
相続で取得予定・取得済みの土地で、使わないから処分したいと思っている土地がありませんか。
そのまま売却できるに越したことはないですが、売却が難しい土地もあります。
そこで、この記事では「売却以外の処分方法」についても説明します。
また、処分できない場合に再検討したい土地活用の方法についても紹介しますので、これから土地を処分する手続きを進める際の参考にしてください。
いらない土地を所有し続けるデメリット
「処分が難しいなら、とりあえずそのまま持っていよう」
そのように思われるかもしれません。
しかし、下記のようなデメリットがあることを把握しておいてください。
- 固定資産税がかかる
- 維持管理の義務がある
- 損害賠償を請求される恐れがある
- 次の世代にまで問題を残してしまう
いらない土地を所有し続けると無用なトラブルを引き起こす恐れがあることに注意が必要です。
各デメリットについてひとつずつ説明します。
固定資産税がかかる
土地は所有しているだけで固定資産税がかかります。
税額は、固定資産税評価額に税率1.4%を掛けた金額で、土地の評価額によって異なりますが、もしも評価額1,000万円であれば14万円の固定資産税です。
使っていない土地のために支払う金額としては大きな負担ですよね。
維持管理の義務がある
土地を使っていないからといって放置してよいわけではありません。
所有者には土地を適切に維持管理する義務があります。
土地をほったらかしにしていると、雑草が生えて害虫が発生し、近隣から苦情を受ける恐れがあります。
そのほか、敷地内に廃棄物を不法投棄されたり、放火される恐れもあります。
雑草の除去や不法投棄を防ぐ柵を設置するなど、維持管理の手間が欠かせません。
損害賠償を請求される恐れがある
土地を放置した結果、発生した害虫が近隣に被害を及ぼしたり、廃棄物に放火されてけが人を出すと、損害賠償請求される恐れがあります。
さらに土地が斜面で、台風や大雨で土砂崩れが発生すると、周囲に大きな被害を及ぼします。
自然災害ではありますが、土砂崩れが適切な管理をしていなかったことが原因とされる場合には、損害賠償の責任を免れません。
また、第三者に不法投棄された廃棄物の撤去を土地の所有者に求められるリスクもあるので注意が必要です。
参照:損害賠償関係(法テラス)
次の世代にまで問題を残してしまう
あなたが亡くなって相続が発生すると、原則、その土地は配偶者や子どもなどの相続人へ相続されます。
土地を処分していなければ、そのまま問題を引き継ぐことになります。
生前のうちに処分し、懸念材料は取り除いておきましょう。
いらない土地を処分する方法は3つ
いらない土地を処分する方法は3つです。
- 売却する
- 土地がほしい人や団体に寄付する
- 相続放棄する
一般的には最初に「売却」による処分を検討し、売却が難しければ「寄付」を考えます。
相続前であれば「相続放棄」で土地を取得しない方法もあります。
また、2023年4月27日からは「相続土地国庫帰属法」施行により、一定の要件を満たせば、相続後でも所有権を国に返せるようになります。
売却する
1つ目は「売却」です。
売却できれば、土地を所有し続けるデメリットはなくなり、まとまったお金も得られます。
そのため、いらない土地を処分したい場合には「売却」を考えましょう。
最初は不動産会社に査定を依頼し、売却できそうな価格を出してもらいます。
その金額を参考に売出価格を決め、買主を探してもらいます。
土地がほしい人や団体に寄付する
売却査定で「この土地は売れません」と不動産会社に断られたり、売却活動しているものの全く購入希望者が現れない場合には「寄付」による処分も考えましょう。
寄付先となるのは土地がほしい人や団体です。
- 自治体
- 個人
- 法人
以下で詳しくみていきます。
自治体へ寄付
「寄付」と聞いた際に、真っ先に思い浮かぶのが「自治体への寄付」ではないでしょうか。
固定資産税は市町村から課税されているので、不要な土地でも市町村なら寄付を受けてくれるように思います。
しかし、実際は自治体が寄付を受けることはめったにありません。
固定資産税は市町村にとって収入源の1つです。
土地の寄付を受け付けるということは、収入が減ることにつながります。
そのため、寄付を受けてくれるのは基本的に、土地の活用手段が市町村で明確になっている場合です。
具体的にどのような土地であれば寄付を受け付けているか、自治体の担当者に確認してみてください。
個人へ寄付
次に個人への寄付です。
その土地をほしがっている人であれば、相手が誰でも問題はありません。
しかし、売却が難しい不要な土地を無料でもらえるからといって、ほしい人はそうそういません。
もらったところで活用できないリスクが大きいからです。
ただし、個人でも隣地の所有者であれば、話は別です。
隣地の所有者であれば、土地をもらうことで自分の敷地面積が広くなります。
