
地震リスクの高い日本では、建物を建てる際には一定の耐震基準を満たしていることが法律上義務づけられています。旧耐震基準とは、1981(昭和56)年5月31日まで適用されていた耐震基準です。旧耐震基準は、現行の耐震基準と比べてかなり緩やかな基準となっています。そのため、旧耐震基準で建築された一戸建てやマンションなどは、売却で不利になってしまうことがあります。しかし、古い物件だからといってあきらめる必要はありません。
この記事では、旧耐震基準の一戸建て・マンションを良い条件で早く売却するためのコツについて解説します。
目次
旧耐震基準の一戸建て・マンションが売れない理由
日本で生活する人であれば「地震による建物の被害」は誰もが気になります。当然、古い建物であれば、「大地震が来たら壊れてしまうかもしれない」と不安に感じ、買い手がみつかりづらくなることも容易に想像がつきます。さらに、旧耐震基準の一戸建て・マンションなどの場合、これから解説する3つのデメリットが生じる可能性も高くなります。
住宅ローン減税が利用できない
旧耐震基準の一戸建て・マンションを購入するときには、税金の優遇措置や公的給付金(補助金)を利用することができないため、買主の金銭面での負担が重くなってしまいます。旧耐震基準の不動産では利用できない可能性のある優遇措置・公的給付金には、次のものがあります。
・不動産取得税、登録免許税(登記手続き手数料)の特例(優遇措置)
・すまい給付金
このうち最も影響が大きいのは、住宅ローン減税が使えないことです。住宅ローン減税が使えなければ数百万円分の税金が損となってしまいます。住宅ローン減税の適用を受けるための条件は下記条件のいずれかを満たしていることです。
・耐震基準に適合している
・入居までに耐震基準適合証明書を取得する
参照:国税庁 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)
旧耐震基準(昭和51年以前に建築された)の住宅・マンションでは、売買契約までに耐震改修工事を行う旨の申請をし、入居までに耐震基準適合証明書を取得する必要があるので、買主にとっては大きな手間となります。分譲マンションの場合には、買主の一存で耐震改修工事は行えませんので、打つ手がないこともあるでしょう。

住宅ローンの審査が通りづらい
旧耐震基準の中古住宅・中古マンションを購入する際には、住宅ローンも不利になる場合があります。特に、フラット35は、耐震基準適合証明書の取得がなければ組むことができません。また、他の金融機関でも、旧耐震基準の物件(築年数の経っている物件)であるということで、担保価値が割り引かれ、融資額が少なくなってしまうことがあります。住宅ローンの選択肢が狭くなれば、当然買い手も少なくなってしまいます。
住宅の維持費が高くなる
旧耐震基準の不動産では、購入後の維持費が新築の一戸建て、新築マンションに比べて高くなってしまうこともあります。たとえば、旧耐震基準の不動産の場合には、地震保険の割引が適用されません。特に、東海地震・南海地震といった将来の大規模地震が強く予想されている地域では、地震保険は必須といえますので、保険料負担を気にする買主も多いかもしれません。
また、中古マンションの場合には、築年数の経過と共に、修繕積立金が高くなることが一般的です。多くのマンションでは、「段階増額積み立て方式」と呼ばれる築年数の経過と共に積立金の負担額が増える方式を採用しているからです。中古物件の魅力のひとつである「購入金額の安さ」も維持費が高くなれば帳消しになってしまいます。
旧耐震基準の住宅を早く売る4つのコツ
旧耐震基準の古い一戸建て・マンションでも、売り方に工夫をすれば、早く・高く売却することも不可能ではありません。旧耐震基準の一戸建てやマンションには、「敷地が広い」、「立地や眺望が良い」物件も多く、「旧耐震基準の物件である」という点だけが問題という物件も少なくないからです。以下では、旧耐震基準の一戸建て・マンションの売却価値を高めるための4つのコツを解説していきます。
リフォームプランとセットにして売却する
旧耐震基準の物件は、将来のリフォームを前提に購入を考える買主も少なくないでしょう。とはいえ、よいリフォーム業者を見つけることは、簡単ではありません。
また、売主にとっても、売却前に「耐震基準を満たすためのリフォーム」をすることは、現実的ではありません。リフォームの程度が軽微であれば、譲渡所得税の控除による節税分とリフォーム費用を相殺できますが、節税分でまかなえる程度の工事で済むことはほとんどないでしょう。とはいえ、「買い手を見つける」ことを考えれば、リフォーム費用をそのまま売却価格に上乗せすることも難しいといえます。売却価格が相場額よりも高くなれば、買い手が減ってしまうからです。

