共有不動産を売却するか賃貸にするか迷ったときの判断基準とは?

共有不動産

相続によって兄弟姉妹やその他の親族と所有することになった共有不動産。維持費だけ払って所有し続けるのももったいないから、売却してまとまったお金にかえるか、賃貸にして活用するかしたい。この記事をご覧のあなたも、そのように考えているのではないでしょうか。

そこでこの記事では、共有不動産を売却するか賃貸に出すかの判断ポイントをお伝えします。また、それぞれのメリット・デメリット、手順と費用についても詳しく解説しました。

これを読めば、あなたの状況に合っているのは、売却なのか賃貸なのかを見極められるようになるでしょう。

目次

共有不動産を「売却」or「賃貸」にするかの判断ポイント

売却 賃貸
共有不動産を売却するか、賃貸にするか迷ったときは、次の3つのポイントから判断することをおすすめします。

(1)「売却」と「賃貸」、それぞれに同意している共有者の割合

共有不動産を売却するときには、共有者全員の同意が必要です。それに対して、土地であれば5年以内、建物であれば3年以内の賃貸は、共有不動産の管理行為となるため、共有者の持分割合で過半数の同意で賃貸契約を結ぶことができます。

あとから詳しくお伝えしますが、共有不動産を売却するデメリットはほとんどありません。
もし、共有者全員が売却・賃貸どちらでもいいということであれば、売却する方がいいでしょう。

(2)「売却」と「賃貸」で得られるそれぞれの収入

賃貸に出して入居者が決まると、継続的に家賃収入を得られます。売却すると一度に、まとまったお金を手に入れることができます。

そのため、売却したときに得られる収入は、賃貸として貸し出したときの何年分に当たるかも判断のポイントです。
売却しても家賃収入の2~3年分にしかならないのであれば、賃貸として出したほうが金銭的なメリットは大きいかもしれません。

(3)共有不動産を共有者が自宅にする可能性とその時期

共有不動産を今後、共有者の誰かが自宅として使用する可能性があるかどうかもポイントです。

もし、はっきりといつから自宅として利用する、と決まっている場合は、定期借家として更新なしの期間が決まった賃貸物件として貸し出すといいでしょう。

そして、自宅にする可能性も曖昧だったり、自宅にするにしてもその時期が未確定だったりする場合は、売却する方がいいです。

共有不動産の状態は様々なトラブルを引き起こす可能性が高いので、思い切って売却して、新しい住宅を単独所有することをおすすめします。

賃貸として貸し出すメリット・デメリット

賃貸として貸し出すメリット・デメリットを解説します。

賃貸として貸し出すメリット

共有不動産を賃貸として貸し出すメリットは、家賃として継続的な収入を得られることです。
特に戸建ての場合は、一度入居者が決まると長く住んでくれる傾向があるので、安定した収入を期待できます。

また共有不動産であっても、アパート経営にかかる費用は持分割合に応じて割り振られます。それらの費用は経費として計上できるので、本業の収入と合わせると節税対策にもなります。

関連記事
投資家
共有持分不動産は、自分の持分のみであれば自由に処分することができます。そのため、共同名義人の誰かが他の共同名義人に相談なく、投資家に売却してしまうこともあるでしょう。 この記事をご覧のあなたは、今まさに共有持分不動産を投資家に購入されそうになっていたり、購入されたりして、「無理やり追い出されてしまうのではないか?」「何…

賃貸として貸し出すデメリット

賃貸として貸し出すと、賃貸をやめて共有者自身や家族の居住用に使いたいと思っても簡単にはできません。まず入居者がいる間は大家の家がなくなったなどの特別な事情がない限り、一方的に解約することはできません。そして、賃貸物件から居住用に変えるのは、共有不動産に対する変更行為にあたるので、共有者全員の同意が必要になります。

また、共有不動産を賃貸に出すと、「家賃の分配」、「経費の分配」、「管理方法」などについて共有者の間で意見が合わず、トラブルになることも多いです。

家賃は基本的には共有持分の割合に応じて分配されますが、管理会社とのやり取りを代表者1人が行っている場合には、その分の労力を考えて家賃分配に反映させることもあります。

