箱根の別荘売却はむずかしいが不可能ではない
中古別荘の売却は基本的にむずかしいのが実情ですが、箱根の別荘については比較的売りやすいといえます。
日本有数の温泉地として人気が高いことに加え、都心から1~2時間ほどで行けるアクセスの良さが大きな強みとなっています。美術館や雄大な景観といった見どころが沢山あるのも魅力です。
日帰り旅行や、週末だけ帰るセカンドハウスの立地に向いていることから、別荘地として一定の需要を保っています。
箱根は別荘地のなかでも比較的売却しやすい地域
実際の取引件数から見ても、箱根はそれなりに不動産需要を見込める地域です。
下記は、2024年の土地取引件数について、関東近郊の別荘地をいくつかピックアップしてまとめたものです。
2024年第1四半期から2024年第4四半期の土地取引件数
| 那須町 |
1,544件 |
| 草津町 |
328件 |
| 箱根市 |
1,002件 |
| 葉山町 |
469件 |
| 館山市 |
1,000件 |
| 富士河口湖町 |
580件 |
| 鳴沢村 |
232件 |
| 軽井沢町 |
1,957件 |
| 熱海市 |
1,831件 |
| 御殿場市 |
850件 |
データ参照:国土交通省「土地取引規制基礎調査概況調査結果」
軽井沢や熱海などには負けますが、同じ神奈川県の葉山や、富士五湖エリアの富士河口湖町・鳴沢村などよりは取引量が多いとわかります。
別荘のみの取引データではないのであくまで参考値ですが、箱根にある別荘がまったく売れないというわけではなく、物件の魅力や売主の工夫次第で売却は十分可能です。
リモートワークなどの普及で需要アリ
近年はコロナ禍の影響からリモートワークやワーケーション(リゾート地で休暇を取りながら働く過ごし方)が普及したことに伴い、別荘地の価値も見直されつつあります。
物価の高い都心に住む必要性が薄くなり、地方や郊外に移住する人が増加したことで、別荘をメインの住居やセカンドハウスとして購入する人が増えているのです。
また、企業もオフィスを地方に移し、古民家などを活用することで維持費を抑えるケースが多くなっています。
都心に近い箱根は、上記のように従来の別荘利用とは違った需要も呼び込みやすいといえます。
需要があるうちに売却するのがよい
ある程度の需要は見込める箱根の別荘ですが、不動産市場の状況はいつ変わるかわかりません。今後、別荘の売却がいま以上にむずかしくなる恐れもあります。
また、箱根の別荘は築年数が40~50年経つものも多くありますが、建物が古いほど需要は下がり、資産価値も低くなります。
物件によっては0円でも売れないという状況になりかねず、いつまでも保有し続けるのは得策とはいえません。
「処分できず維持費ばかりかさむ」という状況を避けるためにも、需要が見込めるいまのうちに売却してしまうのがおすすめです。
箱根の別荘が売れない原因5つ
「一定の需要がある」と解説しましたが、実際に売り出してみても買い手が付かないという人はいるでしょう。
箱根の別荘が売れない場合、次のような原因があると考えられます。
- 箱根エリアの不動産の取り扱いに不慣れな業者を選んでいる
- 築年数が古い
- 管理状態が悪い
- 建築基準法に違反している
- 税金や維持費が高い
それぞれの詳しい内容を把握して、適切な対策につなげていきましょう。
原因1.箱根エリアの不動産の取り扱いに不慣れな業者を選んでいる
不動産の売却において、なにより重要なのは不動産会社選びです。どの不動産会社へ依頼するかによって、売却結果は大きく変わります。
なかでも、箱根にある別荘のように特殊な不動産を売却する場合は、そのエリア内や別荘の販売実績が豊富な業者を選ぶことが大切です。経験豊富な業者であれば短期間かつ高値で売る方法を熟知していますが、不慣れな業者だと物件情報を公開して放置という場合もありえます。
箱根エリアや別荘の売買が得意な不動産会社を見つけることが、スムーズに売却するための最大のコツといえるのです。
