家賃を滞納している入居者が失踪!行方不明の入居者との契約は解除できる?

家賃滞納 契約解除

家賃滞納をしている入居者が失踪し、家賃の入らない賃貸借契約が残り続けると、オーナーとしては損失にしかなりません。

このような事情があればすぐにでも契約解除したいところですが、明け渡し請求は正式な手続きを踏まなければ認められません。

オーナーが勝手に家財を運び出したりすると、住居侵入罪や損害賠償責任を問われるので注意しましょう。

家賃滞納トラブルや賃貸借契約の解除は、まず不動産問題に詳しい弁護士へ相談することが重要です。

弁護士なら、適切な交渉と法的措置で不動産問題を解決できます。自分や物件の状況を整理した上で、無料相談を受けて弁護士のアドバイスを聞いてみましょう。

ステップ1:連帯保証人や緊急連絡先に問い合わせる

連帯保証人
まずは、連帯保証人にコンタクトを取ってみましょう。連絡が取れれば、家賃滞納と失踪の現状を伝えると共に、入居者の居場所に心当たりがないかどうか確認します。

連帯保証人になっている人は入居者の親族や親しい友人など、入居者と近い関係にある人物のはずです。入居者が連帯保証人のもとに身を寄せている可能性も、十分考えられます。連帯保証人へ連絡がつかない場合は、緊急連絡先に連絡してみます。緊急連絡先もだめであれば、勤務先などに連絡を入れることもできます。

なお、入居者が失踪する前でも、家賃を滞納し支払いの催告に応じてくれない時点で、連帯保証人に連絡することは可能です。いざとなると、連帯保証人に家賃の催促をすることは気が進まないと感じる大家さんもいますが、連帯保証人への連絡は早めに行うのが賢明です。

入居者自身も、連帯保証人に家賃滞納の事実を知られたくない、迷惑をかけたくないという思いを持っていることが多いです。連帯保証人に連絡が行ってしまったと分かると、すぐに家賃を支払ってくれる入居者も少なくありません。連帯保証人への連絡は、ためらわず速やかに行いましょう

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連帯保証人への攻撃的な態度はNG

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確かに連帯保証人は入居者とほぼ同じ責務を負ってはいますが、家賃滞納や失踪に関しての責任はおそらく無いことでしょう。それに、連帯保証人に行って欲しいことは滞納家賃の弁済だけではないはずです。契約の解除に関する手続きや物件内の片付けなども、連帯保証人が代行してくれるなら非常にスムーズに進みます。大家さんが多くの時間をかけて裁判所に通ったり、高額な費用を捻出する必要もなくなるのです。

ですから、連帯保証人には威圧的に接するのではなく「申し訳ないが協力して欲しい」という姿勢で、お願いするようにしましょう。なお、滞納された家賃を全額回収したいのであれば、連帯保証人に弁済してもらう他に期待できる方法はありません。その意味でも、連帯保証人には丁寧に接することが大切です。

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ステップ2:支払い催告兼解除通知の送付

家賃の滞納期間が3カ月以上になり、入居者からの支払いの意思も見えない場合は、支払い義務の不履行を理由に賃貸借契約を解除することが可能になります。

手始めに、家賃の支払いを催告する内容の書面を入居者へ送付しましょう。期限を定めた上で、期限内に支払いが無い場合は賃貸借契約を解除するという内容を明記しておきます。書面を送付する際には、必ず内容証明郵便を利用しましょう。内容証明郵便とは、誰が・誰に・どのような内容の書面を送ったのかを、日本郵便が証明してくれる郵便物です。

内容証明郵便は、裁判の際にも証拠として提起することが可能なものです。さらに、多少なりとも第三者が関与していることを知って、受け取った相手には心理的な圧力がかかります。

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失踪している入居者へは「公示による意思表示」を

内容証明郵便の記載内容は、相手が郵便を受け取った時点で相手に伝わったものとみなされます。しかし、相手が行方知れずの入居者であれば、居所が分からないので郵便物を出すこともできません。このような場合には、公示による意思表示(公示送達)を裁判所に申し立てましょう。この手続きは、自分の意思を示したい相手の住所が分からなかったり、相手が誰なのかが分からないような場合に、確かに相手に意思を示したと認めてもらうためのものです。

行方不明の入居者について申し立てる場合は、行方不明になる直前の住所を管轄する簡易裁判所へ申し立てましょう。申立の際には必要書類として、返送されてきた郵便物が必要です。手元になければ、直前の住所宛てに一度内容証明郵便を送り、戻ってきたものを提出することになるでしょう。

