空き家の税金にはどんなものがある?固定資産税が6倍って本当?

空き家の税金

相続などにより空き家を所有している人のなかには、空き家にかかる税金について気になっている人もいるでしょう。

空き家であっても、住居と同様に税金がかかります。税金にはさまざまな種類があり、空き家を所有している場合は、かかる税金を把握しておくことは大切です。

なお、空き家を所有すると固定資産税がかかりますが、空き家を放置するとこの税金が6倍になることもあります。

空き家を所有している場合、かかる税金とともに税金を抑えるための対処法も把握しておくとよいでしょう。

空き家にかかる税金の種類

不動産を所有していると、さまざまな税金を支払わなければなりません。たとえ居住者のいない空き家であっても所有している場合は、下記の税金がかかります。

税金 税金がかかるタイミング
相続税 不動産の相続時
登録免許税 不動産の相続時
所得税 不動産の売却時
住民税 不動産の売却時
固定資産税 不動産を所有している間
都市計画税 不動産を所有している間

空き家の税金がかかるタイミングは、大まかに「相続時」「売却時」「所有している間」の3つに分けられます。空き家を所有している場合、どの税金がかかるのかを確かめておくとよいでしょう。

相続には相続税・登録免許税がかかる

相続した土地や住居は、誰も使っていなくとも財産としてみなされます。親族などから財産を相続した場合、不動産を相続する場合は相続税が原則かかります。

そのため、空き家を相続した場合は、原則相続税を納めなければなりません。

また不動産を相続する場合は、土地や住居の名義変更が必要です。名義変更の手続き時には登録免許税がかかります。

つまり空き家を相続した場合には、相続税と登録免許税を納めなければなりません。ここからは相続税と登録免許税の計算方法を解説していきます。

空き家の相続税の計算方法

空き家の相続税を計算する場合、大まかには下記のような手順が必要です。

  1. 課税遺産総額を算出する
  2. 法定相続分を算出する
  3. 相続税の税率と控除額を算出する
  4. 相続税の総額を算出する
  5. 法定相続分に応じて各相続人が納付する相続税の税額が算出できる

この手順に沿って、今回は「相続人が配偶者と子の2人」「1億円の不動産を相続」という条件で空き家の相続税の計算をしていきます。

まず前提として相続税の課税対象は、遺産のすべてではありません。相続財産の総額から基礎控除額を差し引いた金額が相続税の課税対象(課税遺産総額)となります。

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算が可能です。

今回の条件で算出すると、相続人が2人の場合の基礎控除額は「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」となります。そして1億円の不動産を相続した場合、課税遺産総額は「1億円ー4,200万円=5,800万円」となります。

課税遺産総額を算出したあとは、法定相続分を算出します。法定相続分は、配偶者や子といった関係性によって変動する仕組みです。

相続人が配偶者と子の2人の場合、それぞれ1/2が法定相続分となります。課税遺産総額が5,800万円の場合、それぞれ2,900万円が法定相続分に応じた取得金額となる計算です。

取得金額を算出したあとは、相続税の税率と控除額を計算します。税率は法定相続分ごとの取得金額によって、下記のように異なります。

法定相続分に応じた取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

参考元:国税庁「No.4155 相続税の税率」

今回の条件を踏まえると、配偶者と子は「2,900万円×15%ー50万円=385万円」となり、今回の条件における遺産の相続税総額は「385万円+385万円=770万円」と算出できます。

最後に相続税の総額を法定相続分に応じて割り振ることで、ひとりひとりが納付すべき相続税を計算できます。この条件において、配偶者と子はそれぞれ「770万円×1/2=約385万円」の相続税がかかる仕組みです。

空き家を相続した際の登録免許税の計算方法

相続の際にかかる登録免許税額は「不動産の固定資産税評価額×0.4%」の計算式で算出できます。

固定資産税評価額とは、固定資産税を決定する基準となる評価額のことです。各市区町村が定めており、納税通知書や固定資産税評価証明書から確認できます。

たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の空き家を所有する場合、「2,000万円×0.4%=8万円」の登録免許税を納める必要があります。

空き家の売却後は所得税・住民税がかかる

空き家に限らず、不動産を売却する場合は所得税や住民税がかかるのが一般的です。不動産を売却することで得られる譲渡所得に対して、所得税や住民税が課税される仕組みです。

