底地トラブルの事例とそれぞれの解決法
底地とは、借地権が設定されている土地です。地主と借地人で地代や更新料、承諾料などのやり取りが発生するため、その支払いや金額などでトラブルになることがあります。
また、相続などをきっかけに底地が共有名義になっている場合は、共有者間で底地の管理や売却などの意見が合わず、トラブルに発展するケースもみられます。
具体的な底地トラブルの事例や解決法は下記のとおりです。
トラブル事例1.借地人が地代を滞納している
借地人は、土地を利用する対価として地代を支払う義務があります。しかし、なかには何ヵ月も支払わない、期限を過ぎてから支払うなど、地代を滞納する借地人も存在し、トラブルに発展することも少なくありません。
特に地主側は、底地の管理に伴って固定資産税や都市計画税などの支払い義務を負っているため、地代の滞納が続くと、税金の支払いが困難になることもあります。その結果、賃貸契約の解除を検討する事態にまで至ることもあるでしょう。
【解決法】督促で解決しない場合は契約解除を視野に入れる
地代の滞納が長期化している場合、借地契約の解除および土地の明け渡しを請求することが可能です。まずは支払いを促す対応をとり、それでも改善が見られない場合には、法的手続きを検討すると良いでしょう。
地代滞納に対する対応の基本的な流れは、下記のとおりです。
- 電話や対面で地代の督促をする
- 地代の督促状を内容証明郵便で送る
- 借地契約を解除する旨を内容証明郵便で通知する
- 必要に応じて「建物収去土地明渡請求訴訟」を起こす
滞納の理由が単なるうっかりであることもあるため、最初は電話や直接会って事情を確認しましょう。その際、支払い期限の延長や分割払いを求められることもありますが、新たな支払い条件については必ず書面で合意を残しておくことが重要です。
電話や対面での督促でも改善が見られない場合は、内容証明郵便で督促状を送付します。内容証明郵便は相手に心理的なプレッシャーを与えるとともに、後の法的手続きにおいて「督促をした証拠」としても機能します。
それでも地代が支払われない場合は、借地契約解除の意思を内容証明郵便で正式に通知します。一般的には、3~6ヵ月以上の滞納が続いている場合、何度も滞納が繰り返されている場合は契約解除が認められる可能性が高いとされています。そのため、通知を送付するのも、3ヵ月以上滞納が続いたタイミングが良いでしょう。
最終手段としては、「建物収去土地明渡請求訴訟」を提起します。これは、土地所有者が借地人に対して建物を撤去し、土地を明け渡すよう求める訴訟です。裁判で土地の明け渡しが認められれば、借地人が応じない場合も強制執行によって明け渡しを実現することが可能となります。
地代滞納における借地契約の解除の手順については、下記の記事でも詳しく解説しています。
トラブル事例2.借地人が地代の値上げに応じてくれない
借地契約は一般的に30年などの長期契約となるため、契約当初から不動産の価格相場や税負担が大きく変動する可能性があります。
特に近年は土地価格や税金が上昇傾向にあるため、契約当初の地代では固定資産税や都市計画税の支払いが重荷となり、地主が借地人に対して地代の値上げを申し出るケースもあります。
しかし、借地人が値上げに納得せず、交渉が進まないことでトラブルに発展することも少なくありません。
【解決法】値上げの正当な理由を説明して交渉する
借地人が地代の値上げに応じない場合は、正当な理由のもと値上げを申し出ていることを借地人に説明し、交渉していく必要があります。
借地借家法 第十一条「地代等増減請求権」では、正当な理由がある場合には、地代の増額請求が認められると定められています。
たとえば、「経済事情の変化によって税金や土地の価格が上昇した」「周辺の土地と比べて地代がつりあわない」などの理由であれば、借地人に値上げの請求ができます。
一方「単純に収益を上げたい」「借地人が気に入らない」などの個人的理由では、値上げは認められません。また、契約書に「一定期間は地代を増額しない」といった特約がある場合は、その期間中は値上げの請求ができないため、事前に契約内容の確認が必要です。
地代の値上げ交渉を行う際には、下記のような流れで進めます。
- 地代を値上げする正当な理由を説明し、借地人と交渉する
- 地代等増減額請求の調停を申し立てる
- 調停が不成立なら訴訟を申し立てる
