
「共有物分割請求」とは、共有持分をもっている人が、他の共有者に対して共有物の分割(=共有状態の解消)を求める権利と手続きをいいます。
持分割合に関係なく、共有持分をもっていれば誰でも請求でき、共有物分割請求を起こると、共有物の分割に向けた他共有者との話し合いが必要です。
そして、共有者間で話し合いがまとまらない場合は訴訟を起こして、裁判官に共有物の分割方法を決めてもらいます。
なるべく自分の希望どおり分割するためには、共有物分割請求を起こす最初の段階から、不動産問題に詳しい弁護士へ相談しておくとよいでしょう。
また、共有状態の解消が目的であれば、自分の共有持分のみを売却する方法もあります。
弁護士と連携している共有持分専門の買取業者に依頼すれば、共有物分割請求を起こす場合と共有持分を売却する場合、どちらの場合でもサポートしてもらえるのでおすすめです。
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目次
共有物分割請求は共有名義を解消するための手続き
共有不動産において、各共有者の所有権を指すのが「共有持分」です。共有持分は、例えば「1/2」など、割合で表します。
共有持分は不動産を取得したときの出費で決まり、相続や贈与で増減します。
また、共有持分1/2を2人の相続人が均等に遺産分割した場合、相続人はそれぞれ1/4の共有持分を取得します。
共有持分はあくまで「所有権の割合」であるため、実際に不動産が区分けされているわけではありません。
そのため、管理や処分には共有者間の話し合いが必要であり、普通の不動産と比べて制限が強い状態といえます。
共有物分割請求は、共有名義を強制的に解消するための手続きです。不動産が共有状態であることの不利益を回避できるよう、すべての共有者に請求する権利があります。
第256条
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。(後略)出典:e-Govポータル「民法第256条」
共有物分割請求は原則として拒否できない
共有者の1人が共有物の分割を請求した場合、すべての共有者は分割に向けた協議をしなければいけません。
自分の共有持分がどれだけ多くても、共有物の分割は拒否できません。
ただし、共有者全員の合意があれば、共有物分割請求を禁止する契約は結べます。この契約は「共有物分割禁止特約」といいます。
第256条
(前略)ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から5年を超えることができない。出典:e-Govポータル「民法第256条」
共有物分割禁止特約は、法務局で登記することもできます。後から共有者になった人(特約を結んだときに共有者ではなかった人)に特約を主張する場合は、登記が必要条件となります。
共有物分割請求の流れは3ステップ
共有物分割請求の流れは、大きく3つの段階に分かれます。
- 共有物分割協議
- 共有物分割調停
- 共有物分割請求訴訟
最初から訴訟を起こすことはできず、協議から段階を踏んで手続きを進めなければいけません。
次の項目から、それぞれ詳しく解説します。
1.共有者のみで話し合う「共有物分割協議」
共有物分割協議は、共有者全員が参加しなければいけません。1人でも不参加であれば、協議内容は無効となります。
ただし、共有物分割協議をどのように行うかについては特に定められていません。
全員で集まって話し合うほか、電話や電子メールなどでやりとりをすることも可能です。
2.調停員を挟んで話し合う「共有物分割調停」
共有物分割調停とは、裁判所の調停員が間に入り、話し合いを進める手続きです。
裁判所に申し立てますが、判決のように強制的な決定が下されることはありません。調停委員などの第三者を挟んだ話し合いであり、あくまで当事者の合意が目的です。
3.裁判所に分割方法を決めてもらう「共有物分割請求訴訟」
協議や調停で共有者の意見がまとまらない場合、裁判所に訴えて共有物分割訴訟を起こします。
共有物分割訴訟の管轄は、地方裁判所です。共有不動産がある地域か、被告の住所地がある地域の地方裁判所に提訴します。
被告とは訴訟の相手を指すので、共有物分割訴訟の場合は「共有不動産の分割について意見が対立している共有者」のことです。
被告が複数人で別々の所在地にいる場合、原告側がどこか1つの地域を選んで提訴できます。
共有物分割訴訟を起こすときは共有者全員に「内容証明郵便」を送付する
共有物分割訴訟を起こすには「確実に共有物分割協議をおこなった」という証拠を残す必要があります。