リフォームプランとセットにするメリット
そもそも、事前リフォームは、「リフォームの内容が買主のニーズと合致しない」というリスクも内包しています。多額の費用を投じてリフォームした結果、買い手が減ってしまっては意味がありません。
そこで、売主側がリフォームに強い不動産会社と提携して、リフォームプラン付きの中古物件として売りに出すことが考えられます。売り主にとっても、リフォームプランとセットになった中古住宅・中古マンションの販売は次の点でメリットがあります。
・リフォーム・耐震補強工事のための補助金申請も業者にサポートしてもらえる
・マンション管理組合とのやりとりをサポートしてもらえる
中古マンションはリノベーションで生まれ変わる
最近の中古マンションは、「リノベーション」を行う購入者が増えています。リノベーションとは、簡単にいえば、リフォームよりも大規模・包括的に行われる改修のことです。
リノベーションは、「立地は良いが仕様が古くて使い勝手が悪い」という中古マンションの大きな欠点を解決し、居住用財産としての資産価値を大幅に高めることのできる非常に優れた手法です。たとえば、マンションの壁をすべて取り払い、いわゆるスケルトン状態にして大規模な修繕を行えば、「リビングや浴室を広くしたい」、「子供部屋を確保できる間取りに変えたい」といった買い手のニーズに応えることも可能となるからです。
個人で建て替えることのできない中古マンションは、リノベーションが普及したことで、仲介市場もかなり活性化されたといえます。リフォームに強い専門の不動産会社と提携することができれば、物件の条件に見合った様々なリノベーションプランを買主に提案することができます。「古い中古マンションは、再建築できる一戸建てとは違って安くしか売れない」とあきらめる必要はありません。
インスペクションを受けておく
インスペクションとは、建築士などの専門家(第三者)による住宅の劣化・欠陥などの調査のことをいいます。住宅診断、建物検査、建物現況調査といった呼称が用いられることもあります。旧耐震基準の物件の買い手には、「古い建物で本当に大丈夫か」という不安があります。売買に先だって、「建物の瑕疵(かし)の有無」、「今後の修繕見通し」をプロの視点で調査・確認してもらい「買主が将来負担するリスクを明確にする」ことは、買主の不安を和らげるための工夫として非常に有効です。
また、診断の結果、「建物の強度に問題がない」ときには、物件を売りに出す前に、売主側で耐震基準適合証明書を取得しておくことも、早く、高く売却するための有効な方法といえます。耐震基準適合証明書があれば、買主にとっても、住宅ローン控除、住宅ローンの融資条件などについての心配をする必要がなくなるからです。

建物を解体して更地にする
一戸建ての物件の場合には、老巧化して価値のなくなった建物を解体し、更地にすることで買い手が見つかりやすくなることがあります。旧耐震基準の住宅は、古くから市街地となっている利便性の高い地域の物件も多いので、建物がなくなったことで、物件の魅力が増すことも考えられるからです。ただし、更地売却の場合には、相場の土地価格のみで売却するのが通常なので、解体費用を売却額に上乗せするのは難しいと認識しておくべきです。
また、物件のある地域、土地の状況によっては、解体後は建物の再建築が困難となることもあります。再建築の可否を判断するために、地盤の調査を行う必要があるケースも考えられます。費用をかけて更地にしたことで逆に売れなくなってしまったのでは、大損害がでてしまいます。更地にして売却しようと考えるときには、解体工事を行う前に、旧耐震基準物件の取扱いになれている不動産会社に相談しておいた方がよいでしょう。

