一棟ビルを買取業者へ売却する6つのメリット
一棟ビルの売却を検討しているなら、買取業者への売却がおすすめです。不動産の買取業者とは、業者が不動産を直接買い取るサービスを提供する事業者です。買取業者は買い取った不動産に対してリフォーム・リノベーションや修繕などをおこなった後、賃貸・転売によって利益を出します。
一棟ビルは不動産のなかでも収益性が高い分、居住用の一戸建て・区分マンションと異なる部分が多い収益物件です。一般の人ではなく、主に事業者や投資家からの需要がある不動産です。そのため一般の人を顧客ターゲットにした不動産仲介会社などでは、一棟ビルの取り扱いが難しくなります。
一方で買取業者へなら、一棟ビルでも問題なく買い取ってくれる可能性が高いです。「買取業者自身が買い取るので、第三者の買手を探す必要がない」「買取後の不動産を活用する独自ノウハウがあるので、一般の市場では売れない一棟ビルでも対応してくれる」など、一棟ビルの売却でも引き受けてくれる期待値が高いからです。
さらに、一棟ビルを買取業者に売却する具体的な理由やメリットを、以下6つに分けて解説します。
- オーナーチェンジ物件でも立ち退き交渉などを任せられるから
- 大規模改修や不用品処分などをしないままで売却できるから
- 収益物件や共有名義などの権利関係が複雑な物件でも対応してくれる場合があるから
- 迅速かつ確実に売却が可能だから
- 買取には仲介手数料がかからないから
- 契約不適合責任が免責されることが多いから
オーナーチェンジ物件でも立ち退き交渉などを任せられるから
オーナーチェンジ物件とは、中古物件でまだ賃貸入居者が入ったままの状態で、オーナーのみが変更となる取引物件です。オーナーチェンジ物件は、以下の理由で不動産のなかでも売れにくいと言われています。
- 居住用として売却できないため購入層がほぼ投資家に限られる
- 買取後に居住用として運営したいとき思ったら居住者への立ち退き交渉が必要になる
- 投資目的で運営している場合は購入時に住宅ローンを利用できない
- すでに入居者がいるため物件の内覧に制限がかかる
- オーナーチェンジ後の入居者の退去や入居者の支払い能力・属性などが読みづらい
しかし、オーナーチェンジ物件に対応している買取業者なら、オーナーチェンジ物件を積極的に買い取ってくれます。買い取ってもらった後に買取業者が立ち退き交渉をするとしても、こちら側はすでに手放しているため一切かかわる必要がありません。立ち退き交渉のテーブルに付いたり、立ち退き料を支払ったりなどをしなくてよくなります。
オーナーチェンジ物件に対応する不動産仲介会社もありますが、「内覧が難しいので買手側が不安が残る」「売却先が個人オーナーや投資家だと立ち退き交渉対応をお願いされる可能性がある」「そもそもオーナーチェンジ物件の買手が少ないので売却先が見つからない」などのリスクが考えられます。
大規模改修や不用品処分などをしないままで売却できるから
不動産仲介を利用して不動産を売却する場合だと、建物の改修や不用品の処分などは、自分で対応する必要があります。キズや不用品がそのままだと買主側からの印象が悪くなり、売却するのが難しくなるからです。
とくに一棟ビルの場合、部屋の数や建物の面積などが一戸建てなどと比較して大規模となるため、改修や不用品処分などにかかる費用が高額になる傾向があります。大規模な対応が必要なときは、数千万円~数億円の負担になることも珍しくありません。
しかし買取業者なら、修繕が必要な部分や不用品をそのままの状態でも売却が可能な、現状有姿買取に対応しているところが多いです。現状有姿買取の買取業者への売却なら、大規模改修や不用品処分の費用を負担せずそのまま一棟ビルを売却できます。経年劣化や損傷が激しい築年数の古いオフィスビルなどでも、買取業者なら買い取ってくれる可能性が高くなります。
とはいえ、あまりにも状況がひどかったり収益性が見込めない物件だったりすると、買取対応できないと断られるケースもゼロではありません。現状有姿買取できるかは、あらかじめ買取業者への相談や査定依頼などをして確認しておきましょう。
収益物件や共有名義などの権利関係が複雑な物件でも対応してくれる場合があるから
買取業者は、オーナーチェンジ物件といった特殊な不動産でも買い取ってくれるところがあります。オーナーチェンジ物件に対応している買取業者なら、士業事務所の提携や交渉・活用ノウハウなどを駆使し、一般の人では扱うのが難しい不動産でも収益化できる仕組みを持つところも少なくありません。
そのため、収益物件、共有名義、相続、借地・底地、事故物件といった権利や瑕疵関係が複雑化している訳あり物件でも、オーナーチェンジ物件対応を謳う買取業者なら積極的に対応してくれることを期待できます。たとえば、ただでさえ売却難易度が高い一棟ビルの権利が複雑になっていても、買取業者になら売却できる可能性は高くなるでしょう。
迅速かつ確実に売却が可能だから
仲介による売却では、買主が見つかるまでは平均で3~6ヶ月かかり、1~2年見つからないことも珍しくありません。買い手が見つかっても、価格交渉や契約手続きをすべて合わせると、最低でも半年程度の期間が必要でしょう。一般層への需要が見込みづらい一棟収益ビルだと、より時間がかかる可能性があります。
不動産買取業者なら買取業者自身が買手であるため、買手を探す必要がありません。平均数週間~1ヶ月程度で、物件の引き渡しまで完了できます。
仲介だと不動産仲介会社と媒介契約(=不動産会社との仲介契約)を、買主と売買契約を結ぶことになりますが、不動産買取会社への売却では売買契約だけなので、手続きにかかる手間と時間も最小限に抑えられます。
買取には仲介手数料がかからないから
不動産買取会社に売却する場合、買い手が不動産会社なので、仲介で売却する際に必要になる仲介手数料は不要です。
仲介手数料の上限は宅地建物取引業法で定められていますが、多くは上限通りの金額が請求されます。
一棟ビル売却の場合、売買取引額が大きくなるため、かかる仲介手数料も高額になることが予想されます。たとえば、物件価格が1,000万円のビルだと仲介手数料は最大39.6万円、5,000万円のビルだと最大171.6万円、1億円のビルだと最大336.6万円請求されます。
契約不適合責任が免責されることが多いから
不動産買取会社への売却であれば、売主の契約不適合責任が免除されるところが多いです。
契約不適合責任とは、売却後に引き渡した物件が種類・品質・数量に関して契約内容と合っていない場合に、売主が責任を負う契約です。契約内容との相違があった場合、契約不適合責任により買主は売主に、損害賠償や契約解除、補修にかかる費用の負担を求めることができます。
契約不適合責任の消滅時効は物件の引き渡しから10年なので、仲介で売却した場合は長期間に渡って自分のものではない不動産について責任を問われる可能性があります。
対して、不動産会社が買主となる場合、多くで売主が契約不適合責任を負わない契約が交わされます。これは不動産買取会社は一般の買主と異なり、不動産の瑕疵をすべて確認した状態で買い取るためです。
ただし必ず免責されるわけではないので、契約内容の確認は必要です。たとえば、老朽化箇所や人死の事実などを故意に隠して売買契約を交わすなど、悪質な行為が発覚したら契約不適合責任が問われる可能性があります。とはいえ、不動産買取会社への売却では基本的に契約不適合責任が免責になると考えてよいでしょう。
参考:e-Gov法令検索「民法第562条」
一棟ビルを買取業者へ売却する場合の流れ
