賃貸住宅を経営しているオーナーにとって、頭を悩ませるのが「クレーム対応」。賃貸経営においてクレーム対応を避けて通ることはできませんが、クレーム処理の手間や負担を軽減させることは可能です!
本記事では、賃貸経営における正しいクレーム処理方法とトラブル防止対策について解説いたします。入居者管理に苦労している、またはクレーム対策にお困りのオーナー様は、ぜひ本記事を参考にしてください。
賃貸住宅を経営しているオーナーにとって、頭を悩ませるのが「クレーム対応」。賃貸経営においてクレーム対応を避けて通ることはできませんが、クレーム処理の手間や負担を軽減させることは可能です!
本記事では、賃貸経営における正しいクレーム処理方法とトラブル防止対策について解説いたします。入居者管理に苦労している、またはクレーム対策にお困りのオーナー様は、ぜひ本記事を参考にしてください。
不動産事業は「クレーム産業」と呼ばれているほど、クレームが頻発している業界のひとつ。不動産投資も例外ではありません。その理由は「同じものが2つとない」「様々な制限がある」「対応する人の知識不足」などがあげられます。全国宅地建物取引業保証協会が作成している「クレームの未然防止と上手なクレームの対応法」によると、クレームを未然防止するためには「クレームの本質を知る」ことが重要と示しています。まずは、クレームを最小限におさえるために、クレームを起こす人の特徴や発生源について学んでいきましょう。
参照:全国宅地建物取引業保証協会
クレームとは、入居者が持っている不満が表面化したもの。人によって不満を感じるボーダーラインは、それぞれ異なるため「こうすれば絶対クレームは起こらない」という基準を見つけるのは難しいものなのです。すべての入居者が何らかの不満のカケラを持ちながら生活していますが、大抵の人は「大家さんとの関係を壊したくない」「わがままだと思われたくない」など、不満を我慢して生活しています。
しかし、「ここまでなら我慢できる」という入居者の心の許容範囲を超えてしまうと、クレームは突然発生します。特に、アパートやマンションのような居住スペースが近い集合住宅は、ストレスが溜まりやすく、不満が爆発しやすい環境です。このように、クレームは「誰でも起こしうる可能性がある」と考えておくのが正解です。クレーマーを黙らせる方法を考えるよりも、クレームが発生しにくい経営を行うことが重要になります。
クレームは、入居者から発生するとは限りません。入居者同士でトラブルを起こしたり、オーナーと入居者が争ったりするケース以外にも、以下のように入居者と近隣住民との間でトラブルが発生し、やがて双方がクレーム対応に追われることがあります。
例えば、入居者と近隣住民とで、以下のようなトラブルが起こる可能性があります。
入居者からのクレーム | ・近隣住民に生活音がうるさいと言われた
・路駐していたら邪魔だと怒られた ・地区の行事に参加しろと強要されている |
近隣住民からのクレーム | ・不特定多数の人が出入りし防犯上良くない
・ゴミ出しや清掃活動など地域のルールを守ってほしい ・特定の入居者が来てから安心して生活できなくなった |
上記のクレームは、入居者と近隣住民が「直接問題を起こすケース」と「間接的に問題を起こすケース」に分かれます。一番多いのが、入居者と近隣住民が直接的に隣人トラブルを起こすケース。「隣家の敷地内に路駐した」「住人の騒音が気になる」「ゴミ出しのマナーがなっていない」など、特定の住民のマナーが悪いことが原因で発生するクレームです。これは、住民の生活マナーが悪いという点に限らず、入居者と周辺住民の相性が悪い場合にも、このようなクレームが発生しやすい傾向にあります。
さらに、特定の居住者との接点がないのにもかかわらずクレームが発生するケースも。例えば、不法投棄や路上駐車があった場合「犯人はわからないが、アパートに住んでいる住民が怪しい!」と、事実を断定せずに言いがかりをつけられる理不尽なクレームが発生することもあります。これは、以前に住んでいた入居者のイメージが悪いことや、人の入れ替わりが激しい賃貸住宅そのものに悪印象を持たれているケースです。
では、上記のトラブルから、どんなクレームへと発展していくのでしょうか。発生が予測されるクレームは、以下の通り。
入居者からのクレーム | ・近隣住民に注意喚起してほしい
・仲裁にはいってほしい ・部屋を移動させてほしい |
近隣住民からのクレーム | ・特定の入居者を退去させてほしい
・地域のルールを徹底させてほしい |
初期の段階では、当事者間の仲裁に入ってほしい、または注意喚起してほしいという要望で済みますが、鎮静化できずにいると、今度は退去問題にまで発展します。さらに問題がこじれていくと、入居者から「環境が原因で引っ越しを余儀なくされるのだから、引っ越し代や初期費用を出してほしい」と金銭要求されるケースもあるのです。