過去には、不動産会社の変更によって、1年以上売れ残っていた物件がすぐに売れたというケースもあります。別荘の売却が難航しているのであれば、別の不動産会社へ切り替えることも検討してみましょう。
不動産会社を選ぶ際のポイントとして、複数社に査定を依頼し、査定額・売却戦略・対応の丁寧さを比較することが重要です。
原因2.築年数が古い
築年数が古い別荘は、修繕費や安全面の不安があるため買い手がつきにくいことが原因で、売却が長引きやすい物件です。
中古別荘の売却は、築年数が古い物件が多くなります。別荘ブームのピークは1980年代頃なので、築40年を超えるような物件も少なくありません。
築年数が古いと、建物の老朽化が大きな難点となります。修繕で大きな出費がかかるかもしれませんし、倒壊などで事故につながるかもしれません。
また、建物の資産価値は築年数に応じて下がるため、せっかく購入しても資産にならないと判断されるケースもあります。
国税庁が公開している「耐用年数表」によると、木造住宅の耐用年数は22年で、鉄筋コンクリート造は47年です。ただし、耐用年数を超えたからといって価値が無くなるわけではなく、価格が下がることで「安いなら買いたい」という需要が生まれるケースもあります。
一方で、築年数が古くなるほど老朽化が進み、修繕リスクや将来的な安全性への不安が大きくなるため、買い手が敬遠しやすいという側面もあるのが実情です。
築年数の古い別荘は、リフォーム・リノベーションで建物を改修するか、建物部分を無償で売る「古家付き土地」として売ることで買い手が見つかりやすくなるでしょう。
原因3.管理状態が悪い
管理状態が悪い別荘は、内覧時の印象が悪くなるため成約につながりにくく、売却が長期化する原因となります。
別荘は年に数回しか使わないのが普通なので、管理が不十分になりがちです。
定期的な掃除や修繕をしていれば価値を保てますが、長いこと放置していると水が出なくなったり、ネズミなどの害獣が住み着いてしまったりといったトラブルが発生します。
管理状態が悪いままだと内覧時の印象も悪くなり、購入希望者が現れても成約までいかないというケースが増えてしまいます。
自分で管理状態を改善する余裕がなければ、不動産を自社で買い取る「買取業者」への相談も検討してみましょう。相場より安くなりますが、業者によっては現状渡しでの売却が可能です。
原因4.建築基準法に違反している
築古の場合、建築基準法に違反している場合もあります。築古の別荘だと建築当時は合法でも、後の法改正により現行の基準を満たさなくなった「既存不適格建築物」となっているケースが少なくありません。
とくに1981年の新耐震基準導入や接道義務、建ぺい率など、建築基準法は度々改正されており、古い別荘ほど注意が必要です。
もし、建築基準法に違反していると、建て替えや増改築ができなかったり買い手側がローンを組めないといった問題が発生します。
建築基準法に適合しているかどうかは、市区町村の建築指導課や都市計画課で「建築確認申請」「接道状況」「用途地域」などを確認して調べられます。
なかでも、1981年以前に建築された別荘は、新耐震基準(1981年施行)に適合していない可能性があるため注意が必要です。その場合は、ホームインスペクション(住宅診断)や建築士による調査を受けておくと、売却時のトラブル防止につながります。
原因5.税金や維持費が高い
税金や維持費の高さから、別荘の購入を見送る人も多くいます。
税金でいうと固定資産税や都市計画税は不動産を保有するだけでかかりますし、別荘の場合は住民税も支払わなければいけません。
維持費の面では、火災保険料や水道・光熱費の基本料金といった固定費のほか、定期的な点検・清掃を管理会社に任せていれば管理費がかかります。
また、箱根の場合は別荘に温泉を引き込む場合もありますが、権利の取得だけでも100万円以上、年間の使用料では10万円以上かかります。
