
相続によって兄弟姉妹や、その他の親族と所有することになった共有不動産を「維持費だけ払い続けることがもったいないから、売却してまとまったお金に変えるか、賃貸物件にして活用したい」と、考えている方もいるでしょうか。
この記事では、共有不動産を売却するか賃貸に出すかの判断ポイント、それぞれのメリット・デメリット、手順と費用などを解説していきます。
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目次
共有不動産を「売却」or「賃貸」にするかの判断ポイント
共有不動産を売却するか賃貸にするか、迷ったときは以下の3つのポイントから判断するといいでしょう。
それでは順番に解説していきます。
1.「売却」と「賃貸」、それぞれに同意している共有者の割合
共有不動産を売却するときには、共有者全員の同意が必要です。
それに対して、賃貸にする場合は、過半数の共有者が同意すれば、賃貸契約を結べます。
ただし賃貸は建物であれば3年以上、土地であれば5年以上の賃貸は、共有者全員の同意が必要です。
あとから詳しくお伝えしますが、共有不動産を売却するデメリットはほとんどありません。
もし、共有者全員が売却・賃貸どちらでもいいということであれば、売却する方がいいでしょう。
2.「売却」と「賃貸」で得られるそれぞれの収入
賃貸に出して入居者が決まると継続的に家賃収入を得られ、売却すると一度にまとまったお金を手に入れられます。
そのため、売却したときに得られる収入が、賃貸の何年分に当たるかも判断のポイントです。
売却しても家賃収入の2~3年分にしかならないのであれば、賃貸に出したほうが金銭的なメリットは大きいかもしれません。
3.共有不動産を共有者が自宅にする可能性とその時期
共有不動産を今後、共有者の誰かが自宅として使用する可能性があるかどうかもポイントです。
はっきりといつから自宅として利用すると決まっている場合は、定期借家として更新なしの期間が決まった賃貸物件にするといいでしょう。
もし、自宅にする可能性も曖昧だったり、自宅にするにしてもその時期が未確定だったりする場合は、売却する方がよいです。
共有不動産の状態は様々なトラブルを引き起こす可能性が高いので思い切って売却して、新しい住宅を単独所有することをおすすめします。
賃貸にするメリット・デメリット
賃貸にするメリット・デメリットを解説します。
賃貸にするメリット
共有不動産を賃貸にするメリットは、家賃として継続的な収入を得られることです。
特に戸建ての場合は、一度入居者が決まると長く住んでくれる傾向があるので、安定した収入を期待できます。
また共有不動産であっても、アパート経営にかかる費用は持分割合に応じて割り振られます。
それらの費用は経費として計上できるので、本業の収入と合わせると節税対策になるでしょう。

賃貸にするデメリット
賃貸にすると、共有者自身や家族の居住用に使いたいと思っても簡単にはできません。
まず入居者がいる間は大家の家がなくなったなどの特別な事情がない限り、一方的に解約することはできません。
そして、賃貸物件から居住用に変えるのは、共有不動産に対する変更行為にあたるので、共有者全員の同意が必要になります。
また、共有不動産を賃貸にすると「家賃の分配」「経費の分配」「管理方法」などについて共有者の間で意見が合わず、トラブルになるデメリットもあるでしょう。
家賃は基本的に共有持分の割合に応じて分配されますが、管理会社とのやり取りを代表者1人が行っている場合には、その分の労力を家賃分配に反映させることもあります。
ここで意見が合わなければ、代表者が家賃を独り占めするなどのトラブルに発展することも多いです。
また、共有不動産をリフォームするときにも共有者全員の同意が必要で、家賃の金額や礼金を受け取るかどうか、リフォームはどこに発注するかなど細かな部分でも意見を一致させる必要があります。
以上のように共有不動産を賃貸にすると、共有者全員の同意が必要になる場面が多く、手間がかかるというデメリットもあるでしょう。
売却するメリット・デメリット
次に、売却する場合のメリットとデメリットを解説します。
共有不動産の売却で、メリットは多いですがデメリットはほとんどありません。
売却するメリット
共有不動産を売却する一番のメリットは、共有不動産の状態を解消できることです。
共有不動産は増築や建て替えなどの大規模な修繕・模様替えをする場合には共有者全員の同意が必要で手間がかかるでしょう。
さらに、共有者のうち誰かが亡くなって相続が発生すると、共有不動産の権利関係は複雑化します。
現状は、共有者同士で意見がまとまっているとしても、時間が経つとそれぞれ異なる意見を持つかもしれません。
