共有名義不動産の火災・地震保険は誰が支払うの? 契約者の決め方や受取額の割合も解説

火災地震保険

共有とは、一つの物を複数の人が共同して所有する関係をいいます。

共有の場合、共有者はそれぞれの持分を所有し、割合は共有者間の合意によって決められます。ただ、共有者間で特段の合意がない場合には、夫妻、兄弟など自分を含めた各共有者が平等の割合で持分を有するとされます(民法第250条)。共有は土地や住宅、アパートなどの不動産についても認められます。

不動産の場合、共有持分は登記事項とされており(不動産登記法第59条第4号)、登記を見れば誰と誰の共有物なのか、また各共有者の共有持分の割合がわかるようになっています。

不動産、特に建物については、万一の火災によって建物が焼失したり、地震によって建物が倒壊・損壊するなどの場合に備え、火災保険や地震保険に加入するのが一般的です。

不動産が共有となっている場合、火災保険や地震保険にはどのような形で加入が可能なのか、火事や地震によって実際に被害が生じてしまい保険金が支払われる場合の保険に関する共有の問題について以下で解説していきます。

共有名義不動産の火災・地震保険は誰が支払うのか?

火災地震保険
共有不動産についての保険を考える前に、まずは保険制度の仕組みについて確認しましょう。

保険金は基本的に契約者が支払う

共有名義不動産 保険 契約者

保険会社に保険金という費用を支払い、保険会社と保険契約を締結する人を「保険契約者」といいます。保険契約は、保険契約者と保険会社との間で締結され、これによって保険契約者は保険会社に対して保険料の支払い義務が生じます。

保険契約者は、保険をかける対象となる不動産の所有者がなるのが一般的ですが、契約者の父母や兄姉、妻、子や孫など、必ずしも所有者でなければならないわけではありません。

例えば、長男が所有する不動産に対して、父親が保険をかけて保険料を負担する場合もあります。これを「第三者のためにする保険契約」といいます。この契約で支払われるお金は親子間なので贈与税の対象になります。

事故が発生した場合に、保険金を受け取る権利を持つ人を「被保険者」といいます。

保険契約の締結に際して被保険者を指定しなかった場合には、保険契約者が被保険者とされます。

ところで、火災保険や地震保険のような損害保険というのは、保険をかけた対象物である不動産が火災や地震等によって損害を受けた場合に、損害を補填するための制度です。従って、保険金を受領できるのは、対象不動産の損壊等によって損害を被った人、すなわち対象不動産の所有者でなければならないことになります。

以上のことを前提として、共有物に火災保険や地震保険をかける場合について見ていきましょう。

保険契約者は一人とされる

共有名義不動産 保険契約者

まず、火災保険・地震保険の契約者は、一人でなければならないとされています。

従って、保険をかける対象不動産が複数の人の共有に属する場合であっても、共有者全員が保険契約者になることはできません
また火災保険・地震保険は、一つの対象不動産について、一つだけ契約できます。共有物であっても、各共有者がそれぞれ別々に保険契約を締結することはできません。

正確には、契約締結自体はできるのですが、万一、事故が発生した場合に、二重に保険金が出るわけではありません。従って、支払い済みの保険料は無駄になってしまいます。

その結果、共有不動産に保険をかける場合には、共有者の一人が代表として保険契約を締結することになります。

保険料は共有者間の合意で決定される

共有物の場合、保険料の負担はどうなるのでしょうか。これは共有者間の合意によって決定します。
保険会社に対しては、代表として保険契約者になった者が、保険契約の当事者として保険料を負担します。

その上で、保険契約者のみが負担するのか、各共有者間で負担を分配するのかは、共有者間の合意によって決定することができます。ただ、これはあくまでも共有者間での問題です。保険契約者は他の共有者からの分担金の支払いがないことを理由に、保険会社に対する保険料の支払いを拒んだり、解約したりすることはできません。

保険金を受け取る被保険者は誰になるのか?

