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共有名義不動産の売却にかかる税金は?税額のシミュレーションや確定申告【税理士監修】

共有名義不動産の売却にかかる税金・確定申告ガイド|計算方法とシミュレーション【税理士監修】

共有名義の不動産を売却する場合、税金の計算や確定申告は、各共有者が自分の持分割合に応じて個別に行うのが原則です。単独名義と異なり、不動産全体に対して一括で課税されるわけではなく、売却益が出た共有者それぞれに申告・納税の義務が生じます。

共有名義不動産の売却では、譲渡所得にかかる税金のほか、契約書や登記に関する税金も発生します。また、時価より著しく低い価格で売却した場合は、差額部分が贈与とみなされ、贈与税(みなし贈与)が課されるケースもあるため注意が必要です。

さらに、共有者ごとに取得時期や取得方法、所有期間が異なれば、適用される税率や特例も変わります。「誰が」「どの税金を」「どの考え方で」負担するのかを押さえておくことが、申告漏れや共有者間のトラブルを防ぐポイントです。

共有名義不動産の売却時に発生する主な税金は、次のとおりです。

税金の種類 課税の対象・負担の考え方
譲渡所得税・復興特別所得税・住民税 売却益(譲渡所得)に課税される。利益が出た共有者が持分割合に応じて譲渡所得を計算し、個別に確定申告・納税を行う。
※売却した年の1月1日時点で所有期間5年超は長期(約20.315%)、5年以下は短期(約39.63%)。
登録免許税 所有権移転登記や抵当権抹消登記など、登記申請時に課税される国税。
抵当権抹消は不動産1つにつき1,000円。所有権移転は固定資産税評価額を基準に計算される。
原則は買主負担であるが、契約で売主負担とすることも可能。
印紙税 売買契約書などの課税文書を作成した際に課税される国税。契約金額に応じて税額が決まる。
契約書の作成者が負担し、実務上は売主・買主それぞれが自己保管分を負担するケースが多い。
贈与税(みなし贈与) 時価より著しく低い価格で売却した場合、差額が贈与とみなされ、原則として買主側に課税される。
消費税 建物部分のみが対象。売主が課税事業者として事業用資産を売却する場合に課税される。
個人が居住用として使用していた住宅の売却は原則非課税。

マイホーム(居住用財産)を売却する場合には、3,000万円特別控除を各共有者がそれぞれの持分について利用できる可能性があります(※各共有者が要件を満たす場合に限ります)。この特例を利用する場合も、共有者ごとに確定申告が必要です。

実際にいくら税金がかかるのかは、共有名義不動産の売却にかかる税金のシミュレーションで大まかなイメージを確認できます。

ただし、シミュレーション結果はあくまで目安です。実際の税額や申告の要否は、共有者ごとの持分割合・所有期間・適用できる控除や特例によって異なります。不安がある場合は税理士や司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。

大宮桜木税理士事務所 北島慎也 税理士
監修
北島慎也(税理士)

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共有名義不動産を売却したときの税金の基本的な考え方

共有名義不動産の売却時にも単独名義の不動産と同じ種類の税金が発生しますが、計算方法や申告の単位には重要な違いがあります。共有名義不動産の売却では「物件単位」ではなく「共有者単位」で税金を扱う点が大きな特徴です。

ここでは、共有名義不動産を売却したときにかかる税金の基本的な仕組みを整理していきましょう。

共有名義でも不動産売却でかかる税金の種類は変わらない

共有名義の不動産を売却する場合でも、発生する税金の種類そのものは単独名義と変わりません。不動産売却によって利益(譲渡所得)が生じたときに課される譲渡所得税(所得税・復興特別所得税)や住民税、登記手続きの際に発生する登録免許税、売買契約書にかかる印紙税などが代表的な税金です。

もっとも、共有名義の場合に大きく異なるのは、税金の「計算単位」と「申告単位」です。単独名義では売主1人が売却代金全体を基に譲渡所得を計算し、確定申告・納税を行います。

一方、共有名義の場合は、不動産全体に対して一括で課税されるわけではありません。売却価額だけでなく、取得費や譲渡費用も含めて持分割合に応じて按分したうえで、各共有者がそれぞれ譲渡所得を計算し、個別に確定申告・納税を行うのが原則です。

さらに、共有者ごとに取得時期や取得価額が異なるケースもあります。たとえば、夫婦で共同購入した場合は、それぞれが負担した購入代金や諸費用を基に取得費を計算します。一方、相続によって持分を取得した場合は、原則として被相続人の取得費を引き継ぐため、同じ不動産でも共有者ごとに取得費が異なることがあります。

このように、共有者ごとに取得費や所有期間が異なれば、適用される税率や納税額もそれぞれ変わる可能性があるでしょう。

なお、不動産全体を売却する場合だけでなく、自己の共有持分のみを売却した場合であっても、基本的な税目や課税の考え方は同様です。

共有名義不動産を売却したときの税金は基本的に持分所有者それぞれで負担する

共有名義の不動産を売却した場合、税金の負担者は税目ごとに異なります。特に譲渡所得税と住民税は、不動産全体でまとめて課税されるのではなく、各共有者がそれぞれ負担する点が重要です。

以下に、主な税金と法律上の納税義務者を整理します。

税金の種類 法律上の納税義務者
譲渡所得税(所得税・復興特別所得税) 売主(各共有者)
住民税 売主(各共有者)
登録免許税(所有権移転登記) 登記を受ける者(通常は買主)
登録免許税(抵当権抹消登記) 抹消登記を申請する者(通常は売主)
印紙税 契約書の作成者(売主・買主それぞれが各自の契約書に印紙を貼付)

共有名義の場合、譲渡所得税と住民税は、原則として共有者の人数分だけ申告・納税義務が生じます。共有者が2人いれば、それぞれが自分の持分に応じた譲渡所得を計算し、個別に確定申告を行う必要があります。

さらに、給与所得のみで通常は確定申告が不要な人であっても、譲渡所得が発生したときは原則として申告が必要です。

登録免許税や印紙税は、法律上の納税義務者が定められている一方で、実務上は売買契約の合意によって費用負担を調整することも可能です。契約前に誰が負担するか、明確にしておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。

税金の負担割合や確定申告の方法に不安がある場合は、早い段階で税理士などの専門家に相談しておくと安心です。

特例の適用は持分所有者それぞれに行われる

共有名義の不動産を売却した場合、譲渡所得に関する各種特例は原則として「共有者ごと」に判定されます。たとえば、マイホーム(居住用財産)を売却したときに利用できる3,000万円特別控除は、各共有者がそれぞれ居住要件などを満たしているかどうかで判断されます。

3,000万円特別控除は、各共有者がそれぞれ自分の譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度です。共有名義だからといって、1人が要件を満たせば全員が自動的に適用できるわけではありません。

そのため、同じ不動産を売却しても、夫は3,000万円特別控除を適用できる一方で、妻は居住実態がなく適用できないといったケースも実際に起こり得るでしょう。

また、所有期間についても共有者ごとに判定される点に注意が必要です。取得時期が異なる場合には、ある共有者は「長期譲渡所得(所有期間5年超)」に該当し、別の共有者は「短期譲渡所得(所有期間5年以下)」に該当する可能性があります。この場合、適用される税率そのものが共有者ごとに異なることになります。

さらに、被相続人の居住用財産(いわゆる空き家特例)や、マイホーム売却時の軽減税率の特例、譲渡損失の損益通算・繰越控除などについても、原則として共有者単位で適用の可否が判断される仕組みです。

共有名義不動産の売却では「物件単位」ではなく「共有者単位」で特例を検討することが重要です。適用できる特例を正しく把握するためにも、自身の取得時期や居住実態などの要件を個別に確認しておきましょう。