ここで意見が合わなければ、代表者が家賃を独り占めするなどのトラブルに発展することも多いです。

また、共有不動産をリフォームするときにも共有者全員の同意が必要で、家賃の金額や礼金を受け取るかどうか、リフォームはどこに発注するかなど細かな部分でも意見を一致させる必要があります。そして、意見が揃わなければ何も進められません。このように、共有不動産を賃貸に出すと、共有者全員の同意が必要になる場面が多く、手間がかかるというデメリットもあります。

売却するメリット・デメリット

次に、売却する場合のメリットとデメリットを解説します。
共有不動産の売却で、メリットは多いですがデメリットはほとんどありません

売却するメリット

共有不動産を売却する一番のメリットは、共有不動産の状態を解消できることです。
共有不動産は増築や建て替えなどの大規模な修繕・模様替えを行う場合には共有者全員の同意が必要で手間がかかります。さらに、共有者のうち誰かが亡くなって相続が発生すると、共有不動産の権利関係は複雑化します。

現状は、共有者同士で意見がまとまっているとしても、時間が経つとそれぞれ異なる意見を持つかもしれません。新しく相続が発生して、持ち分の相続人となった共有名義の方が、今までの方と違う意見を唱えるかもしれません。

共有不動産はトラブルになりやすく、トラブルになると解決が難しいです。売却すれば、そのようなリスクはなくなります。

そして、売却したことにあわせて、まとまったお金が手に入る、今後の固定資産税や管理費などの維持費を支払う必要がなくなるというのもメリットと言えるでしょう。

関連記事
共有持分
「両親が亡くなって兄弟姉妹で実家を引き継いだ」、「夫婦でローンを組んでマイホームを購入した」などを理由に共有名義不動産を所有していたが、様々な背景からその物件を手放さなくてはいけない状況になってしまったという方もいらっしゃるはずです。 また、共有名義不動産の売却を考えた時、自身が所有している「共有持分」が一体いくらで売…

売却するデメリット

売却するデメリットとして挙げられるのは、譲渡所得税がかかる可能性があるということです。共有不動産を売却して利益が出ると、譲渡所得として所得税と住民税が課税されます。

所得税を納めるのは確定申告の期間中、住民税は翌年の6月ごろからです。売却が成立した時期によっては、確定申告まで期間があくので、譲渡所得税のことを忘れてお金を使い切らないようすることが大切です。

特に住民税は忘れたころにやってくるので、納税用のお金として口座を分けて管理することをおすすめします。

賃貸として貸し出すときの手順と費用

賃貸
それでは実際に共有不動産を賃貸として貸し出すときの手順と費用を解説します。

賃貸として貸し出すときの手順

共有不動産を賃貸として貸し出して、入居が決まるまでの手順は大きく8つです。

手順1.家賃相場を調べる

周辺地域で似た間取りの家賃を調べて、本格的に不動産会社に依頼する前の参考にします。方法は、賃貸物件への引越しを考えているときと同じように大手のポータルサイトを使えば十分です。立地や間取り、築年数で絞り込んで検索してみましょう。

手順2.収支のシミュレーションをする

賃貸物件として貸し出す前には家のクリーニングや設備交換などのリフォーム費用が初期費用としてかかります。その他、物件管理を委託していれば管理会社への管理委託費も必要です。マンションであれば管理修繕積立金も支払っていきます。さらに、毎年固定資産税や家賃収入にかかる所得税・住民税などもかかります。

このように、実際に賃貸として貸し出したときにどのくらいの利回りになりそうかを事前にシミュレーションしておくことが大切です。

手順3.持分の過半数の同意を得る

「共有不動産を「売却」or「賃貸」にするかの判断ポイント」の章でもお伝えしましたが、「土地であれば5年以内」、「建物であれば3年以内」の期間であれば、持分の過半数の同意で賃貸として貸し出すことができます

必要なのは持分の過半数であって、共有者の過半数ではありません

たとえば、持分割合が、Aさんは2/3、Bさんは1/10、Cさんは1/10、Dさんは1/10、Eさんは1/30となっている共有不動産の場合、Aさんの意思のみで賃貸として貸し出すことができるということです。

ただ、無断で貸し出すと他の共有者とトラブルになり、借主に迷惑をかけてしまうかもしれないので、事前に連絡しておく方が安心です。

また上記期間を超えて貸し出す場合には、共有者全員の同意が必要になります。

手順4.賃料査定を不動産会社に依頼する

賃貸として貸し出すために必要な承諾を共有者から得られたら、実際に不動産会社へ賃料査定を依頼します。専門家の目でどれくらいの家賃であれば入居者が決まりそうかをみてもらいましょう。

