共有物分割請求訴訟の要件や手続き・流れをわかりやすく解説!

共有物分割請求訴訟

共有不動産は単独で可能な行為が限られており、売却・活用などをおこなうためには共有者の同意が必要です。

「他の共有者から同意を得られない」「共有持分を売買してもらえない」などの理由で不動産を自由に活用できなくて困っている人も少なくありません。

このようなケースであれば「共有物分割請求訴訟」を裁判所に申し立てることで共有関係を解消できることもあります。

この記事では、共有物分割請求訴訟を起こすための要件や手続き・流れを詳しく解説します。

また、共有関係の解消方法に対する裁判所の判断や訴訟の注意点なども具体的に説明するので、ぜひ参考にしてみてください。

共有物分割請求訴訟とは

分割請求訴訟とは
まず各共有者には共有状態を解消する権利が認められており、いつでも分割請求できることが民法第256条によって定められています。

もし他の共有者から分割を拒否されているとしたら、共有状態解消の権利が侵害されていると考えられます。

この権利を守るための制度が「共有物分割請求訴訟」というわけです。裁判所に申し立てることで分割方法が決められ、共有状態が解消されます。

参照:電子政府の総合窓口e-Gov「民法第256条」

共有物分割請求訴訟の要件

共有者として不動産の権利を有しているとしても、いきなり共有物分割請求訴訟をおこなうことは基本的に不可能とされています。

訴訟を申し立てるためには一定の要件を満たす必要があります。具体的には以下の要件を満たす必要があります。

  • 共有物分割協議をおこなっていること
  • 共有物分割協議が調わないとき

共有物分割協議をおこなっていること

裁判所に共有物分割請求訴訟を申し立てる間に、共有者の間で協議をおこなうことが求められています。民法第258条でも「裁判による共有物の分割」が次のように定められています。

(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。出典:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089_20180401_429AC0000000044&openerCode=1#870、電子政府の総合窓口e-Gov「民法第258条」

つまり、共有物分割の話し合いがまとまらないときに、初めて裁判所に分割請求ができるということです。ちなみに、共有物分割協議は共有者全員が同席していなくても成立するとされています。

協議は電話やメールなどを利用しても良い

共有者が遠方にいたり病気やケガで入院しているなどの理由で全員が集まることが困難なケースであれば、電話やメール(手紙)などを利用しても問題ありません。

ただし、共有物分割協議をおこなった事実を証明できなければ、共有物分割請求訴訟を受理してもらえない可能性もあります。

もし協議の内容を手紙でやり取りするのであれば「内容証明郵便」を利用するとよいでしょう。「差出人・日付・内容」などの情報を郵便局に保管・証明してもらうことが可能です。

この制度を利用することで「協議に関する手紙はもらっていない」「郵送事故が起きて手紙が紛失してしまった」などのトラブルを防ぐことができるかもしれません。

共有物分割協議が調わないとき

協議をおこなうことを共有者に通知したにも関わらず、無視や拒否されてしまうケースもあります。また、分割する期日を設けていたとしても、その期日までに分割してもらえないことも考えられます。

このような状況を「協議が調わない」として、共有物分割請求訴訟が受理される可能性が高いといえます。

前の項目でも説明したように協議が調わない事実を証明しなければならないため、内容証明郵便を利用したり分割協議書を作成しておくことが大切です。

ちなみに、共有物分割請求訴訟を起こす前に、裁判所の調停委員などが間に入って話し合いをおこなう「共有物分割調停」もあります。

しかし、共有物分割調停をおこなっても折り合いがつかないことも多く、スケジュールなどの事情によって一般的に利用されていません。

共有物分割請求訴訟の手続きと流れ

手続きと流れ
協議が調わず共有物分割請求訴訟を申し立てるのであれば、所定の手続きをおこなう必要があります。また、以下のような流れで共有物分割請求訴訟が進められるのが一般的です。

  1. 地方裁判所に訴訟を申し立てる
  2. 裁判所から呼出状が送付される
  3. 口頭弁論または答弁書を提出する
  4. 裁判所から審理と判決が下される

次の項目から流れに沿って共有物分割請求訴訟の手続きを詳しく解説していきます。

①地方裁判所に訴訟を申し立てる

訴訟の申し立て先は共有不動産の所在地、または被告の住所地を管轄する地方裁判所です。申し立てる際は主に以下の必要書類などを提出しなければいけません。

・訴状の正本および副本
・収入印紙
・郵便料
・固定資産評価証明書
・全部事項証明書(登記簿謄本)