共有名義不動産を売却したときにかかる税金の種類

共有名義の不動産を売却すると、譲渡所得税を中心に複数の税金が発生します。売却益に対して課税されるものだけでなく、登記や契約書の作成に伴って発生する税金もあります。

主な税金の種類と概要は次のとおりです。

税金の種類 課税の対象・概要
譲渡所得税・復興特別所得税・住民税 不動産の売却益(譲渡所得)に課税される税金。利益を得た共有者それぞれが持分に応じて確定申告を行う。
登録免許税 抵当権抹消登記や所有権移転登記など、登記申請時に課される国税。登記の種類ごとに税率や金額が異なる(原則は買主負担)。
印紙税 売買契約書などの課税文書を作成した際に課される国税。売買価格に応じて金額が決まる。
贈与税(みなし贈与) 時価より著しく低い価格(目安として時価の80%未満など)で売却した場合、差額部分が実質的な贈与とみなされ、原則として買主側に贈与税が課税される。
消費税 土地は非課税。建物は、売主が課税事業者として事業用資産を譲渡する場合に課税対象となる。個人が居住用として使用していた住宅の売却は原則として非課税。

それぞれの税金について、詳しく解説します。

譲渡所得税・復興特別所得税・住民税:共有名義不動産の売却益に応じて負担

共有名義不動産を売却して譲渡所得が生じた場合、譲渡所得税(所得税・復興特別所得税)および住民税が課されます。譲渡所得とは、土地や建物などの資産を売却したことによって生じる利益のことです。

譲渡所得は、次の算式で計算します。

譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
建物・土地を売却するときの譲渡所得は、「その不動産の売却価格」から「その不動産を取得・売却したときにかかった金額」を差し引く

※取得費には購入代金のほか、購入時の仲介手数料や登録免許税などが含まれます。
※取得費が不明な場合や、実際の取得費が売却価格の5%未満である場合は、売却価格の5%を取得費とすることができます(概算取得費)。
※譲渡費用には売却時の仲介手数料や測量費などが含まれます。

共有名義の場合は、原則として持分割合に応じて売却価額・取得費・譲渡費用を按分し、各共有者がそれぞれ自分の譲渡所得を計算して申告・納税します。

不動産の譲渡所得は「分離課税」に該当します。分離課税とは、給与所得や事業所得など他の所得と合算せず、譲渡所得のみを独立して計算する課税方式です。

適用される税率は、不動産を売却した年の1月1日時点における所有期間が5年を超えるかどうかで判定されます。

所有期間ごとの税率は次のとおりです。

所得区分 所有期間(売却年の1月1日時点) 税率
長期譲渡所得 5年超 所得税:15%
復興特別所得税:所得税額の2.1%
住民税:5%
合計:20.315%
短期譲渡所得 5年以下 所得税:30%
復興特別所得税:所得税額の2.1%
住民税:9%
合計:39.63%

参考:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
参考:国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算

なお、復興特別所得税は2037年12月31日まで、所得税額に対して2.1%が上乗せされます。住民税は原則として翌年度に課税されます。

具体的な計算手順や、3,000万円特別控除などの特例の適用方法については「共有名義不動産を売却したときにかかる譲渡所得税の計算方法」で詳しく解説します。

登録免許税:抵当権が設定されているときに負担

共有名義不動産に抵当権(住宅ローンなどの担保権)が設定されている場合、実務上は抵当権を抹消したうえで所有権を移転するのが通常です。そのため、売却時には決済と同時に抵当権抹消登記を行うのが一般的です。

このとき、登記手続きに伴って「登録免許税」が発生します。登録免許税とは、不動産の登記などに対して課される国税です。

抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1件(1登記記録)につき1,000円です。土地と建物の両方に設定されている場合は、合計2,000円となります。

実務では司法書士へ依頼するケースが多く、別途1万〜2万円程度の報酬が発生するのが一般的です。

抵当権抹消登記は、原則として所有者(共有者)と金融機関の共同申請です。
共有名義であっても、債務の内容や契約形態によって必要書類や手続きが異なるため、事前に金融機関や司法書士へ確認しておくことが重要です。

また、売却にあたっては所有権移転登記(名義変更)も行われます。

登録免許税の税率は次のとおりです。

登記内容 登録免許税
売買による所有権移転(土地) 固定資産税評価額 × 2%(※土地は2026年3月31日までは1.5%の軽減措置あり)
売買による所有権移転(建物) 固定資産税評価額 × 2%(一定の要件を満たす住宅用家屋は2027年3月31日まで0.3%の軽減措置あり)
相続による所有権移転(土地・建物) 固定資産税評価額 × 0.4%

参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表

登録免許税は登記の種類によって税率や法律上の納税義務者が異なりますが、実務では売買契約で負担者を取り決めることが一般的です。

印紙税:売却金額に応じて負担

不動産の売買契約書を作成するときは、印紙税が発生します。印紙税とは、課税文書(正式な契約書)を作成した際に課される国税で、売買金額に応じて税額が決まります。電子契約で締結した場合は、印紙税の課税対象外です。

売買契約書は通常、売主・買主がそれぞれ1通ずつ作成し、各自が保管する契約書に印紙を貼付します。共有名義不動産の場合は、契約書の作成数や印紙の貼付方法について、共有者間で事前に確認しておくとトラブルを防ぎやすくなります。売主が複数人であっても、通常は売主側で1通の契約書を作成するため、印紙税も1通分です。ただし、契約書を分けて作成する場合は、それぞれの文書ごとに印紙税が課されます。

なお、印紙税は、売買契約書に収入印紙を貼付し、消印を押すことで納付します。

売却価格 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円以上10万円以下 200円
10万円超50万円以下 400円
50万円超100万円以下 1,000円
100万円超500万円以下 2,000円
500万円超1,000万円以下 1万円
1,000万円超5,000万円以下 2万円
5,000万円超1億円以下 6万円
1億円超5億円以下 10万円
5億円超10億円以下 20万円
10億円超50億円以下 40万円
50億円超 60万円
契約金額の記載がない 200円

※上記は、不動産売買契約書に適用される軽減措置後の税額(2027年3月31日まで)です。詳細は国税庁の案内ページをご確認ください。

参考:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)

贈与税:時価よりも著しく低い価格で売却した場合に買い手が負担するおそれがある

共有名義不動産を売却する際、無償で譲渡していなくても、時価よりも著しく低い価格で売買を行うと、その差額は「みなし贈与」として扱われ、買主に贈与税が課税されるリスクがあります。

これは共有持分のみを売却した場合でも、不動産全体を売却した場合でも同様です。単に「有償にした」という事実だけでは足りず、取引価格が適正な時価に基づいているかどうかが重要な判断基準になります。

みなし贈与の考え方の例は以下のとおりです。

【みなし贈与の考え方の例】
本来1,000万円の価値がある共有持分を100万円で売却した場合、差額の900万円は「実質的に無償で利益を受けた」と評価され、贈与として扱われる可能性があります。

「著しく低い価額」に該当するかどうかに明確な割合基準はありません。取引当事者の関係性や周辺相場、売却経緯などを踏まえて個別に判断されます。また、ここでいう「時価」は当事者間で任意に決めた金額ではありません。土地や建物の通常の取引価額に相当する客観的な価値を基準に判断されます。

贈与税(暦年課税)には、1年間(1月1日〜12月31日)に受けた贈与の合計額から110万円の基礎控除があります。そのため、みなし贈与と評価される差額を含め、その年の贈与の総額が110万円以下であれば原則として贈与税は課されません。

なお、みなし贈与が認定された場合でも、売主側の譲渡所得税は原則として実際の売買価格を基準に計算されます。そのため、買主には贈与税が課税される一方で、売主の税額は減らず、双方に想定外の税負担が生じるケースがあります。

