
建築基準法における幅員4m道路に対する間口幅2mの接道義務を満たしていないなどの理由で建物を建てることができない再建築不可物件。
法的な問題により、不動産運用上の流動性が低いため、売却時の価格も低く、周辺相場と比較して6~7割程度と格安で取引されることが多いです。
不動産投資物件を探している人にとって、再建築不可物件は安価なのがメリットです。しかし、再建築不可物件をローンで購入したいと思っても、金融機関は融資に難色を示します。
この記事では、再建築不可物件購入の融資はどこから受けられるのか、住宅ローンを利用するときはどのような対策をとればよいのかについて詳しく解説します。
目次
再建築不可物件に住宅ローンは利用できる?できない?
まず、基本的に再建築不可物件は、金融機関から融資(住宅ローン)を受けられないと思っておきましょう。以下、融資が受けられない理由を説明します。
債務者の返済リスクが高い
再建築不可物件は、様々なリスクを抱えている不動産です。
例えば再建築不可物件を購入し、その後火災が発生しても、再度跡地に家を建てられません。地震で倒壊したときも同様で、新しく家を建てることは不可能です。
そのため、入居者はせっかく住宅を購入したのに、家を失ってしまうリスクを負います。住宅ローン返済中の家を失ったため、所有者は新居の家賃負担など、二重の負担を抱え込むことになります。そうすると生活費が足りなくなり、破産する可能性もでてきます。
債務者にとってそのような大きなリスクがあると、返済が滞る可能性が高くなります。そのため、金融機関は積極的に融資を行おうとはしません。
また、金融機関によっては再建築不可物件の購入を考えている人は十分な自己資金や貯蓄がなく、あまり良くない属性の購入者だと判断している場合もあります。
自己資金を多めに用意することで審査基準がゆるくなることもありますが、あまり期待しないでおきましょう。
担保としての価値が非常に低い
少し住宅ローンに詳しい人ならば、「火災などが発生した時、もしくは債務者の返済が滞った時には、再建築不可物件の土地を売却して、残債を返済すれば問題ないだろう」と考えているかもしれません。
しかし、再建築不可物件は、普通に売買される建築可能な不動産と比較しても換金性も担保としての評価も非常に低いです。
金融機関が再建築不可物件への融資を行わないということは、他の金融機関も購入希望者に対して同様の処置をとっていることになります。
住宅ローン完済のために再建築不可物件を売却しようとしても、現金を用意できる人しか再建築不可物件を購入できません。
全く購入できる人が見つからないわけではありませんが、買い手が見つかるまでに半年、また一年と時間がかかってしまうことでしょう。
その間に住宅ローンの返済が滞るリスクもあるため、金融機関は担保としての再建築不可物件の評価を問題とせず、敬遠するのです。
また、再建築不可物件は、建物の状態が悪いことも多く、リフォームをしないとまともに住めないことがあります。
土地だけでなく、建物自体の査定額も低いため、金融機関は再建築不可物件に対しての融資に極めて消極的なのです。
再建築不可物件で融資を受けるための方法
それでも再建築不可物件で融資を受けることは、絶対に不可能なわけではありません。そこで現実的に融資を受けるいくつかの方法をお伝えします。
ノンバンクから融資を受ける
住宅ローンの融資を行うのは、金融機関に限りません。カードローン会社、いわゆるノンバンクでも、融資する会社はあります。
そういった会社に「再建築不可物件を購入したいが、融資してくれないか」という相談をしてみましょう。
物件の立地や状態にもよりますが、融資を検討してくれることもあります。ただし、いくつかの注意点や問題点も存在します。
金利が非常に高い
再建築不可物件はノンバンクにとっても、リスクが高い物件であることに変わりありません。融資する立場上、リスクカバーのために金利を高く設定するしかありません。
一般的な住宅ローンの場合、長期固定金利ローンであれば1.5%以下の金利で融資を受けることが出来ます。
さらに、変動金利であれば最初の数年間は、金利0.5%程度で融資を受けることも可能です。しかし、ノンバンクの住宅ローンの金利は4%前後が多いです。
- この金利の差は非常に大きく、例えば返済期間20年で2,000万円の融資を受けたとして、毎月の返済額がどれくらいになるか比較してみましょう。
- 金利1.5%での毎月の返済額96,509円
- 金利4%での毎月の返済額 121,196円
このように、同じ金額を借りていても金利次第で毎月の返済額に、大きな差がつきます。また、住宅ローンの融資を受ける時の手数料や保証料もかかります。
原則、再建築不可物件では、ローン融資を良い条件で受けることは難しいです。
再建築不可物件だから購入価格が非常に安いというメリットも、金利負担を考えれば、結局は普通の住宅を購入した方が良かったというケースも見られます。
物件の状態が良いことを求められる
ある程度のリスクを見越してでも融資するノンバンクですが、それでも担保としての価値を全く見ないわけではありません。再建築不可物件でも比較的、需要があるものとないものがあります。
需要がある再建築不可物件といえば、やはり東京23区内や神奈川県で東京寄りの横浜、川崎など、不動産としての人気が高い地域にある物件です。
そういったエリアに存在し、かつ敷地内にある程度の余裕があり、さらに庭など敷地内に余裕があり、日照も十分などの住宅としての価値が見込める物件であれば、融資を受けやすくなります。
また、住宅の状態もリフォームや修繕済みで、そのまま住めるようであれば、融資が通りやすくなります。
それとは逆に、都心から離れた郊外や地方にある再建築不可物件は不利になります。
木造で築30年以上、その間リフォームを一切しておらず、とてもそのままでは住めない状態の再建築不可物件は、融資を受けることが難しいでしょう。