ここからは、一棟ビルを買取業者へ売却する場合の流れを見ていきましょう。一棟ビルを買取業者へ買い取ってもらうには、以下のプロセスを踏んでいきます。
- 査定額や対応力などを見て実際に買取してもらうところを選ぶ
- 必要書類を準備する
- 買取業者と売買契約などの手続きを進める
- 決済後に物件を引き渡す
- 売却前に発生した不動産取得や売却時の譲渡所得税の確定申告をおこなう
以下では、各プロセスの詳細を見ていきましょう。
査定額や対応力などを見て実際に買取してもらうところを選ぶ
不動産仲介での売却とは異なり、買取業者への売却なら不動産市場で第三者の買手を探す必要がありません。そのため、「どの買取業者を選ぶのか」が売却成功のために重要となります。
「自宅から近い場所にあるから」「広告がきれいだったから」など、曖昧な理由で選ぶのは得策ではありません。とくに一般的とは異なる需要を持つ一棟ビルの売却だと、一棟ビルを正しく取り扱える買取業者を選定することが、取引の満足度に直結するでしょう。
買取業者の多くは、依頼前に売却前の悩みや買取の詳細などについて事前に話し合える「無料相談」や、ヒアリング、写真、図面などを基に簡易的な査定をおこなう「無料査定」に対応しています。一棟ビルの買取を依頼する買取業者を選ぶ際には、実際に相談や査定をお願いして、査定額や対応力を自分の目で確かめるのがおすすめです。
公式サイトや口コミなども重要な情報源ではあるものの、直に言葉を交わしたり仕事を見たりすることが、買取業者を見極めるのに一番効果的となります。
一棟ビルの買取業者の選び方については、後述の安心して一棟ビルを売却できる買取業者の選び方にて詳細を解説します。
必要書類を準備する
買取業者を選定したら、買取業者とのやり取りに必要な書類を準備します。一棟ビルの査定時や売買契約時に求められる主な必要書類は次の通りです。
必要書類 |
詳細・入手方法 |
一棟ビルの登記事項証明書(登記簿謄本) |
・一棟ビルの所在地、構造、面積などの登記事項が記録してある書類
・法務局の窓口やオンライン申請で入手する |
登記済証(登記識別情報) |
・一棟ビルに関連する名義や権利関係などをまとめた書類
・法務局で取得する |
固定資産税評価証明書 |
・固定資産課税台帳に登録されている事項を証明するための書類
・各市区町村役場にて取得する |
管理契約書 |
・管理会社との契約内容を記載した書類
・管理会社から入手する |
賃貸借契約書 |
・賃借人との契約内容を記載した書類
・自分で作成または管理会社から入手する |
売買契約書 |
・以前の一棟ビルの所有者などと交わした売買契約の内容を記載した書類
・自分で作成または管理会社や元の所有者などから入手する |
建築確認書 |
・建築基準法の適合を確認したうえで建築をしたことを証明する書類
・紛失したときは代わりに「台帳記載証明書」を役場などで取得する |
完了検査証明書 |
・建築確認して建築した後におこなう完了検査に問題がなかったことを証明する書類
・紛失したときは代わりに「台帳記載証明書」を役場などで取得する |
一棟ビルの建物図面 |
・間取り図や立面図など建物の構造や面積などが記載された書類
・紛失した場合は一棟ビルを担当する管理会社や施工会社などに相談する |
地積測量図 |
・土地の面積などの測量結果を記載した書類
・法務局やインターネットにて取得する |
公図 |
・土地の位置・形状や境界などが記載してある法的な図面
・法務局や市区町村役場などで取得する |
レントロール(家賃明細書) |
・ビル賃料や賃貸条件、権利関係などのテナント情報をまとめたもの
・自分で作成または管理会社に作成してもらう |
リフォーム履歴 |
・リフォーム、修繕などの内容や実施時期、費用などをまとめた書類
・自分で作成する |
管理経費一覧表 |
・ビルの管理にかかった費用の履歴をまとめた書類
・自分で作成する |
点検報告書・付帯設備表 |
・一棟ビル全体の点検報告や付属する設備・家具などを記載した書類
・自分で作成する |
管理規約 |
・一棟ビルの設備利用方法、共有部分の範囲、非常時の対応などの注意点
・取り決めをまとめたもの・ビルの管理会社などから入手する |
印鑑登録証明書 |
・捺印した印鑑が自分の印鑑と同一であることを証明する書類
・市区町村役場などで入手 |
身分証明書 |
運転免許証やマイナンバーカードなど買取業者指定のもののコピーなど |
重要事項説明書 |
・過去に賃借人などで説明した内容をまとめた書類
・保管してあれば提出する |
上記で紹介した書類は、あくまで一般的に買取での売買時に求められることが多いものです。実際に必要となる書類は、買い取りを依頼した買取業者から具体的に指定されます。
買取業者は必要書類を通じて、所有者、賃貸状況、収益性、権利関係、税金、買取後の引き継ぎ内容などを確認します。書類が揃っていればいるほど、各手続きがスムーズになったり買取業者との価格交渉が有利になったりなどの恩恵を受けられるでしょう。
買取業者と売買契約などの手続きを進める
必要書類を揃えて査定に申し込んだら、売買契約に向けて具体的なステップに入ります。まずは買取業者による一棟ビルの「現地調査」が入るので、物件の案内や求められた書類の提示、アピールポイント・懸念点の説明、周辺状況の確認などの対応をしましょう。
現地調査が終了したら、調査結果を基に詳細な査定額が提示されます。現地調査後の査定額は、原則として売却価格とイコールです。提示された査定額を基に、価格算定の根拠の確認や金額交渉を進めてください。
価格に納得ができなければ、回答を保留したりほかの買取業者を選んだりするのも問題ありません。訪問査定まで依頼したからといって、その買取業者を選ぶ必要はないので、最終的な売却先はじっくりと選ぶことを推奨します。
売買条件でお互いが合意すれば、実際に売買契約を締結します。一般的には買取業者が主導で進めてくれますが、売買契約書の内容(話し合いの内容や査定額との差異がないかなど)や引渡し時期などの重要な部分は、必ず自分の目でチェックしてください。最終チェックがおろそかになると、「売却価格が予定と違う」「引渡し時期が希望と異なる」といったトラブルに発展する可能性があります。
決済後に物件を引き渡す
買取業者との売買契約を締結したら、決済と物件・鍵の引き渡しをおこないます。買取業者の場合は合意を得た時点ですぐに決済に移れますので、早いところだと即日〜2、3日後にお金が指定口座へ振り込まれるでしょう。もし手付金などを先に受け取っていたときは、査定額との差額が残金として支払われます。
振込時期や振込手数料の負担などは、あらかじめ買取業者に確認を取っておいてください。
決済を確認したら、一棟ビルの所有権を買取業者へ移転します。所有権移転登記を担当する司法書士等は、買取業者側で準備してくれるのが一般的です。登記や引き渡し時には、必要書類の準備や引き継ぎに誤りがないよう確認しながら進めます。
所有権移転登記は、必ず決済後・引き渡し前におこないましょう。悪質な買取業者のなかには、決済前に所有権移転と引き渡しを終えた後に、代金を振り込まないというトラブルを招くところがあります。なお一般的な買取業者との売買取引は、決済・引き渡し・登記手続きを一緒におこなう同時履行が基本です。
売却前に発生した不動産所得や売却時の譲渡所得税の確定申告をおこなう
収益性のある一棟ビルを売却で手放した後は、ビルの運営や売却で発生した所得・税金について確定申告が必要です。
申告期限が過ぎる、申告しない、本来の所得・税額よりも低く申告するなどが発覚すると、追徴課税として余計にお金を支払うことになります。収益物件である一棟ビルは税務処理が複雑になりやすいため、申告間違いがないように注意しましょう。
