私道持分がない不動産を売却する2つの方法とトラブル回避のポイント

私道持分

「不動産を売却しようと思ったのに、敷地に接している道路が私道で、持分がないこともわかった。こんな物件を売却できるのだろうか」このように、私道持分がない不動産の売却について、あなたも不安を感じているのではないでしょうか。

結論からいえば、私道持分がない不動産も売却できます。ただし、私道持分がないことで売却後、買主が私道の所有者とトラブルになる可能性もあり、売買契約書の内容によっては、契約解除の原因となってしまうので注意が必要です。

この記事では、私道と私道持分に関する基本的な知識を紹介したあと、私道持分がない不動産の売却でトラブルを避けるために必要な準備と売却方法について解説します。

私道と私道持分について

私道持分
私道は個人や法人に所有権がある道路です。公道は国や自治体が所有・管理しているのに対し、私道は所有者が管理しています。そのため、私道を使用・通行する権利は原則、私道の所有者または所有者が認めた方のみとなります。また私道に接している不動産を売却するときに重要になるポイントは、接道義務を満たしているかどうかです。

私道であっても、接道義務を満たしていなければ建物を建築することはできません建築基準法施工以降に造られた私道の場合、「建築基準法上の道路」として扱われるには特定の手続きが必要です。それでは、「建築基準法で定められた私道」の種類について具体的に解説します。

建築基準法で定められた私道は3種類

建築基準法には、「建築物の敷地は、幅員4m以上の『建築基準法上の道路』に2m以上接していなければならない」という接道義務が定められています。この「道路」は私道にも当てはまります。道路は大きく6つの種類に分類されますが、そのうち私道に該当するものは次の3つです。

(1)42条1項3号(既存道路)
(2)42条1項5号(位置指定道路)
(3)43条2項(2項道路)

1つ目の既存道路は、そのまま、建築基準法施工時にすでに存在した幅員4m以上の道路です。公道・私道にかかわらず適用されます。2つ目の位置指定道路は、一定基準に適合する私道のことで、特定行政庁から位置の指定を受けた幅員4m以上の道路です。たとえば、広大な土地を分割して、宅地として利用するために造られた道路が位置指定道路にあたります。例として、下図をご覧ください
私道

右側の宅地のために新しく造った私道は、何もしなければ地主の土地でしかありません。つまり、「建築基準法上の道路」ではない状態です。しかし、建築基準法では接道義務を満たさない土地に対して建物の新築・増改築は認めていません。そのため、私道を造っても、その私道が建築基準法上の道路として認められない限り、接道義務を満たしていない土地として再建築不可になってしまいます。そのような状態を避けるために、特定行政庁から位置の指定を受けて定められます。

3つ目の2項道路は「みなし道路」とも呼ばれます。建築基準法施工時にはすでに建築物が建っており、その接している道路が幅員4m未満で特定行政庁が指定した道路です。2項道路である私道に接する敷地は、建築確認申請が必要な増築・建て替え時に中心線から2mの位置までセットバックしなければなりません。売却時には重要事項として買主へ説明が必要です。以上、3種類に当てはまる私道は「建築基準法上で定められた道路」として、接道義務を満たしているかの判断で使用できます

関連記事
接道義務
不動産を売却する時、その物件が接道義務を満たしているかどうかは非常に重要です。なぜなら、接道義務を満たしているかどうかが、買い手を見つけやすいかどうか、高値で売れるかどうかに影響してくるからです。 また、「再建築不可物件」や「既存不適格建築物」、「違法建築物」というものにも、接道義務は深く関係しています。 この記事をご…

接道が公道か私道かを調べる方法

相続で取得するなど、自分で購入した不動産でない場合、接している道路が公道か私道かわからないこともあるでしょう。一般的な目印として、「道路標識」「市区町村のデザインが入ったマンホール」があれば公道と判断できます。

また、自分で調べようと考えたときには、公図が有効です。ただ、公図の見方を理解しておく必要があり、それでも私道か公道を明確に判断できないケースもあります。地番が入っていても、譲渡されて公道となっていたり、公図には地番が入っていなかったのに、隣地測量図には地番が入っていて私道だったりすることがあるからです。そのため、確実な見分け方は自治体に問い合わせることです。建築関係の窓口に相談すれば詳細を教えてもらえます。

関連記事
未接道物件
未接道物件とは、建築基準法という法律で定められた「接道義務」の規定を満たしていない物件のことです。未接道物件は再建築不可物件として扱われて、将来の増改築・建て替えが規制されるため、なかなか買主を見つけられません。 この記事では、未接道物件と認定される代表的な4つのケースを解説したあと、売却相場と売却方法について解説しま…