これだけの費用を負担できる買主を探す必要があるため、高所得者や法人など資産が豊富にある層へアピールできるよう、不動産会社と戦略を練ることが大切です。
箱根の別荘を売るための対策
箱根の別荘が売れないとき、売却を成功させるための具体的な対策としては次の5つがあげられます。
- リフォームをする
- 解体して更地にする
- 買取業者に売却する
- 空き家バンクを利用する
- 買主の経費を負担する
それぞれ詳しく解説していくので、適切な対策でスムーズな売却を実現しましょう。
リフォームをする
別荘の築年数が古いと、建物や設備の劣化、内装などの旧式化など、売れにくくなる要素が出てきます。これらの対策として有効なのがリフォームによる改修です。
劣化部分を直し、デザインを一新して時代のニーズに合わせれば、需要を高めることができます。
たとえば、別荘ブームのピーク時に建てられた物件は、建築基準法の改正によって現在では再建築不可となっているケースも考えられます。しかし、増改築が難しい場合でも現況を活かしたリフォームによって、魅力や用途を高めることは十分に可能です。
内装の刷新や水回りの改善、デザインの見直しなど買い手のニーズに合わせて工夫することで、売却のチャンスを広げることができます。
ただし、大規模なリフォームになると数百万円〜1,000万円以上かかることもあるため、あくまで可能な予算範囲で計画することが大切です。
まずは不動産会社と相談し、費用対効果などをしっかり検討するようにしましょう。
解体して更地にする
リフォームとは反対に、建物を解体して更地にする方法もあります。一般的に、価値の低い建物があるより、更地のほうが売却はしやすくなります。
解体費用として100万円以上はかかりますが、大掛かりなリフォームをするより出費を抑えられる可能性は高いでしょう。
なお、箱根町はブロック塀やフェンスなどの撤去に対して補助制度を設けているため、適用可能かチェックしてみましょう。
買取業者に売却する
不動産会社に売却を依頼してもなかなか売れない場合は、買取業者に売却するのも対策のひとつです。
買取業者への売却は業者が直接買主になるので、飼い主を探す期間や内覧などが不要です。そのため、仲介と比べて売却スピードが早く、最短数日〜数週間で現金化できます。
また、リフォームや解体をしなくてもそのまま売却でき、残置物があっても対応してくれる業者も多く、最小限の手間で売却できるのも魅力です。
その一方で、買取価格は仲介より低くなる傾向があります。買取業者はあなたの物件を買い取ったあと、再販や収益物件にするためにリフォームや修繕、内装・清掃を行います。そのため、各種費用や再販リスクを見込んだ「利益確保のための調整」が行われ、相場価格より低めの買取価格が提示されるのです。
築古物件が多く、購入希望者のニーズが限定されやすい「箱根」の別荘エリアでは、買取という方法が現実的で効率の良い選択肢だといえます。
空き家バンクを利用する
空き家バンクとは、空き家の所有者と利用希望者をつなげる自治体主体のサービスです。社会問題にもなっている空き家の増加対策として、全国的に普及しつつあります。
箱根町も空き家バンクを導入しており、無料で物件を登録することができます。売却だけでなく、賃貸物件としての登録も可能です。
閲覧するのは箱根への移住意欲が高い人ばかりであり、購入者にはリフォームの補助制度もあるので、通常の不動産売却より成約しやすくなる効果が期待できます。
参照:箱根町「箱根町空き家バンクに登録しませんか?」
買主の経費を負担する
どれだけ価格を下げても売れないような物件は、買主の経費も一部負担する場合もあります。
例えば、登録免許税や司法書士手数料など原則は折半となる費用を負担すれば、成約率の向上が可能です。
また、「物件価格を無料にして解体費用も売主が負担する」という、マイナス価格での売却事例もあります。
