土地や建物の賃貸借契約において、貸主側から契約解除を求めるのは容易ではありません。
借主に立ち退きを請求する際は、貸主側に立ち退きを求める理由として十分な「正当事由」が必要です。正当事由のない立ち退き請求は、法律上認められません。
具体的には、下記のような内容が立ち退きが認められる主なケースとして挙げられます。
- 建物の老朽化によって倒壊のおそれがある
- 貸主や家族がどうしても居住する必要がある
- 再開発事業の計画がある
- 借主が契約違反をしている
- 借主が家賃滞納を繰り返している
- 借主が騒音や悪臭、嫌がらせなどの迷惑行為をしている
ただし、正当事由に該当するかはケースバイケースです。正当事由であるかは、貸主・借主双方の事情や土地や建物の利用状況、立ち退き料の有無などを確認し、総合的に判断されます。
また、借主側が賃料を滞納している場合など、一定の過失がある場合には強制退去の可能性が高まりますが、その場合でも正当な手続きを踏まえて対応することが重要です。
正当事由の有無に関わらず、立ち退きに関してトラブルが見込まれる場合は、不動産問題に詳しい弁護士を通じて協議・交渉をおこなうことが、貸主側の利益を守る重要なポイントとなります。
本記事では、立ち退きを求める際に必要な正当事由、実際の立ち退き事例・判例、立ち退き料について解説します。立ち退きが認められる、借主側の過失についても触れていきます。
立ち退きを求めるには「正当事由」が必要
貸主は、借主に対して一方的に立ち退きを求めることはできません。立ち退きを求める際は、借主に立ち退きを求める十分な理由とされる「正当事由」が必要となります。
具体的には「建物の老朽化による強度不足」「貸主が居住するのにどうしてもその物件が必要になった」などの理由があげられます。
弊社の相談実績をもとにすると、立ち退きを検討されているオーナー様のうち、「正当事由」という概念をあらかじめ理解したうえで相談に来られる方は体感で2〜3割程度にとどまります。「老朽化しているから退去してもらえるはず」「自分が住みたいから出てもらいたい」という理由だけで相談に来られる方が多いのですが、弊社の実感として、こうした理由だけで正当事由が直ちに認められるケースは少なく、提携弁護士に確認しても「事情をもう少し整理しましょう」と言われることが大半です。
旧借地法や借家法においても「貸主自らが物件を使用しなければならなくなった場合」または「その他の正当な事由がある場合」に立ち退きを求めることができる、とされています。
現在の借地借家法でも、貸主及び借主のあらゆる事情を考慮して、立ち退き要求が正当なものかを判断するとしています。
また、財産上の給付、つまり立ち退き料を支払うことによっても、正当な事由をもって立ち退き要求ができるとしています。
前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
出典:e-Gov法令検索、借地借家法6条
なお、貸主の都合で立ち退きを求める際は、賃貸契約の契約期間満了の1年前~6ヵ月前までに交渉を行う必要があります。
立ち退きを求める際の主な正当事由
立ち退きの正当事由とされるのは、下記のような内容です。
「正当事由での立ち退き事例・判例」を確認するとわかりますが、上記の内容が必ずしも正当事由として認められるとは限りません。
正当事由であるかは、貸主・借主双方の事情や土地や建物の利用状況、立ち退き料の有無などを確認し、総合的に判断されます。
立ち退き交渉は、契約期間満了の1年前~6カ月前に行うのが原則
貸主の都合で立ち退きを求める場合は、賃貸契約の契約期間満了の1年前から、6カ月前までに「更新をしない旨の通知」を行う必要があります。
借主と交渉をし、借主の次の住居を探すための期間としても、猶予期間は必要になります。
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2. 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