交渉時は、借地人の立場にも配慮した柔軟な提案が効果的です。たとえば、一気に大幅な値上げをするのではなく、「段階的な値上げを提案する」「半年後や1年後の実施とする」といった方法で交渉すると良いでしょう。
それでも交渉が決裂した場合は、調停や訴訟などの法的手段に移行する意向を借地人に伝えたうえで、正式な手続きを進めます。最終的に裁判となっても、正当な理由が認められれば、値上げが認められる可能性があります。
地代の相場については、以下の記事を参考にしてみてください。
トラブル事例3.借地人が更新料の支払いを拒否している
借地契約の更新時には、借地人から地主に更新料を支払うのが一般的です。更新料は、主に地主と借地人の良好な関係を保つことを目的に支払われます。
しかし、更新料については借地借家法で明確に定められているわけではありません。契約に更新料についての条項が含まれている、更新料についての合意があるなどのケースを除き、借地人に支払い義務はありません
そのため、「支払う必要はない」と主張する借地人もおり、特に相続による代替わりが発生した際にはトラブルに発展するケースも少なくありません。
【解決法】契約書や過去の更新料について確認する
借地人に更新料の支払いを拒否された場合は、まず契約書の内容や過去のやり取りを確認することが重要です。
契約書に更新料の記載がある、あるいは口頭での合意や過去の支払い実績がある場合は、借地人には更新料の支払い義務があると考えられます。また、契約書以外にも覚書や合意書などで更新料に関する取り決めがなされている場合も、支払いを請求できる可能性があります。
契約書や過去の合意について説明しても、借地人が支払いを拒否する場合は、債務不履行として借地契約の解除が認められることもあります。
なお、借地人が支払う意思はあるものの、「更新料が高額で経済的に厳しい」といったケースもあります。その際には、分割払いや毎月の地代に更新料を上乗せして支払う方法などを提案し、借地人の負担に配慮した交渉を行うことで、トラブルを避けながら合意形成を目指すことができるでしょう。
借地の更新料については、下記の記事も参考にしてみてください。
トラブル事例4.借地人が承諾なしに建て替え・増改築を行っている
借地契約に「増改築禁止特約」が含まれている場合、借地人は建て替えや増改築を行う前に、地主の承諾を得る必要があります。
これは、建物の建て替えや増改築によって建物の耐用年数が延び、借地契約の期間が事実上長期化してしまうなど、地主に不利な影響が及ぶ可能性があるためです。
また、建て替えや増改築を行うと建物の価値が上がる可能性があるため、契約終了時に借地人が建物買取請求権を行使した際に、地主が支払う金額も高くなるおそれがあります。
上記のように建物の建て替え・増改築は地主にとってマイナスになることが多いため、借地人が無断で建て替えや増改築を行った場合、トラブルに発展するケースも少なくありません。
【解決法】建て替え・増改築の承諾料の支払いを交渉をする
借地契約書に契約書増改築禁止特例が含まれているにもかかわらず、借地人が無断で建て替え・増改築を行っている場合は、承諾料の支払い交渉をすると良いでしょう。
具体的には、下記のような流れで進めます。
- 建物の状況を確認し、建て替え・増改築であれば注意を促す
- 建て替え・増改築を行うのであれば、承諾料を請求する
- 承諾料の支払いがない場合は、借地契約の解除を申し出る
まずは、借地人に建物の状況を確認し、注意を促すことが重要です。リフォームであれば地主の承諾は不要であるため、リフォームなのか、増改築に該当するのかを慎重に確認する必要があります。
建て替え・増改築を行っている場合は、承諾料の支払いを求める交渉を行います。借地人が承諾が必要であることを知らなかったというケースもあるため、感情的にならず、冷静に対応しましょう。
承諾料について契約書に定めがある場合はそれに従い、記載がない場合は更地価格の3~5%を目安に請求するのが一般的です。
承諾料の支払いを拒否される場合は、無断工事を契約違反とし、借地契約を解除することも検討すると良いでしょう。
借地(底地)の建て替えや承諾料については、下記の記事でも解説しています。
トラブル事例5.借地人が承諾なしに借地権を売却しようとしている
借地人が借地権を第三者に売却する際には、地主の承諾が必要です。これは、借地人が変更されることで、地主にとってさまざまなリスクが生じる可能性があるためです。
