親が老人ホームに入るなら空き家は売却すべき
「親の介護をしてもらいたい」「親に悠々自適なセカンドライフを送ってもらいたい」などを理由に、親を老人ホームに入居させる機会もあると思います。
しかし、親が老人ホームに入居すると、今まで住んでいた家が「空き家」となってしまいます。
「長年過ごしていた家だし、売るのは気が引ける・・・」と考える人も多いでしょう。
ですが、親が老人ホームに入るなら今まで住んでいた家(空き家)は売却すべきです。
売却せずに放置してしまうと、空き家としてさまざまなリスクを抱えてしまうだけでなく、税金の面でも損することになってしまいます。
老人ホームに入るタイミングで売却すべき理由
前の項目でも説明した通り、親が老人ホームに入居するなら、そのタイミングで家を売却すべきです。
老人ホームに入るタイミングで売却すべき理由は以下の4つです。
- 売却益を親の医療費や老人ホーム費用に充てられる
- 売却時の税金控除が受けられなくなる
- 「特定空き家」とみなされると税金が約6倍になる
- 親が認知症になると簡単には売却できなくなる
次の項目から詳しく見ていきましょう。
1.売却益を親の医療費や老人ホーム費用に充てられる
老人ホームの形態にもよりますが、老人ホームに入居するには「居住費・食費・介護サービス費」など、さまざまな費用がかかります。入居一時金として、数百万円かかるケースもあります。
また、老人ホームに入居する年齢であれば、突然の医療費も必要になるかもしれません。
そこで、空き家となる家を売却しておくことで、売却益を親の医療費や老人ホーム費用に充てられます。
2.売却時の税金控除が受けられなくなる
持ち家を売却する際に、家を購入したときよりも利益が出た場合は、譲渡所得税が課せられます。
譲渡所得税=売った金額-買った金額
持ち家を売却する際は「譲渡所得が3,000万円以下」であれば、税金は課せられません(3,000万円の特別控除の特例といいます)。
ただし、この特例を受けるためには「住まなくなった日から3年目の12月31日まで」に売る必要があります。
親が老人ホームに入居するタイミングで売らなければ、特別控除の特例を受けられなくなるかもしれません。
参照:国税庁ホームページ「マイホームを売ったときの特例」
3.「特定空き家」とみなされると税金が約6倍になる
以下のリストのように、安全や衛生上に問題があるなど、適切に管理されていない空き家は「特定空き家」と指定されます。
- 放置した場合に倒壊、保安上危険となる恐れのある状態
- 著しく衛生上有害となる恐れのある状態
- 著しく景観を損なっている状態
- 周辺の生活環境の保全を図る上で放置することが不適切な状態
住宅用地には「固定資産税の軽減制度」が適用されており、居住用の建物がある土地の固定資産税は1/6程度になっています。
ただし、特定空き家に指定されると軽減制度の対象外になるため、固定資産税が高くなることに注意してください。
特定空き家に指定されることで、これまでの固定資産税と比べて「およそ6倍」の税金が課せられます。
空き家を売却せずに放置すると、固定資産税の軽減制度が受けられなくなるうえ、撤去費用を求められるケースもあります。
このことからも、親が老人ホームに入居するタイミングで売却すべきです。
参照:国土交通省ホームページ「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
4.親が認知症になると簡単には売却できなくなる
家を売却できるのは、原則的に所有者本人だけです。
そこで、親の家を売るために、委任状を作成し子が代理人になって売却する方法が多く用いられます。
ただし、親が認知症になってしまうなど、判断能力を失うと委任状を作成できません。
「過去に住んでいた実家だから」といった思いがあっても、所有者でなければ血のつながりがある子供でも、売却できません。
ですので、親の判断能力があるうちに老人ホームに入居してもらい、それと同時に空き家の売却を進めるべきです。
親名義の家を売却する方法は2つ
原則的に、家を売却できるのは「所有者本人(名義人)」だけです。
ただし、以下の方法であれば、親名義の家でも売却が可能になります。
- 委任状を作成し親の代理人となって売却する
- 【親が認知症になってしまった場合】成年後見制度を利用する
また、空き家となる家を高値で売るなら、複数の業者へ査定を依頼し、査定結果を比較することが大切です。
とはいえ、複数の不動産業者へ1件ずつ査定依頼していると、膨大な時間がかかってしまいます。
そこで、複数の不動産業者へ一度に無料査定を申し込める「一括査定サイト」の利用がおすすめです。
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委任状を作成し親の代理人となって売却する
老人ホームに入居する親が、家の売却意思をしっかりと示せている場合は「委任状」を作成し、代理人を選定することで家を売却できます。
例えば、老人ホームから外出することが難しかったり、体力の低下によって細かいやり取りができない場合、代理人を選定するとよいです。
基本的には、不動産業者が委任状を用意してくれます。委任状には、委任者(親)と受任者(子供)の押印や印鑑証明書、本人確認書類が必要です。
売却する不動産の状況や委任する内容などによって、必要書類は変わります。事前に不動産業者や司法書士といった専門家に相談しておきましょう。
ちなみに、委任状やその他必要書類が揃っていても、取引の前には専門家が親の意思確認をするための面談が必要です。
【親が認知症などになってしまった場合】成年後見制度を利用する
代理人を選定して家を売却する場合でも、親の意思確認はおこなわれます。
もしも、親が認知症などの病気になり「意思能力」がなくなった場合、代理人を選定しても売却することはできません。
そのような場合は、成年後見制度を利用することで、親名義の家でも売却できるようになります。
成年後見制度とは・・・判断能力が低下した人の財産管理や、生活に必要な契約を代理でおこなうこと
ただし、成年後見人は「家庭裁判所」が選任します。必ずしも、子供が成年後見人になれるとは限りません。
弁護士や司法書士などの専門家が、成年後見人に選ばれるケースも多くあります。
そのため、成年後見制度の利用を検討しているなら、早めに弁護士へ相談しておくとよいです。
親に家の売却を反対されたときの対処法
これまで説明した通り、親が老人ホームに入居するなら、空き家となる家を売却すべきです。
ただし「長い間住み慣れた家を売却したくない!」と、親が家の売却に同意してくれない場合はどうすればよいのでしょう?