このように、クレーム対応に時間がかかると、やがては大きな損失に繋がります。トラブル発生から時間をかけずにクレームを処理し入居者の生活を安定させることが重要ですが、なかには「はじめから金品を要求することが目的」「感情をコントロールできない」という、悪質なクレーマーも一定数存在します。このようなクレーマーがいたのでは、安心して賃貸経営ができません。収益を維持するためにも、すぐにでも退去してほしいものです。しかしながら、どんなに気に入らない入居者がいても、オーナー側から一方的に入居者を追い出すことはできません。一体、どういうことなのでしょうか。
日本には「立場の弱い借主を守るべき」という法律が定められています。その法律とは、不動産のルールを取り決めている「借地借家法」です。借地借家法では、入居者を退去させるときは、以下のルールを守るべきだと定めています。
つまり、入居者に立ち退いて欲しいときは「時期」と「理由」を揃える必要があるということです。もし、それでも立退きの話が進まないときは「立退き料」を支払わなければいけません。どんなに悪質なクレーマーがいたとしても、大家の権限で荷物を放り出して入居者を追い出すことはできないのです。このような悪質なクレーマーを追い出すには、法的措置が有効です。これについては、このページ下部の「悪質なクレームは法的対処を」でさらに詳しく解説しています。
簡単に入居者を追い出せない以上、クレームが拡大する前に、できるだけ迅速にトラブル対応をしていくことがポイント。トラブル発生時に慌てないよう「どんなときに」「どこに依頼すればいいのか」自身のマニュアルを作成しておくのもおすすめです。急なトラブルに対応するために、これから紹介する「賃貸経営で発生する代表的なクレーム5パターン」でどんなクレームが発生しやすいかを予測し、有事の際にはどのように行動すればいいのかを確認しておきましょう。
参照:国土交通省
では、クレームは具体的にどのようなことが原因で発生するのでしょうか。国土交通省が公表している「賃貸不動産管理をめぐるトラブル等の現状」によると、賃貸住宅では表のようなクレームが多い傾向にあるようです。なかでもオーナーが直面する代表的なトラブルは、以下の5つのパターンが多いようです。
では、上記の項目が具体的にどんなことなのか、クレーム内容をピックアップして紹介します。
一番多いのが、原状回復に関するトラブル。不動産トラブルを処理している「不動産適正取引推進機構」によると、この原状回復トラブル件数が全体の41%を占めるほど、圧倒的に多い傾向にあります。例えば、以下のようなケースです。
原状回復とは、退去時に住んでいた部屋をどのくらい修繕すべきかという問題。国が定めたルールでは、「入居者が故意に壊したもの」「使用状況が悪く劣化が激しくなってしまった物」「契約書に入居者負担と記載されている物」に関しては、原状回復として修繕工事費用を請求できることになっています。しかし「自然に劣化したもの」「消耗品」に関しては、修繕費用を請求すべきではありません。このボーダーラインをよく知らないために、オーナーと入居者間でトラブルが発生するのです。
続いて多いのが、契約解除に関するトラブル。特定の理由が原因で「賃貸借契約を解約したい」と訴えてくる入居者もいます。例えば、以下のようなクレームが発生することがあります。
入居者側の一方的な都合により、契約期間中に退去希望を出されるケースがあります。なかには「退去するときは30日前に予告が必要」と取り決めているにもかかわらず「日割り計算で清算してほしい」と契約書にはない独自のルールを押し付けてくる入居者も。しかし、契約期間内の退去は違法ではないため、オーナーが退去を止める術はありません。退去のタイミングは入居者が自由に決められるのです。ただし、賃貸借契約書に「退去までの期間」と「退去時の通告」を定めておくのが、一般的。「中途解約するときは一カ月の間に退去予告をすること」というように、退去の前に「引っ越しを考えている」と事前予告を出してもらえるようにしておかなければいけません。
退去時、預かっていた敷金を返還するときに発生する、敷金トラブル。敷金とは、オーナーが預かる担保金のこと。原状回復費用や未払い分の家賃を差し引いた額を返金することが一般的ですが、このときに以下のような問題が発生することがあります。
入居者が修繕費用の負担を拒否するケースがあります。「修繕費用が相場よりも高い」「負担する義務はない」と、修繕費用の支払い自体を拒む入居者もいます。また、敷金を返金しなければ退去しないなど、なかには敷金の返金を理由に契約を延長する人もみられます。
賃貸借契約更新時にも、以下のようなクレームが発生します。
賃貸借契約を更新するときに発生する更新料。この更新料の支払いを拒否したり、更新料の値下げを要求されるケースも少なくありません。結論からいうと更新料の支払いについては、契約書次第です。契約書に更新料の支払いについての記載と同意があれば、入居者から更新料を受け取ることができます。また、契約書に更新料の金額が明記してあれば、値下げ要求に応じなくても問題はありません。
