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借地権付き建物はどう売却する?4つの売却方法と流れ

借地権付き建物 売却

借地権付き建物とは、土地を借りる権利(借地権)と建物がセットになっている物件のことです。土地の所有権が付いている物件とは異なり、土地所有に関する固定資産税などは発生しませんが、賃料を地主に支払う必要があります。

借地権付き建物は市場からの需要が少ない傾向にあるため、売却できるのかどうか疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。

借地権付き建物は、主に以下の4つの方法で売却できます。

  • 借地権を地主に売却
  • 借地権を第三者に売却
  • 等価交換で完全所有権を獲得し売却する
  • 地主と連携し借地権と底地権を第三者に売却

借地権を地主や第三者に売却する方法のほか、地主と交渉して完全所有権を獲得したり、協力して土地と建物をセットで売ったりする方法などがあります。

なお、借地権付き建物の売却は通常物件よりも難易度が高いので、借地権の扱いに慣れた不動産会社に相談し、まずは地主と交渉してもらうことをおすすめします。

この記事では、借地権付き建物の売却方法や流れを詳しく解説します。

借地権付き建物の売却相場や売却する際の注意点もあわせて紹介するので、借地権に関する法律がわからなくて困っている人もぜひ参考にしてみてください。

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借地権付き建物でも売却できるが難易度は高い

借地権付き建物でも売却は可能ですが、買い手が見つかりにくいことから売却の難易度は高いとされています。

そもそも借地権とは土地を借りる権利のことであり、土地そのものを所有する権利ではありません。借地権付き建物を所有している場合、地主に毎月地代を支払う必要があります。

また、借地権付き建物を建て替えたり解体したりする際には、原則として地主の承諾を取らなければなりません。

このように、借地権付き建物は地代の負担や地主と交渉する労力が発生するため、買い手から避けられやすい傾向にあります。

そのため、借地権付き建物を売却する際には、地主と交渉して有利な条件で売却できるようにしたり不動産会社に相談して協力してもらったりなどの工夫が必要です。

次の項目からは、借地権付き建物を売却する4つの方法について具体的に解説します。

借地権付き建物の売却方法

借地権付き建物 売却方法

借地権付き建物を売却する場合、売却先は地主または第三者になりますが、借地権を売る方法だけでなく、土地の所有権を取得してから売る方法もあります。

借地権付き建物の売却方法は全部で4種類です。

建物を解体した上で更地での引き渡しを求める買主もいるため、借地権と建物をセットで売却できるケース・借地権しか売却できないケースがある点に注意しましょう。

なお、借地人が借地権を手放す際、地主が優先的に借地権を買取できる介入権が借地借家法で認められているため、地主が買取を希望する場合は地主に売るしかありません。

借地借家法 第19条第3項
裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。

引用:e-govポータル「借地借家法」

この項目では、4種類ある借地権付き建物の売却方法と流れを解説します。

借地権を地主に売却

地主が借地権を取り戻したいと考えている場合、借地権を買取してもらう形で借地権付き建物を地主に売却する方法があります。

地主側からすると、土地の借地権を買い戻して完全な所有権とすることで、自分の土地を自由に利用できるようになるメリットがあります。

ただし、地主の多くは土地を必要としておらず、借地権を買い取ると地代による賃料収入を失ってしまうので、借地権を地主に売却できる可能性は低いです。

借地権を地主に売却できる場合でも、借地権付き建物ではなく更地での引き渡しを求められるケースが多く、売主側が解体費用を負担しなければなりません。

なお、以下のようなケースであれば、借地権を地主に売却できる可能性もあります。

  • 地主と長きにわたる信頼関係がある場合
  • 地主側に別の土地活用の予定がある場合
  • 地主が契約内容を一新したい場合

しかし、このようなケースは稀なので、借地権付き建物として建物ごと売却することは基本的に難しいと考えておきましょう。

借地権を地主に売却する流れ

借地権を地主に売却する流れは以下のとおりです。

  1. 地主に挨拶・相談する
  2. 仲介役の不動産会社に相談・査定
  3. 不動産会社を挟んで地主と交渉
  4. 売買条件の調整と売買契約の締結
  5. 決済と所有権移転登記

借地権を地主に売却するには、借地権を買い取るメリットを伝えて地主の心を動かし、借地権を買い戻す気にさせる必要があります。

  • 地主自身が土地を自由に利用できる
  • 借地人との関係を解消できる
  • 地主自身で新しい借地人を選べる
  • 地代の値上げなど借地契約の条件を見直せる