申請内容や書類に不備がなければ、公示送達の許可が下ります。その後、申し立てた簡易裁判所の掲示版と、区役所の掲示板へ申し立てた内容が掲示されます。区役所掲示板に掲示された日から2週間が経過すると、相手に意思表示されたものとみなされます。そして、内容証明郵便などで定めていた期限内に滞納分の家賃の支払いがなければ、賃貸借契約解除の効力が発生し、ようやく次のステップに進めます。

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ステップ3:建物の明渡訴訟、および滞納された家賃の請求訴訟をする

明渡訴訟
行方不明になっている入居者が公示を確認し、自ら物件を明け渡してくれるなら、ここから先のステップは不要です。しかし、そのようなケースはほぼありません。そこで物件を明け渡してもらうために、明け渡しの訴訟を起こすことになります。ここからは、判決を得るまでの流れをご紹介します。なお同時に滞納分の家賃について支払いを求める訴訟を起こしておくことも得策です。

1.訴状の提出

明渡訴訟の訴状は、地方裁判所または簡易裁判所へ提出します。どちらの裁判所を選ぶかは、訴額(争点になっている金額)が「140万円」を超えているか、いないかで決まります

一般の訴訟においては、140万円以下の訴額について争う場合は簡易裁判所140万円超なら地方裁判所とするのが原則です。ただし今回考えているように、家賃滞納による明け渡しなど不動産関係の訴訟については、訴額が140万円以下であっても地方裁判所へ訴状を提出できます。なお原則として、被告(入居者)の住所を管轄する裁判所に提訴することになりますから、入居者の失踪直前の住所を管轄する裁判所に訴状を提出しましょう。

2.被告への訴状送付・答弁書の返送

訴状が裁判所に受理されると、裁判所の書記官から被告となる入居者へ訴状が送付されます。本来であれば、訴状を受け取った被告は答弁書を裁判所に返送するべきなのですが、相手が失踪した入居者の場合は、訴状を受け取る可能性もほぼありません。ちなみに、万が一答弁書が提出された場合には、原告である大家さんへも答弁書が送られてきます。

3.第一回口頭弁論期日

訴状や答弁書のやり取りの後、裁判所は第一回口頭弁論の期日を定め、被告と原告に裁判所へ出頭するよう「呼出状」を送付します。

口頭弁論とは読んで字のごとく、裁判官の面前にて口頭で自分の主張を弁明したり、反論したりすることを言います。口頭弁論はどんな訴訟でも必ず開かれるもので、判決を下すために必要不可欠な段階です。

一般の訴訟では、被告はすでに提出した答弁書に基づき、原告の陳述を認めるか反論するかを述べます。裁判官は提出された証拠と弁論の内容を踏まえ、訴状の内容の当否や、被告と原告の主張はどちらが正当かを判断します。口頭弁論は、必要があれば第二回、第三回と繰り返されます。

失踪している入居者の場合は、呼び出し状を受け取ることもないでしょうし、口頭弁論に出頭してくる可能性もほぼありません。被告が欠席しても裁判は進むので、心配は要りません。欠席は何の反論もないことの表れとみなされるため、即結審で大家さんの訴えが認められることもあります。

4.判決

家賃滞納の期間が3カ月以上で入居者が行方不明の場合、よほどの理由がなければ大家さんの訴えは認められます。判決の言い渡しは、公開法廷での裁判長の主文朗読によって行われます。

判決の正本は、被告と原告双方に送られます双方が判決内容に異存のない場合は、正本を受け取ってから2週間後に判決確定となります。勝訴判決が下されれば、賃貸借契約の解除と物件の明け渡しは正式に認められたことになります。しかし、判決の内容が裁判所によって自動的に実現されるわけではありません

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ステップ4:建物明け渡しの強制執行の申立

勝訴後、行方不明の入居者に連絡が付き、判決の内容や物件の明け渡しについて伝えることができれば、入居者が自主的に物件を明け渡してくれる可能性もあります。しかし中には、判決などまったく意に介さない人もいます。そのような状況であれば、大家さんが行動するしかありません。行動すると言っても、大家さん自らが部屋に入って荷物を処分して良いのではありません。強制執行の申立をするのです。

強制執行とは、権利を持つ人の権利内容を国家機関が強制的に実現させる手続きのことです。家賃滞納者の失踪に悩む大家さんの場合は、裁判所や執行官などの執行機関によって入居者を物理的に追い出し、財産を差し押さえ、財産を競売にかけてお金に換えることで権利を実現することになります。