新しく相続が発生して、持ち分の相続人となった共有名義の方が、今までの方と違う意見を唱える可能性もあるでしょう。
共有不動産はトラブルになりやすく、トラブルになると解決が困難です。
しかし、売却すれば以上のようなリスクはなくなります。
そして、売却したことにあわせて、まとまったお金が手に入る、今後の固定資産税や管理費などの維持費を支払う必要がなくなるというのもメリットと言えるでしょう。

売却するデメリット
売却するデメリットとして挙げられるのは、譲渡所得税がかかる可能性があることです。
共有不動産を売却して利益が出ると、譲渡所得として所得税と住民税が課税されます。
所得税を納めるのは確定申告の期間中、住民税は翌年の6月ごろからです。
売却が成立した時期によっては確定申告まで期間があくので、譲渡所得税のことを忘れてお金を使い切らないようすることが大切でしょう。
特に住民税は忘れたころにやってくるので、納税用のお金として口座を分けて管理することをおすすめします。
賃貸にするときの手順と費用
実際に共有不動産を賃貸にするときの手順と費用を解説します。
賃貸にするときの手順
共有不動産を賃貸に出して、入居が決まるまでの手順は大きく8つです。
- 家賃相場を調べる
- 収支のシミュレーションをする
- 持分の過半数の同意を得る
- 賃料査定を不動産会社に依頼する
- 管理委託する場合は不動産管理会社と契約する
- 賃貸条件を決めて入居者を募集する
- 入居希望者へ対応する
- 入居申込書を審査して賃貸契約を結ぶ
手順1.家賃相場を調べる
周辺地域で似た間取りの家賃を調べて、本格的に不動産会社に依頼する前の参考にします。
方法は、賃貸物件への引越しを考えているときと同じように大手のポータルサイトを使えば十分です。
立地や間取り、築年数で絞り込んで検索してみましょう。
手順2.収支のシミュレーションをする
賃貸物件にする前には、家のクリーニングや設備交換などのリフォーム費用が初期費用としてかかるでしょう。
その他、物件管理を委託していれば管理会社への管理委託費も必要ですし、マンションであれば管理修繕積立金も支払っていきます。
さらに、毎年固定資産税や家賃収入にかかる所得税・住民税なども支払う必要があるでしょう。
以上のように、実際に賃貸にしたときにどのくらいの利回りになりそうかを、事前にシミュレーションしておくことが大切です。
手順3.持分の過半数の同意を得る
「土地であれば5年以内」「建物であれば3年以内」の期間であれば、持分の過半数の同意で賃貸に出せます。
必要なのは持分の過半数であって、共有者の過半数ではありません。
たとえば、持分割合がAさんは2/3、Bさんは1/6、Cさんは1/6となっている共有不動産の場合、Aさんの意思のみで賃貸にできるでしょう。
ただ、無断で貸し出すと他の共有者とトラブルとなり、借主に迷惑をかけてしまうかもしれないので、事前に連絡しておく方が安心です。
また、上記期間を超えて貸し出す場合には、共有者全員の同意が必要になります。
手順4.賃料査定を不動産会社に依頼する
賃貸にするために必要な承諾を共有者から得られたら、実際に不動産会社へ賃料査定を依頼しましょう。
専門家の目でどれくらいの家賃であれば入居者が決まりそうかを判断してもらいます。
もし、複数の不動産会社に依頼した場合、査定された賃料に差が生じるかもしれません。
そのときは、ご自身で調べた家賃相場と収支シミュレーションの結果、不動産会社の賃料の根拠となる資料、担当者の説明から総合的に決めることが大切です。
手順5.管理委託する場合は不動産管理会社と契約する
共有者自身で不動産を管理する自主管理ではなく、管理委託する場合は、不動産管理会社と契約しましょう。
家賃の集金・家賃滞納時の督促だけ委託したり、入居者募集・入居者対応まで委託したりするなど、任せる業務範囲を選べます。
管理委託する場合、賃貸経営は管理会社の実力で収支が大きく変わるので、慎重に決めることが大切です。
手順6.賃貸条件を決めて入居者を募集する
家賃の他に、入居は単身者のみにするか、ルームシェアも可にするのか、ペットを認めるのかといった具体的な条件を決めていきます。
共有不動産がマンション・アパートの場合は管理規約も守らなければならないので、事前に確認しておきましょう。
手順7.入居希望者へ対応する
入居者募集を始めると、入居希望者から内覧したいという連絡が来るので対応します。
募集業務を不動産仲介業者に依頼していれば、担当者が内覧・物件の説明まで行ってくれるので、貸主が対応する必要はありません。
手順8.入居申込書を審査して賃貸契約を結ぶ
内覧を終えて、入居希望者が入居を決めると、保証人や収入などが記載された入居申込書が届くでしょう。
その内容から貸して問題ないかを判断し、入居を認める場合は入居希望者と賃貸契約を結びます。