2種類の共有私道

さらに、所有者が複数いる共有私道は、その権利の分け方で2つに分類されます。その2つが「(1)共同所有型」「(2)分割型」です。

共同所有型は私道全体を複数人で所有することです。建物の共有名義と同じように、所有者はそれぞれ持分割合を持ちます。たとえば、1つの私道を10戸の住宅で共有している場合には、それぞれの敷地面積に応じた割合で持分を所有することになります。このとき、私道は共有物となるので、現状を維持する保存行為は各共有者が単独で行なえます。つまり、「通行」は保存行為となるので、他の共有者の承諾なく自由にできます

対して、分割型は、私道を分割して持ち合うことです。このとき、敷地の目の前にある私道部分を所有するのではなく、離れた位置にある敷地を所有することが一般的です。敷地とつながっていると、私道部分に植木を置いたり、駐車場として利用したりして、他の私道持分がある方の通行の邪魔になる可能性があるからです。そこで、それぞれが飛び地の私道持分を所有することで、お互いに私道に対する権利は持ちながら、その権利を乱用しない状況を作れます。また、分割型の場合、公道に出るまでに第三者の土地を通ることになります。この点が共同所有型と異なる点です。第三者の土地となるので、通行料も決める必要があり、無料の場合でも、無料であることを明確に定める必要があります。

私道持分の調べ方

売却したい不動産の接している道路が私道とわかったときには、持分の有無が売却時に重要となります。持分がないということは、私道に対する権利が一切無いわけなので、私道の利用について所有者とトラブルになることも多いからです。そこで、私道持分の調べ方を紹介します。

私道持分を調べるときにも公図を利用します。私道であれば公図に地番が記載されているはずです。その地番から登記事項証明書(登記簿謄本)を取得することで、私道の所有者や持分割合を確認することができます。そして改めて、私道持分がない不動産であることが判明したら売却時のトラブルを避けるため、次でお伝えする準備をするようにしてください

関連記事
不動産登記簿
不動産の売買や賃貸を行う上で、その内容を調べ、重要事項に関する説明書を作る際に必要なのが「登記簿謄本」という書類です。これは、その土地や建物にまつわる権利などの経緯や現状が記録されており、不動産取引には欠かせないものとなっています。 通常登記簿は、法務局で登記官から直接受け取るものとされてきましたが、現在ではネットを使…

私道持分がない不動産の売却でトラブル回避のために必要な準備

掘削の承諾
私道が建築基準法で定められた道路であれば、持分の有無に関係なく建物を建てることはできます。しかし、持分がないため買主が後々困ってしまう場合があります。その大きな要因が通行と掘削です。これら2つのことについては、私道の所有者(地主)から不動産を売却する前に承諾を得ておくことをおすすめします。

通行の承諾を得る

持分がないということは、対象の不動産から公道に出るまで、完全に他人の土地を通ることになります。そのため、私道の所有者から通行の承諾を得る必要があります。私道は通常、歩行による通行は拒否できません。特に、私道を通らなければ不動産までたどり着けないような位置にある場合には、地主に拒否されたとしても問題なく通行はできます。しかし、それはあくまで「歩行」による通行です。

これが「車両による通行」となった場合には話が異なります。私道を車が通れるようにするには、所有者は車の重みに耐えるための整備が必要になります。そのため、「歩行は可能、車両は不可」となっている私道も存在し、また、車両の通行は許可されているものの、通行料の支払いを要求されるケースもあります。不動産を売却したいと思っても、私道がこのような状態になっていれば、ほとんど買主を見つけられないか、大幅な値下げが必要になるでしょう。

関連記事
袋地
不動産の購入を検討したり実際に囲繞地(いにょうち)の問題が生じるまで、囲繞地という言葉をご存知なかった方も多いのではないでしょうか?「通常は囲繞地なんて発生しないから、自分には関係ない特殊な分野の話だ!」と考えている方も多いでしょう。 しかし、隣地を親族が所有していたり、自分が経営している法人が周囲の土地を所有していた…

掘削の承諾を得る

暮らしに欠かせないガスや水道は、ガス管や上下水道の埋設工事や引き込み工事をして利用できるようになります。その工事では道路を掘削することになるので、通行の承諾とあわせて、掘削の承諾も必要です。承諾がなければ業者も工事はできないので、不動産としての価値は大きく下がります。すでに引き込み工事は終わっていても、老朽化した水道管・ガス管の交換でも掘削することになります。そのため売却時にはあらかじめ掘削の承諾を得ておくほうがいいです。