譲渡所得は「譲渡収入-(取得費+譲渡費用)」で算出できます。

※譲渡収入とは、空き家の売却金額のこと。
取得費とは、不動産を得るためにかかった費用のこと。
譲渡費用とは、不動産売却でかかった諸経費のこと。

たとえば、取得費2,000万円の空き家が3,000万円で売れた場合を想定します。譲渡費用として300万円がかかった条件であれば、この場合の譲渡所得は「3,000万円ー(2,000万円+300万円)=700万円」と計算できます。

今回のシミュレーションでは700万円の利益が出ており、所得税と住民税はこの700万円にかかる仕組みです。

所得税と住民税を計算するにはそれぞれの税率が必要です。税率は空き家の所有期間によって下記のように異なります。

所有期間 所得税の税率 住民税の税率
5年以下 30%(復興特別所得税を除く) 9%
5年超 15%(復興特別所得税を除く) 5%

譲渡所得が700万円で所有期間5年以下の空き家である場合、所得税は「700万円×30%=210万円」、住民税は「700万円×9%=63万円」と計算できます。

空き家の売却には「空き家の譲渡所得の3000万円控除」の特例が設けられている

相続または遺贈した空き家を売却する場合、一定の要件を満たしていれば譲渡所得の金額から最高3,000万円が控除される特例が適用されます。

特例が適用されれば、所得税や住民税の課税対象である譲渡所得が控除されるため、空き家売却時にかかる税金を抑えることが可能です。

たとえば譲渡所得が700万円であっても、特例の適用により700万円の控除を受けられれば譲渡所得は0円となります。課税対象の譲渡所得が0円であれば、所得税と住民税は発生しないため、特例が適用されれば節税ができるのです。

なお特例が適用される要件については、国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」で確認できます。空き家を売却する際は、特例の要件を満たせないかを調べておくとよいでしょう。

所有には固定資産税・都市計画税がかかる

空き家であっても、不動産を所有していると固定資産税や都市計画税がかかります。これらの税金は空き家の所有者が納めなければなりません。

固定資産税と都市計画税は、下記の式で計算できるのが一般的です。

  • 固定資産税=固定資産税評価額×税率1.4%
  • 都市計画税=固定資産税評価額×税率0.3%

※市町村によっては税率が異なることもあります

この計算式を用いると、固定資産税評価額が2,000万円の空き家を所有している場合、固定資産税は「2,000万円×1.4%=28万円」、都市計画税は「2,000万円×0.3%=6万円」と計算できます。

なお、固定資産税評価額は各市区町村が定めており、納税通知書や固定資産税評価証明書から確認できます。

住宅用地の特例とは

空き家を所有している場合、住宅用地の特例が適用される場合があります。特例が適用されれば、土地の面積に応じて固定資産税と都市計画税が優遇されるため節税が可能です。

特例が適用された場合の固定資産税と都市計画税の軽減率は以下のとおりです。

固定資産税 都市計画税
敷地面積200m2以下の部分 固定資産税評価額×1.4%×1/6 固定資産税評価額×0.3%×1/3
敷地面積200m2を超える部分 固定資産税評価額×1.4%×1/3 固定資産税評価額×0.3%×2/3

たとえば敷地面積200m2以下で固定資産税評価額が2,000万円の空き家を所有している場合、固定資産税は「2,000万円×1.4%×1/6」、都市計画税は「2,000万円×0.3%×1/3」と軽減率を計算できます。

「特定空き家」の固定資産税は6倍

空き家を所有していると固定資産税がかかり、基本的には住宅用地の特例による控除を受けたうえで納税をすることになります。しかし、管理が不十分と判断された空き家は「特例空き家」として認定され、住宅用地の特例による固定資産税の軽減を受けられなくなります。

さらに、特定空き家として認定された場合は最大6倍の固定資産税を納める必要もあります。この背景には、2023年3月3日に閣議決定され、同年6月14日に公布された「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」がかかわっています。

つまり、適切な管理をせずに空き家を放置していると、特定空き家として認定されて固定資産税が最大6倍になるおそれがあるということです。

特定空き家とは?該当する条件

特定空き家とは、放置することが特に適切でない状態にある空き家のことです。具体的には、下記のような空き家が該当します。

  • 倒壊や火災の危険性が高い空き家
  • 著しく公衆衛生上有害となるおそれのある空き家
  • 管理不足によって景観を著しく損ねている空き家
  • 近隣住民の生活を脅かすおそれのある空き家

