旗竿地とは「広い敷地(旗)と道路を細い路地(竿)がつないでいる土地」
旗竿地とは、奥にある広い敷地と道路を、細い路地がつないでいる特殊な形状の土地です。上から見たときに広い敷地が「旗」、細い路地が「竿」のような形状をしていることから、旗竿地と呼ばれるようになりました。別名は路地状敷地、敷地延長、敷延などです。
旗竿地の竿の部分がなく、道路と完全に接していない無道路地を、不動産鑑定の専門用語としては「袋地(ふくろち)」と呼びます。一方で旗竿地の道路に接しない広い部分のみを袋地と呼ぶときや、旗竿地=袋地として扱うケースも存在します。
旗竿地が誕生する大きな理由として挙げられるのが、「接道義務(せつどうぎむ)」に関係する問題です。
接道義務とは、都市計画区域・準都市計画区域にある敷地内で建物を建築するとき、原則として建築基準法上の幅員4m(特定行政庁が指定する一定の区域内だと6m)以上の道路に2m以上接しなければならない決まり。建築基準法第43条より。緊急車両の通行や災害時の避難経路の確保が目的。
参考:e-Gov法令検索「
建築基準法」
道路に接していない奥の土地から地続きで接道部分を作ったときに、旗竿地が生まれることがあります。不必要な土地を切り離し、税金や維持費を安くしたり土地を安く売ったりするためです。
旗竿地が生まれるもう1つの理由として、分割した土地の利便性を確保することが挙げられます。土地の形によっては、縦半分で2分割すると「奥行きがあって幅が狭い」という長方形の土地が誕生し、使い勝手が悪くなるケースがあります。
縦長の土地になるのを避けるために土地を横に2分割する際に、奥の土地を旗竿地にして対応しているのです。
このように旗竿地は、広い土地を活用しようとする過程で生まれる背景があります。しかし、旗竿地は一般的に「売れない」「恥ずかしい」というイメージが存在し、そのイメージ通りに買手がつかないことも珍しくありません。
なぜ旗竿地は売れない?6つの理由を解説
旗竿地が売れないと言われるのには、具体的な理由が存在します。旗竿地が売れない理由は次の通りです。
- 接道義務が満たせず建て替えができない可能性がある
- 周囲が建物に囲まれて日当たり・風通しが悪い
- 特殊な形状の土地であるため解体・リフォーム工事が高額になる
- 竿の部分(間口・路地)に私道が含まれる場合は権利関係のトラブルが発生しやすい
- 銀行の担保評価額が低く住宅ローンなどが利用しづらい
- 特殊な形で活用できる面積が狭く活用しづらい
それぞれの詳細を見ていきましょう。
接道義務が満たせず建て替えができない可能性がある
旗竿地のなかには、接道義務である「幅員4m以上の建築基準法上の道路に、2m以上接道すること」が満たされていないケースがあります。接道義務が満たせていない旗竿地でよくあるケースは、現行の建築基準法より前に作られている場合です。
現在の建築基準法に改正される前は、接道義務の基準が1.8mでした。そのため、竿の部分が1.8m以下の旗竿地が今でも存在しています。幅員1.8mの旗竿地は、接道義務違反として「既存不適格建築物(建築時点では合法だったが現行法だと基準に合わない建物)」扱いになります。
現行法に合わせず既存不適格建築物として放置したままだと、「再建築不可物件」扱いです。再建築不可物件に該当すると、その土地での新築や建て替えが認められません。
つまり、竿の部分が1.8mしかない旗竿地は「新しい建物が建てられない土地」です。活用の幅が狭くなって土地の評価が下がり、売れない土地になる可能性があります。
周囲が建物に囲まれて日当たり・風通しが悪い
旗竿地のなかには、建物が密集した場所から通路を伸ばして接道したり、分割した土地に住宅が建ったりしたものが存在します。こうした背景から、旗竿地の周りが建物に囲まれているのはよくあるケースです。
とくに都市部の旗竿地は、周囲の建物が高いうえに土地自体が狭い傾向があります。
そのため旗竿地は、土地全体の日当たりが悪いことが多いです。日当たりが悪い建物は「洗濯物が乾きづらい」「カビが発生しやすい」「住宅が腐食しやすい」といったデメリットがあるため、買手から敬遠されて土地が売れない可能性が出てきます。同時に風通しが悪いケースも多く、建物に熱気がこもったり換気が悪かったりする懸念があります。
