
二世帯住宅を売却するとき、売却先も「2つの世帯で入居する人たち」に限定されるため、売りにくいといわれます。
実際に二世帯住宅を所有している人には、
・親世帯の施設入所や子供世帯の転勤などで、せっかく建てた二世帯住宅を持て余している
・売却活動をしているけれど、購入希望者がなかなか現れない
・二世帯住宅を高く売却するコツを知りたい
・二世帯住宅の売却でかかる税金にはどんなものがあるの?
など、さまざまな悩みや疑問を抱えている方が多くいます。
この記事では「二世帯住宅を売却したい人」のために、不動産専門家の観点から解説し、疑問やお悩みを解決します。
具体的には、
・二世帯住宅の種類と登記の確認方法
・二世帯住宅を高値売却する7つのポイント
・1年以上売れない二世帯住宅を売却できる4つの方法
・二世帯住宅を売却する際の税金
の順番に重要なポイントだけを紹介していきます。
この記事を読めば、二世帯住宅の売却で知っておくべき知識を深められるので、時間をかけずに納得のいく価格での売却ができるでしょう。
最後まで読んで、ぜひ参考にしてみてください。
売却前に二世帯住宅の種類と登記方法を確認しよう
二世帯住宅を売却する前に、二世帯住宅の構造や権利形態を把握しておきましょう。
二世帯住宅の構造は以下の3種類があり、種類によって売却価格に影響します。
- 2つの世帯を区分けしている「完全分離型」
- 住宅を一部だけ共有している「一部共有型」
- 住宅のすべてを共有している「完全同居型」
また二世帯住宅の権利関係は4種類あり、登記方法によって売却できる条件が異なります。
- 親または子の単独名義で登記する「単有登記」
- 2人以上の共有名義で登記する「共有登記」
- 二世帯住宅を1つの住宅として登記する「非区分登記」
- 二世帯住宅を2つの住宅として登記する「区分登記」
登記方法によっては、同居人の合意がないと二世帯住宅を売却できないケースもあるため注意が必要です。
まずは二世帯住宅の種類を見ていきましょう。
二世帯住宅の間取りの種類を確認する
二世帯住宅は間取りから「完全分離型」「一部共用型」「完全同居用型」の3種類に分類できます。
二世帯住宅といっても、2世帯が完全に同居している物件もあれば、住居内では1世帯ずつ生活している物件もあるからです。
次の項目では、3種類ある二世帯住宅の特徴をそれぞれ解説します。
2つの世帯を区分けしている「完全分離型」
1階と2階など階層で分離させたり、壁で左右を分けることで世帯を分離させています。一緒に暮らす安心感がありながら、プライバシーを守ることが可能です。
一方で、それぞれの世帯で生活が独立しているため、世帯間のコミュニケーションが希薄になってしまうでしょう。
ただし、土地・建物をそれぞれの世帯で分けて所有しているため、親世帯あるいは子供世帯のみを分割して売却できます。
住宅を一部だけ共有している「一部共有型」
共有スペースがあるため世帯間の交流も保ちつつ、最低限のプライバシーを確保できます。
住宅のすべてを共有している「完全同居型」
共働き世帯でも育児や家事を協力できるうえ、コミュニケーションも取りやすくにぎやかで余裕のある暮らしが実現できます。
ただし、プライバシー確保が困難であり、お互いの生活に干渉してしまうため、ストレスを感じてしまう恐れもあります。
二世帯住宅の売却価格の相場
二世帯住宅を売却する場合、種類によって売却価格が異なります。
「完全分離型」「一部共用型」「完全同居用型」それぞれの売却価格相場を解説します。