ただし、他の贈与と合算して110万円を超える場合や、差額自体が大きい場合は、超えた部分に対して贈与税が課税されます。

親族間売買や共有者間での持分売買は、価格が市場相場とかけ離れていないか確認されやすい取引です。極端に低い価格での売却は後日みなし贈与を指摘されるリスクがあるため、不動産会社の査定書など客観的な価格資料を残し、必要に応じて税理士へ事前相談しておくことが重要です。

【番外】消費税

不動産の売買では、すべての取引に消費税がかかるわけではありません。個人がマイホームや別荘などの非業務用不動産を売却する場合、原則として消費税は課税対象外です。したがって、通常の住宅売却であれば売主が消費税の申告・納税を行う必要はありません。

一方「事業として不動産を扱っている場合」は取扱いが異なります。売主が課税事業者に該当し、課税対象となる事業用建物(店舗・事務所など)を売却する場合には、建物部分に消費税が課され、申告・納税が必要になることがあります。ただし、居住用賃貸のみを行う個人など、免税事業者や非課税売上に該当する場合は課税されません。

なお、土地および借地権の売却は、個人・法人を問わず消費税の非課税取引です。消費税法上、土地の譲渡が非課税取引と定められているためです。

個人でも、不動産賃貸業などを営む課税事業者が事業用建物を売却する場合には、建物部分のみ消費税の申告・納税が必要になります。

共有名義不動産を売却したときにかかる譲渡所得税の計算方法

共有名義の不動産を売却して譲渡所得(売却益)が生じた場合、その譲渡所得に対して所得税(復興特別所得税を含む)と住民税が課されます。これらはまとめて「譲渡所得税」と呼ばれることもありますが、共有名義では不動産全体で一括課税されるのではなく、持分割合に応じて共有者ごとに譲渡所得を計算し、各自で申告・納税するのが原則です。

譲渡所得税の計算方法は以下のとおりです。

  1. 共有名義不動産の売却によって得られた利益(譲渡所得)を確認する
  2. 売却価額・取得費・譲渡費用を持分割合に応じて按分する
  3. 利用できる控除や特例を確認する
  4. ここまで求めた譲渡所得に税率をかけて譲渡所得税を計算する

以下では、共有名義不動産の売却における譲渡所得税の計算方法を、シミュレーションを交えながら解説します。

1.共有名義不動産の売却によって得られた利益(譲渡所得)を確認する

最初に、不動産全体の譲渡所得(売却による利益)を計算します。共有名義であっても、この段階では持分ごとに分けません。税務上は、まず不動産全体の譲渡所得を算出し、その後に持分割合で按分(譲渡所得を割合に応じて分割すること)する流れになるためです。

譲渡所得の計算式は次のとおりです。

譲渡所得 = 収入金額(売却代金)-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

各項目の概要は以下のとおりです。

項目 内容
取得費 購入代金・仲介手数料・登記費用など、不動産の取得に要した費用。
取得費を証明できない場合に限り、収入金額(売却代金)の5%を「概算取得費」として計算できる。
※概算取得費はあくまで例外的な取扱いであり、実額が確認できる場合は実額を用いるのが原則。
譲渡費用 購入代金・仲介手数料・登記費用など、不動産の取得に要した費用(契約締結や引渡しのために要した費用)。固定資産税や修繕費など、保有中の維持管理費用は含めない。
特別控除 一定の要件を満たす場合に差し引ける控除。
マイホームの売却(最大3,000万円)や公共事業のための売却(最大5,000万円)などが該当する。

それでは、実際に譲渡所得を計算してみましょう。

【条件】
収入金額(売却価格):5,000万円
取得費:700万円
譲渡費用:100万円

譲渡所得は次のとおりです。

5,000万円 −(700万円+100万円)= 4,200万円

この4,200万円が課税対象となる譲渡所得です。共有名義の場合は、この金額を次のステップで持分割合に応じて按分し、共有者ごとに税額を計算します。なお、特別控除の適用可否は共有者ごとに判定されるため、税額が人によって異なる場合があります。

2.売却価額・取得費・譲渡費用を持分割合に応じて按分する

前のステップで算出した不動産全体の金額を、売却価額・取得費・譲渡費用ごとに共有者の持分割合に応じて按分します。

【条件】
売却価格:5,000万円
取得費:700万円
譲渡費用:100万円
譲渡所得:4,200万円

たとえば、共有者が4人で持分が1/4ずつの場合、1人あたりの譲渡所得は次のとおりです。

4,200万円 ÷ 4 = 1,050万円

※説明を分かりやすくするため譲渡所得を直接按分して示していますが、実際の申告では各項目を個別に按分して計算します。

また、共有者が4人で、1人(A)の持分が1/2、残り3人(B・C・D)が1/6ずつの場合は以下のようになります。

・A:4,200万円 × 1/2 = 2,100万円
・B・C・D:4,200万円 × 1/6 = 700万円

※上記も理解を容易にするため譲渡所得を按分して示した例です。

なお、実際の計算では譲渡所得を単純に割るのではなく、売却価額・取得費・譲渡費用それぞれを持分割合で按分したうえで、各共有者ごとに譲渡所得を求めます。

按分の基準となる持分割合は原則として登記簿上の持分割合です。ただし、取得費の負担関係や遺産分割の内容などにより、税務上の帰属割合が異なると判断される場合もあります(例:代償分割・取得費負担割合が異なる場合など、実質的な取得者が異なると認められるケース)。

そのため、同じ不動産を売却しても、各共有者が申告する譲渡所得や納税額が異なることがあります(詳細は次項で解説します)。

3.利用できる控除や特例を確認する

共有名義の不動産を売却した場合でも、条件を満たせば税負担を軽減できる控除や特例を利用できます。とくにマイホームの売却や相続した空き家の処分では数百万円単位で税額が変わることも少なくありません。

ただし、共有名義の場合は特例の適用可否や控除額は、原則として「共有者ごと」に判断されます。同じ不動産を売却しても、共有者の状況によって使える制度や控除額が異なる場合があります。

主な特例と、共有名義における取扱いを整理すると次のとおりです。

特例・控除の名称 内容・共有名義での注意点
マイホーム(居住用)を売ったときの3,000万円特別控除 居住していたマイホームを売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除可能。
共有名義でも、実際に居住していた共有者ごとに最大3,000万円まで適用可能。
被相続人の居住用財産(空き家)売却時の特別控除 相続した空き家を一定の条件のもとで売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除可能。
共有名義の場合でも控除枠は物件単位で設定され、共有者ごとに増えるわけではなく、各共有者は持分割合に応じて按分した控除額を適用する。
※令和6年1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上の場合は、控除額の上限は相続人全体で2,000万円。
※耐震基準適合または解体後更地での売却などの要件あり
所有期間10年超のマイホーム売却時の軽減税率 所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分に所得税10%(復興特別所得税別)・住民税4%の軽減税率を適用。
共有名義でも、要件を満たす共有者ごとに適用でき、3,000万円特別控除との併用も可能。
マイホーム売却で損失が出た場合の損益通算・繰越控除 マイホームの売却で損失が生じ、住宅ローン残高が売却価格を上回るなど一定要件を満たす場合。
共有名義でも、共有者ごとに要件を満たせば適用可能(住宅ローン控除との併用は不可)。
平成21・22年取得土地の1,000万円特別控除 2009〜2010年に取得した土地等を売却した場合、譲渡所得から最大1,000万円を控除可能。
共有名義の場合は、持分割合に応じて按分して適用可能

次からは、代表的な特例ごとに内容や適用条件、共有名義での注意点を解説します。

マイホーム(居住用財産)売却時の3,000万円特別控除

共有名義の不動産を売却する際の代表的な特例の1つが「マイホーム(居住用財産)を譲渡した場合の3,000万円特別控除」です。

マイホーム(居住用財産)売却時の3,000万円特別控除とは、居住用として使用していた家屋およびその家屋とともに売った敷地・借地権の譲渡所得から、最高3,000万円まで控除できる特例です。