複数の不動産会社に依頼した場合、査定された賃料に差がある場合があります。そのときは、ご自身で調べた家賃相場と収支シミュレーションの結果、不動産会社の賃料の根拠となる資料、担当者の説明から総合的に決めることが大切です。

手順5.管理委託する場合は不動産管理会社と契約する

共有者自身で不動産を管理する自主管理ではなく、管理委託する場合は、不動産管理会社と契約します。家賃の集金・家賃滞納時の督促だけ委託したり、入居者募集・入居者対応まで委託したりするなど、任せる業務範囲を選ぶことができます。

管理委託する場合、賃貸経営は管理会社の実力で収支は大きく変わるので慎重に決めることが大切です。

手順6.賃貸条件を決めて入居者を募集する

家賃の他に、入居は単身者のみにするか、ルームシェアも可にするのか、ペットを認めるのかといった具体的な条件を決めていきます。共有不動産がマンション・アパートの場合は管理規約も守らなければならないので、事前に確認しておきましょう。

手順7.入居希望者へ対応する

入居者募集を始めると、入居希望者から内覧したいという連絡が来るので対応します。募集業務を不動産仲介業者に依頼していれば、担当者が内覧・物件の説明まで行ってくれるので、貸主が対応する必要はありません。

手順8.入居申込書を審査して賃貸契約を結ぶ

内覧を終えて、入居希望者が入居を決めると保証人や収入などが記載された入居申込書が届きます。その内容から貸して問題ないかを判断します。入居を認める場合は入居希望者と賃貸契約を結びます

貸し出す期間を3年以内に定めた定期借家契約であれば、持分の過半数となる共有者の署名と印鑑、3年を超える定期借家契約または普通借家契約の場合は共有者全員の署名と印鑑が必要です。

普通借家契約は通常の賃貸物件で結ばれる契約ですが、借地借家法の適用を受けるので、契約期間終了後の更新の拒絶は貸主に正当な事由がなければ認められません。そのため、契約期間は3年以内だったとしても、3年を超える賃貸契約となる可能性があるので共有者全員の署名と印鑑が求められるので注意してください。

賃貸として貸し出すときの費用

共有不動産を賃貸として貸し出すときに必要なる費用は大きく3つです。

(1)リフォーム費用

貸し出す前に他の共有者が住んでいた場合、そのままの状態で貸し出せることはほとんどありません。クロスの張り替えや劣化している設備の修繕・交換が必要です。

また、周辺の物件と比べて見劣りする場合には、間取りの変更も含めた大規模なリフォームが必要になるかもしれません。リフォーム費用はどこをリフォームするのか、どれくらいの規模のリフォームするのかで大きく変わりますが300万円から400万円が相場です。

そして賃貸物件とするときには、リフォーム費用も投資対効果を考えることが大切です。何年でリフォーム費用を回収できるのか、その期間と費用は現実的な数字なのかで使う金額を決めるようにしましょう。

(2)仲介手数料

入居者募集を不動産会社に依頼した場合、入居者が決まったときには仲介手数料を支払います。この仲介手数料は宅地建物取引業法によって上限額が定められていて、貸主と借主から受け取る報酬の合計額が家賃1カ月以内です。

もし不動産仲介業者が借主から仲介手数料を家賃の0.5カ月分受け取っている場合、貸主に請求できる仲介手数料も家賃の0.5カ月分までということになります。

(3)広告費

入居者の募集業務で使われる通常の広告は、仲介手数料の中に含まれているというのが原則です。そのため、賃貸として貸し出すときには、仲介手数料の支払いしか発生しません。

しかし、貸主から特別に依頼した広告にかかった広告費については、実費を支払う必要があります。ただしあくまでも、「貸主からの依頼」、「多額の費用が必要な特別な広告」という条件を満たす場合のみです。

不動産会社の中には、広告料金のルールを誤解して、仲介手数料の他に広告費を請求してくるところもあるので不要な支払いをしないように気をつけてください

売却するときの手順と費用

売却
次に、共有不動産を売却するときの手順と費用についてです。

共有不動産を売却するときの手順

共有不動産を売却するときには大きく7つの手順で進めます。

関連記事
相続
不動産を所有していた人が亡くなると、その不動産は遺族に相続されます。ただし、その不動産は必ずしも1つの物件が1人にのみ相続されるわけではなく、財産や相続人、遺産分割協議の状況によって、複数の人が1つの物件を引き継ぐ場合も多くあります。 実は、複数の人の名義になっている物件を売却する場合、名義人が1人である不動産を売却す…

