
マイホームを購入するとき、土地が借地であれば土地の購入費用がかからず、初期費用を抑えられます。
しかし、住宅ローンを組むとき、土地が借地だと銀行の審査に通らない恐れがあるので注意が必要です。
銀行によっては「借地権の場合は住宅ローンを融資しない」と明言しているところもあります。
借地権の住宅ローン審査を通すには、仲介する不動産会社との協力が必要であり、いかにして「交渉力」と「住宅ローン審査の知識」がある不動産会社を選ぶかが大切です。
弁護士と提携した不動産業者なら、法的知識と交渉力を活かして、借地権の住宅ローン融資を得意としているので、ぜひ無料相談を受けてみるとよいでしょう。
目次
銀行の住宅ローン審査で借地権が不利になる3つの理由
不動産を購入するときには、住宅ローンを組むことが一般的です。
しかし、購入予定の土地が借地権だった場合、住宅ローンの審査が厳しくなります。
その理由は、以下の3つがあげられます。
- 1.担保価値が低いから
- 2.借地契約を解除されるリスクがあるから
- 3.借地権の登記には地主の協力が必要だから
1.担保価値が低いから
銀行が住宅ローンの審査をするときには、対象の不動産の担保価値が重要です。
住宅ローンで借り入れる金額は年収の何倍にもなりますが、銀行がそれだけの金額を個人に融資できるのは「債務者に信用力があるから」だけではありません。
不測の事態でローンの返済を滞納されたとしても取り戻せるように、住宅に「抵当権」を設定するからです。
借金やローンを返せなくなったとき、返済の代替手段として設定するもの。物的担保と人的担保の2種類がある。
物的担保は建物に対する抵当権の設定、人的担保は保証人の設定が代表的。
借金やローンの返済が滞った際、対象の物品を差し押さえる権利。住宅ローンの場合は、購入する家に抵当権を設定する。
債務者が住宅ローンの返済を滞らせた場合、銀行は対象の不動産を差押えて競売にかけます。落札金額をローン残債にあてることで、銀行は融資したお金を回収できるのです。
そして、住宅ローンを組むときには土地と建物の両方に抵当権を設定するのが一般的です。
しかし、土地が借地権の場合、土地を自分で所有しているときより担保価値は低くなってしまいます。
つまり、銀行としては「差し押さえられる不動産の価値が低い」ため、融資金額や審査条件を厳しくせざるを得ないのです。
借地権の担保価値は「土地本来の価値」の60%程度
借地権の場合、住宅ローンの債務者と土地所有者は別になるので、土地そのもの(=土地の所有権)には抵当権を設定できません。
ただし、借地権という「土地を借りる権利」に対して抵当権を設定することはできます。その場合、担保価値は「建物の価値+借地権の価値」で評価されるのが一般的です。
「借地権の価値」は、土地本来の価値に対して6割程度が相場です。土地の価格が1,000万円なら、その土地の借地権価格は600万円ということになります。
また、差し押さえによる競売で不動産が落札される際、その落札金額は元々の価値より大きく下がるのが普通です。
つまり、借地権の担保価値は、所有権のある土地よりも大きく低くなるので、住宅ローンの審査も厳しくなるのです。
2.借地契約を解除されるリスクがあるから
借地権に関する決まりは借地借家法で定められていますが、この法律は基本的に、地主より借地人のほうが有利な内容になっています。
そのため、地主のほうから一方的に借地契約を解除されることはありません。
ですが、借地人が地代を滞納した場合や、地主の承諾を得ないまま建物を増改築した場合など、借地人の行動に問題があれば借地契約を解除される恐れもあります。
借地契約を解除されて「不動産の担保価値」が変動するリスクを考えると、銀行としては融資に対して慎重にならざるを得ないのです。
借地権契約の解除は「建物の取り壊し」をめぐってトラブルになる
借地人の問題行為で借地契約が解除されると、その借地は「土地上の建物」を取り壊して地主に返却する必要があります。
しかし、建物に抵当権が設定されている場合、建物を取り壊すと住宅ローンの担保も消滅してしまいます。銀行としては、到底承諾できることではありません。
建物を取り壊すには、住宅ローンを完済するか、抵当権を別の不動産などに付け替える必要があります。
つまり、住宅ローンを返済できる資金を用意できない場合や、担保にできそうな不動産を別に所有していない場合、建物を取り壊すことはできないのです。