一棟ビルの運営で発生した収益は、主に賃借人からの家賃や敷金、保証金が該当する「不動産取得」、一棟ビルの売却益が該当する「譲渡所得」に分けられます。
不動産所得は、給与所得や事業所得などほかの所得と合算して税金を計算する「総合課税」に該当します。一方で、不動産売却で得た譲渡所得は、ほかの所得とは分けて税金を計算する「分離課税」です。
<不動産所得および税金の計算方法>
・不動産取得=家賃収入や敷金などの総収入 - 固定資産税や減価償却費などの必要経費
・不動産所得を含む総合課税の税金=課税所得(不動産取得や事業所得などの合計 - 所得控除) ✕ 課税所得に応じた税率 - 課税所得に応じた控除 - 税額控除
<譲渡所得および税金の計算方法>
・譲渡所得=一棟ビルの売却価格 - (一棟ビルの購入代金などの取得費 + 仲介手数料や立退料などの譲渡費用) - 特別控除額
・譲渡所得税=譲渡所得 ✕ 所有期間に応じた税率(譲渡年の1月1日に所有期間5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%)
確定申告の時期は、原則として翌年の2月16日~3月15日の間です。
なお、一棟ビルは居住用ではなく収益物件としてほぼ活用することから、マイホーム関係の控除制度は原則として対象にならないと思っておきましょう。
参考:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
参考:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」
一棟ビルを少しでも高く売却する為の4つのコツ
一棟ビルの売却価格は、仲介であっても買取であっても収益性の高低で判断されます。そのため、収益性が高いことがわかる客観的な資料や状況があれば、高値で売却できる可能性が高まります。
そこで、一棟ビルを少しでも高く売るために下記のような準備をしておくのがおすすめです。
- レントロールを作成する
- 修繕履歴をまとめておく
- 資料を一式まとめておく
- できる限り満室状態にしておく
1つずつ解説します。
レントロールを作成する
買い手候補者に購入を検討してもらいやすいように「レントロール」に物件の情報をまとめておきましょう。取引額が大きい一棟ビルの売買では、レントロールがないと取引できないこともあります。
レントロールとは、賃貸契約に関する情報の一覧表のことで、「家賃明細表」とも呼ばれます。入居しているテナント名や契約者名、賃料、賃貸面積、契約条件、契約時期、契約期間などがまとめられています。
月々の収入額や賃貸契約の条件、滞納者の有無などをすぐに確認できるため、事業用不動産においては売買時の物件の収益性やリスクの把握にレントロールが活用されています。一般的には、管理会社に頼めば作ってもらえます。
修繕履歴をまとめておく
レントロールと併せて、「修繕履歴」も一覧表にしてまとめておきましょう。修繕履歴とは、過去に物件に対して実施した修繕の全記録のことで、修繕・設備を交換した箇所や時期、内容、金額を記載します。
建物の破損や劣化、設備の不具合を適宜修繕しているか、消耗品や設備を定期的に交換しているかで、適切な管理がされている物件なのかが判断できるため、修繕履歴は不動産の価値を決める非常に大切な情報です。修繕記録があるだけでも、候補者に対して好印象を与えられるでしょう。
ただし、修繕が行われていない中古不動産を購入すると、購入後すぐに修繕が必要になるリスクもあるため買い手に敬遠される可能性があります。
資料を一式まとめておく
一棟ビルを売却するに当たっては、事前に不動産に関する資料一式をPDFやファイルにまとめておくことで、買い手候補者が見つかった際に、迅速に資料を提供できます。
具体的には、下記のような資料を用意しておきましょう。
- レントロール
- 修繕履歴
- 土地・建物の固定資産税・都市計画税の納税通知書
- 不動産の各種保険料
- 維持管理・メンテナンスにかかる費用の金額がわかる資料
- 水道光熱費の金額がわかる資料
できる限り満室状態にしておく
ビルの築年数や現在の入居率にもよりますが、空室がなく、テナントが全て埋まっているほうが高値で売却できる傾向があります。これは、空室があると空室分の賃料が入らないことを意味するため、事業用不動産としての価値を低く見積もられる可能性があるためです。
入居者が集まらないという場合は、「フリーレント」を使う手もあります。フリーレントとは、入居から一定期間、賃料を無料にする条件で入居者を募る方法です。フリーレント期間の賃料は受け取れませんが、空室率が低くなり、将来的な収益が見込めるため収益性への評価にはプラスになります。無料にする期間はオーナー次第ですが1~3ヶ月が一般的です。
ただし、現在の入居率が低いにもかかわらず、多額の宣伝料をかけて入居者を募っても、かかった費用の金額分、売却額が引きあがるとは限りません。
また、ケースによってはむしろ入居者に立ち退いてもらったほうが売却価格が高くなる可能性もあります。入居者がいない一棟ビルなら、運営方針の見直し、建て替え、リフォーム・修繕などがやりやすく、購入者にとって自由度が高くなるからです。ただし、入居者にテナントから立ち退いてもらうには、交渉や立退料の支払いなどが必須となります。
お金をかけて空室を埋めるか、そのまま売却するか、空ビルにすべきかは、不動産会社に相談してから決めるほうがよいでしょう。
一棟ビルを売却する際の5つの注意点
一棟ビルを売却する際の注意点をまとめて確認します。
- 買取業者の査定だけでなく自分でも査定しておく
- オーナーチェンジの場合はテナントには売却後に通知する
- 売買時に敷金の清算を行う
- その他の清算項目を取り決める
- 買取の売却価格は仲介より低くなる可能性があると知っておく
現在入居者がいるビルの場合、ビルの売却に際してトラブルになる可能性もあるため注意が必要です。
買取業者の査定だけでなく自分でも査定しておく
一棟ビルの売却価格を調べるときは、買取業者の査定だけではなく自分でも査定をしておくのがポイントです。買取業者だけに査定を丸投げすると、仮に買取業者の査定額が実態と著しくかけ離れて安いときでも、自分で気づかずにそのまま売却して損失を被るリスクがあるからです。また、自分で調べた取引価格や調査内容は、買取業者との交渉材料として使うこともできます。
一棟ビルの資産価値を正しく確認するために、調べておきたい項目は次の通りです。
- 一棟ビル周辺地域の類似取引事例を複数確認して買取相場を割り出す
- 一棟ビル周辺の開発事情や人口推移などを確認し将来性を予測する
- 築年数、耐震性、修繕履歴、入居状況などの一棟ビルの現状を正しく分析する
自分で一棟ビルの価格相場を調べるときは、以下の情報が活用しやすいです。
一棟ビルの価格相場調査で使える情報 |
概要 |
国土交通省「公示地価」ページ |
公示地価法に基づき、国土交通省土地鑑定委員会が適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点での標準地の正常な価格である「公示地価」を探せるページ |
「不動産情報ライブラリ」 |
不動産会社サイトで売り出し物件の価格や、国土交通省が運営する不動産価格情報が掲載されたサイト |
納税通知書・固定資産課税台帳 |
一棟ビルの固定資産税評価額が確認できる書類 |
不動産会社の取引実績 |
一棟ビル周辺地域の取引実績を載せている各不動産会社の公式サイト |
