
共有不動産において、特定の共有者が不動産を占有してしまうトラブルは少なくありません。
他の共有者からすれば、自分たちは不動産を利用できず、維持・管理費の分だけ損をすることになります。
しかし、共有者の1人が不動産を占有していても、原則として明け渡し請求は認められません。
「明け渡しができないないなら処分したい」という場合、自分の共有持分だけ売却する方法をおすすめします。
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目次
共有不動産を一人で占有されていても、原即明け渡し請求は認められない
共有不動産をどのように利用するかの決定は「管理行為」といわれ、通常であれば共有者間で協議のうえ多数決を取り、持分割合の過半数が同意することで決定します。
例えば、共有者の一人が50%超の持分を有していれば、その共有者の意見が採用されます。そのうえで、共有不動産が一人に占有されている状態は大きく次の2通りです。
- 協議により、一人で占有することに合意している場合
- 明確な協議をせず、一人で占有している場合
共有者間で一人が占有することに合意している場合は、明け渡しを請求しても認められません。
明確な協議をせずに共有不動産を一人で占有されている場合だとしても、基本的に明け渡し請求は認められません。
使用方法の協議をしていない場合でも明け渡し請求は認められない
原即、共有不動産の使用方法は共有者全員で協議して持分の過半数が承認することで決定されます。
そのため、明確な協議をしていないにもかかわらず、単独で占有している相手に対して明け渡し請求が認められないことに疑問を感じるかもしれません。
このような判断がくだされる理由は、簡単に明渡し請求を認めてしまうと、共有物を使用する権利が侵害されかねないためです。
そのため、明確な合意を取っていないことだけを理由に、明け渡し請求は認められません。これは、持分割合が過半数となるように共有者と協力して明け渡し請求した場合も同様です。
明け渡し請求前に使用方法を協議・決定すれば認められる場合がある
使用方法の合意なしを理由に明け渡し請求が認められないことは、最高裁昭和41年5月19日の判例にもとづいています。この判例では以下のように結論がくだされました。
・多数持分権者が共有不動産の明け渡しを求めるためには、その理由を主張し、立証しなければならない
つまり「正当な理由」があれば、明け渡しが認められるといえます。ただし「使用方法の明確な合意が取れていない」は正当な理由ではありません。
一方で、協議で使用方法を決定したにもかかわらず、合意した協議内容を無視して不動産が占有されているならば、明け渡し請求が認められる可能性もあるでしょう。
ただし、明け渡し請求したい共有者の持分割合の合計が50%を超えていなければできません。
占有者に対する明け渡し請求が認められる特殊なケース
ほとんどの場合、占有者に対する明け渡し請求は認められません。しかし、下記の場合は例外的に明け渡し請求が認められます。
- 決定内容を無視して単独で占有した
- 実力行使で共有不動産を占有した
- 使用方法の協議を拒否し、占有を続ける
- 建物が建築中で未完成
1.決定内容を無視して単独で占有した
共有不動産の使用方法は共有者間で協議して決定されます。
そのときに決定した内容を無視して一人の共有者が単独で占有した場合は、明け渡し請求が認められやすいでしょう。
2.実力行使で共有不動産を占有した
現在占有している共有者が、他の共有者を実力で排除するような行為におよんで占有している場合です。
例えば、不動産を共有者A・Bの2名で共有しているとします。AはBとの明確な合意はなかったものの長年、平穏に不動産を占有していました。
このとき、Bが実力行使で不動産を占有すると、AからBに対する明け渡し請求が認められます。この「実力行使」とは具体的に以下のようなものを指すといえます。
- Aが反対しているのに、それを聞かず、強引に不動産に入居した
- Aの生活用品を一方的に家から持ち出した
- 家の鍵をAに無断で変更して、帰宅できないようにした
このように、強引な手段で不動産を占有している場合には、Bの共有持分権の濫用として明け渡し請求が認められます。
3.使用方法の協議を拒否して占有を続ける
共有不動産の使用方法は共有者間の協議によって決定することは、これまでにもお伝えしたとおりです。使用方法の決定は管理行為なので、持分の過半数が合意すれば決定されます。
そのため、占有している方の持分割合が少なく、その占有者を退去させたい共有者の持分割合が過半数になっていれば、使用方法について占有者の意見が採用されることはありません。
そこで、使用方法の協議そのものを占有者が拒否し「協議はおこなわれていない」として占有を続けようとする場合があります。
「使用方法の協議がおこなわれなければ、使用方法の決定ができず追い出されることもない」という考えから協議を拒否するというケースですが、このような行為は認められません。
協議を拒否したとしても、持分割合で過半数の同意があれば、明け渡し請求が可決されます。
4.建物が建築中で未完成
共有状態の土地に、1人の共有者が他共有者の合意を得ずに建物を建築している場合、その建物が未完成であれば明け渡し請求が認められます。
現在おこなわれている建築工事の差し止めと原状回復を請求し、建築途中の建物を撤去させることができます。ただし、明け渡し請求が認められるのは「建築途中のみ」です。
建物が完成してしまうと、たとえその共有者が独断で工事を進めたとしても、明け渡し請求は認められません。
金銭請求のみが認められ、請求できる金額は持分割合に応じた地代相当額が一般的です。