貸し出す期間を3年以内に定めた定期借家契約であれば、持分の過半数となる共有者の署名と印鑑を、3年を超える定期借家契約または普通借家契約の場合は、共有者全員の署名と印鑑が必要です。
普通借家契約は通常の賃貸物件で結ばれる契約ですが、借地借家法の適用を受けるので、契約期間終了後の更新の拒絶は貸主に正当な事由がなければ認められません。
そのため、契約期間は3年以内だったとしても、3年を超える賃貸契約となる可能性から共有者全員の署名と印鑑が求められるので注意してください。
賃貸物件にするときの費用
共有不動産を賃貸にするときに、必要な費用は大きく3つです。
1.リフォーム費用
貸し出す前に他の共有者が住んでいた場合、そのままの状態で貸し出せることはほとんどありません。
クロスの張り替えや劣化している設備の修繕・交換が必要です。
また、周辺の物件と比べて見劣りする場合には、間取りの変更も含めた大規模なリフォームが必要になるかもしれません。
リフォーム費用はどこをリフォームするのか、どれくらいの規模のリフォームするのかで大きく変わりますが、300万円から400万円が相場です。
そして賃貸物件とするときには、リフォーム費用も投資対効果を考えることが大切です。
何年でリフォーム費用を回収できるのか、その期間と費用は現実的な数字なのかで使う金額を決めるようにしましょう。
2.仲介手数料
入居者募集を不動産会社に依頼した場合、入居者が決まったときには仲介手数料を支払います。
仲介手数料は宅地建物取引業法によって上限額が定められていて、賃料の1カ月以内です。
もし不動産仲介業者が、借主から仲介手数料を賃料の0.5カ月分受け取っている場合は、貸主に請求できる仲介手数料も賃料の0.5カ月分までということになります。
3.広告費
入居者の募集業務で使われる通常の広告は、仲介手数料の中に含まれているというのが原則です。
そのため、賃貸にするときには、仲介手数料の支払いしか発生しません。
しかし、貸主から特別に依頼した広告にかかった広告費については、実費を支払う必要があります。
ただしあくまでも「貸主からの依頼」「多額の費用が必要な特別な広告」という条件を満たす場合のみです。
不動産会社の中には広告料金のルールを誤解して、仲介手数料の他に広告費を請求してくるところもあるので、不要な支払いをしないように気をつけてください。
売却するときの手順と費用
次に、共有不動産を売却するときの手順と費用についてです。
共有不動産を売却するときの手順
共有不動産を売却するときには大きく7つの手順で進めます。

手順1.売却相場を調べる
まずは共有不動産の売却相場を調べましょう。
共有不動産であっても全部売却する場合は、単独名義の通常の不動産として考えて問題ありません。
周辺地域の売却相場や間取り、築年数などが似た物件の売却価格を確認します。
このような情報はインターネットでも簡単に知ることができます。

手順2.共有者全員の同意を取る
共有不動産を全部売却するには、共有者全員の同意が必要です。
そのため、共有不動産の売却において最も重要な手順とも言えるでしょう。
また、手順1で調べた売却価格の相場は、売却するか迷っている共有者に対しての説得材料としても使えます。
そして、共有者全員が同意していることを不動産会社・購入検討者に証明するためにも同意書などの書面を作成することがおすすめです。
手順3.重要書類を準備する
共有者全員の承諾を得て、共有不動産を売却することに決めたら不動産会社へ依頼します。
依頼すると改めて、不動産会社から売り出し価格を決めるための詳しい査定が行われるでしょう。
できるだけ早く正確な査定をしてもらえるように、重要書類を事前に準備します。
・固定資産税納税通知書、固定資産税評価証明書
・土地測量図
・登記簿謄本
・購入時の重要事項説明書
・購入時の売買契約書
・間取り図面
・管理規約や使用細則(マンションの場合)
手順4.不動産会社に依頼する
不動産売却では、売却活動を依頼する不動産会社選びが重要になるでしょう。
なぜなら、同じ不動産であっても不動産会社によって査定額が異なるからです。
不動産会社選びを間違えると、売却活動が期待どおり進まなかったり、売れたはずの価格よりも安い価格で手放すことになったりします。
特に共有不動産の売却の場合は、単独名義の不動産と手続きが異なるところもあります。
そのため、不動産会社へ依頼する前に、共有不動産を売却した実績があるか確認することが大切です。
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手順5.売買契約を結ぶ
不動産会社に依頼すると、売却のための広告や購入希望者の対応などは基本的に担当者が行ってくれます。