強制執行を申し立てるために必要な書類は、以下の3つが基本となります。

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1.債務名義

「強制執行を実行して良い」という許可を与える、公的な文書のことです。確定した判決や、仮執行宣言付きの判決、和解調書などが債務名義に相当します。

2.執行文

強制執行が可能な状態であることを、公に証明する文書です。これは、債務名義のみで強制執行に移ることのないよう設けられたものです。債務名義となる判決や調書が作成された後に、債務者である入居者の状況は変化しているかもしれません。

例えば、すでに死亡しており、子供などが家賃滞納の事実を知らないまま相続している可能性もあります。そのような状態で債務名義だけを基に強制執行してしまうことは、不条理と言えるでしょう。執行文は、債務名義の効力が現在も変わらず、強制執行がふさわしいことを確認するために必要な存在になっています。

3.送達証明書

入居者には、あらかじめ債務名義を示す文書を送っておく必要があります。そうして初めて、執行機関は強制執行の手続きを開始できます。債務者へ確かに送達がなされたことを証明するのが、送達証明書という書類です。相手が行方不明の場合は、内容証明郵便のところで扱った「公示送達」を利用することになるでしょう。

必要書類を揃えて申立を済ませると、まず執行官との面談が行われます。強制執行を希望する物件の場所や入居者の情報などを説明し、明渡催告期日を決めます。明渡催告期日とは、執行官が現地に訪問して入居者に明け渡しを予告したり、現状を調査するための日です。

なお、物件内に荷物が残っている場合は大家さんが自分で業者の手配をすることもできますし、執行官からの紹介を受けることも可能です。ただ、執行官の紹介というだけで、特別に安い料金で請け負う業者を紹介してくれるわけではないようです。執行官が紹介する業者は執行補助者と呼ばれ、明渡催告期日に執行官に同行します。

明渡催告期日は通常、申立の日から2週間以内に設定されます。当日、執行官は電気メーターなどを見て居住実態があるか確認した上で入居者を呼び立て、在宅していれば、物件の明渡期限までに物件を明け渡すよう勧めます。居留守または不在であっても、開錠して入室し、大家さんが持つ合鍵が使用できない場合には、錠前業者を呼んで強制的に開錠させる必要がありますので覚えておきましょう。

執行補助者が選任された場合には、執行官と一緒に部屋の中の荷物を確認し、運び出しにかかる費用を見積もります。その後、強制執行の断行日を記載した書面を物件内に貼り付けます断行日とは、強制執行を実行する日のことです。先ほど述べた明渡期限と断行日は同じではなく、通常は明渡期限の数日前に断行日が設定されることになります。なお、明渡催告期日の時点でほとんど荷物が残されていない場合には、執行官の判断により明渡が即時に完了したものとされることもあります。

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ステップ5:強制執行

強制執行
強制執行の断行日までに入居者が明け渡してくれなかった場合は、強制執行が実行されます。大家さん任意の業者、または執行補助者が入室し、荷物の運び出しを行います。運び出された荷物は、その後1カ月間保管されます。その間に入居者が引き取りに来ない荷物は、1カ月経過後に競売にかけることが可能です。

金銭的価値のある荷物があれば、多少は大家さんの負担を抑えることができるでしょう。なお、支払い催告通知や公示による意思表示から、強制執行の実行までにかかる期間は、どんなに短くても半年は見ておいた方がよいでしょう。

強制執行は最終手段!できるだけ早い段階での任意明渡を目標に

強制執行の完了により、ひとまずは心機一転、新しい入居者を募集できる状態になります。大家さんとしても、やっと厄介な問題から解放されたことになるでしょう。

しかし強制執行を断行するとなれば、申立に必要な予納金、部屋の中の荷物を運び出すための費用などをすべて大家さんが支出しなければなりません予納金の相場は約6万~7万円ほどです。荷物の運び出しは引っ越しと同様の作業が必要ですから、ワンルームタイプの部屋でも安くて3万~5万円、荷物が多ければ10万円以上の費用がかかることもあります。ただでさえ長期間家賃を滞納された上、これほど高額な負担がのしかかるのでは散々でしょう。

失踪している入居者にとっても、自分にすべての非があるとは言え、荷物を一つ残らず処分されてしまうのは辛いことかもしれません。ですから、出来る限り強制執行を実行しなくても良いようにするのが、入居者にとっても大家さんにとっても最善の道です。ありとあらゆる手を尽くし、強制執行以外の方法で、早期に明け渡してもらえるよう努めましょう

大家さんが実力行使に出ることは厳禁

賃貸借契約を結んでいる以上、入居者は期日までに家賃を支払う義務を負っています。基本中の基本である家賃の支払い義務を怠ることは、重大な契約違反とも言えるでしょう。その上失踪するという行為は、極めて悪質で許されないものです。