さらに周囲が建物に囲まれている土地だと人目に付きづらくなるため、防犯上の不安点も出てきます。旗竿地の周囲環境は、旗竿地が売れないと言われる理由の1つです。
特殊な形状の土地であるため解体・リフォーム工事が高額になる
旗竿地は普通の土地よりも門口部分が狭くなっており、解体工事・リフォーム工事などに使う工事車両・重機が侵入しづらくなっています。また、旗竿地の特殊な形状が要因で、通常とは異なる建築・設計が求められる可能性があります。
そのため、旗竿地が関係する工事にかかるコストは高額になるのが一般的です。旗竿地での工事が高額になる、具体的な理由は次の通りです。
- トラックが入れないので、廃材の運び出しや資材搬入に人手や時間がかかる
- 工事に必要な機材や重機は、一度バラバラにしてから現場で再度組み立てる必要がある
- 小型の機材・重機しか入れない旗竿地だと、大型の機材・重機を使った工事よりも作業効率が落ちる
- 土地が特殊な形状であるため、建物の設計の難易度が上がる
- 水道・電気・ガスなどのインフラの引き込み距離が長くなる
- そのほか建築・解体に関する組立・解体・運搬に人件費や時間がかかる
このように旗竿地は各種コストがかかることから、予算を抑えたい一般層からの需要が低くなって売れない土地になる側面があります。
竿の部分(間口・路地)に私道が含まれる場合は権利関係のトラブルが発生しやすい
旗竿地のなかには、竿の部分(間口・路地)に他人名義の私道(団体や個人が所有する道路)が含まれているケースがあります。もし竿の部分に私道が含まれていると、以下のトラブルが想定されます。
- 他人名義の竿の部分にしか道路に接道しておらず、接道義務が満たせていないケースがある
- 私道部分の所有権を持つ近隣の人から、承諾料・通行料などが求められる場合がある
- 間口付近に車を停められて通行が妨げられる
- 近隣住民が自由に出入りする
- 私道の下に水道管やガス管が埋設されている場合、親切・修理するために私道所有者の承諾が必要になる
- そのほか土地の所有者同士で通行権・維持管理などの面で争いが発生する
このようにさまざまなリスクが想定されることから、買手がつかずに売れない可能性があります。
また旗竿地を相続した後に売却を検討する場合も、親世代から子世代に所有権が移ったタイミングで私道所有者からの要求や管理ルールが変わるケースも考えられます。
特殊な形状で活用できる面積が狭く活用しづらい
旗竿地の竿の部分は狭いことから、通路として使うケースが一般的です。逆に言えば通路以外の活用には工夫が必要になるため、旗竿地は実質的に自由に使える部分が少なくなります。旗竿地の特殊な形状によって、土地の活用範囲が狭まるのがデメリットになります。
たとえば利用できる面積が少ないと、建築プランに制限がかかって自由な建築が難しくなるでしょう。また、レストランや小売店といった事業用の土地として使う際も、竿部分が狭いと仕入れ・搬入に苦労したり、駐車スペースの確保が難しくなったりなどのリスクが想定されます。
実質的に活用できる面積が狭い土地だと、買手からの需要も落ちて売れにくくなります。
銀行の担保評価額が低く住宅ローンなどが利用しづらい
旗竿地は、整形地などを比較すると銀行の担保評価額(住宅ローンなどの融資の担保となる不動産の評価額)が低くなる傾向があります。竿の部分が宅地として機能せず、評価ができない部分があるからです。
「接道義務が満たせていない」「日当たりが悪い」といった旗竿地のデメリットが、担保評価額にマイナスの影響を与える背景もあります。こうした理由やリスクから、銀行は旗竿地の担保評価額を低く設定するのが一般的です。
銀行の担保評価額が低いと住宅ローンの融資額も少なくなるため、土地の購入者側は自己資金を多めに準備する必要があります。買手側の予算不足で、購入を見送られるかもしれません。
とはいえ旗竿地は整形地よりも評価額が安く設定されることから、安めの不動産を求めている人からの需要が存在します。売却するときは、土地を安く買いたい人向けのアプローチをするのがよいでしょう。
売れる旗竿地と売れない旗竿地の違い
