競売とは裁判所を通して強制的に不動産を売却する制度のこと
不動産を所有する人が、住宅ローンや借金の支払いが困難な状況に陥ったとき、債権者が債権回収の申立てを裁判所におこなうケースがあります。
このときに、債権者は債務者の不動産を「競売」の手続きにかけます。
競売とは、住宅ローンの滞納などにより抵当権が実行された場合や、裁判所の判決などをもとに、強制的に不動産を売却する制度のことです。
競売によって売却された不動産の売却価格は、借金や住宅ローンなどの返済に充てられます。
競売物件に価格相場は存在しない
競売物件には明確な落札相場はありません。物件によって最終的な落札金額が大きく異なるので、相場を求めることは難しいといえます。
目安として、裁判所が定める「売却基準価額」は市場価格の7割程度で設定されることが多く、さらに入札可能な最低金額である「買受可能価額」はその8割(市場価格の5〜6割程度)に設定されます。
しかし、実際の落札価格は大きく変動します。売却基準価額の2倍近い価格で落札されることもあれば、市場価格よりも非常に低い金額で落札されることもあります。
競売にはプロの不動産業者や投資家が参加しているため、市場価格よりも高い値段で落札となる場合もあります。
底地はとくに価格がバラつきやすい
競売物件は、物件ごとに売却基準価額も異なり落札金額もさまざまです。
底地の場合、市場性や収益性が劣るといわれる不動産でもあるので、売却基準価額から何倍も高い価格で落札されるケースは少ないです。
しかし、その土地の状況や周辺環境、需要などさまざまな要因が関わって落札価格もバラバラです。
そのため、明確な相場を求めることはできないといえるでしょう。
ちなみに、底地の落札者は個人よりも不動産業者や底地専門業者が多いです。これは「借地権者へ売却する」「底地と借地権を等価交換する」「借地権者と協力して土地全体を売却する」といった複数の出口戦略を持っているためです。
「不動産競売物件情報サイト」にある「過去データ」や「売却結果」では売却基準価額と売却額が掲載されているので、参考にしてみると落札価格がどの程度かイメージしやすいかもしれません。
参照:BIT「不動産競売物件情報サイト」
競売になると「底地の所有権」のみが取引される
底地とは、借地人へ貸し付けている状態の土地です。底地が競売にかけられた場合は、「底地の所有権」のみが取引の対象となります。
借地人の方からは「地主が変わったら立ち退きを求められるのでは」と不安の声が上がることもありますが、新しい地主が一方的に契約を解除したり、立ち退きを要求したりすることはできません。
借地人の「借地権」は保護されている
借地権は借地借家法によって手厚く保護されています。そのため、競売により地主が変わったとしても、原則として借地権が解除されることはありません。
また既存の借地契約の内容(契約期間・地代・更新条件など)も、そのまま新しい地主へ引き継がれます。
ただし、借地人としては新しい地主と良好な関係を築けるかどうかで、今後の建て替えや更新の交渉のしやすさが変わってくるため、良い関係性を築いておくことは大切です。
競売物件として底地を購入するメリット・デメリット
競売物件の購入にはさまざまなメリット・デメリットがあります。事前にこれらをよく理解したうえで入札を検討することが重要です。
メリット1.市場価格よりも安い
競売物件を購入する一番のメリットは、一般的な市場に流通している物件に比べて価格が安いという点です。
具体的には、市場売買で扱われる物件の価格よりも2〜3割程度安くなるといわれています。この価格差は「競売市場修正」と呼ばれ、競売物件特有のリスクを織り込んだ結果として発生するものです。
競売物件に含まれるリスクとしては、以下のようなことが挙げられます
- 売買において物件に付する保証や権利が無い(契約不適合責任など)
- 物件は差し押さえ後の現状のまま渡される
- 債務者(元々の物件所有者)に明け渡し請求などをする場合がある
底地を買い取る業者の目線でいえば、競売市場修正で2〜3割安く買えたとしても、その差額がそのまま利益になるわけではありません。落札後に借地人との関係構築、地代の見直し交渉、登記や測量にかかる費用、占有者がいる場合の明渡し費用など、想定以上のコストが発生するケースが多いためです。
