底地を管理するには、地代の徴収や滞納者への督促、適正地代への値上げ交渉など、さまざまな対応が求められます。
しかし、底地を適切に管理するには、借地権に関する法律の知識が必要になります。底地の遠方に住んでいる場合は、管理しきれないケースもあるでしょう。
そのようなときには「底地の管理代行」を依頼してもよいでしょう。
底地の管理代行では「毎月の地代の徴収」「地代滞納者への督促」など、底地の管理に関することをすべて代行してくれます。
底地の管理代行を利用するとき、重要なのは「どの不動産会社に依頼するか」です。「底地管理の実績が十分にあるか」「担当者は信頼できるか」といったポイントを意識して、管理代行業者を選びましょう。
底地の管理代行とは管理業務を不動産会社が代行してくれる制度
底地の管理代行とはその名のとおり、底地に関する管理業務を不動産会社がオーナーである地主に代わっておこなううものです。
個人で底地を管理しようと思うと、次のような仕事をすべてしなければなりません。
- 毎月の地代の徴収
- 地代滞納者への督促
- 建替え承諾料や譲渡承諾料、契約更新料の交渉
- 適正地代への値上げ交渉
- 無断増改築・建替えなど契約違反がないかの確認
- その他、借地人との様々な問題への対応
しかし、本業として別の仕事を持ちながら地主をしている場合、ほとんど手が回らなくなります。
地代の入金確認はできても、手間のかかる滞納者への督促やトラブル発生時の問題解決までは難しいでしょう。
そこで、これらの仕事を代わって担当してもらえるように不動産業者に依頼します。これが底地の管理代行です。
底地の管理代行を利用するメリット・デメリット
底地の管理代行を利用すれば、面倒な底地の管理業務をすべて業者に任せられます。
しかし、底地の管理代行を利用すべきか、悩んでしまう人もいるでしょう。
底地の管理代行を利用するときには、そのメリット・デメリットを正しく理解することが大切です。
次の項目から、底地の管理代行を利用するメリット・デメリットについてそれぞれ解説します。
メリット1.時間と手間がかからなくなる
底地の管理をすべて不動産会社に委託すれば、それまであなたが充てていた時間と手間がなくなります。
また、地代の遅延者に対する督促のノウハウも豊富に持っているのが、専門家である不動産会社です。
個人で管理していた際は難しかった地代の回収もスムーズにおこなえるようになるでしょう。
底地の管理を忘れることがないので、本業に集中できる点もメリットです。
メリット2.精神的な負担がなくなる
金額に明確な規定がない承諾料や、そのほか借地権者との交渉もプロの不動産会社に任せられます。
最終的な決断はあなた自身がおこなう必要はありますが、お互いの着地点が見つかるまでの交渉は不要です。
交渉に慣れていない場合、精神的にも大きな負担となります。
底地の管理代行を利用すれば、不動産会社に要望を伝えるだけで、あとは上手に借地権者と調整してもらえるメリットがあります。
メリット3.適正な収益を確保しやすくなる
借地契約を交わした時期が昔だったり、周辺環境の変化で地価が上がっていたりした場合、今設定されている地代が安すぎる可能性があります。
この場合、地代の値上げは正当な理由として認められています。
しかし、地代が適切な金額に設定されているかどうかを判断することはもちろん、適切な地代を算出することにも、不動産の専門知識が欠かせません。
さらに、地代の値上げは借地人にとって嬉しいものではないです。借地人に納得してもらうにも粘り強い交渉が必要になるでしょう。
個人で管理していたときには諦めていた地代の値上げも、底地の管理代行を利用することで、適正な価格にまで引き上げられる可能性が高いです。
メリット4.底地を整理したいときにもスムーズに進みやすくなる
相続発生のときには、底地も相続税の課税対象です。底地は「実際に売買が成立する実勢価格」よりも「相続税評価額」の方が高くなりやすい傾向があり、相続税が高く売却して現金化しても足りないことがあります。
そのときには、物納することも考えられますが、借地権者とトラブルを抱えていたり、土地が特殊な形状をしていたりすると物納が認められない場合があります。
そのため、底地を所有しているケースでは、相続対策として事前に底地整理をしておく方がよいです。
そして、通常であれば「底地を整理したい」と思ったときにゼロから不動産会社を探さなければなりません。
しかし、管理代行を利用していれば、担当の不動産会社はすでに底地の状況に詳しく、借地人のことまで把握しているので、不動産会社を探す手間を省けます。これまでの管理してきた期間から、あなたの底地に適した整理方法まで企画提案してもらえるでしょう。
「費用がかかる」のみがデメリット
不動産会社もボランティアではないので、管理代行を利用すれば当然、費用がかかります。
自分で管理していれば支払う必要がなかったお金ですから、底地の管理代行を利用するデメリットともいえます。
そうはいっても、多額の費用がかかるわけではありません。相場は月額地代の5%程度です。
しかし、そもそも地代収入による底地の収益性は低いです。
もしも、管理代行の利用が負担になりそうな場合は、地代への値上げ交渉をそこも含めて不動産会社に相談するとよいでしょう。
管理代行を利用するか迷ったときの判断ポイント
「自分の持っている底地は管理代行を利用した方がいいのだろうか、それとも自分で管理し続けた方がいいのだろうか」と、判断に迷っているかもしれません。
そこで、管理代行を利用するか迷ったときの判断ポイントを4つ紹介します。
- 自分で底地を管理する余裕があるか
- 底地を管理する知識があるか
- 借地人との交渉に抵抗感はないか
次の項目から、それぞれ見ていきましょう。
自分で底地を管理する余裕があるか
まずは、今の時点で底地を管理する余裕があるかを改めて検討します。
本業に使っている時間、プライベートに使っている時間を出して、底地管理に必要な時間と労力を大きな負担なく捻出できるかを考えてみてください。