「旗竿地は売れない」は事実である一方、旗竿地のデメリットを補完できているケースや買手側のニーズによっては売れやすさが変わります。以下では、売れる旗竿地と売れない旗竿地のおおまかな特徴を比較しました。
|
売れる旗竿地 |
売れない旗竿地 |
道路とつながる間口の大きさ |
間口や竿部分が駐車スペース、玄関までの遊歩道、庭園などとして活用できる広さがある |
通路以外の活用方法が難しい |
日当たりや風通し |
ベランダや居間などの日当たりや風通しがよい |
周囲の建物が大きく太陽光や風が通りづらい |
周辺環境の静かさ |
周辺が静かで落ち着いている |
近隣住民が頻繁に近くを通る、騒ぐ |
再建築の可否 |
接道義務を満たしており、再建築が可能である |
何らかの理由で再建築不可になっている |
私道の有無 |
私道がなく竿部分が自由に使える |
竿の部分が私道でほかの所有者と共有している状態にある |
「売れない旗竿地」であっても、売れない原因を解消すれば「売れる旗竿地」になります。旗竿地の売却を検討する場合は、現状の旗竿地の問題点を分析し対処することが大切です。
旗竿地を売りたい!売却するための4つのコツ
「旗竿地は売れない」は事実である一方、事前に工夫をこらすことで旗竿地を高額売却できる可能性を上げられます。旗竿地を売却するための具体的なコツは以下の4つです。
- 隣地の土地を所有者に売却する
- 私道所有者とあらかじめ交渉する
- 売却するときは旗竿地のメリットをアピールする
- リノベーションやリフォームで旗竿地のデメリットを解消しておく
それぞれの詳細を解説します。
隣地の土地の所有者に売却する
旗竿地に隣接する土地の所有者は、旗竿地の売り先の1つです。旗竿地の竿の部分と隣地を合筆できれば、竿の部分がなくなって整形地にできるからです。
旗竿地を購入する隣地の人にとっては、「土地の価値が上がる」「土地が広くなって活用幅が大きくなる」「私道の権利を自分に集約できる」といったメリットがあります。もし竿部分の接道義務が満たせていなかった場合でも、土地を合わせると間口が広がって接道義務を満たせる可能性が上がります。
隣地の人が自分が持つ旗竿地を欲しがっているかどうかは、売却を持ちかける前に交渉して確認しておきましょう。旗竿地を購入するメリットを伝えつつ、両者が納得する売却額を模索してみてください。正式に売買契約を結ぶときは、不動産会社といった不動産売買の専門家にサポートを依頼することをおすすめします。
私道所有者とあらかじめ交渉する
旗竿地に私道が含まれているときは、私道所有者とあらかじめ売却後の私道の取り扱いについて交渉しておき、旗竿地の購入者が安心して土地を使えるよう根回ししておきましょう。私道所有者との交渉内容の例は次の通りです。
- 私道の部分をあらかじめ購入しておく
- 通行地役権(他人の土地を通行する権利)を設定し、接道義務を満たしたり自由に通行できるようにしたりしておく
- 「私道部分では騒音を出さない」「通行料は取らない」といった取り決めをし、購入者と共有する
私道所有者だけが不当に不利益を被らないよう、両者が納得して合意できる内容を取りまとめます。お互いが納得できる条件にするには、私道所有者との関係性構築や、綿密なコミュニケーションの有無が重要になるでしょう。
売却するときは旗竿地のメリットをアピールする
旗竿地は整形地よりも需要が低い一方で、旗竿地ならではのメリットも存在します。売れない旗竿地を売るためには、旗竿地のメリットを買手側にアピールし、購入意欲を促進するのが効果的です。旗竿地のメリットは次の通りです。
旗竿地のメリット |
詳細 |
近隣の土地相場より安く購入できる |
同じ面積でも一般的な整形地よりも安く購入できる
建物の内装や設備に予算を回しやすい |
騒音や事故のリスクが下がる |
道路から離れた場所に建物があるため、話し声、車の音、子どもの飛び出しによる事故などを避けやすい
静かな環境で生活できる |
プライバシーが保護される |
周囲の視線を避けやすいのでプライバシーを確保しやすい |
竿の部分を活用できる |
旗竿地の竿の部分を駐車場、玄関までの通路、ガーデニングなどで活用できる |
固定資産税が安くなる |
土地の評価額が低くなりやすい分、固定資産税や都市計画税も低くなる |
