不動産を個人売買するメリット・デメリットを解説!個人売買すべきでない3つのケースも説明

個人売買

不動産を親族や友人・知人に売却するときには、「買い手が見つかっているなら業者に依頼する必要はない」と、通常の仲介とは異なる方法で売却することを考えるかもしれません。

たしかに、個人間売買であれば、仲介手数料などが発生しない分、費用面でメリットが生じます。しかし、不動産の個人売買にはリスクやデメリットもたくさんあり、安易に個人売買をしたことで予期せぬトラブルに巻き込まれることもあります。

この記事では、不動産を個人売買するときの基礎知識・注意点について解説していきます。できるだけ簡単に安く物件を売りたいから個人売買をしようと考えている人は、実際に売買する前に参考にしてみてください。

不動産を個人売買するときの流れ

不動産を個人で売却するときの流れは下記のとおりです。

1.物件の調査(相場価格や物件状況の確認など)
2.売主が希望する売却条件を決める
3.不動産売却に必要な資料物件(測量図面・写真・登記簿など)の用意
4.買い手の募集(広告出稿をする)
5.購入検討者からの問合せ対応(内覧対応など)
6.購入希望者との売却交渉
7.売買契約書・重要事項説明書などの作成・提示・説明の実施
8.売買契約締結および代金決済
9.物件の引渡しおよび登記手続き

親族・知人に不動産を売却するときに買い手の募集は必要ありませんが、個人売買の場合でも不動産を売却する手順それ自体は、仲介業者に依頼した場合と基本的には変わりません不動産売買は、高額な売却代金の発生する取引ですから、きちんとした手順を正しく、確実に踏むことがトラブルを生じさせないためにも大切です。個人売買だから「簡単に不動産を売れる」というわけではありません。

不動産を個人売買する2つのメリット

消費税
不動産の売買を仲介業者に依頼せずに、売主と買主で直接取引する最大のメリットは「売却にかかる費用(売却価格)を安くできる」ということです。

仲介手数料がかからない

不動産業(宅建業)者に仲介を依頼して不動産を売却するときには「仲介手数料」が発生します。不動産の仲介手数料は、売買価格の3%が相場とされています。不動産売買は高額な取引になるので、3%の負担でも金額は大きくなります。たとえば、3000万円の物件を売却すれば、手数料は90万円です。個人売買をすれば、この分は売主の利益となります。

また、仲介販売では、通常は、買主にも同額の仲介手数料が発生しますので、個人売買は購入金額を抑えるという意味で買主にとっては大きなメリットがあるといえるでしょう。そのため、親族や知人に不動産を売却する場合のように、買主があらかじめ決まっているケースでは、仲介業者を利用せずに、売主・買主で直接の取引が行われるケースも少なくありません。

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消費税が発生しない

個人売買で費用を安く済ませることができるもうひとつの理由は「個人売買には消費税がかからない」ということです。下記に引用するように、消費税は「事業者」のみを対象とする税金だからです。

<消費税4条>
国内において事業者が行った資産の譲渡等及び特定仕入れには、この法律により、消費税を課する。

参照:国税庁 消費税法

不動産売買は、軽減税率の適用対象外ですから10%となります。3000万円の不動産売買で支払う消費税は、300万円になるわけですから、この負担がなくなることは、買主にとってはとても大きなメリットといえます。なお「土地のみの売買」の場合には、不動産業者に仲介を依頼しても消費税は発生しませんので、直接売買するメリットは小さくなります。
参照:国税庁 非課税となる取引

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不動産を個人売買するデメリット4つ

瑕疵担保責任
不動産の個人売買には、仲介手数料や消費税の負担をなくすことができるという金銭的なメリットがある反面、様々なデメリット・リスクも発生します。以下では、個人売買において特に注意すべき4つのデメリット・リスクについて解説します。

売主にかかる手間が多い

不動産の個人売買における最大のデメリットは「売却にかかる売主の負担が大きい」ことです。不動産を売却するには、買い手を見つけてくることのほかにも、必要な調査の実施、必要書類を集めるなどの様々な準備が必要です。さらに、売買前に土地の境界を確認し測量図面を作成するために、土地家屋調査士を手配しなければなりませんし、売買後の所有権移転登記手続きや抵当権設定登記手続きに備えて司法書士も見つけてこなければならない場合もあるでしょう。