とはいえ、一般の人が不動産の価値を正しく把握するのは非常に難易度が高い作業となります。調査に時間がかかることもさることながら、一棟ビルの取引情報は一般的に公開されるケースが少なく、限定的なネットワークや不動産会社からしか情報を得るのが難しいからです。
より正確な査定を求めるなら、不動産鑑定士や建築士、そのほか市場調査のプロなどの専門家へサポートを依頼するのがよいでしょう。
とくに正確な査定額を求めるなら、不動産評価の専門家である不動産鑑定士を推奨します。不動産鑑定士なら、高い専門知識と不動産鑑定の経験によって専門家の中でも信頼性の高い査定が可能です。一般住宅では利用されることが少ない不動産鑑定士ですが、事業用のオフィスビㇲやそのほか収益性の高い物件の取引には利用されるケースがあります。
オーナーチェンジの場合はテナントには売却後に通知する
オーナーチェンジで売却する場合、入居者に対しては新オーナーに引き渡した後に通知をしましょう。
売却前に入居者に了解や同意を得ることも、通知することも必要ありません。オーナーが変わることを知らせて、不安を招き、退去希望に繋がるリスクもあります。売却後も入居者との契約はそのまま引き継がれるため、特別な事情がない限り売却後に通知するのが無難でしょう。
売却後に入居者に行う事後通知を「賃貸人の地位承継通知」と呼びます。一般的に賃貸人の地位承継通知は、売主(旧オーナー)と買主(新オーナー)の連名で行います。仲介で売却しても買取で売却しても同様です
売買時に敷金の清算を行う
ビルを売却する際には、入居者からテナント入居時に預かった敷金の清算を行います。
そもそも敷金は、賃料が滞納されたり、退去時の原状回復費用や修繕費用に充てられたりするためにオーナーが預かっている資金で、何事もなければ退去時に入居者に対して返却されます。そのため、ビルのオーナーが変わる際には、新オーナーが入居者の敷金を預からなければなりません。つまり、敷金の精算とは、新オーナーに敷金を承継することを指します。
敷金の精算は、売主が預かっている金額を買主へ渡すのではなく、売却価格から敷金の総額分を差し引くのが一般的です。
その他の清算項目を取り決める
ビル売却では、敷金以外にもさまざまな費用について精算が必要です。具体的には、敷金以外で下記の支払いについて、どのように清算するのか取り決めを行いましょう。
一般的には下記の通りですが、実際の清算の項目や範囲については買主と話し合って決めることになります。
固定資産税・都市計画税
固定資産税・都市計画税の支払いは、1月1日に不動産を所有している人に請求されます。売主が支払っている状態なので、売却に際しては、引き渡し日から年末までの固定資産税・都市計画税を買主から売主に渡します。固定資産税・都市計画税の清算は、売却価格に加算して調整します。
賃料・共益費
賃料と共益費は、オーナーが入居者から受け取るお金です。一般的に賃料・共益費は1ヶ月単位で受け取っているため、ビルの売却に際しては、引き渡し日から月末までの金額を、売主が買主に渡すことになります。賃料・共益費も売却価格から差し引いて調整します。
付加使用料・水道光熱費
付加使用料や水道光熱費は、計算が複雑になるため清算しないのが一般的です。付加使用料は入居者が専有部で使用した水道光熱費で、水道光熱費はビルの全体で使用した分の水道光熱費です。付加使用料・水道光熱費の金額が確定するのは、引き渡し日の翌月となるため、売却価格で調整できません。付加使用料・水道光熱費の金額はそう高いものではないため、清算しないことが多いのです。
買取の売却価格は仲介より低くなる可能性があると知っておく
一棟ビルを買取業者を利用して売却した場合、仲介で売却するよりも売却価格が低くなる傾向にあります。仲介より買取のほうが売却価格が低くなりがちな理由は、次の通りです。
- 売却価格に買取業者が後でおこなうリフォーム・修繕などにかかる費用が反映されているから
- 買取は買取業者の査定額を基に売買するが、仲介は買手と売手が合意すれば相場から離れた金額でも売買が成立するから
株式会社クランピーリアルエステートのこれまでの査定・買取実績を踏まえると、おおまかな相場としては「買取は仲介での売却価格の70~80%」が体感としてあります。とはいえ実際の売却価格は一棟ビルの収益性、状態、周辺状況などで大きく変化するため、あくまで目安として捉えておいてください。
安心して一棟ビルを売却できる買取業者の選び方
一棟ビルは事業用であること、収益性が高いことなどの要素によって、一般の不動産市場では売却が難しい物件です。そのため、買取業者のなかでも「一棟ビルを適切に取り扱えるところ」に売却できるか否かが、一棟ビルの売却をうまく進めるためのコツとなります。
安心して一棟ビルを売却できる買取業者の選び方は、次の通りです。
- 一棟ビル買取対応の業者を複数ピックアップしそれぞれに査定を依頼する
- 一棟ビルの買取実績を確認する
- 弁護士との提携など法律に強いところかを確認する
- 対応しているエリアを確認する
それぞれの詳細を見ていきましょう。
一棟ビル買取対応の業者を複数ピックアップしそれぞれに査定を依頼する
一棟ビルの買取に対応できる買取業者は、1つ見つけただけでそこに依頼を決めてしまうのは避けましょう。複数の買取業者をピックアップした後、それぞれ査定を依頼して査定額や対応力などを比較検討するのが、一棟ビルの買取業者を選ぶためのコツです。
複数の買取業者に査定を依頼するメリットは、主に次の通りです。
- 複数の買取業者の査定額を比較検討すれば適正価格や最高値などを調査しやすくなる
- 他社の査定額を価格交渉の材料として利用できる
- サービス内容や担当者の能力・態度などを比較して信頼できる業者かどうかを判断できる
無料相談や査定をうまく利用しながら、複数の買取業者から情報を集めることをおすすめします。
一棟ビルの買取実績を確認する
よさげな買取業者を見つけたとしても、その買取業者に一棟ビルの買取実績がなければ、適切な取引を望むのが難しくなります。一棟ビルの査定を依頼する前に、買取業者に一棟ビルの買取実績が存在するかどうかを確認しておきましょう。
一棟ビルの実績確認で見るべきポイントとしては、一棟ビルの取引数、取引した一棟ビルの状態・種類、実際に利用した顧客からの評判・口コミなどが挙げられます。
弁護士との提携など法律に強いところかを確認する
一棟ビルは不動産のなかでも収益性、権利、契約内容などの面で扱いが複雑化しやすく、各手続きや交渉が難航する可能性があります。そこで、弁護士や司法書士などの士業の専門家との提携や法律に精通したスタッフの在籍がある買取業者なら、法律面でのサポートを受けながら売買契約を進めることが可能です。
たとえば、弊社「株式会社クランピーリアルエステート」なら、不動産トラブルに強い全国の士業事務所と連携しており、共有持分などの権利関係が複雑な一棟ビルなどの買取実績や活用ノウハウが豊富にあります。
対応しているエリアを確認する
一棟ビルの買取実績や信頼性のある買取業者でも、所有する一棟ビル周辺のエリアの取引実績がない場合があります。依頼予定の買取業者の対応エリアを確認することも、買取業者選びにおいて重要な部分です。
所有する一棟ビル周辺のエリアに精通している買取業者なら、地元に特化した市場動向、地域性、需要などについて大手買取業者よりも詳しい可能性があります。特定の地域に限定して展開する買取業者なら、担当エリアでの査定・打ち合わせが迅速に進んだり、地域密着ならではの手厚いサポートを受けられたりなども期待できるでしょう。