手順1.売却相場を調べる

まずは共有不動産の売却相場を調べましょう。共有不動産であっても全部売却する場合は、単独名義の通常の不動産として考えて問題ありません。

周辺地域の売却相場や間取りや築年数などが似た物件の売却価格を確認します。このような情報はインターネットでも簡単に知ることができます。

関連記事
共有不動産
「両親が遺してくれた実家を相続したけど使い道に困っている」 「夫婦の共同名義でマンションの一室を購入したけど訳あって今は使用していない」 「離婚した前妻と一緖に購入した自宅をどう扱っていいのかわからない」 という様々な理由から共有名義の不動産を所有しているが、どうやって扱っていいのだろうと悩んでいらっしゃる方も多いので…

手順2.共有者全員の同意を取る

共有不動産を全部売却するには、共有者全員の同意が必要です。そのため、共有不動産の売却において最も重要な手順とも言えるでしょう。また、手順1で調べた売却価格の相場は、売却するか迷っている共有者に対しての説得材料としても使うことができます。

そして、共有者全員が同意していることを不動産会社・購入検討者に証明するためにも同意書などの書面を作成することがおすすめです。

手順3.重要書類を準備する

共有者全員の承諾を得て、共有不動産を売却することに決めたら不動産会社へ依頼します。依頼すると改めて、不動産会社から売り出し価格を決めるための詳しい査定が行われます。

そのため、できるだけスムーズに、正確な査定をしてもらえるように重要書類を準備しましょう。

・権利証、登記識別情報
・固定資産税納税通知書、固定資産税評価証明書
・土地測量図
・登記簿謄本
・購入時の重要事項説明書
・購入時の売買契約書
・間取り図面
・管理規約や使用細則(マンションの場合)

手順4.不動産会社に依頼する

不動産売却では、売却活動を依頼する不動産会社選びが重要です。なぜなら、同じ不動産であっても不動産会社によって査定額が異なるからです。

不動産会社選びを間違えると、売却活動が期待どおり進まなかったり、売れたはずの価格よりも安い価格で手放すことになったりします。特に共有不動産の売却の場合は、単独名義の不動産と手続きが異なるところもあります。

そのため、不動産会社へ依頼する前に、共有不動産を売却した実績があるか確認することが大切です。

手順5.売買契約を結ぶ

不動産会社に依頼すると売却のための広告や購入希望者の対応などは基本的に担当者が行ってくれます。内覧希望があった場合に、所有者が対応することになりますが、それ以外は買主が見つかるまで特にすることはありません。

そして買主が決まれば、売買契約を結びます

売買契約書は不動産会社が用意するので、他に以下のものを揃えます

・共有者全員の印鑑証明書
・共有者全員の実印
・住民票(登記上の住所と現住所が異なる場合)
・本人確認書類

注意点としては、印鑑証明書や住民票は発行後3カ月以内のものが有効です。

また売買契約を結ぶときには共有者全員出席のもと、署名捺印が必要です。事情があって出席できない場合は、代理人を立てる必要があるので委任状の作成も忘れないようにしましょう。買主は住宅ローンを受けて購入することがほとんどなので、売買契約を結んだ日は手付金だけ受け取ることが一般的です。そのため、引き渡しも後日になります。

手順6.売買代金の決済・引き渡しを行う

売買契約を結んだあとで、買主は住宅ローンの本申込を行って融資審査を受けます。審査の結果がわかるのは1週間から2週間程度です。そのため、決済日は審査から逆算して決めておくことになります。

また売買代金の決済を行うときには、同時に所有権移転登記も行います。売渡証明書に共有者全員の署名捺印が必要ですが、事前に司法書士に依頼しておくことで決済のときにまで全員出席する必要はなくなります。