借地権者が毎月、地代を遅れずに支払ってくれて特別な対応も必要なければ、底地管理にかける時間はほとんど必要ありません。
しかし、度々地代を滞納する借地権者であったり、所有している底地が遠く定期的な底地の状況確認が難しいケースでは、何か対応が必要になったときの負担が大きいです。
そのような場合には、あらかじめ管理代行を利用しておいた方がよいでしょう。
底地を管理する知識があるか
以下のようなときには、権利関係が複雑になりやすい底地や、借地権に関する専門的な知識が必要になります。
- 借地人から建物の増改築・建替えの承諾を求められたとき
- 借地人から第三者への譲渡を求められたとき
- 地代を値上げしようと思ったとき
借地人も正しい知識がなく、法外な要求をしてくることもあるので、借地権に関する理解が必要です。
底地や借地権に関する書籍も出版されているので、底地管理のためにご自身で勉強してもよいかもしれません。
しかし、勉強が面倒であったり時間が取れない場合には、管理代行を依頼した方がよいでしょう。
また、管理代行を利用していれば、底地について疑問が出たときも、不動産会社の担当者に質問して解消することができます。
借地人との交渉に抵抗感はないか
以下のように底地を管理していると、借地人と交渉する場面が多くあります。
- 地代の値上げ
- 契約更新時の更新料
- 借地権の買い取り依頼があったときの価格
このような場合でも「自信を持って交渉に臨める」「借地人との関係は良好なので納得してもらえる」というケースであれば、自分で底地管理をしてもよいでしょう。
逆に、交渉に自信がなかったり借地人との関係が悪く、顔を合わせることにも抵抗があるときには、交渉も委託できる管理代行を利用する方がよいです。
借地人は複数いるのか(所有している底地は複数なのか)
所有している土地が1つ、借地人も1人であれば、地代の集金・督促、その他の借地人への対応が大きな負担にはなりにくいです。
しかし、複数の土地を所有していたり、マンション・アパート経営をしていたりすると、借地人が複数いて管理が煩雑になります。
地代の支払い時期がバラバラになっていることも多く、借地人への必要な対応も増えるからです。
したがって、借地人が複数いる場合には、管理代行を利用することをおすすめします。
底地の管理代行業者を選ぶ4つのポイント
底地の管理代行を利用するとき、重要なのは「どの不動産会社に依頼するか」です。
実力のない不動産会社に依頼してしまうと、ずさんな管理をされたり、交渉で要望を全然通せない恐れがあります。
そこで最後に、底地の管理代行業者を選ぶときに、失敗しないために確認したい4つのポイントをお伝えします。
- 底地管理の実績が十分にあるか
- 担当者は信頼できるか
- 管理代行の業務範囲が明確になっているか
- 管理代行の費用は適切か
次の項目から、それぞれのポイントを確認していきましょう。
1.底地管理の実績が十分にあるか
底地管理の代行を請け負っている会社は、底地管理の実績があるといえます。
しかし、なかには「とりあえず不動産に関することは、すべて対応すると書いておこう」と、底地管理のノウハウも実績もないにもかかわらず、業務を請け負うとしている場合があります。
気になった不動産会社には、ホームページの会社概要や広告だけでなく直接、底地管理の実績を確認することが重要です。
このとき、件数だけでなく継続年数も聞いてみてください。底地の管理代行は適切に業務を行っていれば、長期で継続されるものです。
個人情報に関することのため、詳しく教えてもらうことは難しいですが、継続年数であれば教えてもらえるでしょう。
管理代行を依頼されていた底地の買取をおこなったなど、特別な理由がない限り2年~3年程度であれば短いです。
2.担当者は信頼できるか
底地の管理代行は「会社」に依頼しますが、実際の業務は社員の担当者が行います。
そのため、会社にどれだけ実績があったとしても、担当者に経験と実力がなければ、適切に底地管理をおこなうことは難しいです。
管理代行業者を選ぶときには、その担当者が信頼できるか判断しましょう。ここでいう「信頼」とは「パートナーとして信頼できるか」ということです。
たとえば、質問に対する回答が遅すぎたり、相談時の対応が雑でないかを見極めましょう。
違和感があれば、今後長く続く取引であることも考えて、他の不動産会社をあたりましょう。
3.管理代行の業務範囲が明確になっているか
管理代行業者を探すときには、依頼したい業務を洗い出しておいてください。
- 地代の確認から契約の管理まですべてまとめて依頼したい
- 地代滞納者への督促だけお願いしたい
- 借地権者との調整・交渉が必要なときに代行してほしい
これらの希望をすべて自分で把握したあとに、探すことをおすすめします。
そうすれば、利用したい代行業務がなかったという事態を避けられます。
4.管理代行の費用は適切か
4つ目のポイントは管理代行費用です。大切な資産である底地の管理を任せるので、安ければよいというわけではありません。
底地管理全般の代行を依頼するときの相場は月額地代の5%のため、それよりもずっと安い代行業者があったとしても、適切な管理をしてもらえない恐れがあります。
もしも、相場よりも安ければ、なぜその価格で代行できるのかを確認しましょう。
まとめ
底地の管理代行とは、管理業務を不動産会社が代行してくれる制度です。
管理代行を利用することで、時間と手間を減らせるようになります。借地人との交渉などをおこなう必要もありません。
ただし、月額地代の5%程度が費用として必要になることを覚えておきましょう。
管理代行を利用するか迷ったなら「管理する時間があるか」「底地管理の知識を持っているか」といったことを基準に判断するとよいです。
とくに、地主とは別の仕事があり、底地の管理を負担に感じているのであれば、管理代行業者を探してみるべきかもしれません。