たとえば、新たな借地人と一から信頼関係を築く必要がある、地代や更新料の減額交渉を持ちかけられる可能性があります。
そのため、借地権の売却時には譲渡承諾料を提示し、地主の承諾を得たうえで売却に進むのが一般的です。しかし、借地人がこのような手順を踏まずに無断で売却しようとすると、地主との間でトラブルになることがあります。
【解決法】譲渡の承諾料の支払いを交渉をする
借地人が無断で借地権を売却しようとしている場合には、まず事情を確認し、譲渡承諾料の支払いを交渉しましょう。譲渡承諾料の相場は、借地権価格の10%程度とされています。ただし、契約書に譲渡承諾料の金額の記載がある場合は、それにならいます。
交渉の中で借地人が承諾料の支払いを拒否する場合には、借地契約の解除の申し入れも検討すると良いでしょう。
借地権価格については、下記の記事を参考にしてみてください。
トラブル事例6.借地人が承諾なしに建物を転貸している
民法第612条「賃借権の譲渡及び転貸の制限」では、借地人が借地上の建物を第三者に転貸する場合、地主の承諾が必要と定められています。転貸とは、借地契約上の名義とは異なる名義の人物が建物を使用することを指します。
転貸を行う場合には、借地人が地主に転貸承諾料を支払い、あらかじめ承諾を得るのが一般的です。しかし、こうした手続きが行われず無断で転貸されると、地主との信頼関係が損なわれ、トラブルに発展するケースもみられます。
なお、借地権が「地上権」である場合は例外で、譲渡や転貸が自由に行え、地主の承諾は不要です。契約形態が「賃借権」「地上権」かを確認することも重要です。
賃借権や地上権といった借地権の種類については、下記の記事を参考にしてみてください。
【解決法】契約解除や損害賠償請求などを検討する
借地人が地主の承諾なしに建物を転貸していた場合、原則として借地契約を解除することが可能です。無断転貸が信頼関係の破綻とみなされるため、契約解除の正当な理由となります。
ただし、契約解除が現実的でない場合や、地主側が転貸自体を容認する方針である場合には、無断転貸による損害を理由として損害賠償請求を行う、もしくは転貸を認める代わりに承諾料を請求するといった方法もあります。
承諾料の相場は借地権価格の10%程度といわれていますが、実際の金額は交渉によって決まるため、柔軟な対応が求められます。契約書に承諾料に関する決まりがある場合は、それにならいます。
ここまで紹介した、地主と借地人のトラブルを解決する際には、事実確認と法的根拠に基づいた冷静な話し合いが大切です。問題が複雑化する前に不動産問題に詳しい弁護士に相談し、対応していくのが良いでしょう。
トラブル事例7.底地の共有者同士で揉める
相続などをきっかけに底地を取得した場合、共有名義になっていることもあります。共有名義の場合、複数人で底地を所有している状態であるため、共有者同士で下記のようなトラブルが起こりやすくなります。
- 借地人とのやり取りを誰が行うかでもめる
- 地代・更新料・承諾料の分配でもめる
- 共有者の同意を得られず、底地の売却ができない
底地を複数人で共有している場合、管理や借地人とのやり取りを誰が行うかで揉めることがあります。また、担当している共有者が、他の共有者の同意を得ずに借地人の建て替え・増改築を許可してしまい、トラブルに発展するケースもあります。
地代や更新料、承諾料については、原則として持分割合に応じて分配されます。しかし、実務の負担が偏っている場合、不公平感から配分をめぐって争いが起こることもあります。
底地の売却は共有者全員の同意が必要であり、合意が得られない、あるいは売却金額の決定で意見が分かれると、売却自体が進まないことも少なくありません。
【解決法】共有名義を解消する
共有名義の底地トラブルを防ぐためには、底地の共有名義を解消することが望ましいです。
たとえば、共有者間で持分を売却して単独名義にすれば、意思決定を一人で行えるようになり、トラブルの発生リスクを大幅に減らせます。
また、共有者全員の合意が得られる場合には、底地全体を第三者に売却し、共有名義を解消する方法もあります。
なお、自分の共有持分に関しては、他の共有者の同意を得ずに単独で売却することが可能です。ただし、共有持分は流通性が低く、買い手が限られているため、売却先は共有持分などの訳あり物件を取り扱う不動産買取業者となるでしょう。
共有名義の底地の売却については、下記の記事でも解説しています。
底地トラブルが起きた場合の相談先