「完全分離型」の売却価格は中古一戸建て2戸分
二世帯住宅を新築する際の建築工事費は新築の住宅を二軒建てる費用とほぼ同額になり、かつ敷地面積も二軒分の広さがあります。
そのため、完全分離型の二世帯住宅を売却する場合、売却価格は中古一戸建て2戸分程度になるケースが多いです。
ただし、親世帯あるいは子供世帯のみを分割して売却する場合、売却価格は中古一戸建て1戸分程度になるケースもあります。
「一部共用型」の売却価格は一般住宅より割高
一部共用型だとダイニングや浴室などを2箇所設けるため、一般の住宅に比べて建築工事費は割高になります。
売主の要望も聞いたうえで価格を決めるため、価格相場は一般の住宅に比べて割高になる傾向があります。
しかし、一部共用型の二世帯住宅は家族ごとに価値観が異なることもあり、買主側も希望どおりの物件に出会えることがなかなかありません。
購入希望者が現れないために、最終的には大幅に値引きをして売却するケースも少なくありません。
「完全同居型」の売却価格は一般住宅と同程度
完全同居型の二世帯住宅の場合、一般の住宅より部屋数が多いだけで、ダイニングや浴室などの設備が2箇所あるとは限りません。
このため中古住宅として売却する際の価格相場は、一般的な住宅と同程度であることが多いです。
とはいえ、住宅自体の広さは二世帯分あるため、広めの一般住宅と認識しておくとよいでしょう。
二世帯住宅の登記方法を確認する
二世帯住宅の登記方法は「単有登記」と「共有登記」があり、分け方も「区分」と「非区分」があります。
二世帯住宅は登記方法ごとに権利関係が異なり、場合によっては売却トラブルを発展する恐れもあるため注意しましょう。
例えば、親子2人の共有名義不動産を息子1人で売却すると、売買契約自体が無効になるケースもあります。
ですので、二世帯住宅の売却前には、物件購入時の登記方法を必ず確認しておきましょう。
親または子の単独名義で登記する「単有登記」
家族と同居していても、二世帯住宅は名義人だけの専有物という扱いになります。
そのため、家族の同意がなくても、名義人だけで二世帯住宅のリフォームや売却ができます。
ただし、二世帯住宅に出資した人の名前を登記しておかないと、出資額と持分割合との差額が贈与と扱われてしまう恐れがあるため注意しましょう。
2人以上の共有名義で登記する「共有登記」
親子両方が出資して二世帯住宅を共同購入した場合、出資額に応じて持分を設定するのが一般的です。
例えば、3,000万円の二世帯住宅を親子がそれぞれ1,500万円ずつ出資したとすると、持分は1/2ずつ設定されます。
ただし、二世帯住宅をリフォームや売却する場合には、他共有者の同意が必要となります。

二世帯住宅を1つの住宅として登記する「非区分登記」
1回の登記で手続きが完了するため、費用を抑えて登記申請をおこなえます。
ただし、二世帯住宅は物件の面積が広くなる傾向にあるため、建物・土地ともに不動産取得税の控除が受けられない恐れがあります。
二世帯住宅を2つの住宅として登記する「区分登記」
二世帯住宅を2戸の住宅としてそれぞれ登記するため、2回分の費用を負担しなければいけません。
一方で、それぞれの住宅は別物と扱われるため、区分登記した部分のみを売却できます。
例えば、1階と2階を区分登記している場合、1階だけを売却することも可能です。
ただし、実際には1階のみを購入する買主は少ないため、二世帯住宅全体を売却するケースが多いでしょう。
二世帯住宅を高値売却する7つのポイント
家族の個性がそのまま形となっている二世帯住宅は、なかなか売れないというのが、世間の評価です。
このような二世帯住宅を少しでも高値で売却するためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
二世帯住宅を高額売却したい場合、以下のような準備をしておくとよいでしょう。
1.生活感を消去する
二世帯住宅は一般的な住宅以上に居住者の生活の痕跡が残ってしまいます。両親から孫までの3世代が同居していれば、よけいに痕跡は濃いものになるでしょう。
和室において畳の傷みや焦げ跡、ふすまの破れ、あるいは子供部屋の壁紙への落書きといった居住者が見慣れた光景であっても、購入希望者にとっては不快に感じることがあります。
また、同様に生活臭やタバコ臭なども忌避される原因となるかもしれません。
このため売却に際しては、ハウスクリーニング業者に依頼して、水回りを中心に室内を徹底的に清掃するとよいでしょう。