共有名義の場合でも、不動産全体で一括して判定するのではなく、共有者ごとに要件を満たすかどうかを判断し、要件を満たす共有者はそれぞれ最大3,000万円の控除を受けられます。

適用の可否は、住民票・使用状況・登記内容などの客観資料に基づき判定されます。また、本特例は譲渡する本人がその居住用財産の所有者であることが必要です。

マイホーム売却の特例なら共有者全員が特別控除の対象になる
【計算式】
課税対象となる譲渡所得(各共有者)=(譲渡所得額 × 持分割合)- 3,000万円

先ほどの譲渡所得4,200万円を例に確認します。

【条件】
・共有者:4人(持分1/4ずつ)
・按分前の譲渡所得:4,200万円

この場合、1人あたりの譲渡所得は以下のように計算されます。

・4,200万円 ÷ 4 = 1,050万円
・1,050万円 − 3,000万円 = △1,950万円

控除後の金額が0円以下となる場合、その共有者について所得税・住民税の課税は生じません。共有持分のみを売却する場合でも、その持分が自己の居住用財産に該当する部分であれば、本特例の対象となる可能性があります。

ただし、居住用家屋を所有していない共有者が敷地のみを譲渡する場合は、本特例の対象となりません。

また、この特例は、次のような家屋には適用対象外です。

  • この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
  • 仮住まいなど一時的な目的で入居したと認められる家屋
  • 別荘など主として趣味・娯楽・保養のために所有する家屋

以前に住んでいた家屋を売る場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが必要です。なお、親子・夫婦など特別の関係がある人への譲渡は対象外となる点にも注意しましょう。

本特例の適用を受けるには確定申告が必要です。条件を満たす場合は忘れずに申告しましょう。

参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例
参考:国税庁「No.3308 共有のマイホームを売ったとき

被相続人の居住用財産(空き家)売却時の特別控除の特例

被相続人の居住用財産(空き家)売却時の特別控除は、被相続人(亡くなった方)が生前に居住していた住宅を相続し、一定の要件を満たして売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」で、2016年度の税制改正により創設され、その後の改正により適用期限が延長されている期限付きの特例です。

昭和56年5月31日以前に建築された一戸建住宅(その敷地を含む)で、相続時に区分所有建物登記がされていないものが対象となります。

原則として、相続開始直前に被相続人以外の者が居住していた住宅は対象外です(老人ホーム入所に伴う空き家等の例外を除く)。

また、相続から譲渡までの間、居住・賃貸・事業の用に供されていない「空き家状態」である必要があります(管理のための一時的な立入り等は妨げません)。共有名義で相続した場合でも、控除額は1つの被相続人居住用家屋の譲渡につき1回のみ適用され、共有者ごとに増額されません。

主な適用要件は以下のとおりです。

  • 相続した家屋または敷地を、相続開始日から3年を経過する年の12月31日までに譲渡すること
  • 耐震改修により新耐震基準に適合させるか、または建物を取り壊して更地で譲渡すること
  • 譲渡価格が1億円以下であること
  • 親族など特別の関係がある者への譲渡でないこと

家屋を取り壊して譲渡する場合は、相続開始から譲渡までの間に敷地を貸付け等に供していないことも必要です。

【具体例】
昭和48年築の戸建てに1人で住んでいた父が死亡し、長女が相続後1年以内に2,500万円で売却したケースです。

売却前に耐震改修を行っていたため、譲渡所得から最大3,000万円の特別控除を適用できました。

なお、本特例は、居住用財産の3,000万円特別控除・軽減税率・買換え特例など、居住用財産の譲渡所得に関する他の特例とは併用できません。一方、相続税の取得費加算の特例は併用可能です。

なお、本制度は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象です。令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は、控除上限は相続人全体で2,000万円となります。

参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

所有期間10年超のマイホーム(居住用財産)売却時の軽減税率の特例

マイホーム(売主本人が居住していた家屋またはその敷地)の所有期間が10年を超える場合、一定の要件を満たすと、長期譲渡所得に対して通常より低い税率が適用される「軽減税率の特例」を利用できます。

適用には、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていることが必要です。

なお、売主が居住しなくなった家屋を売却する場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する必要があります。

本特例が適用される場合の税率は次のとおりです。

課税長期譲渡所得金額 所得税(復興特別所得税込) 住民税率 合計税率
6,000万円以下の部分 10.21% 4% 14.21%
6,000万円超の部分 15.315% 5% 20.315%

※所得税率には復興特別所得税(所得税額×2.1%)を含みます。
※軽減税率は、3,000万円特別控除などを適用した後の「課税長期譲渡所得金額」に対して適用されます。
※共有名義の場合は、持分割合に応じて按分したうえで、共有者ごとに「課税長期譲渡所得金額」を算出し、それぞれ判定します(6,000万円の区分も共有者ごとです)。

具体例をみてみましょう。

【具体例】
15年前に購入したマイホームを1億2,000万円で売却し、取得費・譲渡費用控除後の譲渡所得が1億円の場合

※以下の例では、3,000万円特別控除適用後の課税長期譲渡所得が1億円であるものとします。

6,000万円 × 14.21% = 852万6,000円
4,000万円 × 20.315% = 812万6,000円
合計税額:1,665万2,000円

通常の長期譲渡所得の税率(20.315%)と比べ、6,000万円以下の部分の税率が軽減されます。

本特例は「マイホームの3,000万円特別控除」と併用可能です。一方で「特定の居住用財産の買換え特例」とは併用できません。

複数の特例が適用できる場合は、税額を試算し「3,000万円特別控除のみ」か「軽減税率併用」かなどを比較したうえで、最も有利となる制度を選択する必要があります。

参考:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例

特定のマイホーム(居住用財産)の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

住宅ローン残高を下回る価格でマイホームを売却し譲渡損失が生じた場合、一定の要件を満たせば、その損失を給与所得や事業所得など他の所得から差し引く「損益通算」や、控除しきれなかった損失の繰越控除ができます。これを「特定のマイホーム(居住用財産)の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」といいます。

本特例は、2025年(令和7年)12月31日までの譲渡が対象となる期限付きの制度です。

※現行制度では2025年12月31日までの譲渡が対象とされており、2026年以降の譲渡には適用できません(今後の税制改正により延長される可能性はあります)。

損益通算とは、ある所得で生じた損失を、他の所得から差し引いて税負担を軽減できる制度。

損益通算できる損失額の上限は「譲渡損失額」と「売却時の住宅ローン残高 − 譲渡価額」のいずれか少ない金額までです。

控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡した年の翌年以後3年間にわたり、各年の所得から順次繰越控除できます(売却した年を含めると最長4年間)。

なお、共有名義不動産の場合でも、各共有者の持分に対応する譲渡損失について、それぞれ損益通算および繰越控除を行います。

主な要件は以下のとおりです。

  • 譲渡した不動産が自己の居住用財産であること
  • 譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること
  • 売却時点で返済期間10年以上の住宅ローン残高があること
  • 親族など特別の関係がある者への譲渡でないこと
  • 譲渡した年の前年および前々年に、居住用財産の3,000万円特別控除や軽減税率の特例などを適用していないこと
  • 譲渡した年の前年12月31日に居住しているか、または過去3年以内に居住していたこと

具体例をみてみましょう。

【具体例】
5,000万円で購入したマイホームを3,000万円で売却し、2,000万円の譲渡損失が出た場合。

売却時点の住宅ローン残高が3,000万円だったため、損益通算できる損失の上限は「住宅ローン残高 − 売却価格」に基づき、1,000万円。

当年の給与所得が400万円だった場合、400万円を損益通算で差し引き、所得をゼロにできます。

残り600万円は、翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の給与所得などから順次控除できます。