金銭的な損失となるのであまりおすすめはできませんが、どうしても売却できないときの選択肢の1つとして、頭の隅に置いておきましょう。
箱根の別荘が売れないときは収益化を検討
どうしても売れないときは、売却にこだわらず収益化も検討してみましょう。
貸し出して賃料を得ることができれば、維持費用をまかなったうえで副収入を得られる可能性もあります。また、収益化が安定すれば、投資物件として高値で売却するという選択肢も生まれます。
なお、ひとくちに収益化といっても、別荘の賃貸方法にはいくつかの種類があります。物件の特徴やその時々のトレンドに合わせて、適切な方法を選びましょう。
1日単位で貸し出す「民泊・レンタルスペース経営」
1日単位で貸し出す場合、民泊やレンタルスペースの経営となります。「自分もたまに使いたい」という場合に向いている方法です。
観光地としても人気のある箱根は、民泊も高い需要があります。ただし、自治体ごとに規制が異なり、箱根町でも一部制限される時期・区域があるため、事前に役所で確認しましょう。
参照:箱根町「宿泊施設一覧および民泊を営むにあたって」
レンタルスペースとして貸し出す場合、撮影場所やイベント会場などの需要が見込めます。歴史を感じられる古民家や、景色の良い立地であれば、特性を活かして多くの利用者を呼び込める可能性があります。
1ヶ月単位で貸し出す「貸別荘経営」
1ヶ月単位で貸し出す貸別荘経営は、マンスリーマンションと似た運営方法です。借主とは短期借家契約を結ぶことになります。
1日単位での賃貸経営と同じく、自己利用との両立ができる点がメリットです。自分の利用時期が決まっている場合、それ以外のシーズンで有効活用できます。
ただし、貸別荘の需要は長期休暇の時期に偏るため、自身がオンシーズンに使いたいと考えるときは不向きな方法となるので注意しましょう。
年単位で貸し出す「賃貸経営」
自己利用をまったくしない別荘であれば、年単位、あるいは期限のない賃貸経営がおすすめです。地方への移住希望者や、2拠点生活を希望する人からの需要を期待できるでしょう。
契約形態は一般的な借家契約で、長期間貸し出すことを前提とします。収益が安定しやすく、短期間の賃貸より管理や利用者募集の手間が減るというメリットがあります。
ただし、借家契約は貸主側からの解約がむずかしく、自己利用がしたくなってもできない場合が多いので、将来的な利用計画も慎重に検討することが大切です。
箱根の別荘を放置すると発生するリスク
「どうせ売れないから」「いつか使うかもしれないから」と別荘を放置していると、次のようなリスクがあるため危険です。
- 年間数十万~数百万円の維持費がかかる
- 特定空き家に指定され過料や強制解体がおこなわれる
- 相続後に家族へ迷惑をかける
金銭的な負担だけでなく、家族の負担になる恐れもあるため、不要であればなるべく早く処分してしまいましょう。
それぞれのリスクを詳しく解説していきます。
年間数十万~数百万円の維持費がかかる
先の解説でも少し触れましたが、別荘は保有するだけで高額な税金や維持費がかかります。
各種税金や水道光熱費などの固定費だけでも数十万円かかりますし、突発的な修理などで100万円以上の一時費用が発生する恐れもあります。
仮に箱根の旅館やゲストハウスに泊まる場合、10〜20万円程度の予算があれば数日宿泊できます。年に1〜2回ほどしか別荘を利用しない場合、別荘を手放して宿泊施設を利用するほうがトータルコストを大幅に抑えられます。
年間維持費と利用頻度を見直すことが、売却のきっかけになるケースも少なくありません。
特定空き家に指定され過料や強制解体がおこなわれる
別荘が適切に管理されず、倒壊の恐れや公衆衛生上の悪影響がある場合、自治体から特定空き家に指定される可能性があります。
特定空き家に指定される条件
| 区分 |
条件内容 |
具体例・判断のポイント |
| 保安上の危険性がある状態 |
放置すると倒壊・崩落などの危険がある |