専門業者に買取りをしてもらう
物件を「とにかく早く売却したい」という事情があるときには、専門の不動産会社に買い取ってもらうことも有効な選択肢です。業者への買取りを利用すれば、リフォーム業者を探す、鑑定を依頼する、更地にするための工事を行うといった売却に必要となる大きな手間は一切不要です。
さらに、物件を現況のまま引き渡すこともできます。相続した物件の後始末が面倒という場合には、買取りはとても便利です。また、専門業者であれば、再販売のノウハウをきちんと備えているので、一般的な不動産仲介会社よりも高い査定価格を示してもらえる可能性が高くなります。
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旧耐震基準の住宅を売らずに放置する3つのリスク
相続などで取得した一戸建て・マンションを売却せずにそのまま放置しておくと、物件を保有するためのコストが高くなります。さらに、旧耐震基準の古い建物を放置しておけば、これから解説するような3つの重大なリスクを抱える可能性も高くなります。
地震による倒壊リスク
日本で暮らしている以上、大地震被害のリスクは回避できない難しい問題です。旧耐震基準の不動産は、近年の地震でよく見られるような大きな揺れには耐えられない可能性が高いです。旧耐震基準が定められたときには、震度7に達するような規模の地震が頻発することは想定外だったからです。現行の耐震基準が「震度6~7程度の地震でも倒壊しない」ことを基準としているのに対し、旧耐震基準は、震度5規模の地震へのチェック機能しか有していません。したがって、耐震基準ギリギリの建物であれば、震度6強から震度7クラスの地震では倒壊してしまう確率がかなり高いのです。
参照:国土交通省 建築基準法の耐震基準の概要

空き家を所有し続けるリスク
使用する予定のなくなった空き家を放置することは、次のようなリスクがあります。
・屋根や壁などが崩壊したことで他人に損害を発生させるリスク
・犯罪行為に巻き込まれるリスク(空き巣・放火・犯罪者のアジト化)
・ホームレスなどが住み着くリスク(20年占有され続ければ不動産を失うことも)
・「特定空き家」に指定されることによる固定資産税増加のリスク
特に、土地の工作物が原因で他人に損害を与えてしまったときには、土地の所有者には「無過失責任」が生じます(民法717条)。したがって、「仮にきちんと管理していた」という場合でも賠償責任は免除されません。損害保険(施設賠償責任保険・特約)に加入していなければ、多額の損害賠償のために自己破産に追い込まれることもあるかもしれません。
参照:総務省 民法717条
また、物件を空き家のまま放置してしまったことが原因で、自治体から「特定空き家」として指定されると、固定資産税が6倍に跳ね上がってしまう可能性があります。空き家問題への対応は、国の重要な政策課題とされています。今後、法律が改正されるだけでなく、新しい制度が作られることによって、さらに厳しい対応を求められることも十分に考えられます。

中古住宅は今後さらに売りづらくなる
中古不動産は、売却時期が遅くなるほど、居住用財産としての価値が損なわれていきます。日本人は、新築物件へのあこがれも大きいので、中古物件は耐震基準とは関係なく不利な物件といえます。特に、現在の日本では、人口の減少が進んでいることから、物件の供給量が需要を大きく上回るようになることも考えられます。供給過多の状態になれば、「売りたくても買い手が全くみつからない」状況になってしまうことも考えられます。「売れないから」という理由で、使用する予定のない不動産を放置すれば、不動産が「負動産化」し、将来財産を相続する子などにも大きな負担をかけてしまいます。
まとめ
旧耐震基準の住宅でも、買手にとって魅力的な工夫を講じることで、早く・高く売却することは可能です。中古の一戸建て・マンションを少しでも良い条件で売却するためには、中古物件売却に特化したノウハウのある専門業者に相談・依頼するのが一番良いでしょう。
当社は、旧耐震基準の不動産の売却実績が豊富です。旧耐震基準の物件の売却については、下記のお申し込みフォームからお気軽にお問い合わせください。
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