3. 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。出典:e-Gov法令検索借地借家法26条
更新拒絶の通知は、契約期間満了の1年前~6カ月前に行う必要がありますが、弊社の提携弁護士によると、実務上は「通知が届いた日」が起算日になるため、郵送の場合は到達までの日数も考慮する必要があるとのことです。ここで見落とされがちなのが、この通知期間を過ぎてしまうと契約が法定更新されるという点です。弊社のご相談者の中にも、「通知のタイミングを逃してしまい、もう1年待たなければならなくなった」というケースがありました。
ただし、立ち退き交渉は、あくまでも交渉です。法律上、「正当事由があっても、必ずしも立ち退きが認められるとは限らない」点を理解しておくことが大切です。弊社へのご相談でも、「正当事由があると考えていたが、交渉がまとまらなかった」「借主が移転に応じないケース」といった事例をお聞きすることがあります。
立ち退きトラブルについては、下記の記事も参考にしてみてください。
立ち退きの正当事由を判断する要素
正当事由として立ち退きを求めても、必ずしも認められるわけではありません。立ち退きの正当事由に該当するかは、下記の5つの要素から総合的に判断されます。
弊社が提携する弁護士によると、この5つの要素の中で裁判所が最も重視するのは「貸主および借主が建物(土地)の使用を必要とする事情」だそうです。弊社の相談ケースでも、最終的に立ち退きが成立した案件の7割以上で、この「使用の必要性」が強く認められていた印象があります。逆に、この要素が弱い場合はたとえ高額の立ち退き料を提示しても正当事由が認められにくく、「お金で解決しようとしたが通らなかった」というご相談は少なくありません。
正当事由での立ち退き事例・判例
正当事由があっても立ち退き要求が認められない恐れもあります。
そこで、実際に正当事由があると認められた立ち退き要求の判例を見てみましょう。
なお、判例を検索して「自分のケースに似た判例がある」と安心される方がいらっしゃいますが、正当事由の判断は個別事情に大きく左右されるため、類似した条件でも結論が正反対になることがあります。実際の判例を見ると、立ち退き料の金額ひとつとっても、居住用で賃料の6カ月分程度から、事業用で数億円に及ぶケースまで極めて幅が広く、「自分の場合はいくらになるのか」を判例だけで予測することは困難です。以下の判例は参考としてご覧いただき、個別の判断は必ず弁護士にご相談ください。
1.貸主の自己使用を理由とする立ち退き要求の判例
| 判決 |
立ち退き料 |
概要 |
| 正当事由あり |
750万円 |
貸主がマンションに住んでおり、家族と住むには手狭になったために借地の借主に対し、立ち退きを求めたもの。
借主側が借地上にある居宅をすでに使用していなかったことに加え、十分な額の立ち退き料が用意されたことで、正当事由が認められた。 |
| 200万円 |
貸主は、賃貸契約を結んでから10数年後、転勤から戻ってアパート暮らしをしていた。
借家の借主には転居する経済的能力があったため、借主の転居に伴う仲介料や敷金、引っ越し代などの立ち退き料を支払うことで、正当事由があるとみなされた。 |
| 0円 |
貸主はマンションに住んでおり、家族と住むには手狭になったために借地の借主に対し、立ち退きを求めたもの。
借主側は、借地上にある居宅をすでに使用していなかった。さらに、借主は以前にも明け渡しの約束を何度かしていたため、立ち退き料がないとしても正当事由があるものとみなされた。 |
| 正当事由なし |
|
貸主が、長女夫婦と同居するための新居を建てる必要があるとして借地の返還を求めたもの。貸主には別に居宅があった。しかし借主は家族とともに同居していたことや、借地内で店舗を営み生計を立てていたことから、正当事由は認められないと認定された。 |
| 貸主は、身体障害者である子の居宅を建築する必要があるとし、立退き料300万を提示することで立ち退きを求めたが、借主は借地を多数の家族の居住場所にしていたため、正当事由は認められなかった。 |