そして、これら2つの承諾は口頭ではなく、通行掘削等承諾書として書面に残しておくようにします。書面がなければ、将来、車の通行や掘削を拒否されたときに、対抗する手段がないからです。この承諾については、私道の所有者と普段から良好な関係を築けているのであれば、ご自身で交渉してもいいです。ですが、高値で不動産売買を成立させるためには通行・掘削の承諾の書類が欠かせないので、不動産会社に任せることをおすすめします。

もちろん売買契約書で私道の通行・掘削の承諾を得る特約が定められていなければ、義務というわけではありません。決済が行われたあと、買い手が承諾を得られなかったとしても、売主に瑕疵担保責任が認められることもほとんどないです。しかし、通行・掘削の承諾書があるかないかで、売買価格だけでなく購入希望者が住宅ローンを組めるかどうかが決まるので、忘れずに準備しておきましょう。

私道持分がない不動産の売却方法

測量
最後に、私道持分がない不動産の売却方法を2つ紹介します。1つは、私道持分を取得したあとで売却する方法で、もう1つが、通行地役権を設定したあとで売却する方法です。

私道持分を取得したあとで売却する

私道持分がないデメリットは、通行・掘削の承諾を得るときに、交渉が難航する場合があることです。通行・掘削の承諾では、共有者全員の承諾が必要になります。このとき、他の共有者からの相談であれば、「お互い様」ということで交渉もスムーズに進みやすいです。「自分が承諾しなければ、逆の立場になったときに承諾してもらえない」というリスクがあるからです。しかし、私道持分のない相手にはそのようなリスクがあります。そのため、承諾を拒否したり、法外な承諾料を要求したりする地主が現れるかもしれません。

そこで、私道持分を取得します。私道持分は100分の1でも、1000分の1でも構いません。「わずかでも持っている」ということに意味があります。さらに、私道持分を取得する方法も2つに分かれます。私道を分筆して持ち合っているような場合には、さらに私道の所有者から分筆してもらい、その1筆を取得します。このとき、土地家屋調査士に測量を依頼し、私道を分筆してくれる相手と、その土地に隣接する所有者に境界立会を求めて境界確定を行います。私道全体が共有名義となっている場合には、私道の持分所有者から購入する持分割合を決めて取得します。私道持分の取得については、所有者の意向・私道の権利関係の状況にもよるので、適切な方法については不動産会社と相談しながら進めるようにしてください。

通行地役権を設定したあとで売却する

私道の所有者によっては、「私道を売却する気はないけれど、通行権の承諾を拒否するつもりもない」と考えている方もいらっしゃいますこのような場合には、通行権を半永久的に保証するために通行地役権の設定が有効です。名前のとおり、通行地役権が設定された土地を自由に通行できる権利のことです。

あなたが通行地役権を取得することで、あなたの不動産の買主にも継承されます。ただし、土地の所有者が相続や譲渡などを理由に代わった場合、そのままでは新しい土地所有者に通行地役権を主張できません。そのため、通行地役権を確実なものとするためには、通行地役権を設定したあと、登記まで行う必要があります。通行地役権の登記には専門知識が必要になるので、土地家屋調査士と司法書士に依頼してください

関連記事
再建築不可物件 旗竿地
不動産の中には、旗竿地(はたざおち)と呼ばれる特徴的な形状をした区画の土地があります。旗竿地は、道路への間口部分が細い路地状になっており、通路部分を進んで行った先に建物のある敷地が広がっています。土地がまるで旗のような形状をしているため、旗竿地と呼ばれています。また、旗竿地は別名、敷地延長(敷延)や専通とも呼ばれていま…

まとめ

私道持分がない不動産は売却時に通行・掘削の承諾を得られているかが大きなポイントです。これらの承諾がない場合、車での通行が制限されたり、その他住宅の補修に必要な工事が制限されたりすることになるので買い手が見つかりません。そのため、私道の通行・掘削承諾はセットで取り付けるようにするか、買い手が購入後に自ら交渉する場合にスムーズに進むように私道持分を取得しておくとよいでしょう。

私道持分がない不動産の売却では、通常の公道に接している一戸建てやマンションの売却に比べて準備することも多く手間がかかります。状況によっては司法書士や土地家屋調査士、弁護士など様々な専門家の助けも必要です。満足できる売却にするためにも、各種士業との連携がしっかりしている不動産会社に依頼することをおすすめします。

最終更新日:

再建築不可物件の売却をご検討の方は今すぐご連絡ください

0120-543-191