占有者への明け渡し請求が否定された場合の対処法
ここまで解説してきたとおり、共有不動産を1人で占有している方に対する明け渡し請求は原則認められません。
極端にいうと、共有不動産は他の共有者の意向を無視して、占有事実を作った方が得をすることになります。
万が一、明け渡し請求が否定されてしまったのであれば、以下の対処方も検討してみるとよいでしょう。
- 占有者に持分を買い取ってもらう
- 占有者に持分割合に応じた使用料を請求する
- 買取業者に自分の持分のみを売却する
- 共有物分割請求をおこなう
占有者に持分を買い取ってもらう
「不動産が使用できないなら持分を手放してもよい」と考えるのであれば、占有者に持分を買い取ってもらう方法があります。持分の売買は占有者と自分の両方にメリットがありからです。
仮に占有者が他の共有者の持分を買い取って持分割合が過半数になれば、共有者間の協議で正式に「自分(占有者)が使用する」と決定できます。
自分にとってのメリットは、複雑な権利関係からも解放され、まとまったお金を得られることです。ちなみに、持分の買取価格は不動産の金額に持分割合をかけた金額になるのが一般的です。
占有者に持分割合に応じた使用料を請求する
占有者がいるために不動産を使用できない他の共有者は、持分に応じた不動産の使用料を請求できます。この使用料は一般的な賃貸物件の家賃にあたります。
使用料の算出は周辺物件の家賃を参考にすることが一般的です。ただし、具体的な金額は不動産会社に相談するとよいでしょう。
また、これまで占有者が長期間に渡って無料で共有不動産を使用していた場合、使用貸借とみなされる場合があります。使用貸借とみなされれば、使用料の請求も認められません。
そのため、使用料を請求するのであれば、共有者の1人が占有をはじめてから早いタイミングで手続きを進めるようにしてください。
買取業者に自分の持分のみ売却する
「占有している共有者に持分の売買を拒否されてしまった」もしくは「占有者が持分を買い取るだけの資金力を有していない」などの理由で持分売買が成立しないとしたら、共有持分専門の買取業者に持分を買い取ってもらうことも選択肢の一つです。
また、持分のみは取得しても自由に不動産を使用できるわけではないので、買主が見つかるまでに時間がかかってしまうことも考えられます。
共有持分・共有不動産を専門に扱う買取業者であれば、数日~数週間で相場に近い価格で買い取ってくれる可能性もあります。
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共有物分割請求をおこなう
共有物分割請求をおこなうことで、裁判所に共有状態の解消方法を決定してもらえます。判決の内容に同意できなくとも、共有者全員がしたがわなければいけません。
占有者がいるケースでは「全面的価格賠償」の判決がくだされるでしょう。わかりやすくいえば、占有者が他の共有者の持分をすべて買い取るというものです。
しかし、占有者の事情で買い取るだけの金銭を用意できないこともあります。そのような場合には「換価分割」となるでしょう。
換価分割は共有不動産を競売で第三者に売却し、その代金を共有者間で持分割合に応じて分配するものです。
共有状態は解消されますが、売却するので占有者は立ち退きを余儀なくされ、他の共有者も共有不動産に対する権利を失います。
共有物分割請求による共有状態の解消方法については以下の記事でもわかりやすく解説しているので、参考にしてみてください。

まとめ
共有不動産を1人で占有している場合、その人物が占有することに明確な合意がなかったとしても、明け渡し請求は原則認められません。
実力行使で占有や、共有不動産の使用方法の協議を拒否、または決定した内容にしたがわないなど、特殊なケースでのみ認められます。
そのため、基本的には明け渡し請求ではなく、使用料などの金銭請求で解決策を探します。
代表的な方法は、占有者に自分の持分を買い取ってもらうことですが、それが難しければ買取業者に自分の持分のみ売却する方法もあります。
買取業者への売却は占有者に売却するよりも安くなる傾向にありますが、手間がかかりません。
査定を依頼したら必ず契約しなければならないというものではありませんので、買取業者に査定を依頼し、条件に納得できるれば売却するとよいでしょう。
共有不動産の占有と明け渡し請求についてよくある質問
基本的に明け渡し請求はできません。共有者はそれぞれが「不動産を使用する権利」をもっているため、明け渡し請求が認められると相手の権利を侵害することになります。ただし、事前に共有者間で不動産の使用方法について取り決めており、その取り決めを破って使用しているケースでは、明け渡し請求が認められる場合もあります。
占有している共有者に持分を買取ってもらうか、持分割合に応じた使用料を請求することをおすすめします。共有者と関わりたくない場合は、自分の共有持分を売却するのもよいでしょう。
自分の持分だけを売却することは可能です。設定した自分の持分割合分は共有者の許可無く売却できます。
はい、あります。一般的な物件を扱う大手不動産会社よりも「共有持分を専門としている買取業者」へ売却したほうが高額となる可能性があります。また、離婚などで共有者どうしがトラブルになっている共有持分は、弁護士と連携している専門買取業者への売却がおすすめです。→ 共有持分専門の買取査定はこちら
共有物分割請求をすれば、共有者は必ず話し合い、共有不動産の分割をしなければいけません。当事者間での話し合いがまとまらない場合は調停や訴訟に進めることができるので、最終的には必ず共有状態の解消が可能でしょう。