なお、本特例は住宅ローン控除との併用はできません。適用を受けるには確定申告が必要です。

参考:国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき
参考:国税庁「No.2250 損益通算

特定のマイホームを買い換えたときの特例

令和7年(2025年)12月31日までに居住用のマイホームを売却し、新たなマイホームへ買い換えた場合、一定の要件を満たすことで、売却益にかかる譲渡所得税等の課税を将来に繰り延べる特例があります。

※本制度は期限付きの特例であり、現時点では延長は公表されていません(今後の税制改正により変更される可能性があります)。

特定のマイホームを買い換えたときの特例

主な要件は以下のとおりです。

  • 売却した住宅および買い換えた住宅が、日本国内にあること
  • 売却した住宅が自己の居住用財産であること(現に居住している家屋、または住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る家屋など)
  • 譲渡した年の1月1日時点で、売却した家屋・敷地の所有期間が10年を超え、かつ居住期間が10年以上であること
  • 売却代金(一定の場合は分割して売却した部分を含む)が1億円以下であること
  • 売却した年の前年・当年・翌年の3年間の間に新居を取得し、取得時期に応じた期限(原則:取得年の翌年12月31日まで)までに居住すること
  • 買い換えた住宅の床面積が50㎡以上で、土地の面積が500㎡以下であること
  • 譲渡先が親族など特別の関係がある者でないこと

本特例は「税金が免除される制度」ではなく、売却益相当額を買い換えた新居の取得費から差し引くことで、課税を将来に先送りする仕組みです(取得費の繰下げ)。

そのため、新居を将来売却する際には、取得費が小さくなる分、今回繰り延べた売却益を含めて譲渡所得を計算することになり、税負担が大きくなる可能性があります。

特例の適用イメージは以下のとおりです。

【イメージ】
1,000万円で購入した旧宅を5,000万円で売却し、7,000万円の新居に買い換えた場合、通常は4,000万円の譲渡益に課税されます。

本特例を利用すると売却時には課税されず、新居を将来売却する際に、繰り延べた譲渡益を含めて精算します。
※説明を簡潔にするため減価償却等は考慮していません。

なお「マイホームの3,000万円特別控除」「所有期間10年超の軽減税率の特例」「譲渡損失の損益通算・繰越控除」とは同一年中は併用できません。

また、本特例の適用を受けた場合、住宅ローン控除は原則として併用できない点にも注意しましょう。

共有名義の場合は、共有者ごとに居住要件・所有期間要件などを満たしているかにより、適用可否が判定されます。

参考:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例

平成21・平成22年に取得した国内の土地を譲渡したときの1,000万円の特別控除の特例

平成21年(2009年)または平成22年(2010年)に個人が取得した国内の土地、または借地権を譲渡した場合、一定の要件を満たすことで、その譲渡所得から最大1,000万円を控除できる特例です。この特例は譲渡時期の制限はなく、対象となる年に取得した土地であれば将来の売却でも適用できます。

対象となる土地は居住用・事業用・貸付用を問わず適用できますが、建物部分は対象外であり、土地(借地権)の譲渡所得に限って控除が認められます。

本特例は、売買などにより対価を支払って取得した土地が対象となり、法人による譲渡は対象外です。

なお、次のようなケースでは適用できません。

  • 相続や贈与により取得した土地を譲渡した場合
  • 親族など特別関係者への譲渡
  • 同一の土地の譲渡について、収用・交換・買換え特例など他の譲渡所得の特例を適用する場合
  • 譲渡損失となる場合

共有名義で取得した土地については、共有者ごとに最大1,000万円の控除を適用できます。

また、本特例は同一の譲渡について「マイホームの3,000万円特別控除」や「軽減税率の特例」などと併用することはできません。

適用を受けるためには、確定申告で特例の適用を申告する必要があります。

参考:国税庁「No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除

4.ここまで求めた譲渡所得に税率をかけて譲渡所得にかかる税額を計算する

ここまでに算出した「課税譲渡所得金額」に、所有期間に応じた税率をかけて、所得税(復興特別所得税を含む)および住民税を計算します。税率の詳細は「譲渡所得税・復興特別所得税・住民税:共有名義不動産の売却益に応じて負担」をご参照ください。

共有名義の場合は、まず共有者ごとに持分割合に応じて課税譲渡所得金額を按分し、そのうえで各共有者が自分の税額を計算します。

計算の流れは以下のとおりです。

【条件】
・1人あたりの課税譲渡所得金額:1,050万円
・所有期間:10年(長期譲渡所得)
・特例は利用しない

【計算例】
・所得税(復興特別所得税含む):1,050万円 × 15.315% = 160万8,075円
・住民税:1,050万円 × 5% = 52万5,000円
・合計税額:213万3,075円

税額は不動産全体の売却価格ではなく、各共有者の課税譲渡所得金額に応じて課税されます。共有者ごとに納税義務が独立しているため、確定申告もそれぞれが行います。

確定申告の手続きについては「共有名義不動産を売却したときの確定申告の流れ」をご覧ください。

共有名義不動産の売却にかかる税金のシミュレーション

共有名義の不動産を売却する場合、税金は共有者ごとに譲渡所得を按分して計算します。どのような税金がかかるかだけでなく「1人あたりどのくらいの税負担になるのか」を把握しておくことが大切です。

とくに数千万円規模の売却では、課税額が数百万円単位になるケースもあるため、事前の試算が欠かせません。

ここでは、共有不動産を「全体で売却する場合」と「自分の持分のみを売却する場合」に分けて、譲渡所得税・印紙税・登録免許税のおおよその金額を具体例で解説します。

共有不動産全体の売却にかかる税金

ここでは、4人で1/4ずつ共有している不動産を、全体で1億2,000万円(建物4,000万円+土地8,000万円)で売却したケースを想定します。取得費や譲渡費用を差し引いた結果、譲渡所得は1億円となり、持分割合に応じて各自の譲渡所得を計算します。

【前提条件】
・共有者:4人(各1/4持分)
・譲渡所得(全体):1億円
・対象不動産:居住用として使用していた建物および土地
・所有期間:10年(長期譲渡所得)
・特例:利用しない

【税額シミュレーション】
■所得税+住民税(譲渡所得に対する税)
1億円 ÷ 4 × 20.315% = 約507万9,000円(1人あたり)
※上記の税率20.315%は、所有期間が5年を超える「長期譲渡所得」の場合の税率で、復興特別所得税を含んだ割合です。所有期間が5年以下の「短期譲渡所得」の場合は39.63%となり、税負担は大きくなります。

■印紙税(売買契約書)
売買額1億2,000万円に対して:6万円
※契約書が1通の場合の総額
※印紙税額は契約金額に応じて段階的に定められています(例:1億円超〜5億円以下=6万円)
※電子契約(電子署名)を利用した場合、印紙税は不要です。

■登録免許税(※軽減税率を適用・売主が全額負担する場合)
・土地:8,000万円 × 1.5% = 120万円
・建物:4,000万円 × 0.3% = 12万円
合計:132万円

※登録免許税は原則として買主が負担しますが、契約内容によっては売主が負担する場合もあります。住宅用家屋の軽減税率は、土地1.5%(令和8年3月31日まで)・建物0.3%(令和9年3月31日まで)と、それぞれ適用期限が異なります(いずれも一定の要件を満たす場合)。

■合計税額(1人あたり)
約507万9,000円(所得税+住民税)+1万5,000円(印紙税相当)+33万円(登録免許税)=約542万4,000円
※登録免許税を4人で等分した場合(実務上は買主負担が一般的)
※実際の金額はあくまで目安です。

3,000万円特別控除が各共有者に適用される場合は、各人の譲渡所得(2,500万円)は控除額の範囲内に収まるため、課税譲渡所得は生じず、所得税・住民税は発生しません。

この場合、実際にかかる税金は印紙税(6万円)のみです。

なお、この特例は実際に居住していた共有者本人に限り適用され、共有者ごとに要件を満たすかどうかで判断されます。名義のみを保有していた場合や、居住実態がない場合は対象外です。