ビル一棟買取ってもらうのにおすすめの不動産業者3選
実際にどのような不動産買取会社に相談したらいいのか、おすすめの業者を3社紹介します。
- 株式会社エイティ・コーポレーション
- 株式会社クランピーリアルエステート
- 株式会社フレキシブル
いずれも実績が豊富で、安心して依頼できます。迷ったときは、相見積もりを取ってみるのもよいでしょう。
株式会社エイティ・コーポレーション|東京での買取依頼ならおすすめ
出典:株式会社エイティ・コーポレーション
- 東京23区内を中心に多数の買取実績
- 仲介と買取の両方に対応
- 訳あり物件にも柔軟に対応可能
株式会社エイティ・コーポレーションは、東京23区内を中心に一都三県における商業ビル・戸建・土地・一棟マンションの買取を行っている不動産買取業者です。買取実績も十分にあり、特に港区・中央区での実績が多くあります。
不動産仲介事業も展開しているため、仲介・買取どちらか迷っている場合でも物件の立地や状態、希望に合わせてサポートしてもらえるでしょう。また、特化しているわけではありませんが、訳あり物件でも買取を行っているようです。
【公式】株式会社エイティ・コーポレーション
会社名
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株式会社エイティ・コーポレーション
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本店所在地
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〒153-0043
東京都目黒区東山3-1-11
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電話番号
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TEL:03-6412-7935
FAX:03-6412-7934
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営業時間
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9:30~18:30(定休日:土曜・日曜・祝日)
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公式HP
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http://eighty-co.jp/
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代表者
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渡辺 靖夫
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宅地建物取引業免許
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東京都知事(4)第87161号
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創業
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2006年11月
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株式会社クランピーリアルエステート|共有名義のビル買取ならおすすめ
出典:株式会社クランピーリアルエステート
- 訳あり物件に特化、共有名義不動産の買取が得意
- 全国対応で幅広いエリアの訳あり物件に対応
- 士業事務所と連携し複雑な案件にも対応可能
当サイト(イエコン)を運営している弊社、株式会社クランピーリアルエステートは、共有名義の不動産買取を得意としている訳あり不動産専門の不動産買取会社です。売却査定費用は無料、対応エリアは全国で幅広い訳あり物件を取り扱っています。特に、権利トラブル・相続トラブルになりやすい共有不動産を多く扱うことから、不動産問題に強い全国1,500以上の士業事務所と連携しており、専門家の紹介を受けられます。
共有名義のビルは、権利関係が複雑なものが多く、買取後の活用が難しいため、不動産買取業者であっても買取が断られることがあります。クランピーリアルエステートなら、豊富な買取実績から活用のノウハウが蓄積されているため、他の共有者とトラブルになっている案件でも適正価格での買取が可能です。
【公式】株式会社クランピーリアルエステート
会社名
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株式会社クランピーリアルエステート
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本店所在地
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【東京本社】
〒104-0045 東京都中央区築地2-10-6 Daiwa築地駅前ビル9F
【名古屋支店】
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内2-19-32 パインツリーサービスオフィス丸の内6G
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電話番号
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【東京本社】
TEL:03-6226-2566
FAX:03-6694-4709
【名古屋支店】
TEL:052-228-3901
FAX:052-228-3902
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営業時間
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10:00~19:00(定休日:土曜・日曜・祝日)
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公式HP
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https://c-realestate.jp/
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代表者
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大江剛
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宅地建物取引業免許
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国土交通大臣(1)第10446号
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創業
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2018年2月
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株式会社フレキシブル|使用されていないビル買取ならおすすめ