前述しましたが、空き家を放置することはさまざまなリスクがあるため、おすすめできません。
そこで、親に家の売却を反対されたときは、以下2つの方法を利用してみてください。
- リバースモーゲージを利用する
- 任意後見制度を利用する
次の項目から、それぞれの方法を順番に見ていきましょう。
リバースモーゲージを利用する
「家を売却して資金を確保したいが、親の売却同意が得られない」といった場合は、リバースモーゲージの利用を検討しましょう。
リバースモーゲージとは・・・持ち家を担保に金融機関からお金を借りる制度。名義人が亡くなったときに、家を売却して売却益でお金を返済する。
リバースモーゲージを利用すれば、家の所有権を失わずにまとまった現金を手にできます。リバースモーゲージで手にした現金を、医療費や老人ホーム費用に充てるとよいでしょう。
ただし、金融機関によって「戸建てのみ可」「資金用途が制限される」などといった条件もあるため、融資条件を見極めてから利用しましょう。
ちなみに、リバースモーゲージを受けられるのは名義人が「55歳以上」であるという条件が一般的です。
任意後見制度を利用する
任意後見制度とは、しっかりと自分で物事を判断できるうちに「意思能力がなくなったとき」に備えて、あらかじめ後見人を自分で決めておく制度のことです。
前述した成年後見制度と違い、自分の意思で後見人を決められるため、裁判所の手続きをすべて省けます。
親が元気なうちに家族で話し合い、子供を「任意後見人」に選定しておけば、親の意思能力が衰えたとき、子供が代理で家を売却できます。
親名義の家を売却したときの税金
家を売却したときに、買ったときよりも利益がでれば、譲渡所得税が課せられます。
譲渡所得税=売った金額-買った金額
親が昔から所有している家を売却する場合は「買った金額」がわからないケースも多いです。取得費が不明な場合は「売った金額の5%」を代入します。
例えば、2,000万円で買った家を1,000万円で売ったとします。
1,000万円-2,000万円= -1,000万円
となるため、譲渡所得が発生しません。
ただし、買ったときの値段が分からなければ
1,000万円-50万円(売った金額の5%) = 950万円
となるため、譲渡所得がプラスになり、950万円の課税が課せられます。
親が住んでいた家を売る際には税金の特別控除が受けられる
家を売ったことによって利益が出る場合は、譲渡所得税が課せられます。
ただし、マイホームを売却する場合は、一定の条件を満たすことで「3,000万円」までの利益が非課税になります(3,000万円の特別控除の特例といいます)。
ちなみに、3,000万円の特別控除を受けるための条件は主に以下のとおりです。
- 名義人(親)がマイホームとして居住していた
- 住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却した
- 売却相手が「親子」や「夫婦」といった特別な関係でない
このように、譲渡所得が「3,000万円以内」であれば、確定申告をおこなうことで課税を避けられます。
税金を正確に計算するのは難しいので、課税額や特例の利用に悩んだら、税理士に相談するとよいです。
まとめ
親を老人ホームに入居させる際は、空き家となる家は売却すべきです。
もしも、空き家として放置してしまうと「売却時の税金控除が受けられなくなる」「特定空き家とみなされ、税金が約6倍になる」恐れがあります。
親名義の家を売るには、委任状を作成し親の代理人となって売却する必要があります。
ただし、親が認知症などで「意思能力」がない場合、成年後見制度を利用すべきです。成年後見制度では、税理士などの専門家が選ばれるケースも多いため、早めに弁護士へ相談しておくとよいでしょう。
親を老人ホームに入居させる際によくある質問
親を老人ホームに入居させるとき、家はどうすべき?
親が老人ホームに入るなら、今まで住んでいた家は売却すべきです。誰も住まない家を売却することで、売却益を親の医療費や老人ホーム費用に充てられるようになります。
親が住んでいた家を空き家として放置するとどうなる?
売却せずに放置してしまうと、空き家としてさまざまなリスクを抱えてしまうだけでなく、税金の面でも損することになってしまいます。
親名義の家でも売却できるの?
はい、可能です。親が家の売却意思をしっかりと示せている場合は、委任状を作成してもらい、代理人となることで家を売却できます。
親が認知症になってしまった場合でも、家は売れる?
親が認知症などの病気になり「意思能力」がなくなった場合、代理人を選定しても売却することはできません。成年後見制度を利用する必要がありますが、必ずしも、子供が成年後見人になれるとは限りません。そのため、成年後見制度の利用を検討しているなら、早めに弁護士へ相談しておくとよいです。
親に家の売却を反対されてしまいました・・・
「リバースモーゲージ」を利用すれば、売却せずとも家を現金化できるため、医療費や老人ホーム費用を用意できます。また「任意後見制度」を利用すれば、親の意思能力が衰えたとき、子供が代理で家を売却できます。
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