建物の傾きや屋根の破損、外壁の崩落、支持材の腐食など |
| 衛生上有害となる状態 |
放置すると衛生面で問題がある |
ごみの放置や害虫・害獣の繁殖、悪臭、排水不良など |
| 景観を著しく損なっている状態 |
外観が劣化し景観を乱している |
雑草・樹木の繁茂や落書き、外壁の剥離、窓ガラスの破損など |
| 周辺生活環境の保全上、不適切な状態 |
地域の生活に悪影響を与える状態 |
不審者の出入りや放火・ごみの不法投棄、近隣とのトラブルなど |
特定空き家に指定されると改善の指導や勧告・命令が出されます。それに対応しない場合は、住宅用地特例(固定資産税の軽減措置)が解除され、土地の固定資産税が増加するほか、50万円以下の過料といった罰則が課されます。
最終的には「行政代執行」という措置で建物を強制的に解体され、高額な解体費用を請求されるかもしれません。
【特定空き家に関する具体例】
特定空き家として認定されたケースに関する事例です。法人の移転により建物が放置され、長期間管理されない状態が続いていました。
その後、東日本大震災の影響で外壁や屋根材が崩落し、市の巡回調査や近隣住民からの相談によって危険性が判明。所有者には繰り返し除却を求められましたが、「費用を負担できない」という理由で改善されない状況が続きました。
敷地が通学路やJR常磐線に面していたことから、重大事故につながる可能性が高いと判断され、平成29年に行政代執行による強制解体が実施されました。
参考:国土交通省「空家等対策特別措置法について」
特定空き家の指定は所有者にとってデメリットしかないため、管理もままならない別荘を持っている場合は早めに処分しましょう。
参照:NPO法人空家・空地管理センター「特定空家とは」
相続後に家族へ迷惑をかける
別荘を放置したまま相続が発生すると、管理費や税金の負担で子供や孫に迷惑をかけることになります。利用価値のない別荘を進んで管理したがる人はいないので、相続人の間で押し付け合うなど争いになるかもしれません。
日本の相続制度では、遺産を全て引き継ぐか放棄するかのいずれかを選ぶ必要があります。現金や預貯金といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含め、相続財産全体を一括で判断する仕組みになっています。
そのため、「別荘だけ相続を放棄したい」「土地は要らないが預金は受け取りたい」といった一部の財産だけを選んで放棄することはできません。
なお、相続放棄をしてもその時点で自分が占有している不動産の場合は、次の相続人や相続財産清算人が決まるまで管理義務が残る場合があります。つまり、放棄したとしても一時的に管理責任を負う可能性があるのです。
別荘を放置するとこのような相続トラブルが起こる可能性があるため、生前整理の一環として早めの売却を検討してみましょう。
箱根の別荘が売れないときに手放す方法
箱根の別荘がどうしても売れないときは、以下の手段にて別荘を手放す方法もあります。
- 親族・知人に譲渡する
- 管理会社・不動産会社に処分を依頼する
- 自治体に寄付する
別荘の買い手が見つからない状態が長くなる分、管理費や固定資産税、修繕費などを支払い続けることになります。売却にこだわりすぎず、将来的な負担を抑えるための代替手段を検討しておくことが大切です。
親族・知人に譲渡する
親族や知人に譲渡する場合、第三者への売却より手続きがスムーズで購入希望者を探す手間が省けるメリットがあります。
なお、譲渡する際には不動産の名義を変更する「所有権移転登記」の申請が必要です。 所有者移転登記の理由に「譲渡」はなく「贈与」に該当します。
そのため、親族や知人に無償で譲渡しても、固定資産税評価額が110万円を超えると、贈与税が発生します。譲渡する際に必要となる主な費用は以下のとおりです。
| 費用の種類 |
内容 |
発生の可能性 |
| 贈与税 |