訴状の正本には収入印紙を貼り付けて裁判所に提出します。副本は自分以外の共有者全員(被告)に送付しなければいけません。いずれも記名押印、各ページの余白に捨印を押印した上で提出しましょう。

収入印紙と郵便料の金額については法律の規定や裁判所によって異なるため、申立先の裁判書に問い合わせて確認することが大切です。

また、固定資産評価証明書と全部事項証明書の入手方法については以下の記事でわかりやすく解説しているので、参考にしてみてください。

参照:裁判所「民事訴訟 訴え提起時に提出すべき書類等」

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②裁判所から呼出状が送付される

所轄の裁判の混雑状況によっても異なりますが、裁判所に訴訟を起こして1カ月ほどで裁判所から共有者に対して口頭弁論期日の呼出状が送付されます。

呼出状・・・民事訴訟で原告や被告などに期日を知らせ、出頭を命じることが記載されている書面のことです。

呼出状は原則、書面で通達され答弁書が添えられています。訴えられた他の共有者は答弁書に必要事項を記載し、期日の1週間前までに裁判所に提出しなければいけません。

③口頭弁論または答弁書を提出する

答弁書・・・訴状の趣旨や訴訟記載の事実に対する認否などを記した書面のことです。

口頭弁論期日に裁判所へ出頭しない場合は、答弁書に記載された内容のまま審議が進められます。

そのため、答弁書の記載された内容に異議がなければ裁判所に出廷しなくてもよいわけです。一方で、反論などがある場合は、複数回にわたって裁判がおこなわれることもあります。

呼出状が送付され、口頭弁論または答弁書の提出のどちらもない場合は、原告の請求がそのまま認められるケースもあります。

④裁判所から審理と判決が下される

口頭弁論または答弁書の提出を受けて裁判所は両者の主張を審理し、適切な分割方法を決定します。

裁判所はあくまで適切な分割方法を決定するため、原告・被告の落とし所を見つけて判決を下します。

また、判決が下される前に和解が検討されるケースもあります。両者が和解に応じれば原告・被告両者の主張が尊重されます。

共有物分割請求訴訟における裁判所の判決

判断
和解が成立した場合を除いて裁判所の判決によって分割方法が決定されます。その分割方法は主に以下の3つがあります。

  • 現物分割
  • 競売
  • 価格賠償による分割

もし不本意な結果になってしまいそうであれば積極的に和解に応じたほうがよいケースもあります。次の項目からそれぞれの分割方法について詳しく解説します。

現物分割

分割方法は現物分割が原則であるといわれています。現物分割は共有物の性質を変えないまま分割する方法です。

例えば、土地を共有しているのであれば、共有持分に応じて分筆することが可能です。分筆することでそれぞれの土地は単独名義となるため、共有状態を解消できます。

ただし、建物は分けられないため現物分割をおこなうことは不可能です。

そのため、分割対象の共有不動産に建物が含まれている場合、現物分割の判決が下されるケースはほとんどありません。

競売

現物分割をおこなうことで著しく資産価値を損ねてしまったり、そもそも現物分割ができないなどのケースでは、共有不動産を競売にかけて現金化する方法が検討されます。

競売によって得たお金を持分に応じて分配することで共有状態を解消します。そのため、分割後に活用しようとしていた不動産を失ってしまう恐れがあります。

不動産を手放したくないのであれば、他の共有者の持分を買い取る(代償金を支払う)方法も考えられます。

価格賠償による分割

前の項目で説明したように他の共有者に代金を支払うことで共有状態を解消し、単独名義とすることが可能です。(価格賠償による分割)

例えば、3,000万円の不動産を共有者Aと共有者Bが持分1/2ずつ所有しているとします。Aが不動産の所有権をすべて取得する代わりに、1,500万円をBに支払うことで共有状態が解消されます。

