近年、深刻化しているサブリース問題。一度サブリースを契約してしまうと「契約解除できない」「多額の違約金を支払うハメになる」というトラブルが増加しています。しかし、サブリース契約は決して「一生解約できない」というものではありません。確かに法律上、解約しにくいものではありますが、正式な手順を踏めば「解約すること」も「不動産オーナー様の利益を守ること」も可能です。
この記事では、サブリースを解約するための基礎知識と注意点についてプロが徹底解説していきます。
近年、深刻化しているサブリース問題。一度サブリースを契約してしまうと「契約解除できない」「多額の違約金を支払うハメになる」というトラブルが増加しています。しかし、サブリース契約は決して「一生解約できない」というものではありません。確かに法律上、解約しにくいものではありますが、正式な手順を踏めば「解約すること」も「不動産オーナー様の利益を守ること」も可能です。
この記事では、サブリースを解約するための基礎知識と注意点についてプロが徹底解説していきます。
アパート経営や投資用マンションを所有している人が、空室対策のひとつとして活用しているサブリース契約。不動産所有者の強い味方であるサブリース契約が、なぜこのように深刻化してしまったのでしょうか。相次ぐサブリース問題に対応するべく、2018年3月27日に国土交通省は公式サイトにて「サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!」という注意喚起を促すことになりました。
参照:国土交通省
賃貸住宅のトラブル軽減のために相談窓口を設置したり、サブリース業者へ「賃貸住宅管理業者登録制度」を利用するよう求めたりしています。しかし、サブリース契約自体は悪いものではありません。サブリース契約できちんと利益を出せているオーナー様もいらっしゃいます。
サブリース被害が拡大した原因は、業者の説明不足にあります。サブリース契約には、メリットもある反面デメリットも存在します。現在、サブリース解約にお悩みのオーナー様の中には、業者からデメリット部分の説明をあまり受けなかった人も多いのではないでしょうか。
悪徳業者は、あたかも家賃保証が永久に継続するかのような甘い言葉をささやきます。アパートの建築費用も家賃収入から賄えるから大丈夫などと、簡単に言う業者も存在します。しかし、家賃保証には期限や改定があり、いつかは減ったり消えてしまったりするかもしれないシステムです。そして、賃貸経営というものは入居者あってのものであり、入居者がいなければ賃貸経営は成り立ちません。サブリース業者はその辺をあまり説明しないのです。
2015年5月11日(月)にNHKで放送された「クローズアップ現代」の番組内で、サブリース被害にあったオーナーの悲痛な叫びが特集されていました。
確かに、アパート経営は生活の足しになりますし、家賃保証という画期的なシステムを利用すれば空室対策にもなります。しかし、肝心なのは「デメリットもある」という部分です。このように、サブリースにはデメリット部分もあるということを、オーナーはしっかり理解しておかなければいけません。
では、オーナーが理解しておくべきデメリットはどのような部分なのでしょうか。国土交通省ではサブリース問題を解決するためには「賃貸住宅のローン返済も含めた事業計画やリスクについて、オーナー自らが十分理解する必要がある」と述べています。国土交通省も提示する「オーナーが理解しておくべきデメリット」とは、以下の3つです。
上記の3点は、サブリースにかかわらず賃貸経営をするなら起こりうる問題です。建物は建設した当初から劣化が始まり、いつかは賃料が安くなり必要に応じて修繕費もかかります。しかし「家賃保証」「一括借り上げ」という魅力的な言葉だけを捉えてしまい、このようなデメリット部分が見えなくなってしまうのです。これがサブリース問題を大きくしてしまった要因のひとつとなります。
入居者が退去すると、必ず室内の清掃費や修繕費用がかかります。
賃貸借契約では「これらの費用は誰が負担するべきか」で、オーナーと入居者との間でトラブルが発生することがよくあります。トラブルが長引き、なかには裁判沙汰にまで発展するケースもあります。国土交通省ではこのような問題を解決すべく「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を定め、賃貸人と賃借人との負担分を線引きすることになりました。