共有名義不動産 被保険者

既に説明したとおり、被保険者とは、事故が発生した場合に保険金を受け取る人です。

事故が発生した場合には、損害を被った人が保険金を受け取ることになります。事故によって損害を被るのは、保険を掛けた対象不動産の所有者ですので、その所有者が被保険者になります。

これは不動産が共有の場合でも変わりません。すなわち、共有不動産に火災保険・地震保険などをかけた場合の被保険者は、共有者全員ということになります。

もし被保険者として共有者全員を指定しなかった場合や、保険契約の締結時に被保険者を指定しなかったために契約上は保険契約者が被保険者として取り扱われた場合は、事実と異なる保険契約を締結したことになります。保険金の請求を行う際は、保険契約の変更または訂正の手続が必要となります。その結果、保険金の請求に際して、煩雑な手続を行う必要が生じたり、保険金を受け取るまでに時間がかかったりするなどの不都合が生じます。火事で自宅やマンションの部屋のリフォームや建て替えが必要な時には、家の購入費やリフォーム用資金の支払いが遅れるため、かなりのリスクになると考えられます。

契約者を決める場合は「地震保険料控除」がポイント

地震保険控除
契約者を決める場合は、税金対策に保険を活用できる人を選ぶとよいでしょう。その根拠をお伝えします。

保険契約締結は共有者の誰が行ってもよい

上記のように、火災保険・地震保険については、共有物を対象物件とする場合であっても、共有者の誰か一人を保険契約者として保険契約を締結する必要があります。

では、具体的に共有者のうちの誰を保険契約者にすればいいのか、その選び方が問題になります。最終的には、不動産の共有者全員で決めるべきこととなります。誰が保険契約者にならなければならないという決まりはありません。

例えば、共有物の変更について民法は、共有者全員の合意が必要であるとし(民法第251条)、共有物の管理については、持分の過半数で決定するとしています(民法第252条前段)。しかし、共有不動産に火災保険や地震保険をかける行為は、万一の場合の損害補填を図るための行為ですので、変更や管理には当たりません。従って、保存行為として共有者が単独で行うことができます(民法第252条後段)。

地震保険料控除を利用できれば、節税できる

保険契約は共有者の一人が単独で締結することができますが、できれば、共有者間で協議して、共有者の誰かを代表として契約を締結することが好ましいでしょう。
その場合の考え方として、地震保険料控除を有効活用できる人を保険契約者とする方法が挙げられます。

火災保険と地震保険をセットにして契約の手続きを行うと、年末調整や確定申告等において、課税所得から一定の「地震保険料控除」を受けることができ、節税につながります。

現在、地震保険は単独でかけることができません。火災保険とセットでかける仕組みになっています。ところで、日本では所得税について累進課税制度が採用されているため、収入から経費を差し引いた所得の金額が高いほど、税率は高くなります。一般論としては、共有者の中で所得の高い人が保険契約者として保険料を負担し、地震保険料控除を受ければ、節税につながってキャッシュを残せます。
誰を保険契約者にするか迷った時、地震保険料控除を利用できる人間にすれば、節税効果が見込めます。金銭的なメリットのある考え方として検討してみてください、

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火災・地震で保険金支払いの対象となったときの受取額の割合は?

保険事故が発生した場合には、保険金は被保険者である共有者からの請求によって、その共有持分に応じて支払われることになります。
この場合、各共有者の持分を確認するために、共有持分割合が記載された登記事項証明書の提出を保険会社から求められることがあります。

また、手続の簡略化のために、共有者の一人が代表となって保険会社に対して保険金を請求し、これを事後的に共有者間で分配する方法がとられることもあります。

ただ、この場合には、共有者の一人が勝手に保険金を受領してこれを独占しトラブルになることを防止するため、他の被保険者である共有者の同意をえることが求められています。具体的には、代表となる人が、他の被保険者である共有者から、保険金の請求・受領に関しての代理権を授与してもらい、その代理権に基づいて被保険者である共有者全員を代表して保険金の請求を行うことになります。代理権を証明するためには、委任状の提出を保険会社から求められるのが一般的です。

共有名義人が死亡、離婚した場合はどうすればいいのか?