内覧希望があった場合は所有者が対応することになりますが、それ以外は買主が見つかるまで特にすることはありません。
そして買主が決まれば、売買契約を結びます。
売買契約書は不動産会社が用意するので、他に以下のものを揃えます。
・共有者全員の実印
・住民票(登記上の住所と現住所が異なる場合)
・本人確認書類
注意点としては、印鑑証明書や住民票は発行後3カ月以内のものが有効です。
また、売買契約を結ぶときには共有者全員出席のもと、署名捺印が必要になります。
事情があって出席できない場合は、代理人を立てる必要があるので、委任状の作成も忘れないようにしましょう。
買主は住宅ローンを受けて購入することがほとんどなので、売買契約を結んだ日は手付金だけ受け取ることが一般的です。
そのため、引き渡しも後日になります。
手順6.売買代金の決済・引き渡しを行う
売買契約を結んだあとで、買主は住宅ローンの本申込をして融資審査を受けます。
審査の結果がわかるのは1週間から2週間程度です。
そのため、決済日は審査から逆算して決めておくことになります。
また、売買代金の決済をするときには、同時に所有権移転登記も行いましょう。
売渡証明書に共有者全員の署名捺印が必要ですが、事前に司法書士に依頼しておくことで決済のときにまで全員出席する必要はなくなります。
売買代金の残金の決済と所有権移転登記、必要であれば抵当権抹消登記も終えて、共有不動産の売却手続きは完了です。
手順7.確定申告をする
手順6までで共有不動産の売却は完了していますが、忘れてはいけないことが確定申告です。
共有不動産の売却によって、お金が手元に入ってくることになりますが、このお金は譲渡所得として譲渡所得税の課税対象になります。
不動産の取得費や売却のための諸費用を差し引いたり、不動産を売却したときの特別控除を計算したりすると、課税譲渡所得がゼロ以下になる可能性もあるでしょう。
その場合は、譲渡所得税を納める必要はありません。
しかし、確定申告をしなければ特別控除の適用を受けられず、多額の税金を課せられる可能性があります。
確定申告は共有者全員がそれぞれ行う必要があるので、忘れないように気をつけてください。

共有不動産を売却するときの費用
共有不動産を売却するときの流れを伝えしました。
続けて、売却するときにかかる費用について解説します。
1.測量費
共有不動産が土地の場合、売却後の買主と隣人とのトラブルを避けるために、土地の面積、境界線、権利関係を明確にしておくことが大切です。
手元に確定測量図がなければ、土地家屋調査士や測量士のような専門家に依頼する必要があります。
費用は土地の面積、杭の有無など状況によって変わりますが、一般的には30万円から50万円程度です。
2.既存住宅状況調査費(インスペクション)
既存住宅現況検査技術者による建物状況調査では、雨漏りや水漏れ、シロアリなどの建物の劣化や欠陥の有無などを診断されます。
専門家による診断のため、買主にとっての安心感を高くすることにつながるでしょう。
費用は5万円から、10万円程度です。
ただし、劣化や瑕疵などが見つかった場合は売却価格や契約条件にも影響を与えるでしょう。
既存住宅状況調査の実施は義務化されていないので、調査を受けずに売却することも可能です。
3.印紙税
売買契約書に貼り付ける印紙が必要になります。
印紙代は契約書に記載された金額によって異なるでしょう。
また、不動産譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、2014年4月1日から2020年3月31日までに作成されたものについては軽減措置の対象です。
100万円超、1億円以下の軽減税率は下表のようになります。
契約金額 | 軽減税率 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 30,000円 |
4.登記費用
所有権移転登記に必要な登記原因証明情報の作成で、司法書士に支払う費用です。
一般的には売主が負担することが多いでしょう。
また、共有不動産に抵当権が設定されている場合は、抵当権抹消登記費用も必要になります。
さらに権利証・登記識別情報をなくしている場合には、司法書士による本人確認情報の作成が必要となるため、追加で5万円から10万円かかるでしょう。
5.仲介手数料
共有不動産の売買が成立したときに支払う、不動産会社への報酬です。
仲介手数料の上限は宅地建物取引業法で定められています。
売買価格 | 報酬額 |
200万円以下の部分 | 売買価格の5%以内 |
200万円超400万円以下の部分 | 売買価格の4%以内 |
400万円超の部分 | 売買価格の3%以内 |