「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」は、適切に管理されずに使用用途がない空き家が増加しており、周辺の生活に悪影響を及ぼす事例が増えるのを防ぐため制定されました。

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特定空き家に認定される流れとその後

特定空き家に認定されるまでの流れとその後については、下記のとおりです。

  1. 空き家に対する苦情や相談が行政に入る
  2. 空き家の現地調査が行われる
  3. 特定空き家に指定される
  4. 助言や指導が行われる
  5. 勧告を受ける
  6. 命令を受ける
  7. 行政代執行が行われる

空き家に対する苦情や相談があった場合、行政はまず物件の調査を開始します。その空き家が「適切な管理をせずに放置されており、周辺の生活に悪影響を及ぼす可能性がある」などと判断された場合、特定空き家として指定されます。

特定空き家と指定されたとしても、すぐに罰則や固定資産税の増額となるわけではなく、まずは行政から助言や指導が行われます。それらに従えば特定空き家の指定を解除することが可能です。

助言や指導に従わず、勧告も無視した場合は、固定資産税が最大6倍になります。さらに勧告後の命令にも従わなければ、50万円以下の罰金が科されることにもなりかねません。

罰金が科されても命令を無視していると、行政代執行として空き家が強制撤去される可能性があります。強制撤去となった場合、解体にかかる費用はすべて空き家の所有者に請求されます。

管理不全空き家も放置すると固定資産税の減免措置がなくなる

基本的に空き家を所有していれば、特例により固定資産税の減免措置を受けられます。しかし、管理不全空き家としてみなされた場合、この減免措置を受けられません。

管理不全空き家とは、放置を続けると今後特定空き家になる可能性があると判断された空き家のことです。具体的には、下記のような空き家が管理不全空き家としてみなされる可能性があります。

  • 窓や屋根、壁の一部が壊れて放置されている
  • 雑草が生い茂っている

管理不全空き家としてみなされた空き家は、市区町村長から指導や勧告を受けます。

国土交通省が公表している「「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」を 閣議決定」では、勧告を受けた管理不全空き家の敷地は固定資産税の住宅用地特例を解除されると記載されています。

現時点では固定資産税の減免措置を受けていても、不十分な管理によって管理不全空き家としてみなされて勧告がされれば、固定資産税が最大6倍になることもあります。

空き家の固定資産税を払わないリスク

空き家の固定資産税を払わない場合、下記のようなリスクが生まれます。

  • 延滞金の発生
  • 財産の差し押さえ

これらのリスクを生まないためにも、空き家を所有している場合、納めるべき固定資産税は必ず支払うようにしてください。

延滞金の発生

空き家を所有することでかかる固定資産税の支払いが遅れると延滞金が発生し、所有者に催促状と納付書が送付されます。

延滞金は年度ごとに定められた割合で計算されます。割合は自治体によって異なり、納期限の翌日から1か月以内であれば年率2.4%、納期限から1か月が経過すると8.7%の割合で延滞金が発生する仕組みです。

所有している空き家の広さにもよりますが、延滞金は年間で数万円〜数十万程度になるのが一般的です。

空き家を所有している場合、固定資産税を期日通りに納め流ことが大前提です。万が一延滞金が発生してしまった場合、納期限が1か月を越える前に固定資産税と延滞金を支払うようにしてください。

財産の差し押さえ

空き家を所有することでかかる固定資産税の請求を長期間無視すると、最終的には役所による財産の差し押さえが行なわれます。この準備として、まずは役所からの財産調査が実施されます。

財産調査によって換金可能な財産があると判断されると差押予告通知書が送付され、この通知を無視すると差し押さえが実行される流れです。

差し押さえの対象となる財産には、下記が挙げられます。

  • 不動産
  • 銀行口座の預貯金
  • 各種保険の解約返戻金
  • 給与債権
  • 貴金属

差し押さえが実行されると、勤務先に債権の差押命令が下るため、働いている会社にその事実が知られてしまいます。

自治体窓口に相談することで滞納している固定資産税の分割納付に対応してもらえるケースもあるため、支払いが難しい場合にはまず住んでいる地域の自治体に相談してみてください。

空き家の固定資産税が6倍になることへの対処

適切な管理をせずに空き家を放置しておくと、特定空き家や管理不全空き家とみなされる可能性があります。

その場合は最大6倍の固定資産税がかかるため、空き家を所有している場合は下記の対策を講じてみるとよいでしょう。

  • 売却する
  • 貸し出す
  • 行政からの指摘箇所を改善する
  • 自分か親族が住む

売却する

使用用途のない空き家がある場合、売却することも検討しておくとよいでしょう。固定資産税は不動産を所有していることで発生するため、空き家を売却すれば税金がかかりません。