死亡、離婚
不動産を共有していると、共有名義人の一人が亡くなることもあります。その場合、保険金の受け取りはどう変更すればよいのでしょうか

共有者の一人が亡くなった時

共有持分の変更

高齢の叔父など、共有者の一人が亡くなった場合、亡くなった人間が有していた共有持分は相続によって相続人に承継されます。その結果、対象不動産は、従来の共有者と相続人との共有となります。

具体的に見てみましょう。

建物を共有するAとB(共有持分は各2分の1とします)のうちBが亡くなり、Bの配偶者Cと子供Dが相続した場合、当該建物は以下の通り、AとCとDの共有となります。

共有持分 相続 持分割合

Aの持分:1/2(従来通り)
Cの持分:1/4(Bが有していた持分1/2に対する相続分の半分)
Dの持分:1/4(Bが有していた持分1/2に対する相続分の半分)

亡くなった共有者に相続人がいない場合には、その共有持分は他の共有者に帰属することになります(民法第255条)。

つまり、上記の例でBに相続人がいない場合、Bの共有持分はAに帰属し、最終的にAの単独所有となります。
A・B・Cという3人の共有(共有持分はそれぞれ1/3とします)のうち、相続人がいない状態でBが亡くなった場合には、Bの共有持分はAとCがそれぞれ取得します。この場合のAとCの持分は3/6(従来の持分であった1/3に、Bの持分であった1/3の半分、すなわち1/6がAとCにそれぞれ追加される)となります。

共有者の一人が亡くなった場合には、このように共有者が変更されます。それに伴って、保険契約の被保険者についても変更する必要があります。

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保険契約者が亡くなった場合

共有者のうち、保険契約者となっていた共有者が亡くなった場合には、他の共有者、または、亡くなった共有者の相続人に保険契約者を変更する必要があります。

これを怠って保険料の支払い等が途絶えてしまうと、保険契約が失効してしまうことになりかねませんので注意が必要です。

共有者が離婚した場合

夫婦が不動産を共有で取得した場合において、万一、離婚することとなった場合には、通常、財産分与などがなされ、財産の清算・移転などが行われます。

その結果、不動産の共有関係に変更が生じた場合には、それに応じて保険契約者や、被保険者の変更手続をとる必要があります。

最初に述べたとおり、火災保険等の被保険者は、対象不動産の所有権を持つ人間でなければなりません。仮に、離婚によってその共有持分を財産分与等によって移転し、共有持分を有しないことになった場合、その者は被保険者に該当しなくなります。

また保険契約者が離婚等によって共有者でなくなった場合、当該保険契約者による保険料の支払いが期待できない訳ですから、速やかに保険契約者を変更し、当該対象不動産を所有する者を保険契約者に変更するべきです。

まとめ

当然のことですが、共有不動産についても、単独所有の場合と同様に、火災保険や地震保険等をかけることができます。

ただ、その契約の仕方や保険金の請求・受け取りに関しては、対象不動産が共有であることに伴う特殊な手続等が必要になる場合があります。

それ以上に注意が必要なのは、共有関係に変更が生じた場合の取り扱いです。保険料を支払っている限り、これらの手続が適切に行われていなかった場合でも、直ちに保険金が支払われないことは通常はありません。ただし、その場合、更に特別な手続が必要になったり、手続に時間がかかったりするなど、不都合が生じることもあります。従って、実際に事故が発生した時に慌てなくてもいいように、共有持分などに変化があった時は、すぐに保険会社に連絡して、手続をとりましょう

それ以外の手続についても、保険会社によっていろいろと手続が異なる場合がありますので、保険会社への問い合わせや専門家への相談を早めにすることをお勧めします。

最終更新日:

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