不動産会社に仲介を依頼するときには、売却する旗竿地のアピールポイントを詳細に共有し、買手側に伝えてもらうようにしてください。
リノベーションやリフォームで旗竿地のデメリットを解消しておく
建物のリノベーションやリフォームで旗竿地のデメリットを解消できる場合は、旗竿地でも買手が見つかる可能性が上がります。売れる旗竿地にするためのリノベーション・リフォームの具体例は、次の通りです。
- ハイサッシ、拭き受け、天窓などによって採光性を高める
- 光が入りやすい2階にキッチン、ダイニング、リビングを設置し、1階は寝室にする
- 間口から玄関までのアプローチをデザインし、旗竿地ならではの工夫を凝らす
- 再建築不可物件なら、壁や屋根の補修、設備更新などのリフォームを中心に済みやすい家にする
ただし再建築不可物件に該当する場合は、リノベーション・リフォームできる範囲に制限があります。法律違反にならないよう、対応できる範囲はあらかじめ確認しておきましょう。
トラブルを回避!旗竿地の売却時に意識したい4つの注意点
一般的に売れないとされる旗竿地を売却する際には、他の土地とは異なる部分に対して注意を向けることが必要です。トラブルなく旗竿地を売るためには、以下の注意点を意識してみてください。
- セットバックの要不要を確認しておく
- 再建築不可物件なら考えなしに解体しない
- 43条但し書き許可の申請で再建築が可能になるか確認する
- 住み替えのときは買い先行をおこなう
それぞれの詳細を見ていきましょう。
セットバックの要不要を確認しておく
セットバックとは、所有する土地の境界線を後退させることで、土地と接道する道路幅を広げる施策です。
もし旗竿地の竿の部分に接する道路の幅が4m未満だと、竿の間口が2m以上でも接道義務を満たせません。接道義務が満たせないと再建築不可物件扱いになり、同じ土地での新築・建て替えが原則として不可能になります。
そこでセットバックによって、接道義務の1つである「幅員4m(または6m)以上の道路への接道」を満たせるようにします。これで接道義務未達による、再建築不可物件状態の解消が可能です。
ただし旗竿地におけるセットバックは竿の部分にて実施することが多く、ただでさえ狭くて細い竿の面積がさらに小さくなるリスクがあります。またセットバックをおこなうには、道路の調査、補助金・助成金などの交付条件の確認、事前協議書の提出、建築確認申請などのさまざまな準備・手続きが必要です。
そのため、旗竿地を売却する前にはセットバックの要不要を確認しておき、セットバック対応も含めたスケジュールを策定しておきましょう。なお4mまたは6m以上の道路幅を満たしていなくても、「43条但し書き通路」に該当する場合、再建築が可能になるケースがあります。
再建築不可物件なら考えなしに解体しない
売ろうとしている旗竿地が再建築不可物件に該当する場合は、そのまま考えなしに建物を解体して更地にすることは避けてください。再建築不可物件の状態のまま建物を解体すると、解体後に新しい建物を建てることができません。
また旗竿地が再建築不可物件でなくても、固定資産税・都市計画税の関係で安易に解体するのは避けたほうがよいでしょう。解体した物件が住宅だった場合、土地に適用されていた住宅用地の特例の対象外になるからです。
住宅用地の特例とは、住宅が建っている土地の固定資産税・都市計画税をを最大6分の1にする制度です。つまり特例を適用している土地の住宅を解体すると固定資産税額が元に戻る、すなわち固定資産税・都市計画税が最大6倍になります。
43条但し書き許可申請で再建築が可能になるか確認する
旗竿地が再建築不可物件に該当していても、43条但し書き申請によって再建築が認められるケースがあります。
43条但し書き申請とは、再建築不可物件であっても建築基準法第43条第2項に該当する場合に、申請によって建物の建て替えが認めてもらうようにする手続きです。
根拠条文は、建築基準法第43条2項です。以下のいずれかに該当する場合には、接道義務を適用しないと定められています。
<建築基準法第43条2項>