共有持分のみの売却にかかる税金

次に、4人共有の不動産のうち、1人だけが自分の持分(1/4)を第三者に3,000万円(建物1,000万円+土地2,000万円)で売却したケースを想定します。取得費や譲渡費用を差し引いた結果、譲渡所得は2,500万円とします。

【前提条件】
・売却者:共有者のうち1人(1/4持分)
・売却価額:3,000万円(建物1,000万円+土地2,000万円)
・譲渡所得:2,500万円
・対象不動産:居住用として使用していた建物および土地
・所有期間:10年(長期譲渡所得)
・特例:利用しない

【税額シミュレーション】
■所得税+住民税(譲渡所得に対する税)
2,500万円 × 20.315% = 約507万9,000円
※上記の税率20.315%は長期譲渡所得の場合の税率(復興特別所得税を含む)です。
短期譲渡所得(所有期間5年以下)の場合は39.63%となります。

■印紙税(売買契約書)
売買額3,000万円に対して:1万円
※契約書が1通の場合の総額
※電子契約(電子署名)を利用した場合、印紙税は不要です。

■登録免許税(※軽減税率を適用・売主が負担する場合)
・土地:2,000万円 × 1.5% = 30万円
・建物:1,000万円 × 0.3% = 3万円
合計:33万円

※登録免許税は原則として買主が負担しますが、契約内容によっては売主が負担する場合もあります。住宅用家屋の軽減税率は、土地1.5%(令和8年3月31日まで)・建物0.3%(令和9年3月31日まで)と、それぞれ適用期限が異なります(いずれも一定の要件を満たす場合)。

■合計税額(売主が全額負担する場合)
約507万9,000円(所得税+住民税)+1万円(印紙税)+33万円(登録免許税)
=約541万9,000円
※実際の金額はあくまで目安です。

各共有者の譲渡所得(2,500万円)は3,000万円特別控除額を下回るため、課税譲渡所得は生じず所得税・住民税は発生しません。この場合、実際にかかる税金は印紙税のみとなります。

なお「3,000万円特別控除」は実際に居住していた共有者本人に限り適用され、共有者ごとに要件を満たすかどうかで判断されます。名義のみを保有していた場合や、居住実態がない場合は対象外です。

共有名義不動産を売却したら確定申告は必要?

共有名義の不動産を売却した場合、確定申告が必要かどうかは「利益が出たか」「特例を使うか」によって異なります。

また共有名義では、不動産全体をまとめて申告することはできず、各共有者が自分の持分割合に応じて譲渡所得を計算し、それぞれ個別に申告手続きを行います。 申告漏れを防ぐためにも、あらかじめ持分ごとの所得を把握しておくことが大切です。

ここでは、共有名義不動産の売却で「確定申告が必要なケース」と「不要なケース」を整理して解説します。

譲渡所得が発生した場合は「共有名義不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日まで」に確定申告が必要

不動産の売却によって譲渡所得(利益)が生じる場合は、原則として確定申告が必要です。共有名義では、不動産全体の譲渡所得を持分割合に応じて按分し、各共有者がそれぞれ自分の税額を計算して申告します。

確定申告の期限は「不動産を売却した年の翌年2月16日〜3月15日」です。期限内に申告を行わない場合、無申告加算税や延滞税などの追徴課税が課される可能性があります。

詳細は「確定申告期限を過ぎたときは早めに申告して追徴課税を支払う」をご覧ください。

譲渡所得が発生しない場合は確定申告は原則不要

共有名義不動産の売却で、売却額が取得費や譲渡費用を下回り「譲渡損失」となる場合は、原則として税金は発生しません。

ただし、次の制度を利用する場合は、税額が0円であっても確定申告が必要です。これらは申告しなければ適用されません。

  • 給与所得・事業所得などと相殺できる「譲渡損失の損益通算」
  • 控除しきれない損失を翌年以降に繰り越せる「繰越控除」

また、利益が出ていない場合でも、次の特例を適用する際は確定申告を行います。

  • マイホーム(居住用財産)売却時の3,000万円特別控除
  • 特定空き家に係る譲渡所得の特別控除
  • 軽減税率の特例

このように、共有名義不動産の売却では、税金がかからない場合であっても必ずしも申告が不要とは限らないため、特例の適用可否を確認したうえで申告するか判断することが重要です。

共有名義不動産を売却したときの確定申告の流れ

共有名義の不動産を売却した場合、各共有者が自分の持分に応じて譲渡所得を計算し、個別に確定申告を行います。

ここでは、代表的なケースとして年末調整済みの給与所得者を例に、共有名義不動産を売却した際の一般的な確定申告の流れを紹介します。

なお、自営業者や年金受給者など給与所得者以外の場合は、所得の種類に応じて申告内容が一部異なることがあります。

  1. 確定申告に必要な書類を集める
  2. 譲渡所得・納税額などを計算して確定申告書などへ記入する
  3. 売却した年の翌年の2月16日~3月15日の間に納税地の税務署へ申告する
  4. 確定申告期限を過ぎたときは早めに申告して追徴課税を支払う

給与所得以外に事業所得や不動産所得などがある場合は、それらも含めて申告します。また、確定申告の内容は原則として住民税にも反映されますが、自治体によっては別途申告が必要となる場合があります。

ここでは、それぞれの流れを順に詳しく解説します。

確定申告に必要な書類を集める

譲渡所得の計算と申告に必要な書類を事前に準備します。なお、共有名義の場合でも、必要書類は原則として各共有者ごとに用意します(コピーの使い回しは可能)。

共有名義不動産の確定申告で主に使用する書類は次のとおりです。

必要書類 概要・入手場所等
確定申告書第三表(分離課税用) 土地・建物の譲渡所得を申告する際に使用する書式。第一表・第二表とは別様式。税務署または国税庁サイトから入手。
確定申告書第一表・第二表 給与所得など他の所得や税額を記入する書類。年末調整済みの場合は源泉徴収票を基に記載する。税務署窓口や国税庁の公式サイトにて入手。
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細表)【土地・建物用】 売却価額・取得費・譲渡費用などを計算するための明細書。国税庁サイトまたは税務署で入手。
本人確認書類 確定申告書提出時に必要。マイナンバーカード、または通知カード+本人確認書類の写し。
源泉徴収票 給与所得がある場合に必要。勤務先で入手。
売買契約書(購入時・売却時) 取得費・譲渡価額の確認資料として使用。コピーを保存。
取得費が確認できる領収書等 仲介手数料、登記費用、リフォーム費など取得費の証明資料。
譲渡費用が確認できる領収書等 仲介手数料、測量費、印紙税などの証明資料。
登記事項証明書 所有者・地番・面積など申告内容の確認資料として使用(特例適用時に提出を求められる場合あり)。法務局での窓口やオンライン申請で入手。

※譲渡所得の確定申告では、申告書・計算明細書など一部の書類のみ提出し、契約書や領収書など多くの資料は提出せず保存します。税務署から求められた場合に提示できるよう保管しましょう。

e-Tax(電子申告)の場合も同様に、関連書類は原則として申告期限から5年間保存が必要です。また、損益通算や繰越控除などの特例を適用する場合は、保存期間が7年となる場合があります。

また、譲渡所得がマイナスの場合でも損益通算や繰越控除などの特例を適用する場合は、証明書類の添付提出が必要になることがあります。

特別控除などを適用する場合は追加書類が必要になる場合があります。詳細は国税庁の資料をご確認ください。

参考:国税庁「土地や建物などの譲渡所得について主な特例の適用を受ける場合の申告書添付書類チェックシート

譲渡所得・納税額などを計算して確定申告書などへ記入する

必要書類を基に、譲渡所得を計算し、申告書の所定欄へ記入していきます。スムーズに作成するには、次の順番で進めるのがよいでしょう。

  1. 譲渡所得の内訳書を作成し、譲渡所得・取得費・譲渡費用を計算する
  2. 第三表(分離課税用)を作成する
  3. 源泉徴収票を基に第一表・第二表を作成する
  4. 第一表へ第三表の税額を転記して申告書を完成させる