実務上は、こうしたコストを差し引いてもなお採算が取れるかどうかを慎重に見極めて入札価格を決めています。
安く物件を購入できる反面、さまざまなリスクを含んでいるおそれがあるので、なるべく注意して物件を選ぶことが大事です。
メリット2.所有権移転などの権利関係手続きがスムーズで確実
一般的な不動産取引の場合は、売主と買主の間で権利トラブルが起こることも少なくありません。
しかし、競売物件の場合は裁判所が物件を管理しているので、落札後は所有権移転登記や抵当権の抹消などが公正におこなわれます。
また、最初から裁判所とやり取りをすることになるので、買主自身で手配する手続きの手間や時間を削減しやすい点はメリットです。
デメリット1.住宅ローンの利用が難しい
競売物件の購入で住宅ローン審査に通過するのは、ハードルが高いといえます。
かつての競売制度では、所有権移転と代金納付のタイミングにズレがあったため、金融機関が抵当権を設定するまでに空白期間が生じてしまい、競売物件で住宅ローンを組むことは事実上不可能でした。
しかし、民事執行法82条2項が新設されたことにより、買受人が指定する司法書士が代金納付の手続きにあわせて所有権移転登記と抵当権設定登記の嘱託書をまとめて裁判所へ提出できる仕組みが整い、制度上は競売物件でも住宅ローンを利用できるようになっています。
もっとも、競売物件は通常の不動産取引と異なり、物件の内部確認ができないケースが多く、金融機関が担保価値を正確に評価するのが難しいため、依然として住宅ローンの審査は非常に厳しいのが実情です。
また、裁判所が指定する期限までに確実に入金しなければならないため、事前の資金計画が非常に重要となります。
デメリット2.契約不適合責任を追及できない
契約不適合責任とは、不動産に瑕疵(何らかの不具合や欠陥など)があった場合に売主が負うべき責任のことです。
競売の売主は債務者ですが、強制的に売却される競売の性質上、民法(第568条第4項)の特則により、目的物の物理的な不具合に対する契約不適合責任は問えないルールになっています。
競売物件に何か瑕疵(建物の欠陥や土壌汚染など)があったとしても、原則として責任を追及できません。
そのため実務上、契約不適合責任が追及できないことを前提に、3点セットの内容や現地調査から想定される瑕疵リスクをあらかじめ価格に織り込んだうえで入札するのが通常です。
具体的には、内部の損傷状況が不明な物件は「最悪のケースでも採算が合う水準」まで入札価格を抑える、過去のトラブルや境界の不明確さがある物件はさらに価格を控えめに設定する、といった調整を行います。
一般の方が落札する場合も、瑕疵が見つかっても自己負担で対応しなければならないことを前提に、入札価格を決める必要があります。
デメリット3.入札しても確実に購入できるわけではない
不動産競売は、オークションとほぼ同じ仕組みです。
そのため、競売物件を入札しても他の入札者の方が高額で入札した場合、当然そちらが優先されます。
物件の下調べなどで時間と手間をかけて入札しても、高額入札で他の人の手に渡ってしまう可能性があるということを心に留めておきましょう。
ちなみに、競売は1回限りの入札で結果が決まります。そのため、入札価格をいくらに設定するかが最大の悩みどころです。低めに設定すれば落札できず、高めに設定すれば一般市場で買えるレベルの価格になってしまうため、3点セットから読み取れる情報をもとに、自分なりの上限価格をあらかじめ決めておくことが重要です。
競売物件の入札と手続きの流れ
競売物件の入札から引き渡しまで、主に以下のような流れになっています。
- 購入したい競売物件の調査と選定
- 競売物件を入札
- 開札と売却許可決定
- 残代金の納付
- 所有権移転と抵当権等抹消登記
- 競売物件の引渡し
それぞれの手続きについて詳しく説明します。
1.購入したい競売物件の調査と選定
裁判所で閲覧できる競売物件情報や、不動産競売物件情報サイトなどから購入したい物件を選びます。
インターネットで不動産競売物件情報サイトを検索することで、簡単に競売物件の情報を調べられます。
また、紙面広告などの情報を利用してもよいでしょう。
BIT 不動産競売物件情報サイト
全国にある裁判所の物件が公開されている「BIT(不動産競売物件情報サイト)」が便利です。