銀行の用途自由なフリーローンを利用する
銀行は様々な用途に対するローンの融資を行っています。その中には債務者の用途を問わないフリーローンもいくつか存在します。
ただし、条件は住宅ローンよりもかなり悪くなり、金利は5~6%程度が多いです。この場合も金利負担で毎月の支出がかなり増えてしまいます。
あくまで再建築不可物件の購入費用を調達するための一時的な手段として用いましょう。近いうちにある程度まとまったお金が用意できる人が利用するのに適したローンです。
不動産担保ローンなどを利用する
金融機関は、債務者やその親族が所有している不動産、証券などを担保にしたローンの融資も行っています。つまり、自分が他に所有している資産があれば、それらを担保にしてまとまったお金の融資が受けられます。
不動産担保ローンの場合、金利は3%前後とそこまで高いわけではありませんが、住宅ローンと比べれば金利は高くなるため、再建築不可物件の最大のメリットである購入価格の安さを損ねてしまいます。
再建築不可物件の購入にあたって借り入れを希望する場合は、基本的には現金で頭金を3~5割程度用意しましょう。
そして、短期間で捻出できない残りの資金を不動産担保ローンなどを利用して調達します。まとまったお金ができたところで繰り上げ返済を行って金利負担を減らしましょう。
リフォームローンの融資を受ける
再建築不可物件はリフォームが可能です。そこで、リフォームローンの融資を行う金融機関を探して融資を受けましょう。
リフォーム会社などに相談して関係の深い金融機関の紹介と共に、リフォームローンの斡旋を依頼しましょう。唐突にリフォームローンの融資話を持ち込んでも、金融機関との交渉は難航するかもしれません。
しかし、リフォーム会社を通せば担当者が話を進めますので、スムーズに融資が受けられる可能性があります。壁や床などをまるまる交換してしまえば、再建築不可物件といえども新築に近い状態の内装にできます。
また、リノベーション可能な物件であれば間取りの変更もできます。再建築不可物件の購入する際はリフォームを施すことで住宅の魅力を再生する方法もあるのです。
金融機関からの融資は、担当者やタイミング次第という側面もある
金融機関やノンバンクの融資の可否は、絶対的な審査基準が存在しているわけではなく、ある程度流動的な側面があります。
交渉次第、担当者次第、また決算期などのタイミング次第といった、運の要素が絡んでくることもあるのです。
一つの金融機関で融資を断られたからといってすぐに諦めてしまうのではなく、粘り強く複数の金融機関に融資の相談を持ちかけてみましょう。
話をするうちに融資を検討する金融機関が出てくることもあります。
スムーズに融資を受けるには、自己資金を1,000万円ほど用意した上で、一定の収入があること、そして担保になる資産があることなどを証明しましょう。
再建築不可物件でも「銀行の住宅ローン」を利用する方法
基本的に再建築不可物件をローンで購入するのであれば、金利などの条件面で不利なローンの融資を受けるしかありません。
しかし、条件の良い住宅ローンを利用して融資を受けることも、実は不可能ではありません。では、どのようにすれば住宅ローンの融資が受けられるのでしょうか。
建築可能物件の条件を満たすために隣家と交渉する
再建築不可物件を建築可能物件に再生する手段の一つに、隣家世帯の敷地を買い取る、もしくは借り受けて接道条件を満たすというものがあります。
例えば、自分の敷地が路地奥や旗竿地であり、道路に対しては幅1.5mと、接道の間口幅2mを満たしていない土地だと考えてみましょう。
そこで、自宅より道路寄りに建っている隣家の敷地の一部が特に活用されていない場合、以下の図のようにすれば建築可能条件を満たせます。
このように接道要件を満たすために土地を買い取り、金融機関に建築可能物件とみなされれば、融資が受けられることもあります。
買い取らないまでも隣接地を借り受ける契約書を作成する、もしくは買い取りを約束する契約書を作成して金融機関に提示するなど、法的に有効かつ具体的な手段に出れば審査通過の可能性が上がります。
このように接道条件を満たすには、隣家との交渉が必要になります。必ずしも成功するとは限りませんが、自分たちの事情を話して理解を求める、また隣家が将来引っ越すなどの予定が分かれば、このような契約を交わすことも不可能ではありません。
すでに空き家になっている状態であれば、交渉も成功しやすいでしょう。ただし、やはり住宅の状態や需要なども判断されますので、この手が使えるのも東京23区など一部の地域に限られるでしょう。

まとめ
再建築不可物件で住宅ローンの融資を受けるには、売りに出ている物件、そのままの状態では難しいと言わざるを得ません。
再建築不可物件で融資を受ける時は、基本的には住宅ローン以外のローンを利用するか、ノンバンクの住宅ローンの利用を検討しましょう。
または、リフォームローンを使って居住に耐え得る状態にして購入します。
しかし、最終的に購入可否の判断材料としてよく見なければいけないのは、再建築不可物件にどの程度の利用価値があるかです。再建築不可物件と一口に言っても新耐震基準を満たしており、多少のリフォームで十分居住できるものもあります。
一方で、築年数50年以上の木造でボロボロ、どんな瑕疵が存在するかわからず非常にリスクが高いものなど、様々な物件が存在しています。
再建築不可物件の購入では、価格が安いからお得だと物件情報を見ただけで安易に判断するのではなく、通常の物件探しと同様に、周辺環境もじっくり見ましょう。
そして、少し土地を借り受ければ建築基準を満たせるものや、あまり手をかけずに住めたり貸し出せたりするものを、しっかりと見抜き、費用をかけずに購入できる再建築不可物件を探していきましょう。
価値ある再建築不可物件であれば、ローンの審査も通過しやすいかもしれません。