土地を利用しない地主は「借地権を買い取っても賃料収入がなくなり土地を持て余すだけ」と考えがちですが、より良い条件で次の借地人に貸し出せる可能性もあります。

地主を説得して売買条件が決定したら売買契約を締結した後、地主から売却価格を受け取るタイミングで所有権移転登記をおこない、借地権を借地人から地主に移します。

借地人・地主の個人間で借地権を売買しても法律上は問題ありませんが、複雑な手続きを自分でおこなう必要があるため、交渉役も含めて不動産会社に仲介を依頼しましょう。

借地権の売却を不動産会社に依頼すれば、売買条件の調整はもちろん売買契約の締結・所有権移転登記に必要な書類作成など、面倒な手続きも専門家に任せられます。

地主との交渉も専門家を介したほうがトラブルを防げるので、無料査定を利用して借地権付き建物の売買に慣れている不動産会社を探しておきましょう。

借地権を第三者に売却

地主が地代による賃料収入を欲している場合、地主の承諾を受けた上で借地権付き建物を第三者に売却する方法があります。

借地権を第三者に売却すれば、借地人が変わるだけで引き続き地代による賃貸収入が得られるので地主の承諾も得やすいですが、承諾料の支払いを求められるケースが多いです。

法律上の支払義務はないですが、借地権を譲渡する際は地主に承諾料を支払うのが一般的で、承諾料の目安は借地権価格の10%程度とされており、基本的には売主が負担します。

借地権を第三者に売却する場合、地代や更新料の有無といった賃貸借契約の内容を買主に正しく伝えないと、地主と買主間でトラブルが起きてしまうため注意しましょう。

購入後に買主が地代を払い続ける必要がある上、リフォーム・建て替え・売却時には地主の許可がいるため、借地権を売りに出しても購入希望者が見つかりにくいです。

一般の購入希望者が見つからない場合、専門の買取業者に借地権を売却することも可能で、専門家が地主との交渉をおこなうので売却を認めてもらえるケースも多いです。

参照:日本地主家主協会「借地権の譲渡承諾料について教えてください。」

借地権を第三者に売却する流れ

借地権のみを第三者に売却する流れは以下のとおりです。

  1. 地主に承諾を得る
  2. 不動産会社に相談・査定
  3. 購入希望者との条件調整と売買契約の締結
  4. 決済と所有権移転登記をおこなう

地主に無断で借地権を売ると借地契約を解除される恐れがあるため、借地権の売却を地主に認めてもらう必要がありますが、承諾を得る過程が1番難しく時間もかかります。

借地権を第三者に売却する場合、承諾料の金額や売却方法に関する合意だけでなく、建替え・抵当権設定に関する承諾も地主から貰っておくことをおすすめします。

なぜなら、建替えの承諾がないと借地権を購入しても買主は建物を解体・建築できず、抵当権設定の承諾がなければ借地権の購入時に住宅ローンを利用できないからです。

借地権の売却に関する地主との交渉が難航する場合、専門知識を有しており公平な立場から話し合いを進められる不動産会社を介して交渉することをおすすめします。

借地権の売却を認めてもらったら地主から譲渡承諾書を受け取り、通常の不動産売却と同様に買主を探して、売買契約を締結して決済と所有権移転登記をおこないます。

等価交換で完全所有権を獲得し売却する

借地権-等価交換

地主が土地の一部を手元に残したいと考えている場合、借地権と底地を等価交換した上で分筆した土地の完全な所有権と建物を第三者に売却する方法があります。

借地人は借地権の一部分を地主に返還・地主は底地の一部分を借地人に譲渡する形で、元々の土地を分筆して2つの土地に分けた後、借地人側の土地を売却します。

たとえば100㎡の底地で借地人が60%・地主が40%の割合で等価交換をおこなう場合、借地人は60㎡の土地Aを取得し、地主は40㎡の土地Bを取得する形になります。

等価交換のメリットは、借地人・地主の両方が完全所有権の土地を取得できる点です。分筆後の土地は自由に扱えるので、等価交換前より物件が売れやすくなります。

一方、等価交換は元々の土地を分筆するため、十分な広さがある土地でないと2つに分けることができず、等価交換の割合で揉めやすいなどのデメリットもあります。

たとえば借地人60%:地主40%のように等価交換の割合を変更したい場合は、相手に交換差金を支払って承諾してもらうケースもあります。交換差金の支払いが発生する場合、受け取った側が譲渡所得税などの課税対象となるため注意しましょう。