劣化や欠陥に関するクレームは、小さいものから大きなものまで、実に様々。なかでもよく発生するクレームは、居住中の設備故障です。
入居者の日常生活に直接支障が出るクレームは、早急に対応しないと大きなトラブルへと発展してしまうことが多々あります。また、放置しておく期間が長ければ長いほど、損傷部分が拡大してしまい、多額の修繕費用が発生してしまうことも。入居者からのクレームが発生したら、すぐに現場を確認し業者に修理を依頼しましょう。しかし、なかには「給排水設備の劣化」「害獣のフン被害」など、居住している入居者でさえ気づかない「目に見えない劣化」が発生しているケースも。異変に気づいたときには、すでに損傷が拡大していることも想定されます。
上記で紹介したようなクレームに対応するために「正しい対処方法」と「未然の防止対策」を徹底しましょう。ここからは、これまで紹介してきたクレームを正しく対処する方法について解説いたします。
クレームを早く鎮静化させたがために、相手の言いなりになってばかりだと「強く言えば何でもいうことを聞いてくれる」と思われ、金品を要求され続けることもあります。たとえオーナーであっても、対応できること、できないことは明確に伝えるべきです。「修繕はできるが新品交換はできない」「他の入居者も我慢しているのだから特別扱いはできない」など、必要以上の対応はできないことをきっちりと伝えましょう。
ただし、はじめから「できないこと」ばかり主張したり、すでに「できる」と返答した内容を覆したりすると、かえって問題を大きくしてしまいます。賃貸借契約を交わした以上、入居者の生活を守ることは、オーナーの義務。貸主として対応できる範囲を決め、決定事項は口頭ではなく契約書に明記しておくことが重要です。
クレームが発生していない状態でも、点検や見回りは必要です。入居者からの報告を待つだけでなく、オーナー自らが建物のみならず敷地内に何か異変はないか、時間があるときに物件を見回りましょう。すでに居住中の室内を定期点検することはできませんが、外観や敷地内だけでも「外壁のひび割れ」「共用灯切れ」「放置されたゴミ」など、様々なクレームの種が見つかるものです。
このような見回りによって得られる効果は、2つ。クレームの種となる小さな損傷や劣化を事前に見つけることができること、そして入居者に「大家さんはちゃんと見回ってくれている」という安心感を与えられます。異変に気づいたら、後回しにせず、その場その場で対処しておきましょう。
契約書は、オーナーの権利を守るために必要なものです。取り決めた内容は、必ず契約書に残しておくことがポイント。もしもクレームが大きくなり、裁判沙汰にまで発展してしまったときも、契約書が証拠として役立ちます。家賃や契約期間についての取り決めも重要ですが、ここまで紹介してきたように「原状回復」「敷金の返還」「更新料」など、退去後のこともふまえた内容の契約書を作成しましょう。
入居者とオーナーで、契約時に「劣化や破損は誰がどのくらい負担すべきか」ルールを定めておくことが大切です。原状回復の負担について取り決めておけば、修繕が必要になったときのリスク回避ができるでしょう。
また、退去時に「はじめから壊れていた」という言いがかりをつけられないためにも、入居前に室内の状況や設備動作について確認し、契約書内に現状を記録しておくのも有効です。ただし、原状回復については、国土交通省が取り決めたルールがありますので、確認しておきましょう。以下に記載している損傷に関しては、基本的に「貸主負担」となります。
例えば、クロスの汚れや床・畳の日焼け。時間の経過とともについてしまう傷みについては、賃借人に修繕費用を請求すべきではないと、決められています。また、震災や水害など、借主の意思とは関係なく発生した損傷においても、同様に修繕費用を負担させることはできません。しかしながら、入居者自身が「このような修繕費用も自分が負担してもいい」と同意していれば、修繕費用を負担してもらう特約を決めることが可能です。いずれにせよ、契約前に入居者とオーナーとで話し合い、お互いに納得したうえで、修繕範囲を決めていくことが大切です。
これまで、敷金返還については「当事者の問題」ということで、自由に使い道を決めても問題はありませんでした。しかし、2020年4月に改正となる民法では、敷金の定義が定められるようになったのです。具体的な内容は、以下の通り。
敷金を修繕費用や未払い分の家賃に充てるという点については、従来通り。しかし、敷金を手数料としてオーナーが受け取ったり、必要のない修繕費用として徴収したりすることはできません。では、具体的にどのようにすれば、トラブルを軽減させることができるのでしょうか。