- 敷地が幅員4m以上の道(道路に該当するものを除き、避難・通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するもの)に2m以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとして用途・規模に関して国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁(※)が交通上、安全上、防災上、衛生上支障がないと認めるもの
- 敷地の周囲に広い空地を有する建築物そのほか国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防災上、衛生上支障がないと認めて、建築審査会の同意を得て許可したもの
※ 特定行政庁:建築に関する事項を確認する都道府県や市区町村の職員の「建築主事」を置いた地方公共団体およびその長
上記の①に該当する敷地なら、特定行政庁に認められれば許可を得られます。許可の判断基準は自治体ごとの特定行政庁で異なるため、詳細な基準は事前に自治体にて確認しておきましょう。
②に該当するときは、特定行政庁の判断に加えて建築審査会の同意が必要です。ただし各自治体が定める「包括同意基準」を満たす土地だったときは、あらかじめ建築審査会の同意を得たものとして扱われます。包括同意基準も、自治体ごとで詳細が異なるので注意してください。
43条但し書き申請は少し複雑であるため、所有する旗竿地に43条但し書き許可の対象になるか否かは、不動産会社といった専門家や自治体の役所へ確認を取るのがよいでしょう。
建築基準法第43条1項における国土交通省令で定める基準
上記の建築基準法第43条1項における「利用者が少数であるものとして用途・規模に関して国土交通省令で定める基準」は、建築基準法施行規則第10条の3第3項に記載があります。具体的には次の通りです。
<建築基準法施行規則第10条の3第3項>
- 延べ面積が200㎡以内であること
- 一戸建てであること
建築基準法第43条2項における国土交通省令で定める基準
上記の建築基準法第43条2項における「敷地の周囲に広い空地を有する建築物そのほか国土交通省令で定める基準」は、建築基準法施行規則第10条の3第4項に記載があります。具体的には次の通りです。
<建築基準法施行規則第10条の3第4項>
- 敷地周辺に公園、緑地、広場などの広い空地を有している
- 敷地が農道や農道に類する公共の用に供する道(幅員4m以上のものに限る)に2m以上接している
- 敷地が、その敷地の建築物の用途、規模、位置、構造に応じて、避難・通行の安全等の目的を達するために十分な幅員を有する通路であって、道路に通ずるものに有効に接している
参考:e-Gov法令検索「建築基準法施行規則」
住み替えのときは買い先行をおこなう
旗竿地を売却した後、別の住宅への住み替えを検討している場合は、「買い先行」を推奨します。
買い先行とは、先に新居を購入して引っ越しを済ませた後に、もともと済んでいた土地や建物を売却する手法です。
買い先行なら家具はすべて新居へ移動して収納スペースも空いているので、内覧希望者に建物の隅々まで見てもらえます。私物をすべて移動させることで、部屋を狭く感じさせない、クローゼットや収納棚などのなかまで見せられるなど、さまざまなメリットがあります。
買い先行ならカーテンや家具による遮光がなくなるため、日当たりが悪いイメージがある旗竿地の悪印象をカバーできるでしょう。
旗竿地の評価額はいくら?3つの計算方法を解説
旗竿地の正確な評価額は、不動産鑑定士などの専門家に依頼して算出するのが一般的です。しかし、計算式さえ知っていれば、あらかじめ自分で評価額を計算しておおまかな価値を確認できます。旗竿地を売却するか否かの判断基準に応用が可能です。
旗竿地の評価額は、同じ面積の整形地と比較すると補正率が適用される分だけ低くなります。旗竿地の評価額の計算方法は、主に次の3つです。
- 道路の奥行き分を割り引いて計算する方法
- 「狭い間口」と「長い奥行き」の2つ分を割り引いて計算する方法
- 不整形地として計算する方法
まず基本となる整形地の評価額の計算式は、「路線価×面積」です。路線価は、国税庁が毎年7月1日に発表する「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」にて確認が可能です。