等価交換後に売却する流れ

借地権と底地を等価交換して売却する流れは次のとおりです。

  1. 地主に相談する
  2. 交換する物件の価格を調べる
  3. 等価交換の比率を決める
  4. 等価交換後に分筆登記をおこなう
  5. 所有権移転登記をおこなう
  6. 通常の不動産売却活動を開始
  7. 確定申告

原則として、等価交換は等しい価値で底地と借地権を交換する必要があるため、以下の計算式で交換する底地と借地権の評価額を調べておきましょう。

種類 評価額
底地 更地としての評価額×(100%-借地権割合)
借地権 更地としての評価額×借地権割合

借地権割合は土地の評価額における借地権が占める価値を示す割合のことで、国税庁が10%単位で30%~90%の間に定めています。

その後、借地権と底地の評価額を参考に、地主と相手と話し合って借地権と底地権の価値が等しくなるように借地権と底地権の交換割合を決めます。

たとえば借地権割合が70%で土地面積が100㎡の場合、借地権と底地を70%:30%の割合で交換すると等価交換が成立するため、70㎡の土地A・30㎡の土地Bに分筆します。


具体的には、70㎡の底地を地主から借地人に譲渡し、30㎡分の借地権を借地人から地主へ返還する形で等価交換が成立します。

ただし、借地上の建物が80㎡の場合、等価交換後の70㎡の土地Aに収まらないため、交換差金を支払い借地権と底地の交換割合を80%:20%に変更するケースもあります。

借地権と底地の交換割合を決めたら、借地を管轄する法務局で分筆登記をおこない、登記簿上における1つの土地を2つに分割します。

分筆後の土地は地主名義となっているので所有権移転登記をおこない、建物が位置する土地を借地人の名義に変更すれば等価交換は完了です。

なお、等価交換をおこなったときは「固定資産の交換の特例」を用いて、不動産の売却益にかかる譲渡所得税を非課税にできる可能性があります。特例を適用するためには一定の条件があるため、国税庁の公式サイトまたは税務署で確認してみてください。

参照:国税庁「No.3511 土地建物と土地を等価で交換したとき」

地主と連携し借地権と底地権を第三者に売却

地主も土地を売却したいと考えている場合、借地権と底地権をあわせて完全な土地にした上で、土地と建物をセットで第三者に売却する方法もあります。

借地権と底地権を同じタイミングで第三者に売却すれば、土地賃貸借契約に基づく債権と債務が相殺されて完全な所有権となるので、通常不動産と同様に取扱いできます。

借地権と底地権をセットで第三者に売却すれば、買主は購入後の土地・建物を自由に利用できるので、購入希望者が見つかりやすく売却価格も高くなる点がメリットです。

ただし、地主に底地権を手放すよう説得する必要があるので、他の売却方法よりも交渉のハードルが高く、地主と売却価格を分け合うため割合で揉めやすい点がデメリットといえます。

借地権と底地権を第三者に売却する流れ

借地権と底地権を第三者に売却する流れは次のとおりです。

  1. 地主の意思確認と合意
  2. 売却する物件を不動産会社に査定してもらう
  3. 媒介契約を締結し売却活動を開始
  4. 買主と売買契約を結ぶ
  5. 決済・所有権移転登記
  6. 賃貸借契約終了の覚書を作成