2.二世帯住宅の売買実績をもつ不動産業者に仲介を依頼する
二世帯住宅は一般の住宅より需要が少ないため「二世帯住宅は売れない」と考える不動産業者は少なくありません。
このような感覚の不動産業者に仲介を依頼すると、購入希望者の探し方もおざなりになるだけでなく、極端に安値の売却価格を提案してきます。
二世帯住宅の売却には独特の販売ノウハウが必要です。そのうえで不動産業者独自の購入希望者リストがあれば、売却できる可能性がより高いです。
つまり、二世帯住宅の仲介実績が豊富な不動産業者に依頼した方が、売却できる可能性が高いです。仲介を依頼する際は、二世帯住宅の販売実績を確認したうえで、判断した方がよいでしょう。
3.完全分離型はシェアハウスとして分割して販売する
完全分離型で親子がそれぞれ所有者になっている物件は、シェアハウスとしてそれぞれ個別に売り出せます。
完全分離型は住宅二軒分相当の建設費をつぎ込んでいるので、販売価格も他の二世帯住宅のタイプと比べて高い設定になります。
それぞれ一戸ごと売り出すことで手ごろな価格帯になるため、売却できる可能性が高くなります。
ただし、土地・建物を親子共有にしている場合は、事前に分筆して、親と子供がそれぞれの物件の所有者になるよう名義変更する必要があります。
4.住宅以外の使い方を提案する
二世帯住宅の購入を希望している人は限定的なために、不動産を探している人の中には「二世帯住宅」というだけで関心を失くす人もいます。このため、住宅以外の使い道があることを積極的にアピールしていくことが重要です。
たとえば、完全分離型であれば、「自己居住用」+「賃貸住宅」という活用法を提案します。買い手も家賃収入が期待できるため、関心を示す人も増えます。
また一部共用型であれば、シェアハウスとしての活用が期待できます。ダイニングや浴室が二カ所あれば、自らが居住しながらシェアハウスや下宿としての活用も可能になります。
さらに完全同居型の場合は、個室の数が多いことから、合宿所や民泊への活用も期待できます。
こうした活用法を売主自らが提案することで、購入希望者の関心を集めることが可能になります。

5.バリアフリー機能を強調する
二世帯住宅の特徴の1つが、親世帯の使用に備えてバリアフリー機能が充実していることです。
二世帯住宅を探している人の中には、親の介護が必要な家庭は珍しくありません。
スロープや手すりなどのバリアフリー機能が充実している住宅であれば、ぜひ購入したいという人が現れる可能性もあります。

6.雨漏りやシロアリ被害などを修繕しておく
雨漏りやシロアリ被害があれば、修繕をしておくのは当然のことですが、そこまで重大な瑕疵でなくても、気になることがあれば予め修繕しておくとよいでしょう。
たとえば、建具の立て付け不良、壁クロスのめくれ、フローリングの浮きや鳴り、水回りの不備などがあります。
これらの不具合はそのままでも販売することは可能ですが、修繕を済ませておいた方が、購入希望者の印象が良くなります。
購入の意思表示があったとしても、そうした不備を理由に大幅な値下げを要求されることもありますから、多少の費用を投じてでも修繕した方が、高値での売却に結びつく可能性が高くなります。

7.住宅診断を実施する(ホームインスペクション)
日本で中古住宅があまり流通していない理由の一つとして「どんな不備が潜んでいるのか分からない」といったことがあります。
購入希望者の不安を取り払うためには、既存住宅状況調査の実施が有効です。(ホームインスペクション)
住宅診断を実施した住宅は、重要事項説明の際に「建物現況調査の結果の概要」を書類として提示できるので、買主の不安がなくなるため、高値での売却が期待できます。