最初に作成する譲渡所得の内訳書には「売却した共有名義不動産の情報」「購入(建築)金額」「売買にかかった各種費用」「譲渡所得の金額」などを記入します。共有名義の場合でも、譲渡所得の内訳書は共有者ごとに作成し、売却代金や費用を全額記入するのではなく、持分割合で按分した金額を記載します。

3,000万円特別控除などの特例を適用する場合は、対応する欄にその旨を記載しましょう。所得や控除の差し引きがイメージしづらいときは、以下の財務省の図を参考にしてください。

所得税計算の仕組みのイメージ

出典:財務省「所得税計算の仕組み(イメージ)

不動産の譲渡所得は「申告分離課税」で、給与所得などとは合算せず別計算で税率が決まります。税率は給与額ではなく、不動産の所有期間(売却した年の1月1日時点で5年以下・5年超)によって決まるため、給与の税率を使って計算しないよう注意してください。

譲渡所得以外にも不動産関係の収入があるときは申告する

不動産投資や賃貸物件経営をしている人は、譲渡所得以外の収入もあわせて申告が必要です。

不動産関係(家賃収入・地代収入など)は通常「不動産所得」として第一表の該当欄に記入します。

なお、一時的・継続性のない貸付などは雑所得として扱われる場合があります。

配偶者控除や特別配偶者控除があるときは注意する

不動産の譲渡所得を含めた合計所得金額が増えると、配偶者控除・配偶者特別控除の適用可否に影響する場合があります。

配偶者控除の主な要件は「控除を受ける人(納税者本人)の合計所得金額が1,000万円以下」であることです。そのため、売却により所得が増加した場合は対象外となる可能性があります。

なお、社会保険の扶養判定は所得税の控除とは別制度であり、加入している健康保険の基準によって判断されます。

課税所得が増加したときは、所得税・住民税の税額全体にも影響が及ぶ点に注意しましょう。

売却した年の翌年の2月16日~3月15日の間に納税地の税務署へ申告する

確定申告書を作成したら、売却した年の翌年2月16日から3月15日までに、申告および納付を行わなければなりません。提出先は、原則としてその年の1月1日現在の住所地を管轄する税務署です(事業所等がある場合はその所在地となる場合があります)。

提出方法は主に次の4つです。

方法 概要 留意点
税務署窓口へ持参 税務署へ直接提出する方法。 混雑する時期があり、待ち時間が発生する場合がある。
郵送(3月15日消印有効) 郵送で提出する方法。 記載不備があってもその場で確認できない。
e-Tax(電子申告) インターネットを利用して申告する方法。24時間利用可能。 利用者識別番号やマイナンバーカード等の準備が必要。
時間外収受箱への投函 税務署の時間外収受箱に投函する方法。 受付印が押されないため、提出日の確認ができる方法(郵送など)を利用するほうが確実。

納税額も、原則として同期間内に納付する必要があります(期限日が土日祝日の場合は翌開庁日)。納付方法には、振替納税、ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード納付などがあります。

詳細は国税庁の公式ページをご確認ください。

参考:国税庁「納税の方法

確定申告期限を過ぎたときは早めに申告して追徴課税を支払う

確定申告の期限(原則として翌年3月15日)を過ぎてしまった場合でも、できるだけ早く申告と納付を行うことが重要です。申告や納付が遅れるほど、加算税や延滞税といった追徴課税の負担が大きくなります。また、申告内容に誤りがあって税額が少なかった場合も、追加で税金を課される可能性があります。

追徴課税とは、本来納めるべき税額に上乗せして課される税金で、状況に応じて次のような種類があります。

追徴課税の種類 概要
無申告加算税 期限までに申告しなかった場合に課される。
・50万円以下の部分:15%
・50万円超~300万円以下の部分:20%
・300万円超の部分:30%
※税務署から調査の通知を受ける前に、法定申告期限から1ヵ月以内に自主的に期限後申告を行い、かつ期限内に納付しているなど一定の要件を満たす場合は、無申告加算税が課されない、または軽減されることがある。
過少申告加算税 期限内に申告したが税額が少なかった場合に課される。
・原則:追加税額の10%
・期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分:15%
※税務署から調査の通知を受ける前に自主的に修正申告を行った場合は、税率が軽減されることがある。
重加算税 所得の隠蔽や虚偽記載など、悪質な行為がある場合に課される。
・過少申告の場合:35%
・無申告の場合:40%
延滞税 納付期限の翌日から完納日までの日数に応じて課される。
税率は毎年見直され「特例基準割合」に基づいて決定される。
(例:2025年中の延滞税率は、期限から2ヵ月以内は年2.4%、それ以降は年8.7%)
※最新の税率は国税庁の公式サイトで確認が必要。

税務署から調査の通知を受ける前に自主的に期限後申告や修正申告を行えば、加算税が軽減または課されない場合があります。延滞税は日数に応じて増加するため、気付いた時点で速やかに対応することが重要です。

参考:財務省「加算税の概要
参考:国税庁「延滞税の計算方法

確定申告書の作成が難しいときは確定申告書等作成コーナー・クラウド会計ソフトを活用する

「確定申告のやり方が難しい」「書類の書き方がわからない」という場合は、国税庁の確定申告書等作成コーナーや、民間のクラウド会計ソフトを活用するとスムーズです。

これらのサービスは、入力した数値をもとに自動計算を行い、計算ミスや記載漏れを防ぎながら申告書を作成できる仕組みになっています。作成したデータは印刷して提出することも、e-Tax(電子申告)で送信することも可能です。

ただし、どの方法を利用する場合でも、申告内容の最終確認や判断の責任は申告者本人にあります。入力内容に誤りがあれば、加算税や延滞税の対象となる可能性もあるため注意が必要です。

確定申告書等作成コーナー

確定申告書等作成コーナーは、国税庁が提供する無料のオンラインサービスです。画面の案内に従って金額や必要事項を入力するだけで、確定申告書や譲渡所得の内訳書を作成できます。

土地・建物の譲渡所得にも対応しており、共有名義の場合は各共有者ごとに内訳書を作成し、持分割合に応じた金額を入力することで税額計算が行われます。

確定申告書等コーナーの譲渡所得税の計算

出典:国税庁「譲渡所得の申告のしかた

作成した申告書は、印刷して提出するほか、e-Taxを利用してオンライン送信することも可能です。

現在はマイナンバーカード方式による電子申告が主流です。スマートフォンからの作成・送信にも対応しており、マイナンバーカード対応端末と専用アプリを利用すれば、税務署へ行かずに申告を完了できます。

詳細は国税庁の「確定申告書等作成コーナー」をご覧ください。

クラウド会計ソフト

大手のクラウド会計ソフトでも、必要事項を入力するだけで確定申告書や譲渡所得の内訳書を作成できます。

自動計算機能や入力サポート機能が充実しているため、簿記や税務の知識がない場合でも比較的スムーズに作成が可能です。e-Taxと連携してそのまま電子申告できるサービスもあります。不動産所得や事業所得、副業収入など複数の所得を管理している人にとっては、日々の帳簿管理から申告まで一元管理できる点がメリットです。

ただし、サービスによっては土地・建物の譲渡所得に対応していない場合や、有料プランが必要となる場合もあります。

共有名義不動産の売却をスムーズに進めるなら専門家の力を借りるのがおすすめ

共有名義不動産の売却には、適正な査定、共有者間の合意形成、登記手続き、税金の計算や確定申告など、幅広い専門知識が必要です。とくに共有者が複数いる場合は、意思決定の調整や書類準備に時間を要し、思わぬトラブルに発展することもあります。