無償で譲渡すると贈与扱いになるため、年間110万円を超える場合は贈与税が課税される。 |
発生する可能性あり |
| 登録免許税(必須) |
所有権移転登記の際に支払う税金。贈与の場合は「固定資産評価額 × 2%」 |
必ず発生する |
| 司法書士への報酬 |
登記手続きを専門家に依頼する場合、5〜10万円が目安。 |
自分で申請すれば不要 |
| 固定資産評価証明書の発行手数料 |
登記に必要な書類として、市区町村で取得する証明書の発行費用。 |
必ず発生する |
注意点として、譲渡後の管理や費用負担についての取り決めが曖昧なままだと「もらったはいいものの、維持できない」というトラブルにつながることがあります。
特に別荘の維持費は年間で数十万円以上かかるため、相手に負担能力があるかどうかも事前に確認しておきましょう。
親族・知人への譲渡は身近だからこそ慎重に行い、トラブル防止のために契約書を交わすなど正式な手続きを取りましょう。
管理会社・不動産会社に処分を依頼する
不動産会社の中には、別荘のような特殊物件の引き取りや、管理・処分まで代行してくれる業者もあります。こうしたサービスを利用することで、売却活動や買い手探しの手間をかけずに別荘を手放せるため、精神的・時間的な負担を軽減できます。
また、複数の不動産会社に相談すれば、処分方法や費用を比較して最も条件のよい業者を選ぶことが可能です。
通常の売却よりも価格が下がる傾向があるため「手続きを任せられる範囲」「費用の負担は誰が行うのか」など、引き取り条件は事前に確認しておくことが重要です。
自治体に寄付する
売却や譲渡、処分が難しい場合の最終手段として、自治体への寄付(寄附受納)を検討する方法もあります。 公共施設や地域活性化に活用できる場合は、自治体が所有権を受け取ってくれる可能性があります。
ただし、自治体はすべての物件を受け入れているわけではありません。寄付を受けるためには、以下のような条件が課されることが多く、事前の相談が不可欠です。
- 公共的な利用価値があるか(道路・公園・公共施設用地など)
- 管理・維持費の負担が自治体にとって重すぎないか
- 再建築不可や境界未確定などの法的リスクがないか
とくに別荘の場合、老朽化や立地の問題から行政が負担を抱えると判断されれば、寄付を断られるケースがほとんどです。寄付をしたくても受け入れ先が見つからず、そのまま所有し続けることになる可能性がある点には注意が必要です。
自治体への寄付を検討する際は、まず都市計画課や空き家担当窓口に相談し、受け入れの可否を確認しましょう。実際に寄付の可能性がある場合は、司法書士や土地家屋調査士などの専門家にも相談しながら手続きを進めると安心です。
まとめ
中古別荘の売却は、全体の傾向としてむずかしいのが実情です。しかし、箱根は立地的な魅力も大きく、比較的売却しやすいエリアといえます。
ただし、物件の状態や管理状況によっては売れ行きが大きく左右されるため、まずは「なぜ売れにくいのか」という原因を正しく把握することが重要です。
たとえば「管理状態が悪い」「販売を任せている不動産会社が箱根エリアに不慣れ」など、売却を妨げる要因が潜んでいるケースもあります。
こうした原因を踏まえて改善策を講じれば、スムーズな売却や適正価格での成約を目指すことができます。原因を把握したあとは、売却するための対策を検討します。具体的な対策方法は以下のとおりです。
【別荘を売却するための対策方法】
- リフォームをする
- 解体して更地にする
- 買取業者に売却する
- 空き家バンクを利用する
- 買主の経費を負担する
もし、できるだけ早く売却したい場合は、買取業者に売却する方法が有効です。買取先を探したり金銭交渉の手間も省けるので、仲介よりも早くスムーズに売却できるのが特徴です。
買取業者ごとに査定基準は異なるため、複数社を比較することでより適切な売却条件を把握できます。まずは一括査定を利用し、各不動産会社を比較・検討するとよいでしょう。