敷金返還トラブルを起こさないためには、契約書に「敷金の返還ルール」をしっかりと取り決めておくことが大切。法律を変に解釈され、入居者に「必要のない修繕は違法だ」と主張されると、トラブルが長引いてしまいます。例えば「敷金は修繕費用として使用する」「馴染みの業者に修繕を依頼する予定」などです。オーナーと入居者が敷金の使い道について話し合い、納得した後で賃貸借契約を交わすようにしておくと安心です。
更新料が発生するかどうかは、契約書を確認しましょう。契約書に更新料が発生すると明記されていれば、問題なく更新料を受け取ることが可能。しかし、契約書に更新料や賃料の見直しについて明記していなければ、請求することはできませんので、注意してください。
契約更新時に大切になるのは、更新料の受け取りだけではありません。連帯保証人への確認や保険の再契約、賃料の見直しなどの業務も必要になります。また、次の更新のためにも、必要に応じた内容を取り決め、更新契約書を交付することも検討しましょう。
度重なる家賃の滞納、騒音や異臭などの迷惑行為など、運営に支障が出てしまうほど悪質な入居者がいた場合は、早めに法的措置をとりましょう。ただし、法的措置と言っても「過程」や「証拠」が必要です。退去させるには裁判所に「明渡し請求」を訴えることになります。しかし、ただ「入居者が悪い」と訴えても退去させることができません。
オーナーが問題解決に向けて具体的にどんな努力をしたか、証拠を提出する必要があります。この証拠づくりをするために、弁護士や司法書士のような法律の専門家の協力が不可欠です。督促の方法や、訴えを起こすタイミングなど、明渡し請求をするための正しい手順があります。他の入居者の安全と権利を守るためにも、迅速な対応に努めていきましょう。この明渡し請求の手順と費用については、下記のページを参考にしてください。
こうしたトラブルを防ぐためには、外部のサービスを上手に活用しましょう。例えば、以下のようなサービスがあります。
家賃保証会社を利用するメリットは、滞納リスクを軽減できるという点。基本的に、家賃は保証会社がオーナーの口座に入金します。もし家賃の滞納が発生した場合、保証会社が家賃滞納分を回収してくれるため、オーナー自らが督促を行う必要もありません。このように、保証会社が連帯保証人としての役割を果たしてくれるため、保証人がいない人でも入居させることも可能となります。
また、管理会社に管理を委託すると、契約業務や清掃、修繕など、賃貸経営のすべてをお任せすることができます。管理会社に委託できる内容も多岐にわたり、経営の一切をお任せできる「全部管理委託」や、特定の業務内容だけを委託できる「一部管理委託」もあります。
クレーム被害を大きくしないためには「迅速に」かつ「正確に」対応していかなければいけません。時には、24時間体制で対処していくことも求められます。また、不動産や法律の知識も不可欠です。自主管理は、管理コストがかからず、好きなように運営できることが大きなメリット。しかし、賃貸経営はクレームと隣り合わせです。いつ発生するかわからないクレームに、疲弊してしまうオーナーも少なくありません。「そこまで管理に時間をさけない」「管理内容が多すぎる」など、時間や労力を浮かせたいのであれば、管理会社を上手に活用することを検討してみましょう。
管理会社は豊富な知識と経験を持ち、建物管理のみならず経営指導を受けることが可能です。例えば、以下のようなメリットがあります。
上記の業務を請け負ってくれれば、管理費用は発生しますが、その分面倒な管理業務が減り、時間的にも精神的にもゆとりを持てるでしょう。また自身で管理しなくてもいい分、本業や投資物件を増やすことに専念できます。管理会社の管理形態やメリットについては、下記ページで詳しく解説しています。
ひとことで管理会社と言っても、業務内容は様々。建物管理を主とするビルメンテナンス会社もあれば、身近にある不動産会社が賃貸管理を請け負ってくれるケースもあります。例えば、以下のような違いがあるため、事前に「どんな業務を請け負ってくれるのか」確認が必要です。
このように、委託できる業務内容を把握しておかないと「希望していた仕事を請け負ってくれない」と不満を抱く結果になります。委託契約を結ぶ前に、面倒でも契約書を確認し、管理内容を把握しておきましょう。下記ページでは、管理会社の選び方や利用する際の注意点を紹介しています。
クレームは、対応方法を間違えると被害が拡大し退去者が出てしまう恐れがあります。対応時のオーナーの言葉遣いや返答内容、解決までの時間が相手を刺激し「損害賠償の請求」や「収益ダウン」に繋がってしまうことも少なくありません。
正しい知識を持ち迅速に対応すれば、クレーマーに対処していくことはできます。もし、ゆとりある経営を続けたいのであれば、クレーム対応を管理会社に委託するのも有効な手段。手間や時間を軽減させるだけでなく、プロの管理方法を学ぶいい機会にもつながるでしょう。