そのため、共有物分割協議をおこなう際、その旨を「内容証明郵便」で送付するのが一般的です。
内容証明郵便とは「いつ、誰から、誰に、どんな内容で書面を送ったか」ということを証明できる制度です。
書留と同様に受領人の印鑑や署名が必要になるため、名宛人は「受け取っていない」と嘘をつけません。内容証明郵便を送付しておけば「共有物分割協議の申し入れをした」という証拠になります。
共有物分割請求訴訟の流れ
共有物分割請求訴訟の手順は、次のように進みます。
- 地方裁判所に訴訟を申し立てる
- 裁判所から審理と判決が下される
訴訟の提起で注意したいのは、必ずしも原告の希望どおりに判決が下されるわけではないという点です。
提訴時に「全部売却して現金で分けたい」「土地のまま分割したい」といった希望は出せますが、裁判では「どうすれば共有者全員に利益が平等に行き渡るか?」を判断します。
公平性を保つために必要であれば「原告の希望に反した分割方法」になる可能性もあると覚えておきましょう。
1.地方裁判所へ訴訟を申立てる
まずは、地方裁判所へ訴訟を申立てます。
訴訟の申立て先は共有不動産の所在地、または訴訟相手である共有者の住所地を管轄する地方裁判所です。
以下の記事で共有物分割請求訴訟の必要書類などを詳しく説明しています。あわせてお読みください。

2.裁判所から分割方法の判決が下される
共有物分割請求の裁判を起こした場合、判決で下される分割方法は3種類あります。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
裁判官は、不動産の状況や性質、各共有者の経済状況を考慮して、上記の方法から適切な分割方法を検討します。
それぞれについて、詳しくは以下の記事で解説しているので参考にしてください。

共有物分割請求訴訟にかかる期間は半年程度
共有物分割請求訴訟は、提訴から判決が出るまで半年程度かかるのが一般的です。
ただし、個別の事情や、被告となる共有者がどこまで争うかによって期間が大きく変動します。
訴訟のなかで和解となれば2ヶ月程度、泥沼化してすると1年以上かかる場合もあります。
共有物分割請求訴訟にかかる費用
共有物分割請求訴訟訴訟にかかる費用は、大きく分けて以下の2つです。
- 印紙代
- 弁護士費用
それぞれ相場がありますので、次の項目から解説します。
裁判の印紙代は共有不動産の価額に比例する
共有物分割請求の場合、印紙代は共有不動産の固定資産税評価額をもとに算出します。
訴額の金額によって、必要な印紙代が変わります。
例えば、算出された訴額が10万円以下のとき印紙代は1,000円、90万円以上100万円未満のときは1万円など差があります。
弁護士費用の相場は「30万+訴訟で得た資産額の5%」
弁護士を雇う場合はその費用が必要です。
弁護士費用は、着手金として30万円程度、報酬として「共有物分割によって得た資産額の5%程度」が相場です。
共有物分割請求訴訟は弁護士へ依頼しなくても進められますが、共有者との関係が悪化している場合などはとくに法的観点からの手助けが必要な場面が多いため、依頼しておくと安心です。
まとめ
共有物分割請求は、協議が決裂してしまうと、訴訟を起こす必要が出て来ます。
裁判になると、必ずしも自分の希望通りに売却できるとは限りません。
共有不動産のトラブルに関しては、早めに弁護士へ相談しましょう。
共有者との交渉や訴訟をすべきかどうかについて、適切なアドバイスをしてもらえます。
共有物分割請求についてよくある質問
不動産を共有しているとき、他の共有者に対して共有物の分割(共有名義の解消)を求める手続きです。誰か1人が請求すれば、共有者全員が分割方法について話し合わなければいけません。
裁判によって分割方法を決める「共有物分割請求訴訟」に発展します。裁判になっても和解ができない場合、最終的に裁判官の判決によって分割方法が決まります。
はい、従う必要があります。控訴も可能ですが、控訴した人に有利な内容に変わるとは限らず、むしろ不利な内容になる可能性もあります。
不動産全体を売却して現金で分割する「換価分割」や、共有者間で持分と金銭を交換する「代償分割」があります。共有不動産が土地の場合は、持分割合にそって分筆する「現物分割」も可能です。
はい、あります。自分の共有持分のみ売却するのであれば、他共有者の同意は不要で、すぐに共有名義を解消できます。とくに、弁護士と連携している専門買取業者への売却がおすすめです。→ 【弁護士と連携!】共有持分の買取窓口はこちら