売買代金の残金の決済と所有権移転登記、必要であれば抵当権抹消登記も終えて、共有不動産の売却手続きは完了です。

手順7.確定申告を行う

手順6までで共有不動産の売却は完了していますが、忘れてはいけないことが確定申告です。共有不動産の売却によって少ない金額が手元に入ってくることになります。

このお金は譲渡所得として譲渡所得税の課税対象です。不動産の取得費や売却のための諸費用を差し引いたり、不動産を売却したときの特別控除を計算したりすると課税譲渡所得がゼロ以下になる可能性もあります。その場合は、譲渡所得税を納める必要はありません。しかし、確定申告をしなければ特別控除の適用を受けられず、多額の税金を課せられる可能性があります。

そして確定申告は共有者全員がそれぞれ行う必要があるので、忘れないように気をつけてください。

関連記事
共有名義不動産
共有している不動産を処分したいと考えた場合には「その不動産全体を他の方に売却して、持ち分にしたがって共有者全員で売却代金を配分する方法」と「自分の持ち分だけを他の方に売却する方法」の2種類があります。それぞれの方法にメリット・デメリットがありますが、いずれかの方法は実現が難しく、選択の余地がない場合も多いです。 この記…

共有不動産を売却するときの費用

共有不動産を売却するときの流れをお伝えしました。続けて、売却するときにかかる費用についてです。

(1)測量費

共有不動産が土地の場合、売却後の買主と隣人とのトラブルを避けるために、土地の面積、境界線、権利関係を明確にしておくことが大切です。手元に確定測量図がなければ土地家屋調査士や測量士のような専門家に依頼する必要があります。

費用は土地の面積、杭の有無など状況によって変わりますが、一般的には30万円から50万円程度です。

(2)既存住宅状況調査費(インスペクション)

既存住宅現況検査技術者による建物状況調査です。雨漏りや水漏れ、シロアリなどの建物の劣化や欠陥の有無などを診断されます。専門家による診断のため、買主にとっての安心感を高くすることにつながります。

費用は5万円から10万円程度です。

ただし、劣化や瑕疵などが見つかった場合は売却価格や契約条件にも影響を与えるでしょう。既存住宅状況調査の実施は義務化されていないので、調査を受けずに売却することも可能です。

(3)印紙税

売買契約書に貼り付ける印紙が必要です。印紙代は契約書に記載された金額によって代わります。

また、不動産譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、2014年4月1日から2020年3月31日までに作成されたものについては軽減措置の対象です。

100万円超、1億円以下の軽減税率は下表のようになります。

契約金額 軽減税率
100万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 10,000円
5,000万円超1億円以下 30,000円

参照: 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

(4)登記費用

所有権移転登記に必要な登記原因証明情報の作成で司法書士に支払う費用です。売主が負担することが多いです。また共有不動産に抵当権が設定されている場合は抵当権抹消登記費用も必要になります。

さらに権利証・登記識別情報をなくしている場合には、司法書士による本人確認情報の作成が必要となるため、追加で5万円から10万円かかります

(5)仲介手数料

共有不動産の売買が成立したときに支払う不動産会社への報酬です。仲介手数料の上限は宅地建物取引業法で定められています。

売買価格 報酬額
200万円以下の部分 売買価格の5%以内
200万円超400万円以下の部分 売買価格の4%以内
400万円超の部分 売買価格の3%以内

※別途、消費税がかかる

たとえば、共有不動産を5,000万円で売却したときの仲介手数料の上限は、156万円と消費税です。もちろんこの金額は上限額なので、不動産会社によっては上限額より安いこともあります。

そのため、不動産会社へ依頼するときには仲介手数料の報酬額についても確認することをおすすめします。

ただし、仲介手数料は必ずしも安ければいいというわけではないので注意が必要です。仲介手数料が安ければ不動産会社にとっての利益も小さいので、いい加減な売却活動をされる可能性があります。

不動産会社へ依頼するときには、共有不動産の取扱い実績や担当者を信頼できるかという点から選ぶようにしましょう。

(6)金融機関事務手数料

売却した共有不動産に住宅ローンが残っている場合、売却代金で一括返済することになります。住宅ローンを借りている金融機関によっては一括返済手数料が必要な場合があります

たとえば、みずほ銀行の住宅ローンでは32,400円の手数料が必要です。

参照: みずほ住宅ローン商品概要

(7)譲渡所得税

不動産を売却したときに利益が出た場合、譲渡所得税が課税されます。

課税譲渡所得金額の計算方法は下記です。

【課税譲渡所得金額 = 売却価格-(取得費 + 譲渡費用)-特別控除額 】

共有不動産の取得費がわからないときには、売却価格の5%を取得費相当額として計算することになります。また譲渡費用にはここまで解説した測量費や仲介手数料などが含まれます。売却した共有不動産がマイホームだったときには3,000万円の特別控除の特例を受けられます。