旗竿地は整形地の評価額に対して「奥行価格補正率」、「間口狭小補正率」、「奥行最大補正率」、「不整形地補正率」のいずれかが適用される可能性があります。
以下では、それぞれの計算式の詳細を見ていきましょう。
道路の奥行き分を割り引いて計算する方法
旗竿地は、原則として竿の部分が道路に面しており、旗の部分は道路から見て奥に位置しています。道路から見て奥行きが極端に長いおよび短いときは、「奥行価格補正率」を適用して計算します。
旗竿地の場合だと、道路から(間口から)の奥行きが長すぎるケースが多いです。そのため、奥行き分を補正率で割り引いた金額を算出します。
旗竿地の評価額=路線価×面積×奥行価格補正率
普通住宅地区における奥行価格補正率表の一部は次の通りです。
奥行距離 |
奥行価格補正率 |
6m以上~8m未満 |
0.95 |
8m以上~10m未満 |
0.97 |
10m以上~24m未満 |
1 |
24m以上~28m未満 |
0.97 |
28m以上~32m未満 |
0.95 |
32m以上~36m未満 |
0.93 |
参考:国税庁「奥行価格補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外・平29課評2-46外改正)」
たとえば道路からの奥行きが30mだと、奥行価格補正率0.95になります。
「狭い間口」と「長い奥行き」の2つ分を割り引いて計算する方法
道路に接している土地の間口が狭い場合に適用するのが、「間口狭小補正率」です。また、奥行距離が間口の広さに対して極端に長い土地(奥行距離が間口距離の何倍もある)だと、「奥行最大補正率」が使えます。奥行最大補正率は、路線価地域のみで適用が可能です。
そして旗竿地の場合、「狭い間口」と「長い奥行」の2つ分を割り引いて評価額を計算する方法があります。
評価額=路線価×間口狭小補正率×奥行最大補正率×面積
普通住宅地区における間口狭小補正率表および奥行最大補正率表は次の通りです。
間口距離 |
間口狭小補正率 |
4m未満 |
0.90 |
4m以上~6m未満 |
0.94 |
6m以上~8m未満 |
0.97 |
8m以上 |
1 |
奥行距離÷間口距離 |
奥行最大補正率 |
2以上~3未満 |
0.98 |
3以上~4未満 |
0.96 |
4以上~5未満 |
0.94 |
5以上~6未満 |
0.92 |
6以上 |
0.90 |
参考:国税庁「奥行価格補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外・平29課評2-46外改正)」
たとえば間口距離が5mだと間口狭小補正率は0.94、奥行距離が間口距離の6倍の30mだと奥行最大補正率は0.90になります。
不整形地として計算する方法
旗竿地を不整形地として扱う場合、「不整形地補正率」を用いて評価額を計算する方法があります。
評価額=路線価×面積×不整形地補正率
不整形地補正率を求めるには、想定整形地やかげ地割合などの確認が必要になります。想定整形地とは、評価したい旗竿地の全域を囲むうえで、正面路線に面する最小面積の部分です。かげ地とは、想定整形地で旗竿地を囲ったときに、旗竿地からはみ出ている土地の広さです。
たとえば想定整形地が1,000㎡で旗竿地が800㎡だと、かげ地は200㎡になります。そしてかげ地割合は、200㎡/1,000㎡で20%です。
次に、定められた地積区分表と不整形地補正率表を用いて、適用する不整形地補正率を探します。
出典:国税庁「奥行価格補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外・平29課評2-46外改正)」
さきほどの例を普通住宅地区と想定した場合、旗竿地の面積は800㎡なので地積区分は「C」です。かげ地割合は20%であるため、「普通住宅地区のC」と「かげ地割合20%以上」に該当する、0.98が不整形地補正率になります。
なお、実際には必ずしも上記で導いた不整形地補正率を使うのではなく、以下の計算式のうち小さい補正値を適用します。
- 不整形地補正率×間口狭小補正率