債務者・銀行・地主の間で、建物の取り壊しや住宅ローンの返済を巡って、トラブルになる恐れがあるため注意しましょう。
3.「抵当権設定」に地主の協力が必要だから
借地権という「土地を借りる権利」に対して抵当権を設定するには、実質的に地主の許可が必要です。
具体的には、次の2つの方法があります。
- 借地権を法務局で登記しておく
- 「抵当権実行時の建物処分と土地利用権」について地主から承諾書をもらう
登記とは、法務局に申請して不動産の権利を公に証明する制度です。
借地権が登記されていれば、地主の許可がなくても「借地権に対する抵当権」も設定できますが、借地権を登記するには地主の協力が必要です。
「抵当権実行時の建物処分と土地利用権」は、借地権付き建物の「建物部分」に抵当権を設定するときに使える方法です。土地が借地であっても自分の所有物である建物に対しては、自分の意思で抵当権を設定できます。
そして、建物の抵当権が実行されたとき、銀行が「建物の処分」や「建物を利用するために必要な土地の使用」をあらかじめ地主に承諾してもらうことで、実質的に借地権の抵当権設定と同じ効果を得られます。
いずれにしても、借地における借地人や銀行の権利を強める行為でなので、地主がスムーズに了承するケースは少ないです。
借地権の住宅ローン審査を通すには「不動産会社との協力」が重要
借地権付き建物のように「借地権が関わる住宅ローン」の融資は、銀行側のリスクが大きいため審査も厳しくなりがちです。
一方、家の購入を仲介する不動産会社は、なるべくスムーズに買主の住宅ローン審査を通したいと考えています。
なぜなら、不動産会社は不動産売買の契約が成立することで「仲介手数料」を得られるので、住宅ローンに落ちて売買契約をキャンセルされると、利益が得られないからです。
そのため、借地権付きの不動産を購入したいときには、不動産会社と協力して住宅ローンの対策を練るとよいでしょう。
弁護士と提携した不動産業者がおすすめ
不動産業者と銀行の交渉次第では、借地でも住宅ローンの審査を優遇してもらえる場合があります。
そこでおすすめしたいのが「弁護士と提携した不動産業者」に仲介を依頼する方法です。
不動産業者の中には、法的トラブル解決のために弁護士と提携している業者もあり、そうした業者に依頼すれば、優れた交渉力と法的知識を活かして、銀行から住宅ローン融資の許可を得られる可能性が高いです。
以下のリンクから「弁護士と提携した不動産業者」の無料相談が受けられるので、住宅ローン審査に通るためのアドバイスを受けることをおすすめします。
借地権に住宅ローンを組めない銀行の一覧
銀行のよっては、最初から「借地権の場合は住宅ローンを受け付けない」と規約に定めている場もがあります。
次に紹介する銀行は、ホームページ上で「借地上の建物は住宅ローンの融資対象外」と明記しているところです。
- 新生銀行
- 住信SBIネット銀行
- イオン銀行
- ソニー銀行
また、みずほ銀行のネット住宅ローンでは、借地権全てではなく「定期借地権付」の場合は融資できないとしています。
この他、ホームページ・規約などには明記していなくても、「基本的には融資しない」という方針の金融機関もあります。
「住宅ローン不可」と書いていなければ、すぐに「融資対象になる」と思わずに、まずは一度問い合わせてみましょう。
借地でも「フラット35」なら一定の要件を満たせば利用できる
ここまで解説してきた住宅ローンは、銀行が提供している「民間融資」でした。
ですが、住宅ローンには「フラット35」「民間融資」「公的融資」の3種類があります。
そして、独立行政法人住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供している「フラット35」であれば、借地権でも一定の要件を満たすことで利用できます。
- 第1順位の抵当権
- 借入期間
- 借入対象となる借地権取得費
【要件1】第1順位の抵当権を与える
借地権の抵当権において、住宅金融支援機構を第1順位の抵当権者とすることです。
すると、借地権が差押えられた際、住宅金融支援機構が優先してお金を回収できる状態になります。
この抵当権の順位は、借主が債務不履行によって自己破産などに陥ったときに重要な意味を持ちます。