2.貸主が「営業目的」での自己使用を理由にした立ち退き要求の判例
| 判決 |
立退料 |
概要 |
| 正当事由あり |
8億円 |
貸主が、本社の社屋を建築するために必要として借地の立ち退きを求めた。しかし借主は借地で20年以上パチンコ店を経営しており、立ち退けば廃業となる。裁判所は、借地権価格、借主の営業利益、権利金無しなどを総合的に考慮し、立退き料8億円の提供によって正当事由が認められるとした。 |
| 6450万円 |
新聞販売店を営んでいた貸主が、従業員宿舎としてビルを建築する必要があるとして、賃借人に土地の返還を申し出た。
立ち退き料は6450万円で十分なものであり、正当事由ありと認定された。 |
| 正当事由なし |
|
貸主は、借地の隣接地に居住していた。借地に養子を居住させて老後の面倒をみさせるためとして、借地権買取価格での立ち退き料2504万円を提供すると申し出た。しかし賃借人は借地を倉庫、資材置き場として使用する必要があるとして異議を申し出る。正当事由は認められなかった。 |
3.貸主の目的が「自己使用および営業目的」の立ち退き要求の判例
| 判決 |
立ち退き料 |
概要 |
| 正当事由あり |
650万円 |
貸主の子が居住し、かつ自動車整備事業を経営するため借地が必要であるとして立ち退きを求めたもの。借主に対して使用継続に異議を述べるとともに、立ち退き料および利害調整金として650万円を提供することで、正当事由による立ち退きが認められた。 |
| 正当事由なし |
|
貸主は借地の隣接地で理髪業を経営。理髪業および居住に手狭として借地からの立ち退きを要求。しかし借主は、商品の保管場所に必要として争う。
貸主は、借主との信頼関係の破壊も合わせて主張したが、正当事由があるとは認められなかった。 |
4.再開発事業・有効利用・高度利用に関する裁判例
| 判決 |
立ち退き料 |
概要 |
| 正当事由あり |
6500万円
|
貸主は、都市の再開発事業を手掛ける不動産業者。再開発事業を効率的に進めるため立ち退き交渉を行ったが、十分な額の立ち退き料の提供により、正当事由ありと認定された。 |
| 正当事由なし |
|
申立人は、当該地域が開発地域であることを理由に立ち退きを求めた。しかし当時はバブル景気の破綻直後であり、申立人がすでに予定している計画を実現できていないこと、および立ち退きの根拠として述べるような開発計画の実行が今後なされるかについては疑問があることが認められ、正当事由なしとされた。 |
5.建物の老朽化による立ち退き要求の判例
| 判決 |
立ち退き料 |
概要 |
| 正当事由あり |
8億円 |
建物が老朽化しており、耐震性の面でも危険があった。補強には高額の費用が必要になるが、借家の立地場所は銀座であり、今後は土地の高度利用や有効活用が望まれることから、高額の立ち退き料を提示し、正当事由が認められた。 |
| 正当事由なし |
|
賃貸人は、現在の家賃の4年分以上に相当する立ち退き料を支払うとして立ち退きを要求した。しかし、老朽化の責任は貸主にあること、および築30年以上の借家ではあるものの今後数年の使用には耐えうることなどを理由として、正当事由は認められなかった。 |
老朽化を理由にした立ち退きで注意すべきなのは、「築年数が古い=正当事由になる」という単純な関係にはならない点です。裁判所は「修繕すればまだ使えるかどうか」「修繕コストと建て替えコストの比較」なども考慮して判断します。「耐震基準を満たしていないから当然出てもらえる」と考えていた方が、弁護士に相談して「耐震補強という選択肢がある以上、それだけでは足りない」と説明されて驚くケースは、弊社の相談でもよくある光景です。
※建物の老朽化による立ち退き要求は、借主の身体的な安全にも関わるため、他の事由と比べて正当事由が認められやすい傾向にあります。ただし、上記の判例のとおり、修繕すればまだ使用に耐えうると判断される場合には認められないこともあります。
建物の老朽化による立ち退き交渉については、下記の記事でも詳しく紹介しています。