- 奥行最大補正率×間口狭小補正率
旗竿地がどうしても売れないときの対処法
所有する旗竿地がどうしても売れないときは、以下の方法で旗竿地を活用することが考えられます。
- 賃貸物件として第三者へ貸し出して家賃収入を得る
- 駐車場・駐輪場にして利用料金を得る
- 隣地を買い取って1つの不動産にする
それぞれの対処法の詳細を見ていきましょう。
賃貸物件として第三者へ貸し出して家賃収入を得る
旗竿地の建物を、賃貸物件として第三者へ貸し出し家賃収入を得る方法があります。「病院や駅から近い」「閑静で住みやすい」といった人気の立地なら、賃貸としての需要を見込めるでしょう。
建て替えができるなら、賃貸アパートにしてしまうのも手です。建て替えの資金がない、再建築不可物件であるといった場合でも、一戸建ての賃貸にする方法があります。一戸建ては部屋が多い、ペットの複数頭に対応できる、アパートのように隣人の騒音を気にしなくてよいなど、独自のメリットがあります。
賃貸としての需要がある旗竿地か否かを知るには、不動産会社に相談してみてください。
駐車場・駐輪場にして利用料金を得る
旗竿地にある建物に住居としての需要がなくても、建物を取り壊して駐車場・駐輪場として活用する方法があります。
駐車場・駐輪場にすれば、利用料金で利益を得られるうえに、建物を空き家のまま放置して固定資産税や維持費・修繕費だけがかかるという事態を防げます。
もし旗竿地が再建築不可物件であっても、駐車場や駐輪場にすることは可能です。ただし、間口が狭いときは車の入出庫のやりやすさをあらかじめ確認しておきましょう。
駐輪場・駐輪場のほかには、倉庫用のコンテナハウスやトレーラーハウスを設置して事業をおこなうケースも考えられます。
隣地を買い取って1つの不動産にする
需要が低い旗竿地を、旗竿地と隣接する土地を買い取って1つの大きな整形地にする方法があります。旗竿地が整形地になれば、接道義務が満たせる、土地の活用幅が広がるなどのメリットがあるからです。
隣地の住人が引っ越しや建物の解体を検討しているときは、隣地を買い取れないかを確認してみるのもよいでしょう。隣地を買い取って1つの不動産にしたうえで、あらためて売却できないか検討するのも1つの方法です。
売れない旗竿地があるなら訳あり物件買取業者への売却がおすすめ!
売れない旗竿地をスムーズかつ確実に売却したいなら、不動産買取業者への依頼がおすすめです。不動産買取業者とは、不動産の買手と売手を仲介する不動産会社とは異なり、会社が直接不動産を買い取ってくれるサービスです。
とくに、旗竿地を含めた「訳あり物件」を専門に取り扱う買取業者なら、旗竿地でも問題なく買い取ってくれます。以下では、旗竿地を訳あり物件買取業者へ売却するメリットや業者の選び方などを解説します。
訳あり物件買取業者へ旗竿地を売却するメリット
訳あり物件買取業者へ売却する大きなメリットは、旗竿地でも迅速に売れる可能性が高いことです。
買取業者が旗竿地を直接買い取ってくれるため、旗竿地の買手探しや買手候補との交渉・契約締結などが必要ありません。1〜2か月あれば売却できます。また訳あり物件買取業者は買い取った旗竿地を最大限活用できるノウハウや資金力を持っていることから、旗竿地を適正価格で買い取ってくれます。
さらに訳あり物件買取業者への売却なら、契約不適合責任(売った不動産に瑕疵や問題が発覚したときに追うべき責任)が免除になるケースが多いです。契約不適合責任による修理対応、契約解除、損害賠償などのトラブルに発展する心配がなくなります。
ただし、不動産会社の仲介を利用して売却するより売却金額が低くなる傾向があるのであらかじめ認識しておきましょう。
訳あり物件買取業者の選び方
訳あり物件買取業者の選び方として、以下を参考にしてみてください。
- 旗竿地を始めとする訳あり物件の買取実績を見る
- 所有する旗竿地がある地域での不動産買取実績があるかを見る
- 過去に違法取引や顧客とのトラブルなどで行政処分の対象になっていないかを確認する
- インターネットやSNSなどで口コミや評判を確認する
- 1社だけでなく複数社への見積もりをおこない、査定額やサービス内容を比較検討する