地域や沿線から物件を探すことができ、物件詳細ページからは「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」の3点セットがダウンロードできるようになっています。
この3点セットは物件の状態を知るための重要な情報なので、必ず確認しましょう。
底地の競売物件で特に注目したいのが、評価書に記載されている「借地条件」と「地代」、現況調査報告書の「借地人の状況」です。借地契約が長期で固定地代の場合は収益性が低くなりますし、借地人が地代を滞納している場合は買い受け後にトラブル対応が必要になります。
なお、法律上、競売前の旧地主に対する「過去の滞納地代」を請求する権利は、原則として落札者(新しい地主)には引き継がれません。しかし、過去に滞納歴がある借地人は落札後も地代の支払いが滞るリスクが高く、最悪の場合は契約解除や明渡し訴訟などのトラブルに発展しやすいため、こうした情報は落札後の管理コストを見積もる上で非常に重要です。
参照:BIT(不動産競売物件情報サイト)
一般社団法人不動産競売流通協会「981.jp」
「981.jp」は不動産競売流通協会(FKR)が運営している不動産競売物件のポータルサイトで、BITと同様に全国の競売物件を取り扱っています。
3点セットのダウンロードやバーチャル入札などさまざまなサービスがあります。
ただし、これらのサービスを利用するには、会員登録とログインが必要になります。
参照:一般社団法人不動産競売流通協会「981.jp」
2.競売物件を入札
購入する競売物件が決定したら、入札の手続きに進みます。
ここでは、必要書類の準備と入札保証金の振込をおこないます。
次の項目から、順番に見ていきましょう。
入札手続きに必要な書類
入札に必要な書類を準備しましょう。以下の書類を裁判所の執行官室で受け取ります。
- 入札書
- 入札用内封筒
- 入札保証金振込証明書用紙
- 振込依頼書(兼入金伝票)
裁判所に足を運ぶ時間がない人は、裁判所の執行官室宛に郵便切手を貼った返信用封筒(A4)を送り、返信にて必要書類の郵送をしてもらうこともできます。
入札保証金の振り込み
振込依頼書を利用し、裁判所が定めた金額の入札保証金(買受申出の保証金)を金融機関等で指定の口座に振り込みます。
入札保証金の金額は原則として売却基準価額の約10分の2(20%)とされています。具体的な金額は期間入札の公告に「買受申出の保証の額(買受申出保証額)」として記載されています。
開札後、最高価格の買受申出人(購入できる人)以外の人の入札保証金は返還されます。
裁判所の掲示板や庁舎内の掲示板に、期間入札の公告が掲載されます。不動産競売物件情報サイトでも閲覧することができます。
BITの場合は、以下のように記載されています。
振り込み後の書類提出
入札保証金を振り込んだ後は、以下の書類を揃えて裁判所の執行官へ提出する必要があります。今回は、個人が競売物件を入札するケースで必要となる書類を説明します。
- 入札書
- 入札保証金振込証明書
- 住民票(発行から3カ月以内のもの)
入札は物件ごとに1人1回に限定されます。複数の代理人を立てることなどは原則認められません。
3.開札と売却許可決定
開札は指定の開札期日に裁判所の不動産競売場でおこなわれます。
裁判所に足を運ばなくても不動産競売物件情報サイトで開札結果を確認可能です。
開札期日の7日後に売却許可決定が最高価買受申出人に下されます。売却許可決定後に正式な買受人になります。
4.残代金の納付
売却許可決定が確定した場合、原則として約1カ月後に残代金の納付をおこないます。
その間に代金納付期限通知書などが手元に発送されるので、その書類に記載されている期日の前日までに金融機関から指定口座へ残代金を振り込みます。
振込金額が違ったり、期日までに振り込まない場合は競売物件の買受権利を失います。
また、振り込んだ入札保証金も戻ってこないので注意が必要です。
納付期限は通常1ヶ月程度しかなく、現金一括での支払いが原則となるため、入札前の段階で資金の調達方法を確実に固めておくことが重要です。実際に競売物件を扱う業者の実務でも、入札前に金融機関との融資の打ち合わせを完了させ、開札後すぐに残代金の用意ができる体制を整えておくのが通例です。
一般の方も同様に、入札前に金融機関と十分な事前協議を済ませておく必要があります。
5.所有権移転と抵当権等抹消登記