また、個人売買の場合には、売買契約の際に交付する契約書、それに先だって行う重要事項説明に用いる書類も売主が作成しなければなりません。これらの書類は、ウェブサイトを通じて無料の雛型などを入手して対応することも可能ですが、専門知識のない売主が内容を理解しないまま契約を交わすことは、とてもリスクの高い行為です。

弁護士・司法書士・行政書士といった専門家に契約書だけを作成してもらうことも考えられますが、一般的には問題のない契約書は作れたとしても、それが「その物件に最も適した契約内容」といえる保障はありません。弁護士などは必ずしも「不動産売買の専門家」ではないからです。さらに、重要事項説明も売主自身が行う必要があります。ダウンロードした書類や専門家に作成してもらった書面をそのまま読み上げて済ませる(読み上げずに交付するだけで済ませる)ことは、後のトラブルの原因にもなります。

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レインズに登録できない

買主にアテのない個人売買では、売主自らが買主を見つけてこなければなりません。買主をみつけるためには、ネットなどに広告を出稿する、自ら買主になりそうな人に営業をかけるという方法などがありますが、いずれも費用・手間がかかります。買主を自分で見つけなければならないという意味では、レインズに登録できないことは、個人売買の致命的なデメリットといえます。

レインズとは、Real Estate Information Network Systemの略称ですが、簡単にいえば、国が関与している公式の不動産流通情報のネットワークシステムで、不動産業者が「買い物件」を探すときに最も用いられているシステムです。レインズに物件登録をすることができるのは、宅建業者のみとなっているため個人売買では登録することができません。買い手を見つける上では「いつ目にとまるかわからない広告出稿」よりも、「買主を抱えている不動産業者に物件を見つけてもらう」方が売主の手間は少なくなるでしょう。

不適正な価格で売買されるリスク

不動産を個人売買するときには、売却希望価格も売主自身が設定しなければなりません。また、最終的な売却価格も、買主との価格交渉を自らで行い、売主自らが決定しなければなりません。「自分で自由に価格を決められる」ことは、個人売買のメリットのひとつといえますが、不動産の適正価格は、立地と面積だけでなく、その土地の形状、建物の有無・状態、建築条件といった複数の要素をベースに判断されなければなりません。売主の都合だけで設定した売却価格が相場価格とあまりにもかけ離れていれば、購入希望者が全く現れないということもあるでしょう。

売買後にトラブルとなるリスク

不動産売買では、売買契約の締結・売買代金の支払い・物件の引き渡し後にトラブルが生じる場合も少なくありません

売主の瑕疵担保責任

不動産売買後のトラブルの典型例は、売主が気づかなかった雨漏り、シロアリ被害、基礎の腐食などです。これらは建物の瑕疵といい、瑕疵が見つかった時、売主は買主に対して損害賠償を支払う必要がある(瑕疵担保責任・民法570条)のです。
参照:民法570条

専門知識のない売主が個人売買を行った際には、瑕疵担保責任の対象範囲や責任を負う期間について特約を定めないまま売却されることが多く、売買後に売主が負うリスクが重くなってしまう可能性が高くなります

必要な調査が実施されていないことも

「不動産売買にかかる費用を節約したい」という理由で個人売買を選択した際には、不動産売買の際に実施すべき事前調査が行われていないケースも多くトラブルの原因になりかねません。たとえば、個人売買では次のような事項の調査・確認が不十分というケースが少なくありません

・隣地との境界の確認
・売却対象となる土地の面積の確認(公簿面積が実際の面積と違うケースも多い)
・接道条件の確認
・法令上の制限(建築制限など)の有無についての調査
・土壌汚染の有無の調査

これらの調査が不十分な場合には、損害賠償以前に、契約そのものが取り消される・無効となるリスクも生じます。また、必要な調査が行われていないことで、買主が金融機関からの融資を受けられないこともあります。

必要な特約が定められていないことによって起きるトラブル

実際の不動産売買では、誰が誰に、どの物件を、幾らで、いつ売るかという内容以外にも、多くの事項について、買主に対して説明を行い、必要な特約を定めて売買契約を交わします瑕疵担保責任の問題がその典型例ですが、その他の主な事項としては次のものがあります。