自己破産をすると貸したお金を回収するために借主の財産を現金に変えていく作業が始まりますが、不動産も当然ながら競売にかけられます。
自己破産になるような人は住宅ローン以外にも、様々な金融機関や貸金業者からお金を借りている状態が多いでしょう。
そして、抵当権の順位が1位でなければ、不動産の競売代金は他の債権者と分け合うか、上位の債権者が順番にお金を回収したあとで残った金額分を回収することになります。
【要件2】借入期間を借地権の期間に合わせる
フラット35の借入期間は、借地契約の期間に合わせることが求められます。
借地契約には大きく分けて「普通借地権」と「定期借地権」の2つがあり、それぞれ契約期間の決まりも異なります。
普通借地権は借入期間を自由に設定可能
普通借地権は契約期間を取り決めることはできますが、契約を更新すれば半永久的に借りられます。
借地人が希望すればほぼ確実に更新可能で、地主から更新を拒否するには正当な自由が必要です。
そのため、フラット35の借入期間においても借地権による縛りはなく、普通借地権の場合は通常の不動産を購入するときと同じように設定できます。
定期借地権は借地権の期間が借入期間の上限
定期借地権は「契約を更新しない」ことを前提とした借地契約です。
契約期間が満了すれば、建物を取り壊して更地の状態で地主に返却するか、建物を地主に買取してもらいます。
そのため、定期借地権の場合「借地権の残存期間」が借入期間の上限になります。
定期借地権の契約が残り10年であれば、フラット35で借りたお金も10年で返さなければなりません。
定期借地権の残存期間が少ない場合は、融資を受けられる金額が少なくなるか、毎月の返済額が大きくなります。
【要件3】借地権取得費を借入の対象にする
借地権に対する住宅ローンで借りたお金の用途を、借地権取得費(=借地権の取得にかかる費用)にのみ使うのも要件の1つです。
借地権取得費に含まれるのは、次の4つです。
- 権利金
- 保証金
- 敷金
- 前払賃料
土地賃貸借契約書や地上権設定契約書で、費用の種類や支払いが確認できることが条件となります。
契約書の記載に漏れがあったり、支払い項目の名前が違っていると借入対象にならないので注意してください。名義書換料や承諾料は借入対象になりません。
また、保証金・敷金・前払賃料は担保設定に加えて、返還請求権(契約解除にあたって返金を請求する権利)も担保に設定されます。
住宅ローン審査が通らないときの対処法
審査に通らなかったとしても住宅購入を諦めるのはまだ早いです。
借入可能金額は少なく、年利は高くなりますが、銀行のフリーローンやリフォームローンがあります。
一般的な銀行とは異なる取扱基準で特殊物件にも融資を行っている三井住友トラスト・ローン&ファイナンスのローン商品を利用する方法もあります。
住宅ローンはそのお金を何に使ってよいかという資金使途が明確に定められていますが、フリーローンなど資金使途が定められていないものであれば、名義書換料や承諾料としても利用できます。
まとめ
借地権の住宅ローン融資を受けるには、借入先の金融機関による審査が厳しいです。
しかし、絶対に住宅ローン融資を受けられないわけではありません。
「自宅をここに建てたい」「この家に住みたい」と思った場所が借地である場合、借地権の取扱実績が豊富な不動産会社に相談することをおすすめします。
とくに弁護士と提携した不動産業者であれば、交渉力と法的知識で金融機関と交渉して、借地権を購入するための住宅ローン融資を認めてもらえるでしょう。
借地権の住宅ローンを組むときのよくある質問
借地であっても住宅ローンは原則組めますが、銀行の審査で落とされる場合が多いです。
担保価値が低い上に借地契約を解除されるリスクもあり、抵当権設定に地主の協力が必要であるため、借地権は住宅ローン審査での評価が低いです。
不動産会社と協力して住宅ローン審査に臨みましょう。特定の銀行と密接な関わりがある不動産業者であれば、住宅ローンの審査を優遇してもらえる場合があります。
ケースによるため、各銀行に直接確かめる必要があります。その反対に、新生銀行・住信SBIネット銀行・イオン銀行・ソニー銀行は「借地権に対して住宅ローンを融資しない」と明言しています。
「フラット35」は審査要件が明確なので、借地でも住宅ローンの審査に通りやすいです。また住宅ローンではなく用途自由のフリーローンを使う方法もあります。