、必ずしも親族が選ばれるわけではなく、法律・福祉の専門家といった第三者や、福祉関係の公益法人が選ばれるケースもあります。
なお、成年後見人が行えるのは「本人に利益がある」場合のみです。
「親ではなく自分の家の買い替え費用に使う」「自分の借金返済のために使う」などの理由では、家庭裁判所から許可を得られません。
また、成年後見の申立てから開始までの期間は約3カ月~4カ月です。時間がかかるので、スケジュールには余裕を持って進めるようにしてください。また、成年後見人制度の利用には、次のような費用がかかる点も留意しておきましょう。
| 申立て手続きの手数料・費用 |
・申立手数料:3,400円
・医師の診断書費用(認知症など):数千円
・提出書類の取得費用:数百円
|
| 成年後見人の報酬 |
2~6万円/月 |
| 申立ての代行を依頼したときの費用 |
10~20万円 |
名義人が亡くなっている場合は遺産分割協議で名義人を統一する
| メリット |
相続で不動産が共有状態になってしまうのを防げる |
| デメリット |
相続人同士で揉める可能性がある |
| 向いている人 |
共有名義で不動産を相続することになりそうな人 |
名義人がすでに亡くなっている場合は、まず相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が不動産を承継するのかを決める必要があります。たとえば、親名義の土地の上に自分名義の家を建てていたケースでは、親が亡くなると土地は相続人全員の共有名義となります。
共有不動産の場合、売却や名義変更のように変更を加える意思決定の際は、他の共有者からの意思決定が必要になるため、スムーズに進みにくくなるでしょう。また、自由に活用・利用ができなくなるため、一般の買主も見つからないのが基本です。
こうした問題を避けるためには、遺産分割協議の際に相続人同士で、土地と建物の名義を一本化する方針を話し合うことが重要です。しかし、遺産分割協議は相続人全員の同意が必要であり、一人でも反対すれば協議は成立しません。
そのため「自宅が建っているので土地がほしい相続人」と「遺産が少ないため土地の取得を主張する相続人」が対立するケースは珍しくありません。
実際に私が対応した事例でも、以下のようなケースがありました。
父名義の土地を長男・次男の2名が相続することになりました。その土地には長男の自宅が建っているため、長男は土地の取得を強く希望。しかし次男は他に相続財産がなかったため、土地の取り分を求めていました。
そこで私が不動産業者として間に入り、最終的には土地は長男が単独相続し、その代わり長男が次男へ法定相続分に相当する金額を支払うことで合意に至りました。
このように、財産の公平性を担保しつつ名義を一本化することが、売却への大きな一歩となります。遺産分割協議がまとまり名義が統一できれば、不動産は通常の不動産と同じように扱えるため、市場相場に近い価格での売却が可能です。
ただし、協議には時間がかかることも多く、相続人同士の感情的な対立が生じる場合もあります。必要に応じて不動産業者や弁護士などの専門家に相談しながら、適切な合意形成を図ることが重要です。
土地が借地権の場合は地主の承諾を得る
| メリット |
地主の承諾があればスムーズに売却できる・土地と建物の名義を一本化できる |
| デメリット |
合意形成の手間がかかる |
| 向いている人 |
他人の土地を借りて家を建てている人 |
土地と建物の名義が違う理由が借地権である場合には注意が必要です。。借地権とは、建物を建てる目的で地主から土地を借りる権利のことで、第三者の土地を借りて自分名義の建物を建てているケースが典型です。
土地の所有者はあくまで地主であるため、借地権が付いた建物を売却する場合には、地主の承諾が必要です。これは民法612条で定められています。
民法第612条
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索
そのため無断で売却すると、契約違反として借地権を解除される可能性があります。
買主は地主からの明渡請求を拒めないため、最悪の場合はせっかく購入した建物を取り壊さざるを得ないケースもあります。実際に、地主への承諾を得ないまま売却を進めて契約が白紙に戻るなどのトラブルが起きることもあります。
また、借地権を譲渡する際には「譲渡承諾料」が必要になることも多く、費用負担が生じる点にも注意が必要です。相場は地域や地主によって大きく異なりますが、借地権価格の5〜10%程度を請求されるケースもみられます。
一方で、売却前提で名義を変更したい場合には、地主が建物を買い取ってくれるケースもあります。地主が建物を取得すれば、土地と建物の名義を一本化できます。地主側にもメリットがある方法なため、話し合いがまとまればスムーズな売却につながりやすいです。
もちろん、必ずしも地主が買い取りに応じるとは限りませんが、選択肢のひとつとして検討しておくと良いでしょう。いずれにしても、借地権が絡む不動産の売却は、「地主の承諾を得ること」が絶対条件となるため、まずは地主へ事情を説明し、承諾や協力を得られるかを確認することが不可欠です。
なお、借地権付き不動産の売却は法律・実務ともに複雑なため、借地取扱いに慣れた不動産会社へ相談し、地主との交渉や承諾料の妥当性を含めてサポートを受けることをおすすめします。
まとめ
土地と建物の名義が違う不動産でも、それぞれを単独で売却することは可能です。
ただし、これまでも説明したように土地と建物を単独で取得しても、自由に活用ができません。また、一方の名義人とトラブルになるリスクもあることから、一般の購入者は見つかりにくいです。
そのため、土地と建物の名義が違う不動産を売却する際は、名義を統一したり協力して同時売却したりしましょう。
もしも一方の名義人と話し合いができない場合は、専門の不動産買取業者に依頼する方法がおすすめです。
専門の買取業者なら訳あり不動産の取り扱いに長けているため、土地と建物の名義が違う場合でも問題なく買い取ってもらえます。
ぜひ本記事で紹介した内容を参考に、土地と建物の名義が違う不動産を上手に売却してみてください。
土地と建物の名義が違う家を売る際のよくある質問
土地と建物の名義が違う理由は何ですか?
土地と建物の名義が違う理由として、土地を借りて借地権付き建物として家を建てているケースが考えられます。
下記のようなケースで、土地と建物の名義が違うこともあります。
- 親名義の土地に子どもが建物を建てた
- 夫婦でマイホームを購入し、費用を多く出した夫を土地の名義人、建物を共有名義にした
- 相続によって、土地と建物の名義を分けた
- 相続した土地に建物を建てたが、所有権移転登記手続きをしていなかった
土地と建物の名義が違う家を売却する際にどのようなトラブルが起こりますか?
土地と建物の名義が違う家を売却する際には、一方の名義人から名義変更や同時売却の合意を得られないというトラブルが起こりやすいです。
また相続によって権利関係が複雑になっている場合、名義人が誰なのかわからなかったり、行方不明になっていたりするトラブルもあります。