※別途、消費税がかかる
たとえば、共有不動産を5,000万円で売却したときの仲介手数料の上限は、156万円と消費税です。
もちろんこの金額は上限額なので、不動産会社によっては上限額より安いこともあるでしょう。
そのため、不動産会社へ依頼するときには仲介手数料の報酬額についても確認することをおすすめします。
ただし、仲介手数料は必ずしも安ければいいというわけではないので、注意が必要です。
仲介手数料が安ければ不動産会社にとっての利益も小さいので、いい加減な売却活動をされる可能性があります。
不動産会社へ依頼するときには、共有不動産の取扱い実績や担当者を信頼できるかという点から選ぶようにしましょう。
6.金融機関事務手数料
売却した共有不動産に住宅ローンが残っている場合、売却代金で一括返済することになるでしょう。
住宅ローンを借りている金融機関によっては一括返済手数料が必要な場合があります。
7.譲渡所得税
不動産を売却したときに利益が出た場合、譲渡所得税が課税されます。
課税譲渡所得金額の計算方法は下記です。
共有不動産の取得費がわからないときには、売却価格の5%を取得費相当額として計算することになります。
また、譲渡費用にはここまで解説した測量費や仲介手数料などが含まれるでしょう。
もしも、売却した共有不動産がマイホームだったときには、3,000万円の特別控除の特例を受けられます。
これらの金額を売却価格から差し引いた金額が課税譲渡所得です。
そして、譲渡所得税の税率は売却した不動産の所有年数で変わります。
売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得が、5年以下の場合には短期譲渡所得の税率が適用されます。
所得税率 | 住民税率 | |
長期譲渡所得 | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% |

共有不動産をできるだけ高く売る3つのコツ
このように共有不動産を売却するにも、様々な費用がかかります。
さらに売却後も税金の支払いが必要になる可能性があり、多くのお金を手元に残すためにも高く売れるようにしたいはずです。
そこで、「具体的に押さえておきたい高く売るためのコツをお伝えします。
1.売却するときには共有者全員の同意を取る
共有不動産を売却するとき、大きくは自分の持分のみを売却する一部売却か、共有者全員で共有不動産を売却する全部売却があります。
しかし、持分だけを購入しても買主は自由に使用できないので、売却価格は非常に安いです。
買い手を見つけることも難しくなります。
そのため、共有不動産を売却するときには、共有者全員が売却に同意している「全部売却」にすることが高く売るポイントです。
全部売却であれば、単独名義の不動産と同じように市場価格で売却できます。
2.売却に反対している共有者がいる場合、説得も不動産会社に依頼する
一部の共有者が売却に反対していて、売却賛成派の考えに合意が難しいときには、説得を含めて不動産会社に依頼しましょう。
「自分たちで説得してもだめだから、一部売却するしかない」と考える方も多いです。
ですが、反対している方も共有不動産を所有し続けるリスクや売却するメリットを正しく理解できていなかったり、単に意固地になっているだけだったりすることもあります。
そのため、不動産の専門家であり、第三者である不動産会社の担当者から説得を受けると話を受け入れてもらいやすいです。
不動産会社に説得を依頼するときは、参考情報として、どういう理由で反対されているかなど現時点で分かっていることを伝えるようにしてください。
3.共有不動産の取扱い実績が豊富な不動産会社に依頼する
共有不動産の売却の相談を不動産会社へするときには、共有不動産の取扱い実績がどれくらいあるか確認するようにしましょう。
共有不動産の売却に共有者が合意したとしても、売却活動を始めてから時間が経つと、共有者の一部が意見を変えて売却したくないと主張し始めることがあります。
また、売買契約を結ぶ場には原則、共有者全員の出席が必要になり、出席ができないときには代理人を立てる手続きも必要です。
そのため、意図的に欠席して、共有不動産の売却を妨害する可能性もゼロではありません。「不動産が共同名義になっている」というだけで、購入を見送る方もいらっしゃいます。
このような事情もあり、共有不動産の取扱い実績が少ない場合、売り出し価格を安くしてしまいがちです。
適切な価格で売却するためにも、共有不動産の取扱い実績が豊富な会社に依頼することをおすすめします。
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空き家となっている場合、そのまま放置しておくリスクとは?