残代金を納付した時点で法的な所有権は買受人に移転し、その後、裁判所から法務局へ所有権移転登記を依頼する手続きが進められます。
また、差押登記や抵当権設定登記などの負担登記の抹消も同時に依頼されます。
その後、買受人宛に「登記識別情報通知」が郵送されます。登記識別情報通知は登記済という証明と権利証の代わりになる重要な書類なので、無くさないようにしっかりと保管しましょう。
6.競売物件の引渡し
競売物件の引き渡しは買受人の責任でおこないます。物件引渡し以降は裁判所が自ら動くことはないので、さまざまな負担をしなくてはならない場合があります。
例えば、物件に残っている家具などの動産は法に則った正式な手続きで処理しなくてはなりません。
このとき、勝手に処分するなどの行為はしてはいけません。
また、元々の物件所有者(占有者)が退去せずに住み続けているケースもあります。
住宅を競売にかけられた人は引っ越しの費用すら持ち合わせていないことが多く、落札者が引っ越し費用を負担して退去させる手段をとることもあります。
どうしても退去に応じない場合は、裁判所へ「引渡命令」を申し立て、最終的に強制執行による断行という法的手段をとらなければならないこともあります。
強制執行の費用や残置物の処分費用は、ケースにもよりますが数十万〜100万円以上かかることもあり、解決までに半年以上を要するケースも珍しくありません。落札後にこうした追加費用や時間的コストが発生するリスクをあらかじめ見込んだうえで、入札価格を判断する必要があります。
実務上、落札者が費用を惜しんで無理に自力で追い出そうとしたり、勝手に鍵を交換したりすると、逆に不法行為として訴えられるリスクがあります。法律上の手続きによらず占有者を排除する行為は「自力救済」として違法とされ、損害賠償請求の対象になりかねません。
そのため、立ち退きに応じない占有者がいる場合は、弊社のような専門業者であっても、必ず連携している弁護士に法的手続きを依頼して安全に明渡しを進めるのが鉄則です。
参照:競売不動産の買受手続|裁判所
参照:BIT不動産競売物件情報サイト「入札等の手続について」
まとめ
底地が競売にかけられたとき、取引されるのは底地の権利のみです。
そのため、競売にかけられたとしても、借地人に大きな影響を与えることはありません。
競売物件は、安価で購入できるなどのメリットがある反面、契約不適合責任がないなどのデメリットもあることを忘れてはいけません。
競売物件の調査・入札方法や手続きの流れを把握しておくことも大事です。入札方法や必要書類、入札保証金の支払期間なども細かく指定されているので事前にしっかりと確認しておきましょう。
競売物件は底地、借地、空き地などの土地、住宅、商業用の建物など多種多様で、それぞれ落札価格も大きく異なります。そのため、競売物件の落札相場を予想することは難しいでしょう。
なお、地主の立場で底地の競売を回避したい場合は、競売手続きが進む前に仲介や買取で売却する選択肢もあります。一方、借地人の立場で底地の所有者が変わった場合は、新しい地主と早めにコミュニケーションを取り、今後の関係性を整えておくことが、将来的なトラブル回避につながります。
底地の競売についてよくある質問
そもそも競売とはどんな手続き?
競売とは、裁判所を通して強制的に不動産を売却する制度のことです。
底地を競売に出すといくらで売れる?
競売物件に価格相場は存在しません。底地はとくに価格がバラつきやすく、いくらで売れるかはケースバイケースといえます。もしも、底地の売却価格を調べたいなら「底地専門の買取業者」による無料査定を受けてみましょう。
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底地が競売に出されますが、私の借地権は大丈夫でしょうか?
競売になると「底地の所有権」のみが取引されます。そのため、新しい地主が現れることにはなりますが、居住に対する権利は保証されています。
底地を競売物件として購入するメリットは?
「市場価格よりも安く購入できる」「所有権移転などの権利手続きがスムーズで確実」といったメリットがあります。
底地を競売物件として購入する際、何を注意すべき?
「住宅ローンの利用が難しい」「契約不適合責任を追及できない」「入札しても確実に購入できるわけではない」といったことに注意する必要があります。