借地権と底地権の同時売却では売却益の取り分を決めなければならず、借地権割合を参考に決める場合が多いですが、最終的には地主と借地人の話し合いで決めます。

借地権と底地権の同時売却における取り分に関する法律は存在しないので、地主と借地人間の話し合いがまとまらない場合は不動産会社や弁護士に相談しましょう。

借地権と底地権の同時売却が完了すれば、地主・借地人間の賃貸借契約も終わるので、双方が契約終了に合意した旨を示すために賃貸借契約終了の覚書を作成します。

借地権と底地権を同時売却する方法については、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

借地権付き建物の売却相場は明確な基準がない

借地権付き建物が売却できることはわかりましたが「いくらで売却できるのか?」と売却相場が気になる人も多いのではないでしょうか。

結論からいうと「地主に売るか?第三者に売るか?」や「借地権だけ売るか?建物ごと売るか?」といった条件で変わるので、借地権付き建物の明確な売却相場は存在しません。

借地権付き建物の売却価格はケースバイケースといえるため、正確な売却価格を知りたい人は不動産会社の無料査定で専門家に算出してもらうとよいでしょう。

なお、借地権付き建物の相続税や固定資産税の評価額・借地権割合から、売却価格の目安をある程度予測することは可能です。

次の項目から、売却相場の目安を予測する方法について詳しく解説します。

借地権割合が一つの価格目安となる

借地権付き建物の売却相場は、借地権割合からある程度予測できます。

借地権割合は地域によって異なり、土地の利用価値が高い地域である主要駅の周辺や繁華街は借地権割合が高い傾向にあります。

たとえば東京駅の周辺や中央区銀座などは90%のエリアが多いですが、建物の少ない郊外の地域などは権利として評価されずに借地権割合が定められていない地域もあります。

借地権割合から借地権付き建物の売却相場を調べる手順は次のとおりです。

  1. 国税庁の「路線価図・評価倍率表」にアクセス
  2. 借地権割合を調べたい場所の住所を選択
  3. 住所に記載されている数字・記号を見る
  4. 路線価・借地権割合から土地部分の価格を算出
  5. 相続税評価額から建物部分の価格を算出

借地権割合は7種類に分かれており、Aが90%・Bが80%というように10%ずつ割合が下がり、Gの30%がもっとも低い数値となります。

記号 借地権割合
A 90%
B 80%
C 70%
D 60%
E 50%
F 40%
G 30%

建物部分の固定資産税評価額は、毎年6月頃に市区町村から発送される「固定資産税の納税通知書」の「価格」もしくは「評価額」の欄に記載されています。

しかし、相続税評価額・固定資産税評価額は実際に不動産売買が成立する価格ではなく、相続税評価額は実際の売却価格の80%程度・固定資産税評価額は売却価格の70%程度と考えられています。

わかりやすいように具体例で解説します。

・路線価図に「400C」と書かれている場合
→その道路に面する土地の路線価は1㎡あたり40万円、借地権割合は70%

・土地面積が150㎡の場合
→相続税評価額=40万円×150㎡×70%=4,200万円

・固定資産税評価額は売却価格の70%程度と仮定
→土地の売却価格=4,200万円×100/70=6,000万円

・固定資産税の納税通知書における建物部分の評価額が700万円の場合
→建物の売却価格=700万円×100/70=1,000万円

・土地と建物の合計売却価格
→6,000万円+1,000万円=7,000万円

ただし、路線価に借地権割合を乗じて算出した借地権の評価額は絶対的なものではなく、売却方法によって実際の価格は変動するので、あくまで目安と考えておきましょう。

参照:国税庁「路線価図・評価倍率表」

借地権付き建物の売却を訳あり専門の不動産会社に相談するメリット

借地権の売却許可

借地権付き建物は地主の許可がないと売却できませんが、法律や不動産に関する知識の少ない売主自身が交渉しても地主を説得できないケースが多いです。

借地権付き建物を売却したい場合、訳あり物件専門の不動産会社に相談しましょう。

訳あり物件専門の不動産会社は、一般的な不動産会社に比べて借地・底地の対応実績が豊富なので、土地の所有権をもつ地主との交渉も得意としています。

借地権-交渉

訳あり物件専門の不動産会社に相談すると、以下のメリットが得られます。

  • 借地権の取り扱いにも慣れておりスムーズな売却が可能
  • 契約不適合責任が免責になる

訳あり物件専門の不動産会社に相談する最大のメリットは、一般的な不動産会社よりも法律に詳しい点で、過去の類似ケースの解決事例を知っていることも少なくありません。

一般の買主が見つからない場合、借地権付き建物を自社で直接買取してくれる専門買取業者もあるので、まずは訳あり物件専門の不動産会社に相談することをおすすめします。

借地権の取り扱いにも慣れておりスムーズな売却が可能

借地権付き建物を地主や第三者に売る場合、原則として地主の承諾が必要です。

訳あり物件専門の不動産会社は借地権に関する法律知識が豊富なので、法的根拠を提示しながら借地権付き建物の売却に必要な地主との交渉を有利に進めてくれます。

また、専門家である不動産会社が交渉をすれば、客観的な視点から冷静に話し合いができるため地主側が納得しやすく、スムーズな売却が可能です。

なお、地主が借地権の売却を認めない場合、裁判所に申立てをおこなうことで代わりに承諾を得られるケースもありますが、時間や労力を要するので最終手段と考えましょう。

まずは訳あり物件専門の不動産会社に相談し、どのような方法で売却するのか方針を定めたうえで、地主と交渉してもらいましょう。

契約不適合責任が免責になる

借地権付き建物を個人ではなく不動産会社に売却する場合、基本的に契約不適合責任が免責になります。

契約不適合責任とは、引き渡した不動産が売買契約の内容と異なる場合に売主が負う責任のことです。契約不適合責任が認められると、売主は契約解除や損害賠償などのペナルティを負います。