共有名義人同士で意見が揃わないせいで、売却も賃貸もできずに空き家のまま放置されている共有不動産も多くあります。
しかし、そのまま放置し続けると様々なリスクがあり、百害あって一利なしです。
下記の5つの主なリスクについて解説します。

1.固定資産税が高くなる
今、日本では空き家が深刻な問題になっていることもあり、平成27年から空家等対策の推進に関する特別措置法が施行されました。
・そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれがある
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である
「上記のような状態の空き家は「特定空家」と指定されます。
簡単に言ってしまうと「見たらわかるくらいボロボロの空き家」が特定空家です。
そして特定空家に指定されると、行政から指導や勧告などの措置対象となるだけではありません。
その空き家の建つ敷地が固定資産税等の住宅用地の課税標準の特例の対象だった場合、対象から除外されることになります。その結果、固定資産税額は2~3倍にまで跳ね上がるリスクがあります。

2.犯罪の温床になりえる
放置された空き家は犯罪者にとって絶好の隠れ家です。
不法侵入によって逃走犯が身を隠したり、犯罪者グループのたまり場として使われたりするリスクもあるでしょう。
実際、詐欺グループが空き家を利用して、荷物の受け取りに使っていたという事件も起きています。
空き家を放置し続けることは、気づかないうちに犯罪者の手助けをしていることにもなるのです。
また空き家に放火されて周囲に被害が出たときには、空き家の所有者の責任も追及される場合があるので注意してください。
3.不法投棄場所として使われる
誰も管理していない空き家には、生ゴミや処分に困る粗大ゴミなどが不法投棄されやすいです。
誰かがゴミを捨てると、それからどんどんゴミが増えていきます。
そして、捨てられたゴミを餌に害獣や害虫が寄ってきて、悪臭や病原菌の発生源にもなるでしょう。
さらに不法投棄した犯人がわからない場合、空き家の所有者が自費でゴミを処分しなければならなくなるリスクもあります。
4.資産価値が大きく下がる
適切に管理されていない空き家は、人が住んでいる物件に比べて資産価値の下がり方が大きいです。
設備の経年劣化だけでなく、空気が通らないことで湿気がたまって腐食が進みやすく、水道・ガスを使わないことで排水管の水がにごるなどします。
そして、短期間で修復不可能となるほど劣化しやすいです。
その結果、共有名義人同士で意見がまとまったときにはもう、売却も賃貸もできないほど資産価値が下がってしまっていることも多いでしょう。
5.損害賠償責任を負う
空き家を放置するなど適切な管理をしなかった結果、屋根がはがれて通行人に怪我をさせたり、建物が倒壊して隣の家に被害が出たりした場合、所有者は損害賠償責任を負うことになります。
これは地震や台風、積雪などの自然災害でも同様です。
地域の特性などから事前に予想できる範囲の自然災害で空き家が倒壊して第三者に被害を出した場合でも「適切な管理をしなかった結果」とみなされます。
万が一、人命が亡くなるようなことになると数千万円から数億円の損害賠償責任を負うこともありえます。
このように空き家を放置し続けると、その地域とそこに住む方々に悪影響を与えるだけでなく、所有者にも金銭的に大きなリスクがあります。
そのため、空き家となる場合でもしっかりと管理するようにしてください。
そして不動産会社や司法書士、弁護士のような専門家の力を借りてでも、できる限り早く共有名義人の意見をまとめるようにしましょう。
まとめ
以上、共有不動産を売却するか賃貸に出すか迷ったときの判断基準とそれぞれのメリット・デメリット、進める手順と費用について解説してきました。
まとめると、共有者の意見が売却でも賃貸でもどちらでもいい、として一致している場合は、売却することをおすすめします。
賃貸に出せば安定した家賃収入を得られるというメリットがありますが、共有名義の状態では将来的にトラブルとなる可能性が高いからです。
そして、共有者の過半数でしか意見が一致しないときには、空き家として放置するよりも、3年以内の期限付きで賃貸にした方がいいでしょう。
ただもちろん、共有不動産の状態、共有名義人それぞれの事情によって、どちらが良いかは変わってきます。
もし、ここまで読んでみたもののどちらにしようか決めかねるという場合には専門家である不動産会社へ相談するようにしてください。