借地借家法という不動産の法律の存在も「解約が難しい」と思われている要因のひとつです。借地借家法とは「賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約更新、効力等に関し特別の定めをしている法」です。サブリース契約では、オーナーが「貸主」であり、サブリース業者が「借主」となるため、サブリース会社は借地借家法に保護されることになります。
借地借家法はとてもたくさんの規則が定められていますが、サブリース契約において、オーナーに不利に働く可能性のある法律を2つピックアップして紹介します。
借主から貸主へ家賃減額を請求できる権利が認められています。ここで注目していただきたいのが「契約の条件にかかわらず」という点です。つまり、契約当初は「賃料減額請求をしない」という内容であっても、家賃を下げられてしまいます。また借地借家法では家賃の減額請求できる時期が明確に定められていないため、極端な話「契約してすぐに家賃が下がる可能性がある」ということです。
不動産所有者であるオーナーから一方的に「サブリース契約を解約したい」と申し出ることはできません。借主を保護するために存在する借地借家法では、貸主が一方的に借主を追い出すことはできないと定められているからです。しかし、貸主に「正当事由」があれば、賃貸借契約を解約することはできます。正当事由をわかりやすく説明すると「解約せざるを得ない事情」のことです。賃貸借契約を継続できない原因が発生したために、解約せざるを得ない状況に陥ってしまったと認められれば、貸主から解約を申し出ることができます。
実際にサブリースを解約する方法と注意点についてみていきましょう。
賃貸借契約は、以下の場合に解約が認められています。
上記の2つのケースに該当すれば、サブリース契約であっても解約可能です。
賃貸借契約は、貸主と借主の合意があれば解約が可能です。サブリース契約に限らず、すべての契約はお互いに「辞めたい」を願うのであれば解約が認められています。合意解除については、専門家に依頼せずとも自分で解約手続きをとることが可能です。
正当事由とは「解約せざるを得ない事情」だとご説明しました。サブリース業者や入居者に対して解約を求めることができる正当事由の具体例は、以下の通りです。
もし、オーナーとサブリース業者との間で合意解除ができそうにもない場合は、裁判所にて上記のいずれかの事情を認めてもらう必要があります。そこで、オーナーの申し出が正当事由だと判断されれば、サブリース業者が解約を拒否していても解約することが可能です。また上記の理由が「正当事由には足らない」と判断されても、オーナーが立退料を支払えば正当事由の不足分を補うこともできます。
解約には注意点もあります。事前に注意点を知り、万が一の事態に備えておきましょう。
前項目で、解約には立退料が必要なこともあるとご説明しました。サブリース契約にはこういった解約するための費用が必要なケースがあります。立退料とは、貸主の正当事由を強めるために借主に支払う補償金のひとつです。支払う金額はケースにより異なりますが、賃料の半年程度となることも。ただし、立退料を支払ったからと言って必ずしも解約できるとは限りません。
また、違約金が必要になることもあります。契約書に「解約には違約金が必要」と記載してあった場合、違約金を支払わなければいけません。契約書の解約規定を確認し、違約金が必要なのか、どのくらい支払わなければいけないのかをチェックしてみましょう。
オーナーとサブリース業者が合意解除しても、入居者とは解約できないこともあります。まだ入居者が該当物件に住み続けていた場合、契約がなくなったからと言って入居者を一方的に追い出すことができません。入居者に部屋を明け渡してもらうためには、入居者とも合意解除するか正当事由を認めてもらう必要性があるのです。
ちなみに、入居者に明渡しを求めるための正当事由には以下のようなものがあります。
要するに、入居者の方から違反行為を犯している場合です。入居者側が賃貸借契約の継続に協力的ではないときは、入居者に明渡しを求めることができます。しかし、明渡し請求をするときは裁判所で「明渡し請求」を訴えなければいけません。いくら正当事由があったとしても、オーナーが正当な手続きを踏まずに、鍵を交換し荷物を室外に出すことは違法行為となるため、注意しましょう。