出典:株式会社フレキシブル
- 空ビルの買取に特化
- 即日査定・最短翌日決済で迅速に対応
- 全国規模の買取実績
株式会社フレキシブルは、「空ビル」を中心に買い取っている不動産会社です。空ビルとは、テナントが入っておらず使用されていないビルのことを指します。営業日であれば即日回答、500万~10億円なら最短翌日決済が可能だと謳っており、全国的な実績も豊富です。
入居者がいない空ビルは、設備や構造に何らかの問題を抱えているケースが多く、不動産買取会社から買取を断れることも多くあります。フレキシブルでは、買い取った空ビルを自社運用しているため、他社で売れにくい空ビルでも適正価格で買取が可能なようです。
【公式】株式会社フレキシブル
会社名 |
株式会社フレキシブル |
本店所在地 |
東京都台東区東上野1-15-2 エムビルⅡ3階 |
電話番号 |
03-3832-7077 |
営業時間 |
10:00~18:00(定休日:土日・祝日) |
公式サイト |
https://www.flexible-fudousan.com/ |
代表者 |
谷口晶宏 |
宅地建物取引業免許 |
東京都知事(4)第83259号 |
創業 |
1992年8月21日 |
ビル一棟を売却する際にかかる費用
最後は、ビルを丸々一棟売却する際に、売主が負担する費用を確認しておきましょう。
譲渡所得税
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売却によって得た利益に対してかかる税金
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仲介手数料
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仲介での売却する場合に不動産会社に支払う手数料
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印紙税
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課税文書(売買契約書)を作成する際に課せられる税金
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抵当権抹消費用
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ビル購入時に設定したローンが残っている場合に抵当権抹消登記にかかる費用
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一括繰上返済手数料
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ビル購入時に設定したローン残高を一括返済する際に金融機関に支払う手数料
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専門家への報酬
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弁護士や司法書士に依頼した場合に発生する報酬
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消費税|内税か外税か取り決めておく
一棟ビルの売却では、売却価格に対して消費税が発生する可能性があります。また、消費税を内税にするか外税にするかは売主側で決めることが可能です。
■内税と外税とは
同じ金額の商品でも、内税か外税かで支払い金額(売却価格)が変わる。
・内税
商品の本体価格と消費税を合わせて総額表示にすること。1,000円の商品が内税なら「1,000円(税込)」と表記され、表示されている1,000円に消費税が含まれているため、支払い金額も1,000円となる。この場合、本体価格が910円、消費税額が90円。
・外税
商品の本体価格と消費税を分けて表示すること。1,000円の商品が外税なら「1,000円(税抜)」と表記され、1,000円の中に消費税が含まれていないため、支払い金額は本体価格1,000円+消費税額100円で1,100円となる。
消費税の課税は、自身が課税事業者であるかで決まります。不動産の売買において消費税は、土地価格には課されず(非課税)、建物価格のみに発生します。居住用不動産を売買する場合に売主が個人だと、土地だけでなく建物価格も非課税となります。しかし、ビルを他人に貸し出して賃料を得ている場合、個人であっても不動産業を行う課税事業者となる可能性があります。課税事業者の場合は、建物価格に対する消費税が課されることとなります。
課税事業者となる場合は、個人事業主なら翌年の3月末までに、法人なら事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に消費税の納付が必要です。
■課税事業者とは
課税事業者とは、下記のいずれかに該当する法人・個人事業主を指す。
・前々年の課税売上高(=消費税が課税される売上高)が1,000万円を超える
・前年の1~6月までの課税売上高が1,000万円を超える、かつ同期間の給料支払額が1,000万円を超える
ビルの家賃収入は課税売上高に該当するため、前々年の家賃収入が1,000万円を超えていれば課税事業者となる。
課税事業者向けに、内税・外税の消費税額の求め方をシミュレーションしてみましょう。
売却価格は土地価格+建物価格なので、まずは売却価格における土地価格と建物価格の比率を割り出す必要があります。土地と建物の価格割合は、固定資産税評価額から算出が可能です。
■土地と建物の価格割合の算出方法
土地の価格割合=土地固定資産税評価額÷(土地固定資産税評価額+建物固定資産税評価額)
建物価格割合=建物固定資産税評価額÷(土地固定資産税評価額+建物固定資産税評価額)
例を用いて、土地と建物の価格割合を計算してみましょう。
【例】土地固定資産税評価額4,200万円・建物固定資産税評価額2,800万円の場合
土地の価格割合=4,200万円÷(4,200万円+2,800万円)
=0.6
=60%
建物価格割合=2,800万円÷(4,200万円+2,800万円)
=0.4
= 40%
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内税の場合のシミュレーション
それでは、売却金額に消費税を含める内税で取引する場合の消費税額をシミュレーションしてみましょう。土地固定資産税評価額4,200万円・建物固定資産税評価額2,800万円・売却金額2億800万円(税込)・消費税10%で試算してみます。
①消費税の内訳割合を計算する
消費税の内訳割合=建物価格の割合×消費税
=40%×10%
=4%
②売却価格全体の割合を計算する
売却価格全体の割合=土地価格割合+建物価格割合+消費税の内訳割合
=60%+40%+4%
=104%
③消費税額を計算する
消費税額=売却価格(税込)×消費税の内訳割合÷売却価格全体の割合
=2億800万円×4%÷104%
=800万円
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外税の場合のシミュレーション
売却価格に消費税を含めず、外税で取引する場合のシミュレーションを行います。土地固定資産税評価額4,200万円・建物固定資産税評価額2,800万円・売却金額2億円(税抜)・消費税10%で試算してみます。
①売却価格(税抜)に占める建物価格を計算する