個人で底地トラブルを解決しようとすると、よりトラブルが悪化してしまうおそれがあります。
そのため、トラブルが起きた場合は、不動産問題に詳しい弁護士に相談するのがおすすめです。法的知識を活かして、適切なアドバイスを受けられます。
トラブルが起きている底地を手放したい場合は、借地権・底地を扱う不動産会社に相談するのも手です。底地を直接買い取ってもらえるため、短期間で底地を手放せます。
不動産問題に詳しい弁護士
底地に関するトラブルは、借地権や契約内容、相続関係など法的な知識を必要とするケースが多く、専門的な対応が求められます。
不動産問題に強い弁護士に相談すれば、借地権や底地に関する法律知識や過去の解決実績を活かし、状況に応じた適切なアドバイスを受けられます。また、借地人や相続人とのトラブルが裁判に発展した場合でも、弁護士が交渉から訴訟対応まで一貫してサポートしてくれるため安心です。
底地トラブルを個人で抱え込んでしまうとトラブルが大きくなり、多大な損失を被るおそれもあります。そのため、早い段階で弁護士に相談し、専門的な視点からのアドバイスを受けることが重要です。
借地権・底地を扱う不動産会社
底地を手放したいと考えている場合は、借地権や底地を専門に取り扱っている不動産会社に相談するのがおすすめです。一般的に売却先が見つかりにくい底地であっても、直接買い取ってくれるため、スピーディーに底地を手放せます。
また、底地を専門に扱う不動産会社であれば、底地トラブルへの対応に長けているため、的確なアドバイスを受けながら売却を進められるでしょう。
当サイトを運営する「株式会社クランピーリアルエステート」でも、底地に関する無料相談や買い取りを行っています。最短48時間でのスピード買取によって、底地の早期現金化が可能です。
さらに、全国の弁護士・司法書士・税理士とのネットワークもあるため、必要に応じて各分野の専門家からサポートを受けながら、安心して底地の売却を進められます。
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共有持分のみを売却することも可能
底地が共有名義になっている場合でも、自分の共有持分のみを売却することは可能です。共有持分の売却には、他の共有者の同意は必要ないため、単独で売却が行えます。
ただし、一般の不動産市場では共有持分の売却は難しいため、借地権・底地を扱う不動産会社に相談して、売却するのがおすすめです。
「株式会社クランピーリアルエステート」でも、共有持分の買い取りに対応しており、早期のトラブル解決や現金化をサポートしています。共有名義の底地でお困りの場合は、ぜひご相談ください。
まとめ
底地は借地人との関係が切り離せず、地代や更新料、契約内容などをめぐってトラブルになりやすい不動産です。さらに、底地を複数人で相続した場合には、共有者間で意見が対立するケースも多く見られます。
こうしたトラブルが発生した際には、感情的になったり個人で無理に解決を図ったりすると、かえって状況が悪化するおそれがあります。
冷静かつ適切に対処するためにも、不動産問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。法的手続きが必要となった場合にも、スムーズに対応できるでしょう。
また、「底地トラブルが多くて管理が大変」「底地を手放したい」といった場合には、借地権・底地を専門に扱う不動産会社に買い取りを依頼するのもおすすめです。当サイトを運営する株式会社クランピーリアルエステートも、底地の無料相談・査定・買取を行っているので、ぜひご相談ください。
底地トラブルでよくある質問
底地トラブルを事前に防ぐ方法はないの?
底地や借地権といった他者が関与する不動産では、人間関係の悪化からトラブルが発展するケースが多く見られます。
トラブルを未然に防ぐためには、地主と借地人が日頃から連絡を取り合い、土地に関する悩みや要望を冷静に話し合える関係性を築いておくことが大切です。
また、底地の相続を巡ってトラブルが起きることも多々あります。底地の相続に関する取り決めは、被相続人の生前中に話し合っておくことをおすすめします。親族間で直接顔を合わせて認識をすり合わせておけば、後々の認識違いや争いを防げるでしょう。
良好な人間関係と事前の準備が、底地トラブルの回避に大きく役立ちます。
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