これらの金額を売却価格から差し引いた金額が課税譲渡所得です。そして、譲渡所得税の税率は売却した不動産の所有年数で変わります。

売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得が、5年以下の場合には短期譲渡所得の税率が適用されます。

所得税率 住民税率
長期譲渡所得 15% 5%
短期譲渡所得 30% 9%

関連記事
共有持分
共有とは、一つの物を複数の人が共同で所有している関係を言います。 共有関係が生じる代表的な場合としては、マイホームなどを夫婦が住宅ローンを組んで共同で購入する時のように、自分たちの意思で共有とする場合のほか、相続の際に複数の相続人がいることで、複数の所有者が生じる場合などがあります。 財産分与で遺産を相続した時に騒動に…

共有不動産をできるだけ高く売る3つのコツ

このように共有不動産を売却するにも様々な費用がかかります。さらに売却後も税金の支払いが必要になる可能性もあり、多くのお金を手元に残すためにも高く売れるようにしたいです。そこで、具体的に押さえておきたい高く売るためのコツをお伝えします。

(1)売却するときには共有者全員の同意を取る

共有不動産を売却するとき、大きくは自分の持分のみを売却する一部売却か、共有者全員で共有不動産を売却する全部売却があります。しかし、持分だけを購入しても買主は自由に使用することができないので、売却価格は非常に安いです。買い手を見つけることも難しくなります。

そのため、共有不動産を売却するときには、共有者全員が売却に同意している「全部売却」にすることが高く売るポイントです。単独名義の不動産と同じように市場価格で売却することができます。

(2)売却に反対している共有者がいる場合、説得も不動産会社に依頼する

一部の共有者が売却に反対していて、売却賛成派の考えに合意が難しいときには、説得を含めて不動産会社に依頼しましょう。

自分たちで説得してもだめだから、一部売却するしかないと考える方も多いです。ですが、反対している方も共有不動産を所有し続けるリスクや売却するメリットを正しく理解できていなかったり、単に意固地になっているだけだったりすることもあります。

そのため、不動産の専門家であり、第三者である不動産会社の担当者から説得を受けると話を受け入れてもらいやすいです。不動産会社に説得を依頼するときは、参考情報として、どういう理由で反対されているかなど現時点で分かっていることを伝えるようにしてください。

(3)共有不動産の取扱い実績が豊富な不動産会社に依頼する

共有不動産の売却の相談を不動産会社へするときには、共有不動産の取扱い実績がどれくらいあるか確認するようにしましょう。

共有不動産の売却に共有者が合意したとしても、売却活動を始めてから時間が経つと、共有者の一部が意見を変えて売却したくないと主張し始めることがあります。

また、売買契約を結ぶ場には原則、共有者全員の出席が必要になり、出席ができないときには代理人を立てる手続きも必要です。そのため、意図的に欠席して、共有不動産の売却を妨害する可能性もゼロではありません。

「不動産が共同名義になっている」というだけで、購入を見送る方もいらっしゃいます。

このような事情もあり、共有不動産の取扱い実績が少ない場合、売り出し価格を安くしてしまいがちです。

適切な価格で売却するためにも、共有不動産の取扱い実績が豊富な会社に依頼することをおすすめします。

空き家となっている場合、そのまま放置しておくリスクとは?

特定空き家
共有名義人同士で意見が揃わないせいで、売却も賃貸もできずに空き屋のまま放置されている共有不動産も多くあります。しかし、そのまま放置し続けると様々なリスクがあり、百害あって一利なしです。

下記の5つの主なリスクについて解説します。

関連記事
共有名義不動産
共有とは、一つの物を複数の人が共同で所有している関係をいいます。この場合、その物について権利を有する人が複数いることになるため、その物の使用や管理、処分等に関して、他の共有者との調整が必要になります。そこで、単独所有の場合とは異なる制限等を受けることになり、所有者間でトラブルが発生することにもなりかねません。 ここでは…

(1)固定資産税が高くなる

今、日本では空き屋が深刻な問題になっていることもあり、平成27年から空家等対策の推進に関する特別措置法が施行されました。

・そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれがある
・そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれがある
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である