【売買前に説明すべき事項】
・上下水道の導管などのインフラ整備状況
・共用部分についての諸条件(マンション売却の場合)
・修繕積立金・管理費についての説明(マンション売却の場合)
・保険加入について
【特約を設けるべき事項】
・手付金・補償金の金額、決済方法
・物件の引き渡し条件
・危険負担(契約締結から決済までに震災などが生じた場合)についての取り決め
・売買後の所有権移転登記手続きにかかる費用負担
・契約書に添付する印紙代の負担
・公租公課(固定資産税)の積算基準
・契約解除の条件(どのようなことが契約違反となるのか)

個人間売買では、買主が親類・知人・友人(の紹介)ということも多く、「人間関係(信頼)があるから」とこれらの事項がおざなりにされがちです。しかし、万が一の可能性に対する備えが不十分だったことが原因で、大きなトラブルに発展してしまうことも少なくありません。

個人売買すべきでない3つのケース

更地
以下で説明する3つのケースに該当する場合には、たとえ知人や友人などに売ることが決まっている場合であっても、不動産業者に間に入ってもらって売買を行うべきでしょう。

買主が住宅ローンを組む場合

買主が住宅ローンを組んで物件を購入する際には、個人売買はオススメできません個人売買では、銀行などの金融機関が融資の審査を通してくれないことがほとんどだからです。そもそも、買主が購入代金を工面できないのであれば、売買それ自体も成立しません。

個人売買で住宅ローンが組めない理由としては、「契約締結後のトラブルを回避したい」、「売主と買主が共謀して不正に住宅ローンを借り入れることを回避したい」という金融機関側の考えがあります。特に、事前調査が不十分であることが理由で、買主が「欠陥住宅」を買わされてしまった場合には、担保価値が大きく損なわれるため、抵当権者となる銀行のリスクが大きくなってしまいます。宅地建物取引士(以前は宅地建物取引主任者とよばれていました)が作成した重要事項説明書に基づいて売買された場合であれば、個人売買でも銀行融資を受けられる可能性はありますが、それなら最初から不動産業者に仲介を依頼した方がスムーズでしょう。

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更地を売却する場合

更地の売却も個人間売買で行うことはオススメできません更地(現状で全く利用されていない)となっている土地には、市街化調整区域、地区計画などによって様々な利用制限が生じているケースが少なくないからです。土地によっては、複数の規制に引っかかっていることもあり、専門知識のない素人が調査をしたのでは、「気づけなかった規制」があるかもしれません。万が一、売主・買主が共に知らなかった規制が原因で、「買った土地が使えない」というのでは、後に大きなトラブルとなる可能性があります。

また、上でも触れたように、更地の売却には消費税がかからないため、不動産業者に仲介を依頼しないメリットもさほど大きくありません。それよりも、事業者を含めた様々な購入希望者にアプローチすることのできる専門業者に仲介を依頼した方が、より高額で更地を買い取ってくれる買主を見つけられるチャンスが大きくなります。

物件に欠陥があるかもしれない場合

不動産を売却した時の売主の瑕疵担保責任は、「事前に調査をした場合」でも免除されるものではありません。瑕疵担保責任の本質は、調査を怠ったことへの償いではなく、「買主が目的を達成できない物件を売却したことの補償(結果責任)」と解されているからです。

たとえば、次のような物件の場合には、たとえ相手が親類・友人・知人であってもリスクが大きすぎるといえます。

・長期間使用せずに放置している建物
・農地として利用していた土地
・工場やガソリンスタンドの跡地
・遠方にあるなどの理由で物件の状況を正確に把握できていない土地・建物
・台風被害に遭ったことで物件に想定外の損傷があるかもしれない物件

できるだけ費用を安くして売りたいという売主の気持ちはわからなくありませんが、後にトラブルが生じて、高額な損害賠償を請求された、買主との信頼関係が悪くなってしまったというのでは、身も蓋もありません。

まとめ

不動産の売買は必ず仲介業者を通さなければならないというわけではありませんが、不動産業者を通さない個人売買には、数多くのデメリット・リスクがあることをきちんと理解すべきです。たしかに、仲介手数料や消費税の負担は小さくありませんが、不動産業者に依頼をすれば、手数料に見合っただけのサービス(安心の提供)を受けることができます。

特に訳あり物件などを売却する場合のように物件それ自体にリスクがあるケースでは、売主・買主の双方が「安心・納得」して気持ちよく不動産売買をするためにも、丁寧な仲介業務を行ってくれる専門業者に依頼する方が良いといえます。物件によっては、個人売買するよりも高値で売却することができ、手数料分を差し引いても売主の利益が大きくなるでしょう。

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