正当事由がなくても、十分な立ち退き料を提示することで交渉できる
先ほど紹介した判例の通り「立ち退いて欲しい理由」だけでは正当事由にはならないケースもあります。
その際は、十分な金額の立ち退き料を用意することで、正当事由として認められる例も多数ありました。最高裁の判例でも「立ち退き料の提供は正当事由の有力な事情」とされています。
これらのことから、立ち退き料の金額は、正当事由を認めるかどうかの重要な判断材料です。
実際に支払われる立ち退き料は、立ち退きを求める理由や、貸主および借主の事情によって大きく変動します。
ですので「立ち退き料はこれ以上の額でなければならない」という法律上の規定やルールはありません。立ち退きの事例はケースバイケースのため、一律の相場があるわけではありません。
「家賃の半年分以上の金額 + 引っ越し費用」が立ち退き料の目安とされることもありますが、これは必ずしも確実ではありません。
弊社へのご相談でも、「立ち退き料をいくらにすべきか」「相手方が提示した金額が妥当であるか」といったご質問をいただくことが多いです。そのような場合、個別の事情に応じて弁護士のアドバイスを受けることで、適切な金額の判断が可能になります。
立ち退き料に明確な相場がないため、実際に立ち退き要求をする際は、不動産問題に詳しい弁護士への相談をお勧めします。弁護士であれば、ケースに応じて必要な立ち退き料をアドバイスできるでしょう。
立ち退き料の目安や計算方法、不動産トラブルを弁護士に相談するメリットについては、下記の記事を参考にしてみてください。
借主に過失がある場合は立ち退き要求が認められる可能性がある
ここまでは貸主側の事情による「正当事由」を解説してきましたが、借主側に過失がある場合は法的な枠組みが異なります。借主が契約上の義務に違反し、貸主との信頼関係が破壊されたと認められれば、契約を解除して立ち退きを求めることが可能です。
弊社の実感として、借主側に過失があるケースの方が、オーナー様の心理的な負担は大きいことが多いです。「明らかに借主が悪いのに、なぜ法的手続きを踏まなければならないのか」という戸惑いの声は非常に多く聞かれます。しかし、「過失がある=すぐに退去させられる」というわけではなく、催告・内容証明郵便・契約解除通知・訴訟と、段階を踏む必要がある点は正当事由のケースと変わりません。手続きの負担はありますが、借主側に過失がある場合は裁判所が貸主側に有利な判断を下しやすい傾向にあります。
次の項目から、詳しく見ていきましょう。
1.借主が家賃を滞納している
家賃滞納は、強制退去の理由として最も多い原因とされています。なお、家賃滞納による契約解除は「信頼関係破壊の法理」に基づいて判断され、実務上は概ね3カ月以上の滞納が一つの目安とされています。
「家賃を滞納しているのだからすぐに出てもらえる」と考えるオーナー様は多いですが、実際には法的手続きの完了まで相当な期間がかかります。弊社の提携弁護士によると、滞納の発覚から強制執行の完了まで、督促→催告(内容証明郵便)→契約解除通知→明渡し訴訟→強制執行というステップを踏む必要があり、概ね5~7カ月程度を要するのが一般的とのことです。早い段階で弁護士に相談し、手続きの全体像を把握しておくことが重要です。
実務上、家賃滞納が発生した場合、貸主側は借主に対して督促を行い、応じない場合は法的手続きに進むことになります。ただし、滞納の背景には異なる事情がある点に注意が必要です。
失業や病気などによる滞納で、社会的に見ても止むを得ない事情がある場合は、立ち退き要求が認められないことがあります。
一方、十分な経済力があるにもかかわらず、意図的に支払わない場合や、長期間にわたって対話や交渉に応じないケースでは、強制退去を進めることができます。
家賃滞納から立ち退きまでの流れについては、弊社へのご相談でも多くのご質問をいただきます。滞納が発生した場合の対応方法や、法的な手続きの進め方について、弁護士や司法書士に相談することで、より適切な対応が可能になります。
家賃の督促から立ち退きまでの流れは、下記の記事でも詳しく紹介しています。