売却の内容や状況に応じて適切な専門家に相談することで、手続きの負担や法的・税務上のリスクを抑えられます。

専門家 主な相談内容 依頼のメリット
税理士 譲渡所得税の計算、確定申告、各種特例の適用判断 税負担を適正化し、申告ミスや税務リスクを防げる
司法書士 所有権移転登記、抵当権抹消登記、相続登記 登記手続きを正確かつ円滑に進められる
買取業者 共有持分単独の売却、訳あり物件の処分 買主探し不要で早期現金化が可能

以下では、それぞれの専門家に相談すべきケースを解説します。

税金・確定申告についてなら税理士に相談する

共有名義不動産や共有持分を売却した場合、持分割合に応じた譲渡所得税の計算や特例の適用判断が必要になります。とくに、取得費が不明な場合や相続が絡む場合は、制度の適用可否によって税額が大きく変わることもあります。計算や申告に不安がある場合は、税理士に相談するとよいでしょう。

不動産に強い税理士に相談するメリットは次のとおりです。

  • 共有名義不動産、共有持分、相続などが絡んだ複雑な譲渡所得税の計算に対応できる
  • 譲渡所得税だけでなく、事業所得など他の所得と合わせた確定申告を一括で依頼できる
  • 概算取得費の適用判断や、3,000万円特別控除・取得費加算の特例などの適用可否を検討できる
  • 税務調査への対応や税務リスクの軽減につながる

取得費や控除の適用を誤ると、本来より多く税金を納めてしまう可能性があります。税理士の確認を受けることで、制度を正しく活用しながら適正な税額で申告できます。

登記については司法書士に相談する

共有名義不動産を売却する際は、所有権移転登記や抵当権抹消登記などの手続きが必要になります。とくに共有名義の場合は、共有者全員の意思確認や実印の押印、印鑑証明書の準備などが求められ、手続きが複雑になりやすいのが特徴です。

これらの登記は法律に基づいて正確に書類を作成する必要があるため、司法書士に相談するのが一般的です。

司法書士は、売却時に必要となる抵当権抹消登記や所有権移転登記、相続が絡む場合の相続登記などに対応できます。なお、相続登記は2024年4月から義務化されており、未登記の場合は売却前に手続きを済ませる必要があります。

ただし、土地を分筆する場合の表示変更登記や境界確定、測量業務は土地家屋調査士の業務です。分筆を伴う売却では、司法書士と土地家屋調査士が連携して対応することになります。

共有者との合意が得られない場合や、共有物分割請求を検討する場合は、弁護士への相談が適しています。

共有持分単独の売却なら買取業者への売却を検討する

共有持分のみを売却したい場合は、訳あり物件を専門とする買取業者への売却を検討する方法があります。

買取業者は自社で不動産を直接買い取るため、仲介のように買主を探す期間が不要で、短期間で現金化できるのが特徴です。契約条件によっては契約不適合責任を免責とするケースもあり、現況のまま売却できる場合があります。

一方で、市場での仲介売却と比べると価格は低くなる傾向があります。「価格よりもスピードや確実性を重視したい」場合に適した選択肢といえるでしょう。

まとめ

共有名義の不動産を売却した場合、譲渡所得税をはじめ、登録免許税や印紙税などの税金が発生します。売却益が出たときは確定申告が必要で、共有者それぞれが持分割合に応じて譲渡所得を計算し、個別に申告を行わなければなりません。

共有名義であっても税金の仕組み自体は単独名義と同じですが、売却代金や取得費を持分で按分する点が大きな特徴です。計算や特例の適用を誤ると、本来より多く税金を納めてしまう可能性もあります。

税金や登記などの手続きは複雑になりやすいため、専門家と連携して進めるのがおすすめです。税金や確定申告は税理士に、登記や名義変更は司法書士に、共有持分のみを売却したい場合は共有不動産にも対応できる買取業者に相談するとよいでしょう。

専門家のサポートを受けることで、手続きのミスやトラブルを防ぎ、共有名義不動産の売却から確定申告までをスムーズに進められます。

将来の税負担や手取り額を見据えたうえで、売却前の段階から税金対策を検討しておくことが重要です。

共有名義不動産と共有持分の税金・売却についてよくある質問

共有名義不動産を取得したときにかかる税金・費用はありますか?

共有名義不動産を購入した場合には、不動産取得税、所有権移転登記などの登録免許税、売買契約書を作成した場合には印紙税がかかります。居住用として取得した場合は、不動産取得税や登録免許税に軽減措置が適用されるケースがあります。

共有持分を贈与によって取得した場合は贈与税が課されます。また、相続によって取得した場合は、基礎控除を超える場合に相続税が課税されるほか、相続登記の登録免許税が必要です。

これらの税金や費用は、実務上は持分割合に応じて各共有者が負担するのが一般的です。

共有名義不動産を所有しているときにかかる税金・費用はなんですか?

共有名義不動産を所有している場合、主に固定資産税と都市計画税がかかります。

固定資産税は「固定資産税評価額×標準税率(原則1.4%)」で計算されます。ただし、税率は自治体の条例によって異なる場合があります。

都市計画税は「固定資産税評価額×税率(上限0.3%)」で計算され、市街化区域内の土地・建物が対象です。

共有名義の場合、固定資産税・都市計画税の納税義務は共有者全員にあり、法律上は連帯納付義務となります。実務上は代表者に納税通知書が送付されることが多く、共有者間で持分割合に応じて精算するのが一般的です。

また、賃貸として家賃収入を得ており、一定規模以上(5棟10室基準など)で不動産貸付業に該当する場合は、個人事業税が課される可能性があります。

共有名義不動産全体の売却で1人でも不明者がいるときはどうすればよいですか?

共有名義不動産を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。そのため、共有者のうち1人でも所在がわからない場合は、そのままでは売却を進めることができません。

ただし、2023年の民法改正により、所在等不明共有者がいる場合には、裁判所の許可を得ることで不明者以外の共有者の同意により売却できる制度が創設されました。(民法第251条の2

また、所在不明者がいる場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、選任された管理人が代理人として売却に関与する方法もあります。相続人が確定していない場合などには、相続財産清算人の選任が必要になるケースもあります。

これらの手続きはいずれも家庭裁判所への申立てが必要であり、要件や手続きも複雑なため、弁護士などの専門家へ相談するのが一般的です。

共有名義不動産の売却時に税金以外で必要な費用はなんですか?

共有名義不動産を売却する際には、税金以外にも費用がかかります。

売却時に必要になる可能性がある主な費用は次のとおりです。

費用 概要
仲介手数料 不動産仲介で売買が成立した際に売却価格に応じてかかる手数料の上限
・200万円以下の部分:売却価格×5%+消費税
・200万超400万円以下の部分:売却価格×4%+消費税
・400万円超の部分:売却価格×3%+消費税
司法書士報酬(1件あたり) 抵当権抹消登記:1~2万円
所有権移転登記:3~4万円
相続登記:6~10万円
住宅ローンの残債 売却時に一括返済が必要となる住宅ローンの残高+繰上返済手数料など
引越し費用 15万~20万円
ハウスクリーニング代 5万~20万円
測量費 30万~80万円
建物解体費用 80万~180万円
必要書類関係でかかる費用 数千円程度

仲介手数料の上限は国土交通省告示によって定められており、実際には上限額に消費税が加算されます。また司法書士報酬は、登記の種類によっては買主負担となるものもあり、費用負担は契約内容によって異なります。測量費や解体費は土地面積・建物構造によって変動するため、見積もりを取って確認しましょう。

なお、売却時には住宅ローン保証料、火災保険・地震保険の残存期間に応じた金額、固定資産税・都市計画税の精算分などが返金される可能性があります。

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    更新日 : 2025年11月07日
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