建物価格=売却価格(税抜)×建物割合
=2億円×40%
=8,000万円
②消費税額を計算する
消費税額=建物価格×消費税率
=8,000万円×10%
=800万円
③売却価格(税込)を計算する
売却価格(税込)=売却価格(税抜)+消費税額
=2億円+800万
=2億800万円
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譲渡所得税|売却で利益が出た場合に課せられる
譲渡所得税とは、個人が不動産購入時の金額よりも高い金額で売却し、利益が発生した場合に発生する所得税と住民税を合計した税金です。税率は、不動産の所有期間で変わります。
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所得税
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復興特別所得税
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住民税
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合計
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短期譲渡所得の税率
(不動産の所有期間が5年以内)
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30%
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0.63%
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9%
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39.63%
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長期譲渡所得の税率
(不動産の所有期間が5年超)
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15%
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0.315%
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5%
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20.315%
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譲渡所得税の課税対象は「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で算出されますが、売却される不動産が事業用なのか非事業用なのかで取得費の計算方法が異なります。
不動産の取得費とは、建物の購入にかかった金額で、減価償却費額を建物価格から差し引いて計算します。減価償却費相当額は「建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数」が計算式となります。このうち、不動産が事業用なのか非事業用なのかで償却率が変動します。一棟ビルの場合は、取得費の計算時に注意が必要です。
建物の構造
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耐用年数
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事業用建物の償却率
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木造
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22年
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0.046
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木骨モルタル
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20年
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0.05
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鉄骨造(3mm以下)
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19年
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0.053
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鉄骨造(mm超4mm以下)
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27年
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0.038
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鉄骨造(4mm超)
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34年
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0.03
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鉄筋コンクリート造
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47年
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0.022
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鉄骨鉄筋コンクリート造
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47年
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0.022
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仲介手数料|不動産会社に支払う手数料
不動産仲介会社を利用する場合は、仲介手数料が発生します。不動産仲介会社に支払う仲介手数料の上限額は法律で決まっており、下記表のとおりです。一棟ビルの売却では売却価格が400万円を超えるのが一般的なので、「仲介手数料の上限額=売却価格×3%+6万+消費税」で計算されます。なお、仲介手数料は税抜きの売却価格をもとに計算します。
売却価格(税抜)
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仲介手数料の上限額
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200万円以下