上記のような状態の空家は「特定空家」と指定されます。

簡単に言ってしまうと「見たらわかるくらいボロボロの空き屋」が特定空家です。

そして特定空家に指定されると、行政から指導や勧告などの措置対象となるだけではありません。その空き屋の建つ敷地が固定資産税等の住宅用地の課税標準の特例の対象だった場合、対象から除外されることになります。その結果、固定資産税額は2~3倍にまで跳ね上がるリスクがあります。

関連記事
固定資産税
相続などで不動産を共有することとなった場合には、所有権移転登記などの大事な手続きについては司法書士などの専門家に依頼するのが一般的でしょう。 不動産登記などの大切な手続きが終わったあと最後に残る決め事が、不動産を利用する方が他の共有者に支払う賃料と固定資産税の代表者だと言われています。家賃の支払いと固定資産税の代表者は…

(2)犯罪の温床になりえる

放置された空き屋は犯罪者にとって絶好の隠れ家です。不法侵入によって逃走犯が身を隠したり、犯罪者グループのたまり場として使われたりするリスクもあります。

実際、詐欺グループが空き屋を利用して、荷物の受け取りに使っていたという事件も起きています。空き屋を放置し続けることは、気づかないうちに犯罪者の手助けをしていることにもなるのです。

また空き屋に放火されて周囲に被害が出たときには、空き屋の所有者の責任も追及される場合があるので注意してください。

(3)不法投棄場所として使われる

誰も管理していない空き屋には、生ゴミや処分に困る粗大ゴミなどが不法投棄されやすいです。誰かがゴミを捨てると、それからどんどんゴミが増えていきます。そして、捨てられたゴミを餌に害獣や害虫が寄ってきて、悪臭や病原菌の発生源にもなります。

さらに不法投棄した犯人がわからない場合、空き屋の所有者が自費でゴミを処分しなければならなくなるリスクもあります。

(4)資産価値が大きく下がる

適切に管理されていない空き屋は、人が住んでいる物件に比べて資産価値の下がり方が大きいです。設備の経年劣化だけでなく、空気が通らないことで湿気がたまって腐食が進みやすく、水道・ガスを使わないことで排水管の水がにごるなどします。そして、短期間で修復不可能となるほど劣化しやすいです。

その結果、共有名義人同士で意見がまとまったときにはもう、売却も賃貸もできないほど資産価値が下がってしまっていることも多いです。

(5)損害賠償責任を負う

空き屋を放置するなど適切な管理をしなかった結果、屋根がはがれて通行人に怪我をさせたり、建物が倒壊して隣の家に被害が出たりした場合、所有者は損害賠償責任を負うことになります

これは地震や台風、積雪などの自然災害でも同様です。地域の特性などから事前に予想できる範囲の自然災害で空き屋が倒壊して第三者に被害を出した場合でも、「適切な管理をしなかった結果」とみなされます。

万が一、人命が亡くなるようなことになると数千万円から数億円の損害賠償責任を負うこともありえます。

このように空き屋を放置し続けると、その地域とそこに住む方々に悪影響を与えるだけでなく、所有者にも金銭的に大きなリスクがあります。そのため、空き屋となる場合でもしっかりと管理するようにしてください。

そして不動産会社や司法書士、弁護士のような専門家の力を借りてでも、できる限り早く共有名義人の意見をまとめるようにしましょう。

まとめ

以上、共有不動産を売却するか賃貸に出すか迷ったときの判断基準とそれぞれのメリット・デメリット、進める手順と費用について解説してきました。

まとめると、共有者の意見が売却でも賃貸でもどちらでもいい、として一致している場合は、売却することをおすすめします。
賃貸として貸し出せば安定した家賃収入を得られるというメリットがありますが、共有名義の状態では将来的にトラブルとなる可能性が高いからです。

そして、共有者の過半数でしか意見が一致しないときには、空き屋として放置するよりも、3年以内の期限付きで賃貸として貸し出した方がいいでしょう。

ただもちろん、共有不動産の状態、共有名義人それぞれの事情によって、どちらが良いかは変わってきます。
もし、ここまで読んでみたもののどちらにしようか決めかねるという場合には専門家である不動産会社へ相談するようにしてください。

最終更新日:

共有持分の売却をご検討の方は今すぐご連絡ください

0120-543-191