それでも、大家さんが実力行使に出ることはできません。部屋にある荷物を処分してカギを変え、問題の入居者を追い出してしまいたいと思っても仕方ありませんが、それでは自分の首を絞めることになります。

日本では、「自力救済」が禁止されているためです。自分の物を盗んだ相手に暴行を加えて取り返したとなれば、傷害罪という犯罪になってしまうように、自分の権利が侵害された際に自分で対処することは許されていません。必ず、しかるべき法的手続きを踏んで解決しなければならないのです。

そのようなわけで、入居者にどれほど落ち度があったとしても、大家さんが無断で部屋に入ったり荷物を勝手に処分したりしてしまうことは自力救済にあたり、法に反することになります。むしろ大家さんの方が住居侵入罪で訴えられたり、損害賠償責任を問われる可能性もあるので、よくよく注意しましょう。

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ただの不在か、失踪か、トラブルかを見極める

基本的なことですが、家賃を滞納している入居者が本当に失踪したのか、それとも別の原因で一時的に不在なだけなのかを、きちんと見極めてから行動するようにしたいものです。

冒頭で、信頼関係の破壊とみなされる目安は3カ月以上の家賃滞納という説明をしました。もし滞納期間が1カ月程度なのであれば、もう少し様子を見るべきかもしれません。物件の様子に特に異変がなければ、仕事や旅行で海外に出かけているだけかもしれません。直近の家賃の入金を、うっかり忘れてしまっただけの可能性もあります。どうしても心配であれば、緊急連絡先や勤務先に問い合わせて確認することもできます。

要注意なのは、何年も遅れることなく家賃を支払ってくれていたのに、突然滞納が始まった入居者です。外で事件や事故に巻き込まれている可能性もありますし、急病で入院していたり、部屋の中で倒れていることも考えられます。連帯保証人や緊急連絡先にあたってみるだけでなく、ポストに郵便物が異常に溜まっていないか、最近人が出入りした様子があるか、おかしな音や臭いがしないかなど、部屋の外からでも分かる異変がないかを確認しましょう。

緊急時には、民法698条に基づき開錠できる

ただちに安否を確認した方が良い状況であれば、大家さんが合鍵で部屋に入ることが許される可能性もあります。これは次のように民法で認められている権限です。

民法第698条「緊急事務管理」
管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。

この条文を平易な表現で説明すると、他人の財産や生命に危害が及んでいる場合や危害が迫っている場合、危害から救うためにある人が取った行動によって何かの損害が発生したとしても、その人に悪意や過失がない限り賠償責任を負う必要はないという意味合いになります。

一例として、火の手が上がっている家の中に人がいることが分かっているが、中の人を助けるためにはドアや窓を破壊して侵入するしかない状況があるとします。平常時であれば、他人の家の一部を破壊することは当然犯罪です。しかし今は破壊しなければ、中の人の命が失われるかもしれない状況です。この場合、人命が何よりも優先されることは当然のことです。火の中から救出された人も、助けてくれた人が家の一部を破壊したことに対して責任を追及し、賠償を求めるようなことはないでしょう。

大家さんの場合も、外から様子を伺っただけで緊急事態だと判断できるケースに遭遇することがあります。外観がひどく荒らされていたり、ドアや窓が開いたままだったり、異臭がひどい場合には、トラブルや事件を予期して早急に開錠すべきでしょう。なお、緊急性があるような場合でも、できるだけ警察官の立ち合いのもと開錠するようにしましょう。後々問題になった時、確かに緊急時であったことを証明してもらえるからです。

まとめ

家賃を滞納した入居者が失踪したケースは、解決するまでの道のりが長いうえ、円満な仕方で解決するのが非常に難しい事案です。経済力と責任感のある連帯保証人がいれば早期解決が見込めますが、そうでなければ大家さんは自分の時間とお金を使い、面倒な法的手続きをいくつも繰り返しながら少しずつ解決に向かわなければなりません。また、いくら悪質な入居者だったとしても、大家さんがしてはいけないこともたくさんあります。本来は被害者であるはずの大家さんが、何らかの罪に問われてしまう可能性があるのです。

早くから賃貸トラブルに精通している弁護士に相談しておくなら、解決までの最短ルートを行くことができるでしょう。大家さんの精神的・金銭的負担をできるだけ抑えて解決に至るよう、弁護士は経験や知識をフルに活用して業務にあたります。弁護士を通すことは、思わぬ危険に遭遇しないためにも効果的です。


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