2.騒音や悪臭を発生させる迷惑な借主である
騒音による近隣トラブルは、集合住宅や住宅密集地ではよく見られるものです。
しかし、騒音が常軌を逸しており、近隣住民が深刻な被害を感じるようであれば、立ち退きを要求する正当な事由となり得ます。
例えば「深夜早朝を問わず大音量で音楽を流す」「あえて騒音を生じさせるような行為を繰り返す」などのケースが該当します。
立ち退きが認められるには客観的な証拠が必要となるため、複数の近隣住民による証言や、音声・映像などで状況を記録しておくことが重要です。
弊社が提携する弁護士によると、騒音トラブルで立ち退きを求める場合に最も重要なのは「いつ・どの程度の騒音が・どのくらいの期間続いたか」を客観的に証明できるかどうかだそうです。騒音計での測定記録、管理会社を通じた注意の履歴、近隣住民の証言などの証拠を事前に積み重ねておく必要があり、これらの証拠収集には数カ月以上の期間と、場合によっては専門の調査会社への依頼費用(10〜30万円程度)がかかることもあります。
一方、悪臭が原因で立ち退きが認められるケースは限定的です。「物件がゴミ屋敷化してしまい近隣住民にとって深刻な被害が生じている」というような状況に限られます。
ただし、ゴミ屋敷は悪臭だけでなく、火災リスクや害虫の発生など衛生面でも深刻な問題を引き起こします。多くの場合は市区町村の職員が是正勧告をするなど、何らかの対策が講じられます。
騒音問題については、下記の記事も参考にしてみてください。
3.賃貸借契約違反がある
賃貸借契約には、物件の使用について様々な規定が定められています。
例えば「第三者へ又貸ししてはならない」「他人を住まわせてはならない」などです。
借主がこのような規定に違反しており、再三の警告にもかかわらず改善が見られない場合は、立ち退きを要求する正当な事由となる可能性があります。
ただし、実務上、借主の悪質性が明確に認められない限り、実際に立ち退かせることは難しいという傾向があります。弊社の実感として、契約違反を理由にした退去請求は「違反の事実がある=当然退去させられる」と期待されがちですが、裁判ではそう単純にはいきません。弊社へのご相談でも「又貸しされている」「契約者と違う人が住んでいる」といった違反は一定数ありますが、注意すべきなのは、契約違反があっても「信頼関係が破壊された」と認められるだけの悪質性が必要だという点です。違反の程度が軽微であったり、借主側に酌量すべき事情があったりすると、裁判所は解除を認めない場合があります。
4.その他、借主の悪質な行為
場合によっては、近隣住民や貸主に対して暴力や脅迫まがいの行為をする借主も存在します。
これらは、どんな事情があろうと許されるものではありません。このような場合、立ち退きを求めることができます。ただし、法的手続き(催告・契約解除通知・訴訟等)を経る必要がある点は他のケースと変わりません。
また、この場合は貸主が自分だけで立ち退き要求をすることは避けるべきです。警察や弁護士などの協力と指示のもと、身の安全を第一に対応することが重要です。
まとめ
借主の中には、正当な事由による立ち退き要求であっても応じないケースがあります。また、できるだけ立ち退き料を増額させようと交渉を進める借主もいるかもしれません。
このような場合、貸主だけで交渉を続けても話し合いがまとまらず、借主との関係が険悪になる可能性があります。
立ち退き交渉で最もよくある認識のズレは、「問題が起きてから弁護士に相談すればいい」という考え方です。弊社の経験上、オーナー様ご自身で交渉を続けた後に弁護士に依頼されるケースでは、すでに感情的なやり取りで関係がこじれてしまっており、解決までに余計な時間とコストがかかりがちです。注意していただきたいのは、立ち退き交渉は「行き詰まってから」ではなく「検討し始めた段階で」弁護士に相談するほうが、円滑な合意解約に至る可能性が高まるという点です。弊社と連携している弁護士が初期段階から交渉に入ったケースでは、合意解約で円満に解決に至った事例が複数あります。
立ち退き交渉に関してご不安な場合は、弁護士や司法書士への相談をお勧めします。