旗竿地の買取実績や活用実績を持つ買取業者なら、旗竿地の価値を適切に評価してくれます。ただしいくら実績があっても、担当者の態度に問題がある、過去に行政処分などがおこなわれている業者だと、新たなトラブルが発生するリスクが考えられます。本格的に依頼する前に、実際に利用した人からの評判や、査定時の態度・言葉遣いなどをチェックしておきましょう。
株式会社クランピーリアルエステートなら、旗竿地に関する確かなノウハウと誠実な対応で、旗竿地を高額買取いたします。
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旗竿地を訳あり物件買取業者へ売却する流れ
訳あり物件買取業者を初めて利用する場合、どのように買取を依頼すればよいのかわからない人も多いと思われます。以下では、旗竿地を訳あり物件買取業者へ売却するおおまかな流れをまとめました。
訳あり物件買取業者へ売却する流れ |
概要 |
訳あり物件買取業者探し・実績確認 |
旗竿地や不整形地などの買取を専門とする買取業者を探す
公式ホームページで旗竿地や不整形地の買取実績を確認する
3~5社程度の買取業者をピックアップする |
査定・買取を依頼する |
複数社へ査定を依頼する
査定額、サービス内容、担当者の態度などを比較検討する
自分に合う訳あり物件買取業者へ買取を依頼する |
業者と売買契約を締結する |
依頼する訳あり物件買取業者と交渉し売買契約を結ぶ
抵当権の抹消、固定資産税などの精算などを終わらせておくとスムーズになる |
確定申告をおこなう |
売却した旗竿地で得た売却益から譲渡所得を計算する
確定申告書を作成し、期限内(原則として売却した翌年の2月16日~3月15日)に申告と納税をおこなう |
旗竿地を売却して利益を得た場合、得た利益分の所得税や住民税を申告し、納税しなければなりません。譲渡所得税は、譲渡所得を基に計算します。
譲渡所得の計算式は次の通りです。
課税譲渡所得=旗竿地の売却価格-(旗竿地の購入価格+旗竿地購入にかかる諸経費+旗竿地の売却にかかる諸経費)
譲渡所得にかかる税率は、売却した旗竿地を所有していた期間によって変わります。所有期間が5年を超えると「長期譲渡所得」となり、所得税が安くなります。5年以下だと「短期譲渡所得」扱いです。
- 短期譲渡所得(売却年の1月1日時点で所有期間5年以下):税率39.63%(所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%)
- 長期譲渡所得(売却年の1月1日時点で所有期間5年超):税率20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)
確定申告のやり方がわからないときは、国税庁の公式ホームページの確定申告の手引きを見たり、税理士に相談したりするのがよいでしょう。
まとめ
旗竿地は「接道義務が満たせていないケースが多い」「日当たりや風通しが悪い」といった理由で、一般的な整形地よりも売れないケースが多々あります。売却価格も、整形地より安くなる傾向があります。
売れない旗竿地を売れるようにするには、旗竿地のデメリットの解消や売却時の相手選びなどの対策が必要です。旗竿地ならではのメリットも存在するため、「旗竿地だから絶対に売れない」ということはありません。万が一売れない場合でも、賃貸物件や駐車場・駐輪場などにすれば、収益物件として活用できるでしょう。
もし旗竿地を確実に売却したいときは、訳あり物件買取業者への買取依頼を推奨します。訳あり物件買取業者なら、不動産会社の仲介を利用するよりスピーディーな売却が可能です。買取業者を選ぶときは、「旗竿地の買取実績があるか」「複数社からに査定を依頼して比較検討しているか」などを確認しておくと、あなたに合う買取業者を見つけやすくなります。
訳あり物件買取の実績豊富な株式会社クランピーリアルエステートは、旗竿地の高額買取をおこなっています。全国1,500以上の士業と提携しているため、法的手続きやトラブルにも迅速に対応が可能です。再建築不可物件や老朽化物件などの買取実績も豊富であるため、ぜひ気軽に相談や査定をご利用ください。
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