賃貸経営を続けるのであれば、後任の管理会社を見つけましょう。サブリース契約は、ほぼ賃貸経営に携わる必要がありません。そのため、これから賃貸経営をするとなるとゼロから客付けなどをしなければいけなくなります。また、賃料の相場や契約内容が分からないと、入居付けにも苦労します。相場よりも家賃を高く設定してしまうと、入居者は集まりません。また契約内容を把握していないと、クレームが多発してしまう可能性大です。
賃貸管理会社では、管理委託契約というものを行っています。これまでのように、一棟丸ごと管理を行ってくれる契約もあれば、入居者付けや家賃の督促のみというように一部の業務のみを任せる管理契約もあります。管理料の相場は賃料の2~5%ほどです。比較的、安い値段で管理を担ってくれるため、ほとんどのオーナーは管理会社を活用しています。
サブリースは決して解約できないものではなく、条件さえ満たせば解約を申し出ることが可能ということがお分かりいただけたと思います。しかし、条件を満たすだけでは解約することができません。解約条件を満たした上で、正しい手順を踏む必要があります。
まずは、解約した後の運営はどうするのかについて考えましょう。考えることは、サブリースを解約したあとの運営方針や不動産の処分方法などです。どのように動いていくのかを考えておくと相続対策にもつながります。例えば、以下のようなプランがありますので参考にしてください。
建物の様子や入居状況などを確認しながら、これからの方針を考えてみてください。入居者がいる場合、入居者に退去してもらうのか、そのまま住んでいてもらうのかも決めていく必要があります。また、上記の理由が正当事由と認められれば、スムーズな解約にも繋がります。
契約書に記載されている契約事項を再確認しましょう。契約書は、表紙に「マスターリース契約書」「一括賃借契約書」「サブリース原賃貸借契約書」などと記載されています。内容を確認したら、下記の項目を探しチェックしてみましょう。
サブリース業者によって細かな内容は異なりますが、上記の内容は必ず取り決められています。解約する前に、内容を把握しておきましょう。
契約の解約通知書(または解除通知書)を作成します。解約通知書は「内容証明郵便」で送り、サブリース業者が受け取った証拠を残せるとトラブル回避ができます。難しい場合は一般的な「解約通知書」(解除通知書)の郵送でも大丈夫です。契約を終了させるための解約通知書は、サブリース業者に解約の意思を伝えるために必要です。解約したいと口頭で告げるだけでも効果はありますが、書面に残しておいた方が何かトラブルがあった際に役立ちます。解約通知書には、以下のことを記載してください。
解約通知書には、現状の契約内容がわかるようにできるだけ細かく記載します。番地や物件名、住所に間違いがないようにしてください。この解約通知書を素人が作るのはとても困難だと思います。もし、作成に自信がないときは、賃貸契約に詳しい不動産管理会社や法律の専門家などのプロに相談してみてください。
上記で作成した解約通知書をサブリース業者に提出します。念のため、サブリース業者に「解約したい」という旨を申し出てから解約通知書を発送しましょう。提出方法は、内容証明郵便がおすすめです。内容証明郵便は、確実に書面を発送したという証拠となるうえ、差出人の「必ず読んで欲しい」という強い意思を主張することにもつながる有効的な手段のひとつです。
一般郵便と違うところは、440円の加算料金がかかるところと、宛先の下に「配達証明」という赤い印字がされるところ、ポストではなく窓口でしか出せないところです。書留と同じような扱いになるため、郵便局の窓口に行くときは印鑑を持参してください。契約内容によっては、書類発送後すぐに解約できないケースもあります。そのため、解約通知はできるだけ早めに提出しておくといいでしょう。
解約通知書が業者へ届いたか確認の連絡を入れましょう。確認方法は、メールかFAXがおすすめです。電話をかけて口頭で確認する方法は、担当者が不在だったり営業時間外だったりすると、何度も電話をかけなければいけませんし、証拠も残らないためおすすめできません。
以上が、サブリースを解約するための方法です。サブリースは決して解約できない賃貸借契約ではありませんが、業者によっては解約までに時間やお金がかかることもあります。
もし解約手続きが難航したり、膨大な違約金を請求されたりするようなことがあれば、一度サブリース解約に詳しい専門業者を頼ってください。法律に詳しい弁護士や司法書士だけでなく、賃貸借契約に詳しい不動産会社もオーナー様のお悩みを解決いたします。