1年以上売れない二世帯住宅を売却できる4つの方法
二世帯住宅は、なかなか売れないという声をよく耳にしますが、売却活動を始めて1年以上経っても売れないという事態になると、さすがに販売方針を見直した方がよいでしょう。
どんな点を見直すべきなのか考えていきましょう。
1.売却価格を見直す
1年以上経っても売れないとなると、まずは価格設定を見直す必要があります。二世帯住宅を新築したときの工事費のことを考えると、価格を下げるのは勇気がいりますが、価格設定が高すぎると売れない原因になってしまいます。
市場価格に見合った価格に引き下げて、再度売り出しを図りましょう。
2.仲介の不動産業者を変える
いつまでも売れないのは、不動産業者の販売能力に問題があるかもしれません。
積極的に購入希望者を探していない可能性がありますから、3ヶ月ごとの契約更新の際には、二世帯住宅の売買実績がある不動産業者に依頼することも視野にいれておきましょう。
3.空き家状態にして売り出す
室内をクリーニングしても、入居したままではキレイな状態を維持するのは難しいでしょう。生活感を一掃させるためには、家を空き家状態にしてオープンハウスとして内覧してもらう方が、家に対する印象がアップします。
特に二世帯住宅において引き渡し後にそのまま利用する人は少なく、リフォームやリノベーションをした後に入居する人が大勢います。
そうした希望を持つ人は、専門家のアドバイスを受けながら内覧をしたいと考えていますから、フリーに物件に出入りできた方が歓迎されます。
これまで以上に関心を持ってもらえる層を開拓する意味でも空き家にして売却する方法はとても有効です。
4.訳あり物件の専門業者に買取してもらう
二世帯住宅を売却する理由の一つに、親の死があります。こうしたケースでは、たとえ親が病院で亡くなっていても購入を敬遠されることがあります。
もし親の死が原因で売却に時間がかかっているとしたら、訳あり物件専門の業者に買い取ってもらう方法がとても有効です。
訳あり物件を専門に取り扱っている業者は、一般的に需要の少ない物件でも価値のある物件としてリフォームできるノウハウを持ち合わせています。
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二世帯住宅を売却する際の税金
二世帯住宅の売却の目途がたったときに気になるのが税金です。二世帯住宅の売却に際しては、どのような税金が課せられるのかをみていきましょう。

印紙税
印紙税は、公正な取引を担保してくれた見返りとして、国や自治体に納める税金です。売買契約書に収入印紙を貼りつけることで納税したことを示します。
課税額は、売却金額によって次のように定められています。
記載された契約金額 | 税額 |
10万円を超え 50万円以下のもの | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 1千円 |
500万円を超え 1,000万円以下のもの | 5千円 |
1,000万円を超え 5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円を超え 1億円以下のもの | 3万円 |
参照:国税庁No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
登録免許税
不動産を売却した際には、所有権移転登記がおこなわれます。この手続きを行う際に納めるのが登録免許税です。登録免許税の税率は売却価格の2%です。
譲渡所得税
譲渡所得税は、二世帯住宅を売却で得た費用が購入費用を上回る際に課せられる税金です。譲渡所得税は所得税と住民税に分けて次の計算式で算出します。
住民税=〔収入金額 – (取得費 + 譲渡費用) 〕× 5%(所有期間が5年以下は15%)
参照:国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

居住用の3000万円特別控除
二世帯住宅のように居住用の不動産を売却した場合、譲渡所得から3000万円までの特別控除が適用されます。つまり、売却益が3000万円以内であれば、譲渡所得税は非課税となります。
ここでの注意点は「居住用」ということです。一部共用型や完全同居型は居住用として認められますが、完全分離型は所有者が誰かによって異なってきます。
たとえば、すべて親の名義で登記していた場合は、子供世帯の居住スペースは所有者の居住スペースではないと見なされ特別控除は適用されません。
完全分離型の二世帯住宅の場合は、区分所有にして親と子がそれぞれ所有していないと譲渡所得税の取り扱いは不利になります。

相続をした場合は売却のタイミングに注意
二世帯住宅を売却する理由の一つに親の死があります。この場合、相続税対策として売却のタイミングに配慮が必要です。
一部共用型や完全同居型においては、同居していたとみなされるため、二世帯住宅の延べ床面積が330平方メートル以下であれば、小規模宅地等の特例によって、住宅の評価が80%減額されます。
ただし、この特例を適用するためには「相続税の申告期限まで居住して、かつ所有していること」という条件を満たす必要があります。
相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内ですから、この特例を受けるには最低10ヶ月間売却できません。
相続税の申告期限より先に売却すると、相続税の追徴される恐れもあるため注意が必要です。
参照:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

まとめ
二世帯住宅を高額売却する方法について解説しました。二世帯住宅は「完全分離型」「一部共用型」「完全同居型」のそれぞれのタイプによって、買主の用途が異なります。
売却したい二世帯住宅が、どのような買主に使われるのかを予測したうえで売却することが重要です。
なかなか購入希望者が現れない二世帯住宅は、不動産仲介で売却するよりも買取専門業者に売却したほうが早く手放せるケースも多いです
「取引事例の多さ」「現金化までの時間の短さ」「買取対象物件の豊富さ」などを基準に買取業者を選択すれば、希望通りの条件で二世帯住宅を売却できるでしょう。