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売却価格×5%+消費税
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200万円超~400万円以下
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売却価格×4%+2万+消費税
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400万円超
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売却価格×3%+6万+消費税
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参考:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
その他に必要になる費用
■印紙税
印紙税は、課税文書を作成する際に課せられる税金です。不動産売買では、売買契約書の作成に必要となります。
不動産売却価格
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本則税率
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軽減税率
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100万円超500万円以下
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2,000円
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1,000円
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500万円超1,000万円以下
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1万円
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5,000円
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1,000万円5,000万円以下
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2万円
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1万円
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5,000万円を超え1億円以下
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6万円
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3万円
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1億円超5億円以下
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10万円
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6万円
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5億円超10億円以下
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20万円
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16万円
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10億円超50億円以下
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40万円
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32万円
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50億円超
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60万円
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48万円
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※軽減措置の期限:2027年3月31日まで
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■抵当権抹消費用
抵当権抹消費用は、ビル購入時に設定したローンが残っている場合に抵当権抹消登記にかかる費用です。不動産1件につき1,000円の登録免許税がかかります。
■一括繰上返済手数料
一括繰上げ返済手数料は、ビル購入時に設定したローン残高を一括返済する際に金融機関に支払う手数料です。金額は金融機関や契約内容、ローン残高によって異なりますが、残高の1%程度が目安となります。
■専門家への報酬
専門家への報酬は、弁護士や司法書士に依頼した場合に発生する報酬です。金額は、依頼する事務所や業務の内容、依頼の範囲などで個別に決まります。
一棟ビルの買取に関するQ&A
最後に、一棟ビルの買取においてよくある質問事項をQ&A形式でまとめました。
不動産仲介で売却するのはあり?
一棟ビルを不動産仲介で売却するのは問題ありません。買手が見つかるのなら、一棟ビルでも仲介での売却が可能です。仲介での売却は買取より時間がかかる代わりに、買取よりも高額で売却できる傾向にあります。
たとえば、収益・投資物件の仲介を取り扱う「東急リバブル」「住友不動産販売」などなら、仲介で売却できる可能性があります。
オーナーチェンジ物件を買い取ってもらう際に知っておきたいポイントは?
オーナーチェンジ物件を買い取ってもらうには、以下のポイントを意識しておくのがよいでしょう。
- 一棟ビルの取扱実績のなかでもオーナーチェンジ物件の取扱実績が豊富かを見る
- 「低金利の時期を狙う」「銀行の融資姿勢が積極的である」など売却タイミングを考える
- 不動産の評価のなかでも「収益性」に注目して改善等をおこなっておく
まとめ
今回は、一棟ビルを売却するときに知っておきたい基本的な情報をまとめてお伝えしました。一棟ビルは一般的な需要よりも投資家などへの需要が高いため、仲介よりも不動産買取会社に直接売却する方法がおすすめです。
できるだけ高額かつスムーズに売却したい場合は、複数の買取業者をピックアップし、査定額や対応力を比較検討するのがよいでしょう。買取業者を選ぶときは、「一棟ビルの買取実績」「弁護士などの士業との連携」「対応エリア」などの要素を確認し、一棟ビルを適切に買い取れる能力を持っているかを見極めることが大切です。
買取を依頼する際には、スムーズに進めるためにも必要書類の準備や買取の流れなどを事前に把握しておくことをおすすめします。
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