契約不適合責任に問われると重大なペナルティが発生する恐れがあるため、一般の買主に売却する際は注意が必要です。

一方、不動産会社と売買契約を結ぶ場合は「売主は契約不適合責任を負わない」という特約を結ぶケースが一般的です。そのため、売却が完了したあとに契約不適合責任を問われる心配がありません。

契約不適合責任に関して不安がある方は、訳あり物件専門の不動産会社に売却する方法がおすすめです。

借地権付き建物を売却する際の注意点

借地権付き建物は売却こそ可能ですが、どの売却方法でも地主の許可が必要になるなど通常不動産よりも売却が難しく、売却時の注意点が多いです。

借地権付き建物の売却時は次の点に注意しましょう。

  • 借地権が移転されるので売却時に地主の承諾が必要
  • 借地権譲渡の承諾料が高額になる場合がある
  • 地主との契約内容を買主に伝えないと契約不適合責任に抵触
  • 借地権の更新時期は買い手が見つからない事が多い

4つの注意点を順番に解説します。

借地権が移転されるので売却時に地主の承諾が必要

借地権付き建物を売るには、土地の所有権をもつ地主の承諾を得た上で売却しなければならないと民法第612条で定められています。

民法第612条
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

引用:e-Govポータル「民法」

なぜなら、借地権を単体で売るにしても借地権と底地をセットで売るにしても、売主から地主または第三者に借地権を移転するので、借地人が変わることになるからです。

たとえば借地人が売主に無断で借地権を第三者に売却したが、次の借地人が地代を支払わない場合、地主は誰に地代を請求すればよいのかわからなくなってしまいます。

土地自体は地主のものなので「勝手に借地人が変わっていて地代を請求できない」などのトラブルを防ぐため、借地権の売却時は地主の承諾が必要なのです。

地主が承諾しないなら裁判所から許可をもらう

借地権付き建物の売却には地主の承諾が必要ですが、交渉をしても地主が承諾しない場合、借地非訟手続きで裁判所から代わりに許可を得る必要があります。

借地借家法 第19条
借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

引用:e-govポータル「借地借家法」

借地非訟手続きをおこなうと、裁判所が借地権の売却に関する許可の可否を判断しますが、売却を認める代わりに地代の変更や承諾料の支払いを命じるケースもあります。

基本的には、地主にとって不利益があるケース・売却に関して正当な事由がないケースでない限り、借地非訟手続きをおこなえば借地権の売却は認められる可能性が高いです。

しかし、借地非訟手続きを起こす場合、裁判所と弁護士に数十万円単位の費用を支払わなければならず、約半年〜1年程度の時間がかかる点に注意しましょう。

借地権譲渡の承諾料が高額になる場合がある

借地権を売却する場合、地主の承諾を得る際に譲渡承諾料を支払うのが慣例です。

譲渡承諾料の支払いは法律で義務化されている訳ではなく、あくまで慣例的に借地人から地主に支払われるものなので、金額も当事者同士で自由に決定します。

借地権を譲渡する際の承諾料は借地権価格の10%程度が目安とされていますが、譲渡だけでなく建替えの承諾も受ける場合は追加で承諾料を請求されるケースもあります。

種類 承諾料の相場
譲渡承諾料 借地権価格の10%程度
建替え承諾料 更地価格の3%程度
増改築承諾料 更地価格の3%程度

既存の建物が非堅固な建物で建て替える建物が堅固な建物だった場合は条件変更に該当するため、条件変更承諾料を別途請求されるケースもあります。

このように、借地権売却時の承諾料に目安はありますが、契約内容によって承諾料の種類・金額は異なるので、最終的には地主と相談して決めましょう。

地主との契約内容を買主に伝えないと契約不適合責任に抵触

借地権の売却時に地主との契約内容を買主へ正確に伝えておかないと、契約不適合責任を追及される恐れがあります。

たとえば地主から建物の建替え承諾を受けていない事実を伝えずに借地権を売却すると、買主は建物を立て替えられずに不動産売買の目的を達成できないケースがあります。

この場合、建替え承諾を受けている借地権を購入したつもりだったのに、建替え承諾を受けていない借地権を引き渡したとして、契約不適合責任を追及される恐れがあります。

買主から契約不適合責任を追及されると、売買契約を解除されたり損害賠償を受ける恐れがあるため、借地権の売却時は地主との契約内容を必ず伝えましょう。