すでに持っている土地とひとまとめにすれば、有効活用しやすいので、受け取ってくれる可能性が高いです。
なお、個人へ寄付する場合には「寄付された側」に贈与税がかかります。
法人へ寄付
寄付先として「法人」も選択肢のひとつです。
法人は「事業用」や「保養用」として、個人とは異なる需要があります。
そのため、個人では寄付先が見つけられなかったとしても、法人が相手であれば寄付できる可能性があります。
寄付先としては、株式会社や合同会社などの営利法人よりも、公益財団法人や一般財団法人、NPO法人などの非営利法人のほうが、可能性が高いです。
例えば、不動産の寄付を受けている法人として「一般財団法人あしなが育英会」や「NPOカタリバ」があります。
なお、後ほど説明しますが、法人へ寄付する場合には「寄付した側」に税金がかかるので注意してください。
相続放棄する
いらない土地を処分する3つ目の方法は「相続放棄」です。
相続が発生する前に、すでにいらない土地が相続財産に含まれることがわかっていれば、相続放棄の選択肢も考えておきましょう。
相続放棄すると、土地だけでなく、被相続人のそのほかの財産すべてを放棄しなければなりません。
そのため、相続で得られるはずの財産と、土地を所有し続けることで発生する固定資産税や維持管理費などを考慮し、どちらの方がメリットが大きいかをシミュレーションしましょう。
なお、相続放棄しても、ほかに相続人がいない場合にはあなたに「管理義務」が課せられ、土地を適切に維持管理し続ける必要があるので注意してください。
2023年4月27日からは「相続土地国庫帰属法」で国に返すことが可能になる
これまでの土地を処分する方法は上記3つでした。
ここに、2023年4月27日からは新しい選択肢が追加される予定です。
それが「相続土地国庫帰属法」にもとづいて国に返す方法です。
基本的には「相続によって取得した土地の所有権」が対象の制度です。
ただし、上記を満たすすべての土地が認められるわけではなく、一定の要件が定められています。
細かく決められていますが、簡単にいえば「抵当権やその他使用収益を目的とする権利の設定がなく、国に返されれば特別な対応なくすぐに建物の建設に使用できる更地」です。
また、費用がかかる点にも注意が必要です。
詳しい手続きは、自治体に確認してください。
土地を処分する際にかかる費用
いらない土地でも、無料で処分できるわけではありません。
下記のような費用がかかります。
- 所有権移転登記費用
- 譲渡所得税(法人への寄付の場合)
とくに「法人への寄付」の場合、お金を一切もらっていないにもかかわらず「寄付した側」に譲渡所得税が課税されることに注意してください。
所有権移転登記費用
「売却」でも「寄付」でも所有権が相手に移ります。
所有権が変わるので、登記事項を変更する必要があり、そのための費用が「所有権移転登記費用」です。
内訳は以下のの2つです。
- 登録免許税
- 司法書士報酬
なお、登録免許税は原則「買主」もしくは「寄付先」が負担します。
ただし、処分した土地に抵当権が設定されていた場合、抵当権抹消にかかる登録免許税は売主負担です。
登記を司法書士に依頼した場合は、数万円の報酬を支払う必要があります。
譲渡所得税(法人への寄付の場合)
前にも少し説明したように、法人へ寄付した場合には譲渡所得税がかかる恐れがあります。
「無料で土地を寄付したのに、なぜ寄付した側にかかるのか」と疑問に感じると思います。
課税される理由は、法人への寄付は「時価で譲渡があったとみなされて譲渡所得が計算される」からです。
この所得は一般的に「みなし譲渡所得」といわれます。
例えば、取得費500万円で、時価1,000万円の土地を法人に寄付したとします。
この場合、差額の500万円が「みなし譲渡所得」として課税対象です。
なお、寄付先が公益法人の場合で「教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する」など一定の要件を満たしていれば非課税となる場合があります。
法人へ寄付する際には、譲渡所得税が課税される可能性を考え、非課税の承認を受けられないかもあわせて考えておきましょう。
参照:公益法人等に財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例のあらまし(国税庁)
土地を処分する際の注意点
いらない土地を処分する際には、費用がかかること以外にも、下記のような注意点があります。
- 境界の確定は必須
- 農地は農家にしか売却できない
- 相続放棄は相続を知ってから3ヶ月以内の期限がある
これらの注意点を押さえていなければ、計画どおりに処分できない恐れもありますので、しっかり把握しておきましょう。
境界の確定は必須
「売却」「寄付」にかかわらず、土地を処分する際には、境界の確定は必須です。