このようなケースを「全面的価格保証」と呼びます。一方で、「部分的価格保証」という分割方法もあるため、次の項目で説明します。

部分的価格保証

現物分割で土地を分筆する際に、道路の位置や土地の形状などによっては全く同じような土地に分割できないこともあります。

例えば、
「3,000万円の土地」
「AとBは持分1/2ずつ有している」
「分筆後の割合が6:4」
「Aが6割の土地を所有」
「Bが4割の土地を所有」

だとします。

このようなケースで分筆後の土地の価格を単純計算すると以下の通りになります。

Aの土地価格=3,000万円×0.6=1,800万円
Bの土地価格=3,000万円×0.4=1,200万円

したがって、Aは持分よりも300万円多く、Bは持分よりも300万円少なくなってしまいます。この価格差を調整するためにAがBに300万円を支払います。

このように現金を支払って分割後の過不足調整することを部分的価格保証と呼びます。

ただし、部分的価格保証による分割をおこなうためには、代償金の支払能力が必要です。価格代償による分割が不可能であれば競売によって分割されてしまうでしょう。

共有物分割請求訴訟の注意点

注意点
「共有者が分割協議をおこなってくれない」「取り決めた分割を実行してくれない」などのケースであれば、共有物分割請求訴訟は有効な手段だといえるでしょう。

ただし、共有物分割請求訴訟を起こす前に注意点をしっかりと理解しておくことも大切です。主な注意点は以下の通りです。

  • 共有物分割請求訴訟には費用がかかる
  • 共有者全員を当事者にする必要がある
  • 相続財産は共有物分割請求訴訟ができない

次の項目からそれぞれの注意点についてわかりやすく解説していきます。

共有物分割請求訴訟には費用がかかる

共有物分割請求訴訟おこなうためには「内容証明の加算料金」「収入印紙代」「弁護士報酬」などの費用がかかります。

内容証明を利用する際は基本料金に440円が加算されます。2枚目以降は1枚につき260円加算されるため、手紙を送る共有者の人数によって数百円~数千円の料金がかかるでしょう。

次に収入印紙代ですが、前の項目でも説明したように裁判に訴訟を申し立てるための手数料です。固定資産税評価額や持分などによって異なり、数万円~数十万円かかるケースも少なくありません。

弁護士に依頼するのであれば対価として報酬金を支払う必要があります。依頼する弁護士や不動産の価値などによって異なり、数十万円程度かかることもあります。

費用の目安は事前に弁護士に相談したり弁護士事務所のホームページなどで確認しておくとよいでしょう。

共有者全員を当事者にする必要がある

共有者が多い不動産の取り扱いを決める話し合いをおこなったとして、賛成する共有者もいれば反対する共有者もいるでしょう。

このような状況で共有分割請求訴訟を申し立てるとしたら、賛否に関係なく自分以外の共有者全員を当事者(被告)として裁判に参加してもらわなければいけません。

仮に
「A・B・C・Dが不動産を共有している」
「A・B・Cは共有不動産の売却に賛成」
「Dだけが売却に反対」
「AがDに対して共有物分割請求訴訟を申し立てた」

とします。

このケースではAとDの2人が裁判で争うのではなく、BとCも含めた共有者全員で裁判を執りおこなわなければいけません。

なぜなら、B・Cも共有不動産の権利を有しているため、裁判で下された結果が賛成している2人にも影響を及ぼすことになるからです。

もし賛否両論ある中で訴訟を申し立てるのであれば、賛成している共有者にも事前に通知しておくことが大切です。

相続財産は共有物分割請求訴訟ができない

複数の人が不動産を共有することになる原因の1つに相続があります。相続対象の不動産における分割方法について揉めてしまうこともあるでしょう。

相続による分割方法を決定するには「遺産分割協議で合意する」か「家庭裁判所の判断を仰ぐ」ことになります。

このように相続問題は地方裁判所の管轄ではないとされるため、共有物分割請求訴訟を申し立てることはできません。

相続人の間で遺産分割協議が調わないときは、家庭裁判所で遺産分割調停・審判がおこなわれます。

まとめ

共有者間で不動産の取り扱いや分割方法が協議でまとまらないときは、裁判所に共有物分割請求訴訟を申し立てることが可能です。

ただし、分割協議が調わない事実を証明しなければなりません。訴訟後は答弁書の送付や口頭弁論などの手続きに時間がかかってしまうことも考えられるでしょう。

また、裁判所の判決によっては自分が不利になってしまうこともあります。その場合は和解での解決を検討する必要もあるかもしれません。

共有物分割請求訴訟は専門知識が必要であったり、訴訟を起こすことで共有者との関係が悪化してしまう可能性もあります。

共有物分割請求訴訟に関して疑問や不安があるという人などは共有不動産の問題に詳しい弁護士に相談することが大切です。

最終更新日:
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