借地権の更新時期は買い手が見つからない事が多い

借地権の更新時期が近い場合、購入後すぐに更新料または権利金の支払いが発生するため、借地権付き建物の購入希望者が見つからないケースが多いです。

前提として、借地権は旧借地権・普通借地権・定期借地権の3種類に分けられ、契約更新ができる種類・できない種類があるほか、以下のように契約期間が異なります。

種類 契約期間 契約更新
旧借地権 20年(木造の場合) できる
30年(鉄骨・RC造の場合) できる
普通借地権 最低30年 できる
定期借地権 最低50年 できない

旧借地権・普通借地権の場合、契約更新時に借地人から更新料を支払うのが慣例で、更新料の金額は借地権価格の5%前後が相場とされています。

借地権の売却時に「現在の契約期間を引き継ぐのか?新しい期間を設定するのか?」はケースによりますが、新しく契約する場合も権利金を支払うのが一般的です。

つまり、借地権の購入時は更新料または権利金を支払う必要があるので、更新時期に関係なく初期費用の負担は避けられないことを買主に伝えておくとよいでしょう。

借地権付き建物の買主側のメリットとデメリット

借地権付き建物は権利関係が複雑なため通常物件に比べて需要が低いので、借地権付き建物のメリットを購入希望者にしっかりアピールすることが大切です。

また、購入希望者には借地権付き建物のデメリットも正直に伝えたほうが良好な関係を築けるでしょう。

買主側のメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
・所有権付きの物件と比べて安く購入できる
・土地にかかる税金が節約できる
・普通借地権であれば借地権者は長く土地を借りられる
・毎月地代がかかる
・建て替えやリフォーム、売却などで地主の承諾が必要
・定期借地権付きの場合は返却時に更地にする必要がある

借地権付き建物は所有権付きの物件に比べて価格が安く、土地部分の固定資産税を支払わずに済むため、通常物件よりも金銭面でお得になる点が最大のメリットです。

また、普通借地権の場合は借地人が望む限り半永久的に契約更新が可能なので、土地を長期間借りられる点もアピールポイントになるでしょう。

一方、購入後も地代の支払いが毎月続くほか、建て替え・リフォーム・売却など地主の承諾がないと自由に扱えない点が借地権付き建物のデメリットです。

加えて、借地権付き建物が定期借地権の場合は契約更新がおこなえず、契約満了時に建物を解体して地主に返還しなければなりません。

定期借地権付き建物の場合、契約満了時に建物を解体するので「契約期間だけ住めれば十分」と考える人にターゲットを絞って売却活動をおこないましょう。

まとめ

借地権付き建物でも売却はできるものの、通常の物件と比べて売却が難しくなります。

毎月地代が発生するうえ、建て替えや解体をする際には地主の承諾が必要になるなど面倒な部分が多く、買主から避けられる傾向にあるためです。

売却方法としては、地主または第三者に借地権を売却する方法だけでなく、地主と協力して借地権を土地に変えてから売却する方法もあります。

もしも地主の許可を取れなかったり売却活動が難航したりする場合、訳あり専門の不動産会社に相談してみましょう。

訳あり物件専門の不動産会社は一般的な不動産会社よりも法律に詳しく地主との交渉が得意なうえ、物件を自社で直接買取してもらうことも可能です。

借地権付き建物をスムーズに売却したい方は、まずは無料相談を受けてみてください。

借地権付き建物の売却に関するよくある質問

借地権付き建物を相続した場合でも売却は可能ですか?

借地権付き建物を相続した場合でも売却は可能です。注意点として、被相続人名義のままになっていると売却はできないため、相続登記をして相続人に名義変更をする必要があります。

借地権付き建物を売却した場合、税金は発生しますか?

借地権付き建物を売却すると、所得税や住民税が発生する可能性があります。

なお、住居用不動産を売却する場合は、最高3,000万円の特別控除が適用され、譲渡所得税が免除されるケースもあります。

特別控除を適用するためには確定申告が必要なので、仮に譲渡所得が免除されるとしても、確定申告をしなければなりません。売却した翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告をおこないましょう。

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更新日 : 2024年05月23日
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