処分を考えたらまず、土地の「境界確認書」もしくは「境界確定図」があるか確認します。
どちらもなければ、境界確定測量を土地家屋調査士に依頼する必要があります。
境界確定には50万円以上の費用と3ヶ月程度の期間がかかることが一般的です。
隣接地所有者との話し合いがスムーズに進まなければ、もっと時間がかかる恐れがあります。
ある程度、資金的にも時間的にも余裕を持って進めましょう。
農地は農家にしか売却できない
処分したい土地が「農地」だった場合、法律による制限を受け、農家にしか売却できません。
農地のまま処分しようとすれば、処分先は限られるので注意が必要です。
また、農家以外に売却したい場合には、農地を「転用」できるかがポイントです。
転用するには、その地域を管轄する農業委員会に申請する必要があります。
許可されてはじめて農地以外の利用が認められます。
相続放棄は相続を知ってから3ヶ月以内の期限がある
相続放棄には「相続を知ってから3か月以内」という期限が定められています。
相続手続きの「3ヶ月」はあっという間です。
相続放棄するか迷っているうちに3ヶ月は過ぎてしまいます。
そして、もしも期限を過ぎた場合には原則、いらない土地でも相続しなければなりません。
相続が発生する前からどうするか考えておくと、相続が実際に発生した際でも慌てず、落ち着いて判断できます。
土地を処分できない場合は土地活用を再検討する
ここまでいらない土地を処分する方法や注意点について説明してきました。
土地の「処分」とは、土地が消えてなくなるわけではありません。必ずその土地を受け取ってくれる「人または団体」が存在します。
そのため、誰も受け取ってくれなければ土地を処分できません。
そのような場合には、いらない土地を以下に挙げるような方法で活用できないか再検討してみてください。
太陽光発電
太陽光発電は広い田舎の土地でおすすめする活用方法です。
アパートやマンション、駐車場のように契約者を集める必要がありません。
賃貸需要が少ない地域でも始めやすいです。
周囲に太陽光を妨げるような高層の建物がなく、自然災害の恐れもなければ、太陽光発電に向いている土地と判断できます。
資材置き場
近隣に建設や土木工事の業者がある場合に検討したい活用方法です。
資材置き場は原則、建物不要で初期投資なくはじめられます。
また、近くで大規模な工事がおこなわれていれば「工事期間中だけ貸し出す」という使い方も可能です。
大きな収益は見込めませんが、長期契約できれば、固定資産税以上の収入は得られます。
土地を管理する必要もなくなるので、いらない土地と考えればメリットは大きいといえるでしょう。
トランクルーム
トランクルームは個人や法人の荷物を保管するスペースを提供する事業です。
季節外れの衣服や使う予定がない家具・家電、法人の事務機器などを預ける目的で利用されています。
トランクルームは、アパートやマンション経営に向かない狭小地や変形地でも経営できることがポイントです。
売却できない土地でもトランクルームとして活用できる可能性があります。
ただし、立地によっては用途地域の制限を受けてトランクルーム用の建物を建築できない恐れがあります。
トランクルーム経営を始める場合には、専門の不動産会社に相談しましょう。
戸建賃貸
周りが住宅地であれば、戸建賃貸として活用する方法も検討してみてください。
アパートやマンションの建設が難しい狭小地や変形地でも戸建住宅であれば建てられる可能性があります。
戸建賃貸は通常、入居期間が長い傾向にあるので安定した収益を得やすいです。
また、住宅を建てれば固定資産税の軽減措置を受けられて、税負担を減らせる点もメリットです。
サービス付き高齢者向け住宅
田舎や郊外にある土地の活用方法として「サービス付き高齢者向け住宅」があります。
「サ高住」ともいわれ、少子高齢化が進む日本では、今後需要が大きくなっていくことが見込まれます。
アパート・マンション経営に向かない郊外でも、サ高住であれば活用できる可能性があります。
広い敷地面積と高額な初期投資が必要ですが、補助金や税制優遇を受けられて、高い収益性を期待できる点がメリットです。
一度「サ高住」にすると転用が難しいので、建築前に不動産会社と相談し、綿密なシミュレーションをしておきましょう。
まとめ
いらない土地を放置しておくと、さまざまなトラブルを引き起こす恐れがあります。
売却が難しければ、寄付やその他この記事で紹介したような土地活用を検討してみてください。
土地活用については、土地活用が得意な不動産会社へ相談することをおすすめします。
また、相続で取得した土地であれば一定の要件を満たすことで2023年4月27日以降は国に返すことができます。
自力での処分・活用が難しければ、相続土地国庫帰属法が施行されるまで適切に管理して、上記制度の利用を目指すのも1つの選択肢です。