空き家の売却方法には「空き家のまま売る」「更地にして売る」の2種類があります。

方法 メリット
空き家のまま売る 固定資産税や空き家の維持管理にかかる固定費をすべてなくせる
更地にして売る 空き家の売却益から解体にかかる費用を捻出できる

更地にして売る場合、空き家の解体が必要です。解体のための費用を支払う必要がありますが、この費用は空き家の売却益から捻出が可能です。

なお、空き家を売却しない場合でも、市区町村によっては固定資産税の減免が継続される場合もあります。

とはいえ、減免のための手続きの手間や所有を続けることで発生する固定資産税を考慮すれば、使用用途のない空き家は売却するのがよい対策といえます。

今後も使用する予定がない空き家を所有している場合、まずは売却することを視野に入れてみてください。空き家の売却金額の目安を知りたい場合は、不動産売却一括査定を試してみるとよいでしょう。

貸し出す

固定資産税が6倍になるのは、特定空き家を所有している場合です。所有する物件が空き家でなければ固定資産税が6倍に増加されないため、賃貸物件として貸し出すことも対策の1つとなります。

空き家を貸し出す際は、下記のような方法が挙げられます。

  • 空き家をリフォームして貸す
  • 更地にして土地を貸す

空き家をリフォームする場合、改装などの費用がかかりますが、物件の解体が不要です。住居自体は残るため、住宅用地の特例が適用されれば固定資産税の優遇を受けられます。

一方、更地にして土地を貸す場合は、空き家の解体費用がかかります。解体後に駐車場などとして貸し出す場合、住宅用地の特例は適用されません。

つまり、更地のほうが土地をさまざまな用途として活用できる一方で、解体費用がかかるうえに用途によっては住宅用地が適用されないのです。

行政からの指摘箇所を改善する

特定空き家とみなされる前に、行政からの助言や指導の通りに空き家を管理すれば固定資産税が6倍になることはありません。

ただし空き家の管理には、基本的に費用がかかります。空き家が著しく劣化していると、その修繕に数百万円ほどの大きな出費となることも考えられます。

行政からの助言や指導があった際には、空き家の改善にどれほどの費用がかかるのかを把握することから始めましょう。費用がかかりすぎる場合は、売却や貸し出しといった方法も検討してみてください。

自分か親族が住む

特定空き家となるのは、使用用途なしで放置されている空き家です。人が住んでいれば特定空き家と指定されないため、自分か親族が住むことで固定資産税が6倍になることを避けられます。

なお、適切に管理をしたうえで別荘として利用する場合も、特定空き家とみなされません。住居や別荘として利用する場合、適切に管理をしたうえで居住できる環境を整えるようにしておきましょう。

まとめ

空き家にはさまざまな税金がかかります。さらに、空き家を放置すると固定資産税が最大6倍になるため、税金対策を講じることが大切です。

税金対策として有効なのは、そもそも空き家を所有しないことが挙げられます。空き家の売却であれば節税対策となる特例適用を受けられるうえに、物件の維持管理費が一切かからなくなります。

使用用途のない空き家を所有している場合は、税金や維持管理費の対策としてまずは売却を検討してみるとよいでしょう。

よくある質問

残置物がある空き家でも売れますか?

残置物があっても空き家を売ることは可能です。

「残置物がある空き家は売れない」のような法律の制限はありません。そのため残置物があるからといって、空き家を売却できないわけではありません。

とはいえ残置物がある空き家は、購入希望者が集まりにくいと考えられます。売却をするのであれば、残置物を処分しておくことが望ましいです。

なお残置物がある空き家の売却方法については、「残置物のある空き家はそのまま売れる?処分方法と売却手順を解説」の記事で詳しく解説しているので、こちらも参考にしてみてください。

空き家を放置するとどんなリスクがありますか?

空き家を放置すると、さまざまなリスクが生まれます。

・老朽化による倒壊
・放火による火災
・景観の悪化
・犯罪被害
・害虫や害獣による被害
・近隣住民とのトラブル

空き家の放置には、倒壊や火災だけでなく犯罪被害などのリスクがあります。空き家を所有している場合、放置をせずに適切な管理をするようにしましょう。

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